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天才パサー MF 大野 敏隆

2007.11.25J2東京ヴェルディ1969
2年間の苦闘を経てJ1に復帰決定!!(ほぼ確定)



横棒


東京ヴェルディ1969 J1復帰までの2007シーズンの道のり

散々な結果となったJ2・1年目のヴェルディはその結果を踏まえ守備陣、攻撃陣に効果的な補強を十二分に行った。

特に札幌からFWフッキを、柏からMFディエゴを絶対的な戦力として補強した効果はやはり絶大だった。

その両名の中でも特に37得点という荒稼ぎをしたFWフッキは凄まじく、それがいかに凄いかはシーズン半ばに下記の記事に書いたとおり↓


◆特別記事 J2ヴェルディ・2007シーズン半ば FWフッキという狩猟民族 (07.07.18UP)


しかし、これほどの絶対的な武器があっても、それでもシーズン序盤で7連敗するなど、決してヴェルディの昇格への道は平坦なものではなかった。
上記の特別記事のところでも書いたとおり、各チームのフッキ、ディエゴへの包囲網は俄然強まり、そして守備の脆さが露呈した結果だった。

そこで監督ラモスは3バックという本来の自分の信念ではあり得ないシステムを採用し、守備の立て直しを図り、一気に巻き返した。
やはり攻撃面では常にフッキ、ディエゴという絶対的なアドバンテージがあるだけに、守備で穴さえ空けなければそうは負けはしない。

そうして後半戦の第1戦で上記の特別記事でも書いたとおり、昇格争いの目下のライバル仙台との直接対決をフッキの圧倒的な個人技で4−1という圧勝でクリアしてしまったところまでが前回の記事。



ここからが今回の記事のはじまりとなる。




4−2−3−1に固定のヴェルディ

3バックを敷きチームは安定、キャプテン大野も実績豊富なベテラン名波から実力でレギュラーの座を勝ち取り、同等の能力を持つ湘南からの補強MF佐藤ユースケとの交互のボランチ起用までが前回までの記事だった。


しかし、やはり3バックはブラジル人のラモスにとってはやはり違和感のあるものだったらしい。

更にフッキ、ディエゴが活きるシステムを模索したラモスは結果的に以下のような布陣に辿り着く。

9フッキ

16飯尾 10ディエゴ 20廣山

11大野 6菅原

22服部           18海本
14富澤 17土屋

21高木


FW16飯尾のところはMF31シウバが就いたりもするが、ほぼ第4クールはこのスタメンが固定される。

それまでは毎回のようにメンバーを細かに入れ替えてきたラモスだが、ようやく1年と半年を経てヴェルディのメンバー、スタイルというものを確立できたわけだ。


このシステムの説明を若干すると、まず守備陣はやはりブラジル流の4バック、そして2(ドイス)ボランチ。
ボランチの中では特にMF6菅原がアンカーとなり常にリスクマネージメントに努める。
その分キャプテンMF11大野は左サイドの守備もケアしながら時にはサイド深くまで切れ込みフッキ、ディエゴにマークが集まってもDF陣の混乱を誘う。

このシステムはザスパもシーズン半ばからずっと固定したやり方であり、この4バックを採用する中で特に重要なのは両サイドバックの高いポジション取り、攻撃参加であり、DF22服部、DF18海本は十分にその役割を担うのに必要な能力を持っていた。


残る前線の4人に目を向けると、やはり中心はワントップに据えられたフッキ、そしてその0.5列後方に位置するディエゴの2人、そしてそこにマークを集中させようにも、その周囲をクレバーに、そして切れ味するどくゴールを執拗に狙うFW20廣山とFW16飯尾、またはMF31シウバがいる。

基本的にこの廣山や飯尾らはあまりポジションを限定せずに軌道衛星のごとく変幻自在にポジションを変えるため、どうしてもフッキ、ディエゴをマークせざるを得ない相手DF陣にとっては常にやっかいな存在となる。

そしてそこにマークが一瞬でも移ろうものなら、フッキ、ディエゴが間隙を突いてあっさりとゴールを叩き込む。

まさにフッキ、ディエゴというストロングポイントを最大限活かせるシステムだ。


結局、いろいろと試行錯誤した結果のこのシステムの確立により、シーズン終盤は安定した戦いが出来るようになった。



シーズン当初、名波という大きな壁

さて、このページはあくまで前商出身の我らが大野のページであるわけで、今シーズンの大野の活躍についても改めておさらいしておきたい。

(再度話が前後、重複してしまっている点はご了承ください)


シーズン当初、大野はあまりに厳しいポジション争いに巻き込まれた。

なんといってもかの有名な左足のマジシャンMF7名波というかつての日本代表の中盤の支柱にして、セリエAも経験しているこの偉大なベテランの存在は大野にとって余りにも大きな障害に見えた。
誰もがJ2というカテゴリーにおいての名波の活躍を信じ、当然実績のある選手を好むラモスは名波を軸としたチーム作りを初めは目指したはずだ。


しかし、やはりピークを過ぎた名波はその運動量に陰りが見えた。
今やチームの骨格としてのボランチの運動量はチームにとって必要不可欠であり、特にセンターバック陣がそれほど強靱ではなく、またMF6菅原もまだアンカーとして定着していなかったヴェルディというチームではボランチのところにも守備の負担をかなり要求される。
ボランチの相棒がゼ・ルイスという、これまた球出し重視のブラジル人だったことがまたいけなかった。

名波はその守備の負担にも追われたのか、シーズンを追うごとにプレーは鈍り、セントラルMFとしての役割である安定したボールのキープ、そこからのロングボールでのゲームの組立といった本業にも影響を与えた。


そうした名波の不振もあり、また名波のコンディションに何らかのトラブルがあったのか、前半戦も終わりを迎える頃名波は戦力から外れた。


大野、ユースケの併用

シーズン序盤に7連敗を喫したラモスヴェルディは名波に見切りを付け、代わりの戦力としてはやはりキャプテンMF11大野とMF13佐藤ユースケに白羽の矢が立つこととなる。

佐藤ユースケの能力の高さはこれまで2年間J2湘南でのキャプテンとしての活躍を観ていれば瞭然な事であり、その左足でのテクニックは大野の右足と同等。
湘南時代も散々守備にも貢献し、常にセントラルMFとして湘南を鼓舞し続けてきた。大野もユースケも運動量と守備力が計算できるという利点もある。

そんな実績もあってか、第2クール付近は大野よりもユースケの方が優先されて起用された。
おそらく互いのコンディションの差などの要素もあったのだろう。


しかしじわじわとその起用が大野との併用となり、シーズン中盤はほぼ大野とユースケが交替交代といった起用方に変化していった。
どちらかがスタメンならば、どちらかはベンチに座り、そしてほぼ後半はその2人が入れ替わるという、2人で1つのポジションを共有した。

この起用方法は夏場の連戦を乗り越えるのに効果的だった。

2人とも試合勘が鈍らないままコンディションを維持し、安定して力を発揮することでチームの心臓たるこのセントラルMFのポジションを高いレベルで2人でカバーした。

これほどの贅沢な起用方法ができるのも、やはりヴェルディというチームの恐るべき選手層の厚さならでは。

他のJ2チームからすれば、名波ほどの選手をまずは切り捨て、大野とユースケという、他のJ2チームなら間違いなくチームの支柱となるべき選手を半々で起用するなどという贅沢は考えられない。


大野はじめ、メンバーが固まる

そんな中、チームはもう一つのボランチの枠にMF6菅原という、まずはクレバーな守備力として絶対的に計算できるアンカーを据えることで、相棒の大野やユースケはおよそ試合時間の半分だけフルにピッチを走り回り、攻守に厚みをもたせる。

それまでチームの支柱として据えてきたMFゼ・ルイスは母国チームサンパウロに移籍となり、代わって入るは攻撃的なブラジル人MFシウバ。
守備陣を日本人で固める事で連携は強まり、そして前線ではシウバも加わったブラジルトリオが相手に脅威を与える。
攻撃の面でも陰で非常にクレバーなポジションどりで常にゴールを狙うシャドーストライカーのFW20廣山も、今シーズンは特筆すべき素晴らしい活躍をした。
後にシウバをも押し出すほどの好調さをアピールしはじめたFW16飯尾の存在も攻撃陣に厚みをもたせ、その他長身で決定力のあるFW船越なども出番は少ないながらも常に役目を果たした。
やはりここでもヴェルディの選手層の厚さは驚異的だった。
このHPでも何度も”サブメンバーだけでJ2優勝を十分狙える”と私は称した。
はっきりいってフッキ、ディエゴ以外はレギュラーとサブに差は無かった。


そんな厚い選手層の中からシーズンを通して徐々に攻守共にメンバーが固まり、そして第4クールの時点で生き残ったのが前述したメンバーだった。

大野は辛抱強く攻守の裏方に徹し安定したプレーを見せ続ける事で、元来キャプテンに選任されるほどのラモス監督の信望をより一層強め、ついにはユースケとのレギュラー争いに勝利し、秋場に入る頃にはスタメンの座をがっちり確保。

ヴェルディはいよいよチームの形をしっかりと固定し、かくしてラモス監督はようやく1年半年の紆余曲折を経て本来のヴェルディの形を見い出せたわけだ。


ついにヴェルディに一体感が備わる

昨年からヴェルディの欠点はというと、やはり猫の目のように日替わりする選手達の間の連携不足であるように思われた。

個々のレベルは優れるものの、それが全く連動してこない。
常に攻撃は単発に終わり、連動していないチームの中では例えFWフッキといえどもザスパDF陣が完璧に抑えこんだ試合もあった。(第2クールでの対戦)


それが、今シーズンのヴェルディは日を追うごとに連携が増し、連動性がついてきたと思う。
やはり7連敗した時のラモス監督の解任騒ぎが一つのきっかけだったのだろう。

最下位水戸に1−5という大敗を喫し、誰の目からみても監督解任は明らかであったゴールデンウィークでの京都でのアウェイで誰も予想できなかった4−1という圧勝を成し遂げてしまい、大筋で決まっていたはずのラモス解任を一転して白紙に戻してしまった。

今思えばあの京都戦が全てのターニングポイントだっただろう。

その京都戦でハットトリックしたFWフッキはその後シーズンを通して好調をキープし、驚異的な得点数を荒稼ぎすることとなった。

あの7連敗、そして監督解任という危機感がチームを一つにまとめ、それまで欠如していたチームとしての一体感を取り戻していった。


フッキ、ディエゴを扱えたラモス

その中でも、やはり同じブラジル人であるフッキやディエゴがラモスに忠誠を誓った事が大きかったのではないだろうか。

どんなに驚異的な個人技を持とうにも、やはりモチベーション、運動量がプラスされなければそんなに怖いものではない。
マークも容易く、それ故に先程例に挙げた第2クールでのザスパは油断しきっていたヴェルディ相手にあと一歩で勝利というところまでいったドローを演じた。


そのザスパ戦こそ油断をみせてしまったフッキ達だが、それ以外ではほぼ安定して精神的に切れる事もなくチームのためラモス監督のために、常に貪欲にゴールを狙い続け、相手チームにとって常に最大の脅威であり続けた。
札幌時代はあまりのカードの多さからほぼ半分の試合は欠場していた印象のある問題児フッキではあったが、ヴェルディに移籍してからはそんな無駄なカードが激減した。

やはりここからも前のシーズン半ばのページでも述べたとおり、ラモス監督やディエゴなどのブラジル人をはじめ、菅原や廣山、はたまた他のコーチ陣、スタッフなど、古くからブラジル一色に染まってきたヴェルディならではのポルトガル語のチーム内での流通がフッキにとって非常に良い方向に働き、札幌でのあれほどの”むらっ気”が劇的に改善されたのではと容易に推測できる。



どんなに優秀な選手ばかりを集めても、結局はモチベーションなり、チームとしての統一感が無ければ何にもならない。
昨年の失敗から今年の昇格にかけて、ラモスヴェルディは非常に明確に、このモチベーションの重要さを証明した。


そして昇格へ、J1というステージへ

そして全12チームとなんと4回も戦わなければいけないという、長い長いJ2の48戦のうち47戦を消化した時点で、ヴェルディはFWフッキが出場停止というピンチも代替えで素晴らしい働きをしたFW船越らの活躍で愛媛に勝利した事によりほぼ昇格が確定となった。
(3位と12点の得失点差があり、勝敗うんぬんよりもよっぽどの得点と失点が重ならない限り2位以上はほぼ確定)


昨年のヴェルディをみる限り、これでは昇格などほど遠い、といった評価だったヴェルディだが、フッキ、ディエゴというJ1でもトップクラスの最強の補強をし、そしてそのストロングポイントを最大限に活かす事でチームとしても一体感をもたせ、勝てるチームとなっていった。


さて、少々気が早いかもしれないが、どうしても来年のヴェルディのJ1での戦いぶりについて思慮を巡らせてしまう。

もともとJ1でも十分通用する選手が揃うだけに、またしても下手に選手を補強してもせっかくこの1年間で築き上げてきたチームとしての一体感が崩れてしまう可能性はある。

昇格したチームが、あくまでもJ2でのチームをベースとするか、大量補強をしJ1で戦えるチームに変身すべきかは常につきまとう課題であり、それぞれに賛否両論ある。


私としては、やはりここまでの選手が揃っているのだから、ベースは変えるべきではないと思う。

補強すべきポジションは?

ただ、選手層が厚いとここまで評してきたヴェルディにも明確な穴がある。

まず誰の目からみても明らかな両サイドバックのバックアップ人材の欠如。

ベテランDF22服部とDF18海本がシーズンを通して安定して元気にサイドでのアップダウンを繰り返せるかは非常に疑問だ。
是非とも若手で突破力があり、もちろん運動量に申し分の無い選手を揃えておくべきだろう。
できればレッズに移籍してしまっている左サイドバックの相馬をもう一度呼び戻せればベストだ。
横浜FCなどを彷徨っているかつてのヴェルディの”ハート”山田や三浦アツは・・・やはり運動量が何より重要なサイドのプレーヤーとしては年齢がネックであり、新たに呼び戻すのはリスクが伴う。


また、サイドよりもむしろ重要なのは確固たる屈強なセンターバック陣の補強。

はっきりいって今のセンターバック陣ではフィジカル、高さがあまりに足りない。
177cmの土屋ではJ1では通用しない。
大宮での右サイドバックはある程度の成果があったが・・・
今後J1で通用するとしたら、萩村か一柳くらいではないだろうか。
他には富澤、戸川ね〜・・・いずれにしても心許ない。

明らかに今シーズンのヴェルディの一番の穴はセンターバックのフィジカル不足だった。
どんなに強いチームでも、どうしても押し込められる時はある。そんなチームの一番のピンチの際には、結局はセンターバックがいかにそこをはね除けるかが重要となる。
どのチームも、まずはセンターバックが根幹となるのはあまりにも常識だ。

ヴェルディはそのはね除ける能力に乏しいため、劣勢になることがしばしば見受けられる。
J2レベルではそれでもどうにかごましてこれたかもしれないが、例えばレッズのワシントンのような、世界レベルのフィジカルを持ったFWをJ1チームはぶつけてくる。

絶対にセンターバックでの確固たる補強が不可欠だ。
(ちなみにこれは今のレッズにも言える事だが)


フッキ、ディエゴを来年もキープできたとしたら、もう1つの外人枠はこのセンターバックに使うべきだ。

できれば185cmを越える屈強なセンターバックが欲しい。
東欧あたりから選別するのが一番いいと思うが、何せヴェルディなのでやはりブラジル人となるだろうか。
例えばガンバのシジクレイのような。



ビッグチームが狙うフッキ、ディエゴ

さて、補強、来年の体制についてどうしても避けて通れない要素は、やはりフッキ、ディエゴの両名が来年もヴェルディに留まるかだ。

最も気になるチームとしては絶対的なエース、点取り屋であったマグノアウベスとの契約を打ち切り、これ以上ライバルレッズに水をあけられたくないガンバ、そしてワシントン、ポンテに次ぐ外国人枠を一つ余らせ、来年もJリーグとアジアのW連覇を狙いたいレッズ。
(※Jリーグの優勝については今週末最終決戦)

間違いなくこの2大ビッグクラブがフッキ、ディエゴに注目していないはずはない。

また、かつての王者としての風格、強さを取り戻しつつあり、いよいよ王権の復興に乗り出すであろう鹿島、攻撃陣の整備には毎年ことさら力を入れる川崎、未だにFW陣が固定しているとはいえない清水などの上位陣は皆注目しているところだろう。


いずれのチームもJリーグ制覇、アジア制覇を狙えるビッグクラブであり、ようやくJ1に復帰できたばかりのまだまだ弱小のヴェルディにこのまま踏みとどまり”J1残留”という後ろ向きな目標のために四苦八苦するべきか、今ピークにある己の能力を、ビッグタイトルに結びつけるためにそれらのビッグクラブへ移籍するべきか。

こういった傑出したタレントには必ずこういった自分自身にとってもクラブにとっても悩ましい問題が付きまとう。
もちろん各クラブはそれなりの大金を用意するわけだ。


最大の”補強”はフッキ、ディエゴの流出阻止

ヴェルディは果たしてこれらビッグクラブからの強烈なプレッシャーを払いのけ、来季以降のフッキ、ディエゴの残留に成功できるか。

もし残留に失敗した場合は、どれほどの大金を得たとしてもそれ以上の補強を行う事はかなり難しい。
そう、たとえ現在ヨーロッパなどで活躍するバリバリの現役ストライカーを連れてきたとしても、果たして今シーズンのフッキ、ディエゴ以上の活躍を、チームとして機能する活躍をできるかといえば、それは失敗する可能性が高い。
最近の事例でいえば、W杯で一躍人気となったトルコの王子、FWイルハンを獲得し、そしてほとんど使える事無くチームを去られた神戸を思い出す。

なおかつ最近のヴェルディときたら独自に連れてくる補強は失敗ばかり。
新たなブラジル人補強が成功する可能性は低い。
少なくともこれだけの多大な成果を挙げたフッキ、ディエゴ以上の成功の可能性はまず無い。

どんなに金を積まれようとも、それ以上の金をもってなんとしてでも残留させなければいけない戦力がフッキとディエゴだ。

今のヴェルディにとってフッキとディエゴを欠いた戦術は想像できない。
それこそJ1残留に早くも黄色信号が灯る。


フッキ、ディエゴの凄さとは?

そういえば、とここまで書いてきて、今更ではあるがなぜフッキ、ディエゴというブラジル人がこれほど重要であるのか、あらためて整理しておく必要性を感じた。
J2を見てきた人ならあまりに周知の事実であることだが、J2の試合は一般では放送されないし、自分が思うほどフッキ、ディエゴというブラジル人の凄さを世間一般は知らないはずだと思うからだ。


前のシーズン半ばの記事でも強豪仙台相手にあっさりと個人技のみでハットトリックしてしまったフッキの活躍ぶりは書いたとおりだが、ただ単に点を取るというだけならばブラジル人によくいるタイプだ。

もちろん点取り屋であるということは何よりも重要であるが、フッキ、ディエゴの強みはそれを裏付けする能力の高さにある。

私があまり好みではないタイプのプレーヤーとして、テクニック偏重タイプのブラジル人がいる。

いわゆる昔ながらの”トップ下”タイプで、卓越したテクニックでボールをキープし、そして長短の球出しをする。

ブラジル人は元来こうしたボールを持つことでリズムを作り調子を上げていく事がまずはサッカーをやる上での幼少の頃からのベースとなっているので、こういったタイプのプレーヤーがほとんどだ。
ブラジル人の補強というと、すぐにこういったタイプを連想し、マイナスなイメージを私は反射的に抱いてしまう。


いわゆるトップ下タイプの功罪

しかし、現代のサッカーにおいてはもはやのったりとボールをキープして2トップにラストパスを供給しているだけではとても通用しなくなっている。

守備はより組織的に激しくなり、四方八方からプレッシャーがくる。
1秒でも長くボールを保持しようものならあっという間に3人以上に囲まれあっさりとボールをとられ、そのまま速攻につなげられてしまう。

また、現代のサッカーにおいては、まずこのトップ下の選手こそがプレスの第一先導者となって献身的に守備にいかなければいけない。

トップ下の選手がプレスにいかないチームはたいてい弱い。
逆にいえばトップ下の選手がボールをカットすることができれば、それは最大の得点のチャンスとなる。
ボールを奪ってからコンマ数秒で決定的なラストパスにつながるからだ。


例えばワーストの例を挙げるなら、かつて柏に在住していた大野からポジションを奪っていたMFクレーベルだろう。

あれは典型的な最悪なタイプのブラジル人だった。

プレーぶりはまさにテクニック偏重そのもの、守備の際には走る事を嫌い、目の前でボールを回されても立っているだけ。
守備は他の選手の仕事だとまざまざと決めつけたその態度からは勝つという気迫が一切感じられない。

そりゃ時には凄いキックや得点を決める時もあり、それがレギュラーの座についていた要因であったが、結局はそれが原因で柏は低迷に陥りJ2降格となった。


テクニック、スピード、フィジカルを持ち合わせるということ

その点、フッキ、ディエゴは違う。

常に相手ゴールを狙う事のみに集中し、そのためならば相手のボールを追う事を少しも厭わない。

前線から激しいプレッシャーをかけ、ちょっとでも相手のパスが逸れようものなら圧倒的なスピードとフィジカルでこれをカットし、途端に自分のボールとしてホールドしてしまう。

いったんこの2人にボールを持たれたらアウトで、しかもそれがDFラインで奪われようものなら、確実に決定的なフィニッシュまで持って行かれてしまう。


そう、この2人はテクニックももちろん卓越しているが、それ以上にまずスピードとフィジカルがある。

これだけのテクニック、スピード、フィジカルを持ち合わせているというのは非常に希有で貴重な事であるが、恐るべき事に今年のヴェルディにはその選手が2人いた。

常々言ってきたとおり、フッキ、ディエゴがJ2というカテゴリーで同じチームに在することはあまりに反則だ、といってきた要因がこれだ。


存在自体が数的優位

テクニック、スピード、フィジカルを持ち合わせるという事はどれだけ凄い事か。
つまり多少のDFの枚数相手なら1人で突破し、ゴールまで決める事が出来てしまうということ、しかもそれが2人いるとなれば相手DFにとっては何人枚数を揃えようとも常に脅威となってしまうという事だ。

フッキ、ディエゴが2人前線に張っているならば、その対応には明らかに4人必要だ。
3人ではその間をズバッと抜かれてしまう。

相手は2人がいる限り容易に攻めに上がっていくことができない。
つまりヴェルディはこの2人がいることで常に数的優位に立つことができる。



・・・はっきり言って人種が違う。

この2人は明らかに狩猟民族であり、全て戦うためだけにその身体は作られている。
所詮農耕民族である日本人ではこのタイプに対してはどうにも対応できない時はある。

フッキ、ディエゴがいるということがどれだけチームにとってアドバンテージとなるか。
これは決してJ2だったからではない。
J1でも全く同じ事が言え、おそらくレッズDF陣でもこの2人のピーク時の攻撃はそうそう止められない。

私はこの2人を残留させるという、最大の”補強”に成功したヴェルディがレッズやアントラーズと戦うのが楽しみでならない。
そのためにもヴェルディは絶対にこの”補強”に成功させる必要がある。




大野のJ1復帰は如何に?

さて、これにて大野は晴れてJ1の舞台に復帰となる。

これを書いている11月下旬現在、どのチームも来季の体制に向け契約継続か否かの非常に微妙な時期であり確かな事は言えないが、J2での2年間、キャプテンとして奮闘、活躍してきた大野がJ1昇格と同時に解雇ということはまず考えにくい。

元来、キープ力、キック力に優れる大野は、サイドやボランチなどを経験することで運動量、守備力といったところも備わり理想的なセントラルMFとして成長してきている。


一時、J2あたりに埋没しそうになった低迷期もあったが、ここにきてまた輝きを取り戻しつつある大野。

J1で低迷しいったんは底辺を味わい、その後J2で揉まれ一皮剥けた大野が今一度J1の舞台で光り輝き、ヴェルディの中心で心臓となってJ1残留に、そして上位への進出の原動力となることに期待したい。



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(07.11.28UP)



天使



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