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2012ロンドンオリンピック
日本代表U-23
〜44年ぶりのベスト4への軌跡〜

パート4 〜運命の3決・日韓戦でメダル獲得を逃す〜

横棒


下馬評覆した関塚ジャパンの44年ぶりのベスト4を追う(パート4)

44年ぶりのベスト4達成を果たしたロンドン五輪での関塚ジャパンの軌跡を追うパート4。

パート1では、メダル獲得が確実視される女子のなでしこに比べ、全く希望無しと戦前から嘆かれていた関塚ジャパンがまさかの開き直った前線からの連動したプレスと速攻を武器に初戦のスペイン戦、そして続くモロッコ戦と勝利し、最後はホンジュラス戦で引き分けて堂々の予選リーグ1位通過を果たしたところまで。


続くパート2では決勝トーナメントでの初戦となった準々決勝、フィジカルに勝るエジプト相手に、清武のスピードとプレス、そして奪ってすぐの正確な前線へのパスに永井がスピードで追いつき華麗に点を決めた事で準決勝に進出を決めたところまで。


そしてパート3では、これで44年ぶりのベスト4進出は決定した日本、あとは44年ぶりのメダル獲得確定まであと一勝に迫った準決勝メキシコ戦の模様を書いてきたが、その試合ではメキシコの組織的な巧みな守備にこれまで日本を支えてきた前線からの素早いリズムとペースを奪われ逆転負けで決勝進出を逃したところまでを書いてきた。



最終回となるこのパート4では、44年ぶりの銅メダル獲得を賭けた3位決定戦の模様で締めくくりとしたいが、その相手はなんと韓国。

運命の銅メダル決定戦は何の因果か日韓戦となった。






不動のメンバーで臨む関塚ジャパン

前回の準決勝・メキシコ戦ではなんと負傷したはずのFW11永井が強行出場で驚かされたが、この日韓戦は累積欠場も特段の負傷者も無く、今大会の不動のメンバーで臨む事となる。


とにかく心配されるのは体力面。

中2日ペースで6試合目となるこの最終決戦。
前線からの豊富な運動量とスピードからのプレスが最大の武器であった日本にとって、どうしても前線4人の体力面が懸念される。


11永井

7大津 10東 17清武
3扇原 16山口

2徳永         4酒井宏
13鈴木大 5吉田

1権田





序盤ボールを支配するも韓国の堅い守りに阻まれる

対する韓国はこの世代は前評判が高くA代表経験者が多いが、更にオーバーエイジにはアーセナルのFW10パクチュヨンも擁する。
しかも率いるのはあのベルマーレやレイソルで活躍した日本をよく知るホンミョンボ。
ほぼA代表と評されるこのライバル国に対して、若い関塚ジャパンがどう戦えるか、そして並々ならぬ闘志を燃やしてくる韓国代表に対する対処が注目される。



試合が始まってみると、やはりライバル国同士序盤から一進一退の攻防となる中、パスを回せる日本のポゼッションで試合が進んでいく。

しかし韓国も組織的な守備でこれをしっかりとガード。

日本は数々のセットプレーのチャンスも掴むが、ほとんどチャンスらしいチャンスを作れない。

雰囲気的にはFW永井らのスピードを活かしてもらえず、ボールを持たされているだけの準決勝メキシコ戦に近い。


チャンスらしいチャンスといえば、36分に右CKで扇原の左足からのボールをファーで2人のマーク相手に競り勝って放ったヘディングがわずかにバーの左に外れた場面くらい。




前半、カウンター一発からパクチュヨン1人の個人技にやられる

そんな中の37分、韓国はファールまがいのボール奪取から縦パスを入れると、ここにエースFW10パクチュヨンが1人ボールを保持してドリブル。
日本はDF13鈴木大輔が対応するも、一発でいって抜かれるのだけは防ぎたい状況であり、ズルズルと後ろに下がる中、ペナルティ手前右で山口螢も追いついてくるが、その山口がマークに付ききれないタイミングで巧みに間合いを作ったパクチュヨンは、2人のマークとGK権田の隙間を縫うようにシュートをゴールニアの右に突き刺す!!


・・・本当に一瞬の油断、ファールじゃないのか?と一瞬選手達のプレーが止まった瞬間に出されたパスからの単独突破。

ここは山口もファール覚悟でスライディングかショルダーチャージの一発くらいはいっておかないといけない場面だった。

与えてはいけない先制点を与えてしまった。


こうして前半は手痛い1失点による0−1で折り返しとなる。






後半、ますます堅くなる韓国の守備

後半は先制されて精神的に余裕が無くなってきた日本に対し、冷静に組織的な守備と速攻で対処する韓国の様相となり、後半立ち上がりから韓国の鋭いプレスに対しバックパスが弱気になったところを突かれ、GK権田がどうにか一瞬早くクリアにいくといった場面が連続する。


結局の所、先制された時点できつい。

韓国はメキシコと同じく堅い組織的な守備で日本を封じ込めに来ており、1点リードさえすればその形はますます堅固なものとなる。

日本としてはもっとその守備ラインを押し上げさせ、後ろにスペースを空かせて永井のスピードなどが活きるようにする、スペイン戦のような展開が理想だが、しっかり引かれてそのスペースを消されては、何のために永井が出ているのかもはやさっぱり分からない状態。


そんな中でも後半10分、FW7大津が1人気を吐き、東、清武とのパス交換をしつつペナルティ右に入っていき、右足でのシュートを放つも、これは惜しくもミートせず。



速攻から2失点目で万事休す

その大津の惜しいシーンの直後12分だった。

縦パスをFW10パク・チュヨンが頭でそらして、抜け出したMF13ク・ジャチョルが追いすがるDF13鈴木大輔を振り切りそのままゴール前で右足でシュート。

これが鈴木の足の下と、権田の右手の下を抜けてゴール左に決まってしまい、ついに追加点を入れられてしまう。


韓国はここまで数えるほどのシュートしか無いと思うが、そのシュートがことごとく入る格好での2得点。

対する日本は前線のスピードも活かさせてもらえず、ボールを持たされるだけでのジリ貧の展開。


この失点を受けてMF3扇原に代えてMF8山村を投入。

この辺になるともはや予選でチームを引っ張ってきた山村の精神的なところに賭けるしかないような状態。


しかし14分には酒井宏樹が足を滑らせたところから左サイドで起点を作られ、ペナルティ手前右のMF7キム・ボギョンが左足でシュートを狙うが、GK権田がかろうじて手に触れてボールは右ポストを直撃!!
続くゴール前にこぼれたボールをDF13鈴木がクリアミスし、シュートを浴びるが、ここは鈴木が何とかブロック。

やはり2失点目の形があまりに悪いものだったので、準々決勝まで堅守を誇ってきた日本守備陣もほころびが見える。




もはや勝ち目は無いままホイッスルでメダルを逃す

未だに決定機らしい決定機を作れない日本は後半17分にMF東に代えてFW杉本を、26分にはFW永井に代えてMF宇佐美を投入。


しかし、もはや情勢が変わるはずがない。
2失点目はまさにダメ押しだった。


もはや盤石の体制で守りを固める韓国は、攻撃ではリスクを少なく、そして手数を少なく カウンター一発を狙っていけばいい。


その組織的な守備を敷く韓国相手に右往左往するだけで、FW7大津が懸命の走りでそれでもゴール前に詰めるなど可能性を見せるも、そうは韓国も失点させない。


残り5分、10分を切ってきたところで日本はDF吉田を上げてパワープレイに出て、何回かヘディングで競りにいくもののホイッスル。




この大会で見えてきたモノ

こうして関塚ジャパンのロンドンオリンピック2012は幕を閉じた。

思えばスペインと同組に入るなど、大会前の段階から予選リーグの突破を絶望視された関塚ジャパンだったが、オーバーエイジ枠でDF吉田、DF徳永が入ると一気に守備が安定し、そして清武、大津、東、そして1トップの永井の前線4人による猛プレス、そこからのスピードを活かした速攻は素晴らしいモノがあった。

現に準々決勝を勝ち抜くまで4戦無失点という完璧な内容での勝ち上がりは堂々たるものだった。


本来普通に入るべき香川真司はマンチェスターUでのベストな合流、練習を優先させ、他に候補に挙がった数々のオーバーエイジのJリーガーもクラブに断られるなど、関塚ジャパンへのバックアップ体制は本当に悲惨なものだった。


そんな満足な戦力を揃えられない関塚ジャパンにとって、スター揃いのスペインらを相手にどう対するか。

その答えがスペイン戦でのセンセーショナルな前線からのプレスとスピードを活かした速攻だった。


その戦術を支えた清武、大津、東、永井の4人の運動量とスピードには本当に感嘆させられるものがあり、海外メディアは彼らをNINJAと称した。

まさにあの4人こそは無尽蔵のスタミナと常人の枠を越えたスピードを兼ね備えた忍者そのものだった。




阻まれた大会の壁、そして課題

だが、結局は大会ゆえの連戦の壁に阻まれた感がある。

常に中2日で連戦を強いられ、今回のように最後まで行くとなんと6連戦となる。

3戦目で前線の選手をある程度休ませは出来、それが次の準々決勝でのエジプト戦の好結果に結びついたと思うが、5戦目の準決勝メキシコ戦、6戦目の3位決定戦韓国戦では、やはり前線からのプレスは弱まった感があった。


これはもはや個人の頑張りとかそういうものではない。

自然と身体が乗っていき、前からプレスを掛けられる身体の軽さか、重い身体に無理をしてプレスを掛けにいくのかではまるで違う。

そしてそれは個人だけでなく、チームとして連動する必要がある。



日本はまず選手選考の段階から、この点について考える必要があった。


先に挙げた前線4人と遜色ない運動量とスピードを兼ね備えた選手の補強。

それが必要だった。


そして前線の控えは宇佐美、杉本、斎藤学・・・

この中で斎藤学だけはスピードとという点では十分に合格点だったかと思うが、しかしチームで連動した前線からの守備という点では全く機能しなかった。


おそらくチームの中でそういった役割を与えられた事がそもそも無いのでは無いだろうか。

宇佐美に関してはもはや問題外であり、結局のところ斎藤学や宇佐美はあくまで個人で打開しなければいけない展開の際に力を発揮し、今回の関塚ジャパンに求められるプレーには向かないタイプだった。



もし、今回の戦法を最初から徹底させていたとしたら、まるで選手選考は変わっただろう。

正直香川すらもこの選考からは外れるかもしれない。
香川をベースに考えれば、また自ずと戦い方は変わったはずだ。

1人名を挙げるとすれば宮市だろう。

まだ若い宮市だが、あのスピード、そして献身的にチームのプレーに徹せられる賢明さは今大会の貴重な5人目の前線として重宝したはずだ。


少なくとも宇佐美よりは数倍マシに機能したはずだ。



既にW杯でも予選リーグを突破し決勝トーナメントに進出するのが通例になってきている日本は、次のレベルを目指すのならば、こういった控えの選手をもっとトータルに捉えて、出来ればローテーションさせて使えるくらいの柔軟なチーム作りが出来るかといった究極のチーム作りを考えても良いのではと個人としては思う。

まあ実際は難しいのだろうが、しかしこれは事実だ。

今後も直接のフィジカルコンタクトに劣る日本はスピードと運動量という点は大きな武器として活かしていかなければいけない。


その中で今回の関塚ジャパンは一つの答え、ヒントを示してくれた。

そのスピード、運動量を連戦という大会本番の中でどう活かせるようにすべきか。

主力選手のローテーションは決して絵空事の戦術ではない。





欲しかったベテランの力、そして個人的には・・・

その他としては、やはりオーバーエイジにMF遠藤ヤットが欲しかった。

大会後にDF吉田がしみじみ語っていたとおり、準決勝のメキシコ戦のように劣勢になった時こそベテランの力が欲しかった。

そして遠藤ならばこの若いチームに最も必要な逆境から打開できる力を与えてくれたはずだ。

精神的な部分での支えは限りなく大きなものとなったはずだ。



また、個人的にはボランチになぜ大宮の青木拓矢の名が挙がってこなかったのかが未だに不思議でならない。

東と共に大宮で若くして不動のレギュラーを張るこの大型ボランチは、山村などよりよっぽど実績、実力共に十分だったはずだ。

とにかく扇原、山口螢らもそうだが、今回のボランチの選考の中には展開力が無さ過ぎる。

結局攻撃が全て前線の4人と右サイドバックの酒井宏樹のみに託されてしまい、先ほどの遠藤の必要性を強く感じるほどのボランチからの効果的なパスの少なさが最後まで響いた。

日本の武器であった前線のスピードを準決勝、3位決定戦で活かせなかったのも、結局はこのボランチの展開力の無さも大きい。


確かに、群馬は高崎の出身であり、そして前橋育英を全国選手権に押し上げたこの青木拓矢をえこひいきはしているわけだが、決してそれだけではない。


東と共に青木拓矢を是非とも世界の舞台に立たせて欲しかった。



今さらではあるが、そんな無念さも残る大会だった。



とにかく国際大会での44年ぶりのベスト4進出は大きな意義を持つ大会であったことは確かであり、ここにこうして記録しておきたい。











(2012.9.8UP)






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