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1998年12月1日 トヨタカップ
レアルマドリード−バスコ・ダ・ガマ
2−1

横棒


レアルの一時代を築いた頃のトヨタカップ

なぜか私に贈られた1枚のDVD、それが1998年のトヨタカップのものだった。

1998年12月といえば、横浜FLUGELSのマリノスへの吸収合併が発表され、そしてそれがもはや止めようもない事態になった事が確定的となった頃の事。

FLUGELSは最後の聖戦となった天皇杯を戦い抜いていた裏では、当時全盛期ともいえる一時代を築き上げていたレアルマドリードが国立競技場でのトヨタカップに参戦していたわけだ。


メンバーとして、トップにはラウール、トップ下には全盛期といえるセードルフ、DFラインにはロベカルやイエロといった華々しいメンバーが名を連ね、それぞれのプレーヤーがまさに絶頂期を迎えていた頃だ。


そんな1998年トヨタカップの観戦記を2011年の今、ここに記します。




ラウール、ロベカルらが絶頂期のレアル

冒頭にも述べたとおり、当時絶対的なエースとして、スペインの情熱の象徴としてオーラさえ漂うと称されていたラウールをはじめとし、トップ下にはミランに移籍する前のセードルフ、気品漂うブラジル代表のレドンド、左サイドバックには世界最高の名を欲しいままにしたロベカル、そして世界最高のリベロと称されたイエロが構える。

それを率いるのは、名将・ヒディング。
強くないわけがない。

更にベンチには1998年ワールドカップ得点王で、日本代表を退けたクロアチア代表のFW9スーケルもいる。
正直、この頃の日本人からすれば、あのスーケルがベンチなのか??と驚く程の豪華っぷり。



11サビオ 8ミヤトビッチ
7ラウール

3ロベカル            2パヌッチ
6レドンド 10セードルフ

19サンス     5サンチス
4イエロ

1イルクナー




南米王者バスコ・ダ・ガマ

レアルマドリードに立ち向かうのは、南米王者のブラジル、バスコ。

ほとんどがブラジルの新旧代表で名を連ね、当然布陣も不動の4−4−2。

まさにブラジルらしい、ブラジルたるチームといえる。

それだけに戦術もメンバーも熟されており、トヨタカップなどはヨーロッパチャンピオンよりも、こういったブラジルのチームの方が勝つ事が多い。

また、南米代表のチームの方がトヨタカップに賭ける思いは毎年強く、この試合でも16日も前に来日して調整をしてきているとのことで、過密スケジュールの中でどうにか来日するヨーロッパチャンピンに対してコンディションでのアドバンテージもある。


9ルイゾン 7ドニゼッチ

10ラモン      8ジュニーニョ
11ナザ 5ルイジーニョ

6フェリピ          2バグネル
3オジバン 4ガウボン

1ジェルマノ



左サイドのロベカルが立ち上がりから積極的に攻撃参加

白い巨人の相性のとおり、腕にアディダスの3本ラインの入った光沢のある白いユニのレアルと、昔からデザインが固定されている、黒に斜めの白いラインがたすき掛けでかかるバスコの対戦。

この戦いはこれまで不動のブラジル代表の左サイドバックだったロベカルと、そのロベカルを制してブラジル代表の新しい左サイドバックのレギュラーの座を射止めたフェリピの、左サイドバック対決も注目される。

その中でも、やはりレアルは3バックなのでロベカルはかなり攻撃的なポジショニングで立ち上がりから積極的に攻め上がる。

更にバスコのFW7ドニゼッチはブラジル代表の選考から漏れた事で、逆に奮起して敵に対して脅威的な存在となっている。

やはりモチベーションが高いのはせっかくの晴れ舞台で意気の上がるバスコの方であり、最初のオープニングシュートはMF8ジュニーニョが放つ。


しかし、すぐさまラウールが中央に割って入ってからのペナルティ手前からの強烈なシュートはバーの上。

更にロベカルが鋭い左サイドからの攻撃からのピンポイントのクロスにニアでFW8ミヤトビッチが合わせにいくも、バスコのセンターバック陣も必死に抑える。




ロベカルの強烈な一発がオウンゴールとなりレアル先制!!

徐々にエンジンを上げていったレアルは13分、FW8ミヤトビッチが中央でドリブル突破を仕掛け、2人を抜いたところでペナルティ手前左寄りで倒されFKを得る。

これを蹴りにいくのは悪魔の左足、ロベカル・・・と思いきや、脇から蹴りにいったのはイエロの右足。
これは壁に当たり、再度セードルフがシュートを狙うもバーの右。


その直後、DF6フェリピの鋭いクロスからニアで詰められるも、レアルDF陣のマークにあいCKに。


互いにやや硬直状態かな・・・と思われた24分だった。

右サイドからセードルフの強めのキックのサイドチェンジを見事に胸でトラップした左サイドのロベカルが、少し前にボールを運んだ後に悪魔の左足を思いっきり振り抜き、この強烈な弾丸ボールがゴール前にいたMF11ナザの頭を直撃して、なんとそれが見事にゴールに突き刺さる・・・!!!


GOOAAALLLLL!!!!


おお!!!!!???

なんとゴール???

おそらくロベカルも、もっとアウトにかけて直接ゴールを狙いにいったボールだろうが、ナザもあまりの速さに首をすくめるように当てるのが精一杯で、為す術も無かった。

それにしてもなんたる威力・・・

後にも先にも、こんなに強烈なキックは滅多にお目にかからない。

まさに圧巻のゴールだった。



レアルの1点リードで前半折り返し

更に3分後、オウンゴールで苛立つMF11ナザがイエローを受けてしまい、ペナルティからまだ遠目の左寄りの位置でFK。

これにはロベカルが迷い無く直接蹴りにいき、やはり左アウトにかけた強烈なボールは壁の右を抜けてゴール左に襲いかかると、これをGKジェルマノ、ほぼ正面にもかかわらず、とにかく両手のパンチングで弾くのがやっと。
この弾丸シュートは下手に取りに行くと骨折もあり得るほど強烈。


39分にも左サイドをギリギリのタイミングで上がっていったロベカルがダイレクトに送ったセンタリングが、これまた速い。
この強烈なセンタリングをGKジェルマノ、どうにかニアではじき飛ばす。

やはりこの頃のロベカルの左足の威力は凄いな。。


41分、右サイドからMF8ジュニーニョがDFラインを抜けて決定的なセンタリングを送るも、フリーのドニゼッチの手前でDF4イエロがギリギリのクリア!
さすがはこの辺が世界最高のリベロたる堅さ。


前半終了間際、MF10ラモンが中央突破からミドルシュートを放つも、GKイルクナーに抑えられる。

前半のロスタイム1分も過ぎ、オウンゴールでのレアルの1点リードで折り返しとなる。


バスコもオウンゴール以外は狙いどおりの展開で、時折速攻からドニゼッチを中心に良い攻撃も見せてはいるが、やはりレアルの個人個人の強さも際だつ内容だった。

その中でも、やはりロベカルの左足は異次元だった。




後半、カウンターからジュニーニョのゴールで同点!!

後半開始5分、バスコの右サイドからのクロスに、ニアでFW陣が詰めるも、ギリギリにレアルDF陣もクリアしCKに逃れる。

その直後、レアルは速攻からFW8ミヤトビッチが右サイドからセンタリングを転がし、ニアでラウールが詰めて決定的なシュートも、バーのギリギリ右。

更にその直後、今度はバスコのドニゼッチがサンスをかわしてペナルティに侵入したところで、DF4イエロがさすがのカバーリングでこれを阻止。

この試合、バスコの攻撃の起点の全てであるドニゼッチが、2人のストッパーのマークに遭いながら、それをかわしてもその後ろでイエロの壁に阻まれるという、完璧なガードに遭う。


先制点も効果もあり、後半もレアルのペースに引き込まれ、DFラインがボールを奪っても、簡単に前線に縦パスを送るだけの展開が続き、これではレアルの3バックの壁をなかなか越えられない。


だがそんな中の後半11分、鉄壁の守備のレアルの中で、一瞬のパスミスがバスコの選手に当たり、すかさずバスコがショートカウンターの形で右サイドを攻め上がると、低いクロスにドニゼッチがニアで詰めるも、これはギリギリレアルもクリア。
だが、このクリアしきれないボールをペナルティ右隅で拾ったMF8ジュニーニョがさすがのコントロールでこれを柔らかくトラップして最高の位置に落とすと、右足でのアウトにかかったボールがゴール左上に落ちながら突き刺さる!!


GOOAAALLLLL!!!!


劣勢の中で、わずかな隙を突いた見事なゴール!!
ジュニーニョの、ブラジルらしいアウトにかかった技ありのゴールだった。


これで同点となり、圧されっぱなしだったバスコも息が吹きかえる。



バスコ、度重なるチャンスをモノに出来ず

19分、バスコの左CKからのゴール前でのヘディングシュートは、GKがキャッチしそこねたボールがラインを割ったかに見えたが、ゴールの判定はならず。

その後は互いに遠目からのシュートの応酬となるも、なかなかゴール前での決定機とはいかず。


25分、左サイドから中央に絞ったDF6フェリピがマークを一瞬スピードでかわしてのシュートはギリギリゴール右に逸れる。


1点返され圧される場面も多くなったレアルだが、その中で奮起するのはMF10セードルフ。
守備に攻撃に相当な運動量をみせ、27分のドニゼッチの抜け出しに対しても素早くカバーに入ってチームを救う。
セードルフは、この時代の10番としては珍しく完全なダイナモタイプで、チームにとって欠かせない存在となっている。

29分、右サイドを抜け出したドニゼッチに対し、DF19サンスが後ろからタックルにいってしまい、イエロー。

このFKに対し、ニアでドニゼッチがヘディングにいくが、惜しくもバーの右。

その直後には今度はFW9ルイゾンが激しいタックルでイエローをもらい、両チーム合わせて6枚ものイエローが出ており、この試合の激しさを物語る。


31分、左サイドを抜け出したロベカルからのクロスに、ゴールファーでサビオの決定的なヘディングはGKジェルマノがファインセーブでこれをはじく。


その直後、今度はバスコのDF6フェリペが左サイドでボールを受け、ペナルティライン手前でのフェイントで2人のマークを振り切ると、完全な決定機となって満を持してシュートにいくもバーのギリギリ右!!

これはちょっと狙い過ぎた感があった。
互いに激しいゴール前での攻防となり、1点を争う試合もヒートアップ。


ラウール圧巻の決勝ゴール!!!!

ここでバスコは1人目の交代、DF2バグネルに代えてDF31ビトールを投入。

なかなか劣勢の中でも、まだスーケルを出さないのか??と日本人の誰もが焦れる中の38分、MF10セードルフの送った縦パス1本に見事なトラップでこれを吸い付くように足元に入れたFW7ラウールが、まずはDF4ガウボンをシュートフェイントで右にかわし、更にマークにきたDFも右にスライドしてかわしてからのシュートを冷静にゴールに決める!!


GOOAAALLLLL!!!!


こ、、、これが世界か!!!!
まさに世界レベルのプレーとはこういう事だと言わんばかりの圧巻のゴール!!

後ろから来たボールに対し、あれだけきれいに足元に入れたトラップの時点で、既に勝負が合っていた。

それにしても、これが21歳の落ち着きぶりか、という程の、まさにゴールハンターらしい見事なシュートだった。


圧していただけに悔しいゴールを奪われたバスコは40分に更に選手交代、MF5ルイジーニョに代えてFW23ギレルメを入れる。

対してレアルも選手交代、FW8ミヤトビッチに代えてMF17ヤルニを入れてまずは守備を固めてくる。



そしてタイムアップ

41分、反撃に転じるバスコは左サイドからのFKからGKもかわしての折り返しからヘディングでシュートが入るも、ギリギリライン際でレアルDF陣もクリア!

まだまだ試合は分からない。

43分、バスコは足を痛めたMF10ラモンに代えてバウベルを投入。

44分、レアルはFW11サビオに代えてFW9スーケルを投入。
ようやく1998年ワールドカップ得点王がここで登場。


ロスタイムは短めの2分。

ロスタイムの間はほとんどセットプレーなどで時間を潰したレアルがボールをキープし、そしてタイムアップ。


結局、ラウールの一発が全てだったという試合となった。



名勝負の中で光った個人技

全体的には、やはり準備万端のバスコの方が優勢だった。
特に後半、同点に追いついてからは明らかに疲れの見えるレアルに対し、一方的ともいえる展開に持って行った。

だが、最後を決めたのはやはり個人技で勝るレアルであり、それの象徴だったラウールの個人技だった。

劣勢の中でも豊富な運動量と確かな技術でチームを支え、最後まで試合全体を掌握していたセードルフのパスも完璧だった。

結局はこの精度、この決定力が世界的レベルといえる。

互いのチームの良いところが出ながらも、その中で個人技が光るという、名勝負だった。






(2011.09.24UP)








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