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天才パサー MF 大野 敏隆

J2 2007シーズン半ば
〜FWフッキという狩猟民族〜

2007.7.11J2第27節ヴェルディVSベガルタ仙台
4−1(アウェイ)



横棒


東京ヴェルディ1969のJ2での2006シーズンから2007シーズン半ば現在まで

さて、この埼玉生まれの群馬育ち天才パサー大野のページの更新も1年半ぶりとなるため、その間の状況を一度整理したい。

J2に落ちたJ2初年度のヴェルディはやはり散々たるものだった。
このページの以前の記事↓

◆特別記事 2006ヴェルディに移籍 そしてキャプテンに!! (06.01.28UP)

で書いたとおり、FWバジーリオ、MFアナイウソン、DFデジマールという小兵なブラジル人の中途半端な助っ人は全くといっていいほど機能せず、そしてJ2に落ちたチームがアジアチャンピオンズリーグに強行出場するという愚策も犯す。

ただでさえ年間48試合ものサッカーの世界ではあり得ないほどの量の試合をこなさなければいけない強行スケジュールのJ2において、その間を割って入ってアジアでも戦うなどまさに愚の骨頂と書いたわけだが、しかし同じリーグとなったインドネシアとタイのチームが揃って失格となったため、なんと韓国の蔚山とたった2試合での一騎打ちとなり、勝てばトーナメント進出という千載一遇のチャンスとなった。

しかし結果はホーム&アウェイを戦い2敗と完全に力負け。

やはりそう甘くは無かった。

ということで、結果的に2戦しかしなかったため、あまりACLの影響は無かったものの、チーム自体はシーズンを追うごとに低迷していく。


一定しないラモス采配

低迷の理由は明らかではなかっただろうか。
とにかくラモス監督の采配が一定しない。
試合内容が悪いと怒っては1試合毎に選手を入れ替え、特にチームの根幹であるセンターバック、ボランチのボックスを固定できなかったのが大きい。

先に述べたとおり助っ人外人が全くの足手まといで使えず、シーズン途中まで攻守に渡り活躍していたキャプテン大野も負傷離脱。
結果的にシーズン途中に選手をビシバシ補強した。
そんな行き当たりばったりの選手運営の中、川崎から補強した司令塔マルクスは一定の効果はあったものの、結局それ以降マルクス頼みとなり、そのマルクスへのマークがきつくなると結局攻撃が機能しなくなる。

ザスパファンの自分から一歩引いた目で見る分には、途中に補強した左サイドバックの石川や、福岡からのセンターバック長野などは、もっと絶対固定して守備を安定させればいいと思ったが、決して固定することはせずに毎試合メンバーは入れ替わりをした。

たった1試合だけで優劣が判断され、それでいて固定されるメンバーも定まらないまま、シーズンはどんどん過ぎていく。

まったくもって、ラモス監督の監督としての技量がよく分かる選手起用だった。


2007シーズン、本気の補強へ

結果としてJ2初年度は21勝19敗8分で7位という、到底昇格を狙うチームとは思えない芳しくない戦績で終了。

しかしヴェルディという組織の体質上、ラモス監督をそうは簡単に解任させられず、2年目以降の体制の続行を決定させると、もはや監督云々ではない、絶対的な戦力の増強に乗り出す。

とにかく集めた選手は即戦力ばかり。
失敗だらけの外国人助っ人は、既にJ2で大きな実績を積み、十二分に計算できる札幌のFWフッキ、柏の司令塔のMFディエゴを補強。

そして元日本代表のMF名波やMF服部のベテランをダブルでジュビロから獲得、その他にも湘南の攻守の支柱であったMF佐藤ユースケや横浜FCからMF吉武など、攻守に渡って計算のできる中堅どころも揃え、結果として2チームに分裂しても十分にどちらもJ1昇格を狙えるほどの圧倒的な戦力を揃えた。


2007シーズン悪夢の7連敗

その圧倒的な戦力を背景に、2007シーズンは引き分けを挟んでの4連勝などの快進撃でスタートさせた。
その時の強さたるや、そのままJ1に行ってもレッズ相手にも十分勝てるのではないかという強さ。
やはりFWフッキ、MFディエゴという、本来J2にいるべきではない反則級の戦力の絶対的な差は明らか。
都合2人づつのマークでも付けなければマークしきれないこれらの絶対的な戦力を擁する事で、ヴェルディは常に1人、2人多いのと同じ状況で試合を有利に進める事ができる。


しかし、そんな特異な攻撃力で全てを圧倒する戦い方はそう長くは続かなかった。

当然の事ながら各チーム共にフッキ、ディエゴ封じに策を練り、そこを封じられるようになると、今度は逆に守備の脆さが露呈しはじめる。

1試合2失点以上の失点が多くなり、4/7の福岡戦(1−2)での初めての敗戦にはじまり、5/3の水戸戦(1−5)まで約1ヶ月の間に7連敗というチーム史上ワースト記録を作ってしまった。


3バックの成功により守備が安定し上昇気流へ

昇格を狙うチームとして7連敗などあり得ない。
本来は5月初めの時点で独走していなければいけない戦力をもってして、順位はあっという間に下降を辿り、一時はザスパよりも順位を落とした。

当然の事ながらラモス監督の去就問題に発展し、解任は当然かと思われたが、しかしラモスというチームの顔を、やはりそうは簡単にクビにするわけにはいかなかった。

監督のクビがかかった京都戦に4−1と大勝すると一気に波に乗り、7/11の第27節終了時点で9勝2分2敗という好成績で7連敗を挽回し、再び昇格争いにしっかり食い込んでいる。


この好調の一番の要因としては、本来はブラジル人であるラモス監督や、これまでのヴェルディのチームカラーとして当然であった4−4−2を変え、3バックを採用した事にある。

土屋を怪我で欠いてもなおも萩村、戸川、一柳、富澤らの豊富なセンターバック陣を擁するヴェルディは、それらのうちから3人を最終ラインに並べ、まずゴール前での競り負けを皆無にする。
そして、その前でアンカー菅原がしっかりバイタルエリアを抑える事で、相手の攻撃はシュートまでなかなか持っていけない。


菅原というアンカー、そして大野、ユースケの運動量

シーズン最初は名波、ゼ・ルイスらで展開力、キープ力重視のブラジル流らしい2ボランチでいっていたわけだが、やはりアンカーという重要性は例外ではなかったという事だ。
(このアンカーの重要性については常々このHPでも訴えているとおり、ここをおろそかにしたチームはザスパのように必ず下降線を辿る。だからMF松下をもっとザスパは絶対固定すべきだ)


そして、菅原との相棒はもはや走れないベテラン名波ではなく、キャプテン大野か、”右”の大野と同等の能力を持つ”左”の佐藤ユースケ。
どちらともテクニックが高く、右と左での利き足での精度は随一。
その上どちらとも運動量が多いため、名波が入るよりも明らかにこの2人が入る方がチームとして機能する。
ということで、この文を書いている現在7月半ばの時点では、大野とユースケが夏場の連戦を交互に出場することでそのパフォーマンスを維持しながら、攻守に渡って活躍している。






3位仙台との昇格天王山

さて、ようやく話は戻ること2007.7.11のJ2第27節の第3クール、つまり後半戦の第1戦目。
この日のヴェルディの相手は3位の昇格圏内(3位だと入れ替え戦)にいる仙台。
まさに息を吹き返してきたヴェルディにとっては、昇格の目下のライバルである仙台の差を詰め寄る最大のチャンス。
まさに今のJ2はどこの試合をみても昇格争い天王山で、どれを観ればいいものやら困る。

ロペスという武器を持ちながらチーム全体での鋭い攻めを持ち、3位を快走する仙台と3バックにしてから守備が安定し、返って前線の強力なタレントが活きはじめたヴェルディの好調同士の戦い。
過去2試合とも肉薄の好ゲームが続いたこのカード、この試合も好ゲームが予想された。


チームトータルの攻撃の仙台とフッキのヴェルディ

さて、ヴェルディの布陣はやはり3−5−2、キャプテン大野もこの日は先発。

19船越 9フッキ

10ディエゴ
22服部           18海本
11大野 6菅原

14富沢 2萩村 4戸川

21高木


対する仙台はセンターバックに本来ボランチの千葉が入る。
その他はやはりMFロぺスが絶対的な攻撃の中心。
2トップの能力も高い。

18萬代 13中島

8ロぺス     24永井弟
5ジュニウソン 27富田

26田ノ上        25菅井
7千葉 2木谷

1小針

さて試合の内容については・・・確かに内容は好ゲームだったと思う。
平日だというのに、相変わらず1万2千を超える大観衆を集客するホーム仙台は、シュートに積極的な中島、萬代の2トップを中心にどんどんパスを前線に回し攻め立てる。

しかし、先に述べた3バック+アンカー菅原とキャプテン大野の2ボランチはそれにしっかり対処し、なかなかゴールを割らせない。

そして返す刀のヴェルディの攻撃といえば・・・

とにかくFWフッキ!

フッキ!

フッキ!

何でも無いDFラインからのクリアボールが、センター付近のサイド際でなんとなくフッキの周辺に飛ぶと、それを2人ほどのDFを相手に強引にフッキがキープ。

そしてサイドで2人のマークが付くという、普通ならノーチャンスのガッチガチの状況から、一瞬の縦へのスピードで、強引に前に出した球にこれまた強引に追いついての突破。

そんなフッキの強引な起点の間に、もう1人のFW船越は前線へ、ディエゴや両サイド、時には大野らが次々と前線に飛び込み、いつの間にやらヴェルディのチャンスへと結び付けてしまう。

こんな、たった1人の傑出したタレントの力のみで攻撃が成り立っていいいのか、非常に疑問ではあるが、実際問題成り立ってしまっている。

それも決して守備力が弱いわけではない、あの3位の仙台相手にだ!!!????


FWフッキのハットトリック

そんなフッキの力が終始120%発揮されて続けたこの試合、得点シーンは以下のとおり。

●前半20分ヴェルディ
FW船越のポストから左にはたき、左サイドの服部がサイドからクロス。
ポストプレーからゴール前に上がっていた船越がニアで囮となり、その後ろでフッキがボレーで合わせあっさりシュート。
マークについた仙台DFも、この一連の速い攻撃からのシュートには何も出来ず。
まさにサイド攻撃のお手本のような得点。

●後半20分ヴェルディ
後半から投入された廣山が相変わらずのファーサイドでのクレバーな動きで左サイドでフリーとなると、マークが付くより早く絶妙なクロス。
これにディエゴがあっさりヘディングで決める。

●後半28分ヴェルディ
ペナルティ手前右寄の位置からFKのチャンスを得る。
キッカーのフッキは壁に難癖を付けたかと思えば、素早くタイミングをずらし左足をコンパクトに振り抜き、ゴール右隅に突き刺す。
GKも触るものの、あの位置にあの球威で打たれては止められるキーパーなどこの世にはいない。

●後半34分仙台
右サイドバック菅井がヴェルディDFの一瞬の隙をついてボールを奪うと、そのままスピードに乗って突破してそのままシュートを突き刺し、かろうじて一矢報いる。

●後半ロスタイム
まさに圧巻だったのがこのシーン。
何でもないハーフライン付近にこぼれたルーズボールが右サイドにいたフッキに渡ると、DF渡辺がまずファーストDFに付くも、いつものように強引にサイドライン際を突破。
その後ろでDF木谷がフォローに回るも、一瞬のスピードでこの渡辺と木谷の間を横にぶち抜き、そのまま左中央へ流れるとシュートを逆サイドの右隅に流し込みハットトリック完了。


先制、ダメ押し、そしてハットトリックと、まさにフッキの1人舞台ともいえる試合だった。
繰り返し言うが、ゲーム自体は好ゲームだった。
仙台はここまで結果を出してきたチーム全体での攻めをこの試合でも発揮させた。
ただ、あと一歩FW陣のゴールが遠かった。

そんな仙台を尻目に、フッキ1本の強引なヴェルディの攻撃は常に仙台を追いつめ、そしてハットトリックまでしてしまった。



3バックのベースが活きるヴェルディ

・・・そりゃ連勝もするよね。
あんな圧倒的な武器を持ちながら、3バックで守備をしっかり人数かけて出来ればね。

やはりヴェルディの3バックは効果的だ。
3バックは4バックに比べとにかく中央、センターの守りを厚くできる。
サイドバックがいないため、確かにサイドにスペースが出来やすくなるが、どんなにサイドから攻められようとも、結局はセンターで3人のセンターバックが跳ね返す事ができるので、さしてチャンスにならない。
どうも私は昔から4バックより3バックの方が好きだが、そもそも3バックの方が強いチームが出来やすいというイメージがある。(横浜FLUGELSが強くなったのも3バックになった頃から)


ボランチとしても、名波の離脱がかえってヴェルディにとっては好都合。
運動量も備えたテクニシャン・キャプテン大野とアンカー菅原のダブルボランチは常にバイタルエリアをケアし、奪ったボールを素早くキープし前線につなげる。

前線ではディエゴがしっかりキープもできるし、FWとしても船越ならば前線の広告塔として存在感を示し、廣山ならクレバーな動きで常にいやらしい所に侵入し続ける。

そしてフッキはわずかなマークのズレだけでも決定的な突破、シュートまで持っていってしまう。非常に相手にとって厄介なFWだ。


このヴェルディは強い。
間違いなく強い。

こんな単純な、シンプルな構造、戦術のチーム、最近ではそうは観られないが、それだけに強い。
この選手個々の役割がはっきりしやすいという点でも3−5−2というシステムは優れている。
試合中もそうそうパフォーマンスにブレが無く、選手個々の強さを活かしながら試合を進める事ができる。
だから長年3−5−2、もしくは3−6−1が浸透しているレッズは安定した強さをもてるのだろう。


フッキという狩猟民族

とりあえず今のヴェルディの出来は相手ごと引きずってゴールにねじ伏せる狩猟民族のフッキ次第。
このフッキをどう抑えるかがとりあえずの各チームの課題となる。

フッキがシーズンを通して怪我もせずにコンスタントにパフォーマンスを発揮できたならば、必ずやヴェルディは昇格するだろう。
このチームがJ2にいてはいけない。特にフッキをJ2に置いていてはいけない。J1のチームでもそうそうは止める事ができないだろう。

また、ちょっと早いが今シーズンオフの市場争いでこのフッキをどこのチームが獲るのかも見所だ。
最近、その決定力に陰りの見え、勝ちきれない原因となっていたFWワシントンに見切りを付け、ブラジル人エースFWの獲得に常に目を光らせるレッズがエメルソンの時のように強引に獲りに来るか。
(ワシントンとフッキの2トップなんてそれこそ反則もの。これに小野が加われば3人だけでどこのチーム相手にも十分攻撃が成立する。)

はたまた昇格したヴェルディがJ1に乗り込むための絶対的な軸として何とか残留に成功するか。

どちらにせよフッキの来年のJ1での活躍は間違いないだろう。
J1チームのサポータはあまりJ2には詳しくない方も多いだろうが、来年J1に吹き荒れるフッキ旋風にきりきり舞となることは間違いない。


フッキの強さの秘密は?

それにしても不思議なのは今シーズンのフッキの凄まじさ。
昨年までの札幌では確かにエースではあったがこれほどまでに驚異に感じた事は無かった。

単純に若者から中堅へと変わりつつある精神的な成長ゆえなのか、プレーにムラが少なくなり、昨年の札幌では諸刃の剣ともいえたイエロー、レッドの連発もない。
それがこれだけコンスタントに活躍できている一番の要因だろう。

やはりブラジルカラーの強いヴェルディに移ったがゆえか。
ラモス監督はもちろんのこと、ポルトガル語を喋れる選手もヴェルディには多い。
そんなヴェルディの環境がそうさせるのかも。
そう考えると来シーズンもフッキはヴェルディに残留した方が一番活躍できるのかもしれない。



以上、MF大野の応援ページでありながら、とりあえずフッキという特異な狩猟民族についてコメントしてみました。


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(07.07.18UP)



天使



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