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下馬評覆した関塚ジャパンの44年ぶりのベスト4を追う(パート3)
44年ぶりのベスト4達成を果たしたロンドン五輪での関塚ジャパンの軌跡を追うパート3。
パート1では、メダル獲得が確実視される女子のなでしこに比べ、全く希望無しと戦前から嘆かれていた関塚ジャパンがまさかの開き直った前線からの連動したプレスと速攻を武器に初戦のスペイン戦、そして続くモロッコ戦と勝利し、最後はホンジュラス戦で引き分けて堂々の予選リーグ1位通過を果たしたところまで。
そして続くパート2では決勝トーナメントでの初戦となった準々決勝、フィジカルに勝るエジプト相手に、清武のスピードとプレス、そして奪ってすぐの正確な前線へのパスに永井がスピードで追いつき華麗に点を決めた事で準決勝に進出を決めたところまでを書いた。
これで44年ぶりのベスト4進出は決定した日本、あとは44年ぶりのメダル獲得確定まであと一勝に迫った準決勝メキシコ戦から書きたい。
そう、メダルのかかった準決勝の相手はメキシコ・・・
44年前、メキシコでのオリンピックで3位決定戦に釜元の2ゴールで勝って初の銅メダルを日本にもたらした当時の相手がホームのメキシコだった。
当時は、その大会の後しばらくはメキシコで日本人というと”カマモト”と呼ばれたらしい。
それだけメキシコにとっては因縁の相手であり、そして優勝候補のメンバーを揃えて満を持しての対戦となったわけだ。
なんと永井強行出場の関塚ジャパン
なんといっても注目だったのはここまで不動の1トップの大役を務めてきたFW永井が絶望視されたこと。
ここまでの日本の快進撃の原動力が、初戦のスペイン戦がそうであったようにFW永井の異次元のスピードによる敵DFラインへの急襲だっただけに、永井抜きではどこまでメキシコ相手に戦えるのかというところが焦点となった。
まあ自分としては永井と共にこの大会で大ブレークとなったFW7大津が1トップを務めるであろうし、斉藤学あたりがスピードという点だけは十分に補ってくれるだろうとは思った。
その他、むしろ宇佐見よりもチームとしては機能すると思われる酒井高徳もサイドならどこでもこなせるし、連戦の疲れもある中でそういった控え陣の活躍がやはりこういった大会では必要だと密かな期待もしたものだった。
しかし!!!
誰もが衝撃だったのは、なんとスタメンの名前にFW11永井が連ねたこと。
それまで松葉杖姿しか映っていなかった永井だったが、どうにか膝が曲がるまでになったというだけでの強行出場。
まあ敵チームに対しての強襲の意味もあるのだろうが、本当にこの強行出場が吉と出るか凶と出るかに注目される事となった。
11永井
7大津 10東 17清武
3扇原 16山口
2徳永 4酒井宏
13鈴木大 5吉田
1権田
試合序盤、いきなり大津のスーパーゴールで先制!!
心配された永井の足だが、見たところではそんなに影響を感じさせず、これまでと同じような前線からの鋭いプレスも見せる。
メキシコも永井の出場は計算外であっただろうし、守備陣としては慎重な立ち上がりといった様子。
互いにそんなに決定機は無いまま11分が過ぎたところで、左サイドから展開しポゼッションした日本は東のパスをペナルティ手前左で受けた大津が振り向き様に豪快に右足を振り抜くと、なんとこれが弾丸のようにゴール右上隅を突き刺す!!
GOOAAALLLLL!!!!
とんでも無いスーパーゴールが決まった。
まさかこんなにも早い時間帯にメキシコから点が獲れるとは・・・
やはり永井投入の効果はあったという事か、この先制点によって日本の44年ぶりのメダルが大きく近づく・・・それも銀確定か?というところまで気がはやる点となった。
CKから同点に追いつかれる
その後も先制でリズムに乗る日本は17分に右サイドから数的有利を作り展開してから山口螢がミドルを放つもミートせずと攻撃を仕掛けるも、メキシコもまずはしっかりと冷静に対処する。
守る時は徹底してブロックを作り、スペースを消して日本のスピードを活かさせない守備でリズムを作っていったメキシコはFW10ドス・サントスの高い個人技からの突破力を軸に鋭い攻撃を見せ始め、27分にはペナルティ内でドス・サントスの足元に転がったボールからのダイレクトでのシュートはわずかにバーの右。
こうして徐々に地力の差を見せ始めたメキシコは30分の右CKから、ドス・サントスの左足でのボールにMF14エンリケスがニアで後ろにそらし、それをFW8ファビアンがゴール前中央で頭で決める。
どうにか大津の先制点を前半だけは守りたかった日本だったが、このCKだけはどうしようも無い失点となった。
思えばこの前半だけでも守り切れるかどうかが勝負の分かれ目と言えた。
そしてこの失点が日本にとって今大会初の失点となり、無失点記録は4試合で潰える事となった。
後半もメキシコの守備がどんどん堅くなる
同点のまま迎えた後半開始前になんとメキシコはそれまで迫力のある突破をみせてきたFW10ドス・サントスを下げ、FW12ラウル・ヒメネスを投入。
後半も日本はスピードを活かしスペースを狙っていく攻撃だが、しかしメキシコもやはりそのスペースをほとんど消す事で日本になかなかチャンスを作らせない。
さすがここまで来るとよく研究されている感がある。
それでも5分には右サイドを清武が突破しマイナスの折り返しに山口螢がシュートもブロックされ、それを更に永井が連続してシュートもバーの左上と、相手のマークが揃っている中でも惜しいところを見せる日本。
ここまでは実力伯仲の好ゲームと言える内容。
まさに次の1点が勝負を分ける展開。
その1点を狙う意味では、時間が経過する毎にメキシコの守備がどんどん堅くなっていく印象があり、日本は奪ったらとにかく速攻という場面をなかなか作り出せず、うまくメキシコの守備陣相手に時間をかけられてしまう。
まさに試合巧者といった様子のメキシコ相手に徐々に劣勢になっていく日本。
GK権田の判断ミスから手痛い失点
そして徐々にリズムを自分の方に引き寄せていったメキシコは16分の左サイドからのFKなどでチャンスを作っていき、そして19分、巧みなショートパスの連続から左サイドを深く突破し、折り返されたところでFW9ベラルタの左からのミドルシュートはゴール左を捉えるもののGK権田が抑える。
しかしこの権田、抑えたボールをMF3扇原にスローで出し、これを前に展開しようとした扇原が前の選手を嫌って後ろに折り返されたところを先ほどシュートを放ったベラルタが奪い、そのまま右でのシュートを振り抜くと、これがゴール左に突き刺さってしまう。
致命的なミスを犯した扇原が目立ってしまう場面だが、そもそもこの劣勢の中、敵2人に挟まれていた形の扇原に本当にスローで出すべきだったのかが問われるGK権田の判断ミスもあった。
日本はここまで攻撃をどうにか繋いでいこうという意識が強いあまり、この大会でのお家芸であった前線での推進力というものが今ひとつ欠け、メキシコの術中にはまってしまっていた。
こういう時こそ永井や大津らにとにかく奪ったら相手DFラインの裏に縦パスを出し、一発のカウンターでメキシコ守備陣のリズムをまずは狂わせる事が必要だった。
そういったカウンターの大きな縦パスを出すべき場面で権田の選択したプレーは目の前の扇原にスローインというものであったわけだ。
交代から次々選手を入れるも効果なく
この失点を受けて日本はMF10東に代えてFW9杉本を投入。
その後しばらくは攻撃するしかない日本がどんどん攻め込み何本ものCKを掴むものの、待望の勝ち越し点を得たメキシコにとってはもはや守備を盤石なものにする作用しか生じない。
30分には前線の永井のポストを起点に2回連続でクロスを入れていくもののメキシコもゴール前で決死のクリア。
そして31分、日本はエースMF17清武に代えてMF14宇佐美を投入。
だがこの大会においてもはや宇佐美は関塚ジャパンのパーツの一つとしては機能しない存在であり、特にメキシコ相手にはどんなに相手の目の前でそのドリブルをしようにも、今日のメキシコの守備陣相手には何の効果も無く、時間ばかりが経過。
37分に日本は最後の交代、MF3扇原に代えてFW15斎藤学を投入。
41分、FW9杉本へのクサビのパスから、落としたところを斎藤学が後方からシュートを放つもバーの上。
久々にみた日本のシュートだったが、もはやこの程度では今日のメキシコからは点は獲れない。
ロスタイムにダメ押し点を決められ準決勝敗退
そして3分間のロスタイムに入ると、日本は一か八かDF5吉田を前線に上げてのパワープレイ。
だがロスタイム1分に左サイドから徳永が入れていったクロスに吉田がゴール前で競りに行った場面以外はほとんどチャンスなし。
対するメキシコはロスタイムも3分を目前にしたところで右サイドからカウンターを入れ、MF7コルテスがドリブル突破からそのままゴール前右目前に迫り、うまくシュートをゴール左に流し込んでダメ押しの3点目。
メダルの重圧に負けた日本、全ては日韓戦に託された
こうして日本は大津のスーパーゴールでの先制点を挙げたものの、その後はメキシコの組織的な巧みな守備と、セットプレーなどから確実に点を獲っていく手堅い戦術の前に敗れ去る事となった。
ちなみにメキシコはその後の決勝でも、あの優勝候補の圧倒的な筆頭であるブラジル相手に勝利を納め、悲願の金メダルを獲得。
決勝トーナメントにおいて、いかにこういった手堅いチームが強いかという事を証明した今大会のメキシコと言え、ドイツのような地力の強さがあった。
日本は永井に頼るのなら、一発狙いでももっと相手陣地の深くを突いた長い縦パスで活路を見いだすべきだった。
本来は1点リードした時点でカウンター狙いとし、同点となったところから見せたメキシコの堅い守りが形成される前に2点目を奪う必要があったが、同点にされる時間帯も早すぎた。
・・・それにしても惜しい試合だった。
結局のところロスタイムでの3失点目はともかく、CKと手痛いミスだけの2失点は不運でもあった。
永井を強行出場させるところまでは良かったが、その永井をあまり活かせずにメキシコの術中にはまった日本は、やはり勝てば銀以上が確定というメダルの重圧にも負けたのかもしれなかった。
そして44年ぶりのメダルを賭けた3位決定戦の相手はブラジルに完敗した韓国に決まり、なんと銅メダルの行方は日韓戦となった。
〜次回最終回・パート4日韓戦へ続く〜
(2012.9.4UP)
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