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本格推理入門編

〜まずはここら辺から〜


横棒



そして誰もいなくなった

さて、本格推理といっても、結局は読んでみないと、触れてみないとその面白さは分かりません。

ではどの辺からまずは読めばいいか?

私の実体験から言えば、一番初めに本格的に本格推理に触れたのは世界一有名な本格推理といっても過言ではないアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」です。

そして誰もいなくなったといえば、例えアガサの作品と知らなくてもその題名を聞いた人は多いでしょう。
読んでいなくとも話の流れの中で冗談めかして”そして誰もいなくなった”とつぶやいた事がある人、または知人から聞いた事がある人もいるでしょう。

そう、そのそして誰もいなくなったです。

なんといっても薄いので、すぐに読めます。
トリックもよく出来ていますし、難易度もほどほどなので入門編として大変お薦めです。



マザーグ−スの「10人のインディアン」

この小説は題名のとおり、本当に誰もいなくなる=登場人物が全員死んでしまいます。
その死に方の心憎い演出としてマザーグ−ス(ところでマザーグ−スとは人の名前ではないようですね。イギリスでの伝承童謡の代名詞といったところでしょうか。)の童謡、10人のインディアンが物語の最初から暗示として出てきます。
この童謡、音楽を聞けば誰でも知っている曲で、「ワン、リトル、トゥーリトル、スリーリトルインディアン」と続いていき、よくCMなどで軽く使われる事が多い身近な童謡です。

しかしその軽やかな音楽とは裏腹に、実際の詩の内容はぞっとするもので、ようするに10人のインディアンの子供(実はインディアンでなく差別された黒人の子)が次々と死んでいくといった内容で、「ロンドン橋落ちた」と同じように、マザーグ−スらしい、残酷な歌です。

その歌の内容と同じく、火で燃えたり、串刺しになったりとまさに歌の通り次々と順番に10人の登場人物が死んでいきます。


全員死んだら犯人は?

さて、前述したとおり、その連続殺人は登場人物10人が全員死んだところでいったん終わります。
完璧な孤島での殺人であり、外部から犯人が進入した可能性も(物語の中では)あり得ません。

では、誰が犯人なのでしょうか?
一部を除き、ほとんどが完璧な他殺であり、集団自殺というわけではありません。
完全に犯人が存在するはずです。

しかし、普通ならば生き残った中から容疑者を絞ればいいのですが、なにせ全員死んでいます。
私はこれをまず解答編の手前まで読んだ時には、パタンと本を閉じ上を見上げボーっとしてしまいました。

え?そんな事があり得るの?
だってみんな死んだじゃない。本当に誰もいなくなったじゃない。



親友Mの助言

実はこれを読むように私に薦めたのは、たびたびこのHPに登場する平野至上主義者・親友Mです。
ここまで読んだ際に、私はMに言いました。
全然分からないんだけど、と。

そこでMは言いました。
(仮名)元F、いいから自分なりに解釈するんだ。とにかく間違っていてもなんでも、それらしい解答を自分の中でこじつけでいいから立てるんだ。
自分でまずは解答を組み立てないと意味がない、と。


なるほど、必ずしも本当の正解を当てなければいけないわけじゃないのか。
とりあえず、自分なりの解釈ができれば、自分なりの解答が導き出せればいいのか、と。

作者側と読者側の真剣勝負

更にMは言いました。
もし(仮名)元Fが自分なりの解答を導き出せ、その解答に全く穴が無い、矛盾が無いのならば、例えそれが正解と違っていてもある意味正解なんだ。
そんな正解を2つ導き出せてしまう条件しか与えなかった作者、出版側のミスなんだ。
そこまでの解答を出せてしまえば、ある意味それは作者側に勝った事になるのだ、と。


自分はその言葉で俄然やる気が出ました。
そうか、じゃあやってやろうじゃないか。
これは作者側と読者側の真剣勝負なんだ。
同じ人間が思い付く事、考える事。考え抜いて分からない訳がない。


そしてMの助言どおり、今度はヒントになりそうな箇所を特に注意して読み、一字一句見逃さないように真剣に、もう一度読み返しました。
幸い、そして誰もいなくなったは非常に薄い小説です。
(最近の推理小説はやたらと厚くなる傾向ですが)

一晩でたちまちもう一度読み直せてしまい、そして10人の死を一つ一つ自分なりに検証しました。


辿りついた真相

そして、自分は辿り着きました。
その真相に。

一つ一つが完璧な殺しに見えたその死の中に、やはり穴がありました。

そうか、これか。

それを見抜けてさえしまえば、あとは簡単でした。
固く結んだ糸がさらっとほぐれるように、その物語全体の謎はたちまちのうちに解けました。

その後に解決編を読む事の優越感。
そこに書いてあることは、既に自分が考えたとおりの文章が連なっているだけです。


推理小説を解く事にハマる

この、自分で解くという事の重要さ。
もしMの助言が無ければ、私はそのまま解決編を読み、そして特に何も考えずになるほどね、と思いそのままだったことでしょう。

しかし、推理小説を解くという快感、面白さをこの小説で知ってしまった私は、それからというものMから小説を借りまくり、そのうちそれでは足りなくなり古本屋に通い推理小説を読みあさりました。

前のページで語った島田荘司の御手洗シリーズや、綾辻行人の館シリーズなどベタなところから入り、そのうち有栖川有栖や東野圭吾などまあ自分が読むのは有名どころばかりでしたが、いわゆる”本格”と呼ばれるそれらの小説はどれも面白いものばかりでした。

それからもう10年が過ぎました。
自分はこの10年以上の間、随分と多くの推理小説を読みました。
(まあ私は本当にじっくり一字一句読むので、そのペースは大変遅く世間一般の推理小説ファンの方々の10分の1にも満たないでしょうが)


推理小説を読む貴重な時間

いわゆる単行本のサイズである小説は手軽なものです。
特に電車との相性がよく、片手でつり革につかまり、片手で小説を読めば、満員電車に乗っているのもそんなに苦ではありません。(本当にギュウギュウの満員電車だと読む事もできませんが)
埼玉に住んでいた二十代半ばの頃は、出勤やプライベートなどで電車を使う事が大変多く、どこに行くにも推理小説一冊さえあれば私は電車に乗るのが苦ではなく、逆に小説が読める貴重な時間でした。

よく電車で携帯ゲームなどを漠然とやっている人や、ただ単に電車に乗っているのを耐えしのいでいる人を見かけますが、全くもったいない事です。
たった一冊の手のひらサイズの推理小説があるだけで、突然その場は貴重な読書の有意義な時間に変わるというのに。
(まあ本当に有意義な時間の使い方とは、経済新聞を読んだり、英語や資格の勉強などをすることなのでしょうが、いつもそれでは疲れるじゃないですか)


(ところで、小説を外に持ち出す事が多い人は必ずカバーをかけましょう。私は最初のそして誰もいなくなったをMから1週間借りている間に、表紙をボロボロにしてしまいMに大変驚かれました。いや〜あの時は申し訳なかった)




読者が苦手な人はまずはゲームからでも

さて、普段から全く読書を、字を読む事をしない方もいると思います。

そうなると、いきなり小さい字が並ぶ小説を読んでも、よく聞く話で3P目で寝てしまう、ということになってしまうかもしれません。

そこで読書以外のお薦めの方法があります。

それがTVゲームです。


TVゲーム「かまいたちの夜」

そのTVゲームとは、はじめはスーパーファミコンで第1弾が発売された「かまいたちの夜」です。
かまいたちの夜はアドベンチャ−タイプのTVゲームとして、当時からかなりヒットしましたので知っている方も多いと思いますし、その後プレステなどでも復刻版が出され、4年ほど前でしょうか、ついに続編のかまいたちの夜2が発売され、そして3も今夏発売されています。
ちなみに3には1と2のメインシナリオも入っているらしいので、3さえ買えばいっぺんにプレイできるのでお得ですね。
(すみません、私はまだ3はやっていません)


さて、かまいたちの夜は2や3こそ出ていますが、やはりお薦めは「1」です。
(まあ2匹目のどじょうを狙う続編はオリジナルをなかなか超えられないものです)


そして誰もと同じく全員死ぬ

かまいたちの夜はそして誰もいなくなったと非常によく似ています。

そうです。登場人物がみんな死んでしまうのです。

まず初めに普通にプレイして、特にヒントなどをメモらずに進むと、そのうち犯人を当てる場面にいき、犯人がわからないと適当に自分なりに怪しい人物を入力する事になり、それが間違っているとストーリーはどんどん行くところまで行ってしまい、そのうち主人公(自分)も殺されてしまいます。

そうです。全員死んでしまうのです。
しかも自分が殺されているというのに、死の直前でも犯人が分からないのです。


きちんと謎を解きましょう

スーパーファミコンの時代ですから、確か自分はまだ学生でした。

自分が殺されるというバッドエンディングを迎え、私は放心しました。そう、それから数年後の二十歳の時にそして誰もいなくなったを読んだ後と同じように。

え?じゃあ・・・誰が犯人だっていうんだ・・・?

実を言うと自分はこの後、とりあえず犯人だけは分かりました。
きちんとトリックを解かない、ひらめきに近い別の形で犯人だけはわかりました。
そしてゲームの悲しい性(さが)で、トリックはわからずとも、とりあえず入力した犯人の名前だけ正しければそのまま解決編へと進み、私はそこではじめてトリックの全容を見て、ほーなるほどねーと感心したものです。


これからかまいたちの夜をやってみようという方は是非ともきちんと解いてもらいたいものです。
私はよくも考えずにとりあえず犯人の名前だけはわかってしまったものですから、その当時はあまり推理にハマりませんでした。そして二十歳の時に親友Mによりそして誰もに巡り会ったわけです。

かまいたちの夜も、非常に正統に、真っ向からヒントをプレイする側にこれでもか、と提供し、きちんとトリックを解いていけば正解に辿りつけるようになっています。
はっきりいって、シナリオを書いた我孫子武丸はこれまでも何冊もの本格推理を書いていますが、最高傑作はこのかまいたちの夜だと思います。
最高傑作だからこそゲームという製作と販売に莫大な予算のかかる大博打のシナリオに選んだのではないでしょうか。


是非とも一度挑戦を

ここに紹介したそして誰もや、かまいたちの夜を是非とも一度挑戦してみて下さい。
そしてここに書いたとおり、きちんと間違ってもいいから自分なりの解答を用意して解決編に進んで下さい。
頭のいい方は、どちらもあまりにも簡単過ぎつまらないかもしれません。
また、大部分の初心者の方は、やはり慣れない事ですから大変難し過ぎるかもしれません。

しかし慣れていけば案外簡単なものです。”定石”とも呼べる基本事項やルールもそのうちわかってきます。

とにかく考える事です。
最初のうちは解けなくてもかまいません。
とにかく考え、自分の納得いくまで考えたら解答編に進んで下さい。



駄作に注意

推理小説の中には、どんなに考えてもわかるわけがない、”フェア”でない小説もたくさんあります。
そういった駄作の場合は、考えるだけ損なのでわかりそうも無かったら次に進んでしまうのも手です。
友人Mもよく駄作があるので、あまり多くの作品を読めない元Fにはそういう寄り道はしてもらいたくない、とよくお薦めの作品を紹介してくれたりします。

私も今後、今まで読んだ中でのお薦めの作品をこのページで少しづつ紹介していければいいな〜と思っていますが、なにせもう10年以上時間が経ってしまい、ちょっと昔読んだ作品を忘れてきています。
しかし、名作というものは一生覚えているものですから、今まで読んだ中で覚えているものは名作として、紹介していければと思います。

また、私はあまり多くの作品を読んでいないので、今後はできるだけ友人Mの協力ももらおうかと思っています。(M、これを読んでいたらよろしく)





まだ「そして誰もいなくなった」を読んだ事のない方、「かまいたちの夜」をプレイしてみたことの無い方。
あなた方はなんて幸せな、羨ましい方達なんだ。
だってこれから最高の感動を得る権利をまだ持っているのだから。

それもまだまだこれからたくさんの名作達が待っているのだから、私にとっては羨まし過ぎる。




さあ、みなさん、本格推理の世界へようこそ。
(なんかデ○ズニ−みたいな言い回しだな・・・)





(2006.10.07UP)






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