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サッカー女子ワールドカップ ドイツ2011 決勝
2011年7月18日
アメリカ戦(フランクフルト)

2−2(PK3-1)

横棒


日本には勝てる要素なんてなかった




この試合、日本に勝てる要素なんて、有利な条件なんて1つも無かった。








女子サッカー界の圧倒的な女王・アメリカとの対戦戦績は4分21敗・・・1度たりとも勝てた事なんて無い。

それでもなでしこジャパンにはブラジル代表をも凌駕すると言われるパス回しがあった。

だが、試合開始直後から見せつけられたのは、その圧倒的なフィジカル、スピードで押し込んでくるパワー、それでいてテクニックも当然ついてきてのプレスの嵐。

日本のゴール前はズタズタに引き裂かれ、たまにボールを奪ってキャプテン澤が前線にボールを送ろうとも、アメリカはまさにそのボールを執拗に狙い、ことごとくパスは寸断された。


私は開始15分でこの試合、勝てる要素は無いと確信した。
ゼロに抑えられる可能性があるならともかく、どう考えても90分間もあれば2点は入れられてしまう。
しかし最低限のその2点を日本は取り返せる可能性があるだろうか?

過去15年以上に及ぶ私のサッカー観戦経験からいって、それはほぼゼロだった。



だが・・・・・・・・・・


幾度の奇跡がこの試合を包んだ。

そしてその奇跡は紛れもなくなでしこ達が自分たちで引き寄せたものだった。



私のHPにおいて、女子サッカーの事を書くことは無いだろうと思っていた。

たとえ優勝したって、ACLへの出場権も与えられない名だけのナビスコカップの事を結局は書かないように、そこに意味を見いだせるか、書くだけの要素があるのか、その時間があれば、もっと書いていかなければいけない事はいくらでもある、といったところで、どうしても女子サッカーの事を書く事はためらわれた。


そして、それはこのワールドカップの決勝という舞台でも同じだと思っていた。


だが・・・この試合を見せつけられ、せっかく持っている自分のHPにここまで感動をもらった試合の事をここに刻まない事はあり得ない。

正直、かなり忙しい中でザスパの観戦記を書くことくらいで精一杯の中だが、こうして迷い無くこの観戦記の作成に至った。




ホスト国ドイツに勝つ快挙

今回のなでしこジャパンの活躍が日本全国に最初に浸透したのは、おそらく準々決勝のドイツ戦の快挙だった。

ドイツで開催されたワールドカップで、そのドイツ代表に勝つ???

身長差は男子よりもさらに圧倒的で、平均身長が10cm以上違う。
特に男子の場合は高さで競らないといけないセンターバックに中澤や闘莉王らがいる。
しかし女子は一番身長が高いDF熊谷でさえ171cmだ。
もう一方のセンターバック、岩清水なんて161cm。
しかし、日本女子サッカーにおいてはこの身長こそが当たり前であり、これで戦うしかない宿命をどうしても背負う。

そしてなんといっても、ドイル女子代表は2003、2007年のW杯でも連覇しており、現在アメリカに次ぐ強豪。
当然ホスト国という地の利を考えれば、この大会ではアメリカもおしのけ、紛れもなく大会3連覇を狙うしかない優勝候補No.1のチームだった。

だが、日本は粘りに粘ってゼロにおさえて延長へ。
そして延長戦で澤のパスに右サイドを走り込んだFW丸山がここしかないという、ほとんど無い角度からのミラクルゴールを決め、その快挙は実現した。




快進撃は続き、準決勝ではやはり身長差が10cm以上あるスウェーデンと対戦。
だが、ここは以前からの相性の良さもあり、立ち上がりの時間帯に先制されたものの、川澄の2ゴールや澤の押し込みで3点を決め、ついに決勝の舞台までたどり着いた。


そして決勝に待ち構えるは、最大のライバルドイツが敗れてくれて、もはや優勝はもらったようなものと悠然と待ち構える、女王・アメリカだった。



過去25戦の対戦成績、4分21敗・・・



さすがに日本の絶対的に不利という条件は誰の目にも明らかだった。




キャプテン澤擁するなでしこジャパン

なでしこジャパンの核はやはりキャプテンで32歳、代表歴18年目のキャプテンMF10澤穂希。

4バックはここまで不動で、前線のFWやハーフは佐々木監督の奇策の連続でここまで流動的。

この試合でもスウェーデン戦で抜擢されて結果を出した川澄を起用し、ドイツ戦の殊勲のゴールを決めた丸山や本来のエース永里らは敢えてベンチに温存。

他に核となるのは、左右両足でフリーキックが蹴れるMF宮間がセットプレー時でも鍵となる。



7安藤 11大野

8宮間       9川澄
6阪口 10澤

15鮫島        2近賀
3岩清水 4熊谷

21海堀



ベンチにはFW17永里、FW18丸山、FW20岩淵、19高瀬、13宇津木、16田中明日菜、14上尾野、5矢野、GK12福元、GK1山郷



DNAの違いをみせつける女王アメリカ

女王アメリカでなんといっても圧倒的な存在感を放つのがFW20ワンバック。

181cmの恵まれた体躯を鍛え抜いたその圧倒的なフィジカル、スピード、そしてテクニックを併せ持つ理想的なFWであり、おそらく男子の中に入っても普通にプロで活躍する事もできるのでは、と思えるほど。
そしてアメリカ代表が窮地に陥っても、必ず得点という結果を出してきた31歳の紛れもなく世界最高の女子選手。

その他、GKのソロはモデルか?と見違えるほどの美貌を兼ね備えた世界最高峰と呼び声の高いGKであったり、とにかくその体格、顔の作りなど、どの選手も才色兼備なパーフェクトな戦う集団。

明らかにハリウッド映画でいうヒーローチームであり、どうしても日本の農耕民族とはDNAの違いを感じずにはいられない。




12チェイニー 20ワンバック

15ラピノー      10ロイド
9オーライリー 7ボックス

19べーラー           11クリーガー
3ランポーン 6ペイルベット

1ソロ




奇跡的にも前半をゼロで抑える

試合の観戦記としては、この試合が初めてなでしこジャパンの試合をまともに見た試合なので、いつものような詳しい記述はあまり書けない。

そもそも試合の感想を書こうと思っていただけなので、かなりのあらすじで・・・



試合開始早々にチェイニーが左サイドでボールを奪ってからいきなりゴール左前までドリブルで切れ込まれシュートはGK海堀がどうにか足でセーブ。


その後はなでしこも澤らが前線にどうにかボールを入れようとするもことごくカット、もしくは流されてしまう。

そして8分にラピノーのクロスにチェイニーが飛び込み、これは入ったかと思ったがわずかにゴール左に逸れ、11分にはロイドの強烈な一撃がバーの上、12分にはチェイニーが切れ込んで折り返しをラピノーが合わせるもバーの右、17分にはロイドのシュートがバーの上、18分にはラピノーが左サイドに抜け出てシュートもわずかにゴール左に逸れるなど、日本のゴールは何度も決定的なシュートの危機にさらされる。


この数々の怒濤のゴールを奇跡的に防いできた日本だったが、それまで鳴りを潜めていたFW20ワンバックが29分、左サイドから中央へドリブルで切れ込み、そのままの勢いで強烈なミドルシュートを放つと、なんとこれがバーを直撃!!

なんだ?ワンバックって高さ、強さだけでなく、こんなシュートも撃ててしまうのか・・・完璧すぎだろう、FWとして・・・


この頃にはもはや私の中で日本が勝てる気なんてもう微塵も無かった。

赤鬼、青鬼の繰り出す金棒に、細く小さな身体で必死に耐えるなでしこ達。

しかしもはやその粘りも限界に感じたし、やはりアメリカ戦だけは違う、日本は決勝にたどり着くまでにドイツ戦などで燃え尽きたか、、という感が否めなかった。



だが、日本のゴールはついに前半45分間、守り抜かれた。

どんなに絶望的な状況であろうと、熊谷らは必死にワンバックと競り合って自由には飛ばせず、たとえシュートを撃たれようと最後までボールに粘り強く絡んでいった。
それはこれまでのドイツ、スウェーデンら体格の違う相手に対しひたむきに続けてきた懸命の守備だった。

そして多分に運も味方したが、とにかく失点を防いだ。

まさに奇跡といえる前半のスコアレスでの折り返しだった。


やはりこれがこの試合、大きいターニングポイントだった。




後半、伏兵モーガンの脅威

前半を奇跡的に耐えた日本だったが、後半頭にアメリカがチェイニーに代えて投入してきた、まだ21歳の若いFW13モーガンが凄まじかった。

ピンクのカチューシャでブロンドの長髪を飾るモーガンの、そのいかにも勝ち気な表情は、まさに子供の頃アメリカのホームドラマで目にしてきたじゃじゃ馬なお嬢様の典型的な様そのもの。
(想像上のセリフで)ちょっと、どいて頂戴!私のパパはアメリカ海軍のパイロットなんですからね!とツンと澄ましながらも男の子相手に木の枝をブンブン振りかざすかの如く、どんどん勝ち気に日本の右サイドをそのスピードで切り裂き、前半苦しめられたチェイニー以上に日本にとって終始厄介な存在となる。


日本も前半をゼロに抑えられた効果もあって、なんとかモーガンらの突破に対応しながら試合の流れを引き寄せはじめ、後半16分には澤のゴール前への浮き球のスルーパスに右サイドから猛然と走り込んでいったDF2近賀がワンタッチでループシュートにいくもバーの左。

特に続く19分にはFW大野がほぼセンターライン上だった浅いアメリカDFのラインの裏をつき澤のパスに抜き出るも、オフサイドの判定。
これはジャッジとしては致し方ないところだったが、ビデオではギリギリセーフのはずのタイミングだった。


こうして盛り返してきた日本は21分、FW11大野、FW7安藤に代えて、FW17永里、FW18丸山をダブルで投入し、いよいよ勝負に出る。

特に永里の前線でのポストプレーの強さは、これまで日本に無かったクサビからの攻撃展開を可能とし、日本は一気に攻勢に。


しかし24分、その日本の裏を突くように、日本のボールを奪ったMFラピノーが一気に左サイド前方のモーガンに縦パスを送り、モーガンは一気にゴール方向へ加速してから左足での強烈なシュートがついに日本ゴール右隅に決められてしまう。



・・・ここまで来てか・・・


やはりモーガンにやられてしまった。
この日のモーガンが後半に投入された事はタイミング的にもアメリカの作戦が的中されてしまった。

それにしても時間帯が悪すぎる・・・


もう後半も半分を過ぎ時間も無い中、圧倒的な力を持ったアメリカ相手に点を奪い返す事が大変困難であることは、誰の目にも明らかだった。



MF宮間の同点ゴール炸裂!!!

だが、なでしこジャパンは諦めなかった。

先制された事でかえって吹っ切れて攻撃に専念するようになり、両サイドバックの鮫島、近賀らが積極的に上がりクロスを上げ、永里、丸山ら投入された2トップもアメリカゴールへ懸命に向かう。


しかし、なかなかアメリカの高い壁とGKソロの広い守備範囲の前にあまり決定機らしい決定機は作れない。


もう時間も無くなってくるか・・・と思われた残り10分の35分だった。

右サイドでボールを奪いFW永里がクロスを入れると、中央に突っ込んだ丸山がアメリカDF陣と潰れ、こぼれたところをDF陣がクリアし切れずにいた隙を突いて、ゴール前まで詰めていたMF宮間が左足で押し込む!!


GOOAAALLLLL!!!!


本当に泥臭い、全員で押し込んだようなゴールだった。

これまでのアメリカの華麗で迫力のある突破からの強烈なシュートではなく、とにかく日本はアメリカのゴールだけを狙って執拗に食らいついていった結果だった。

これまで守備にも走り回っていた宮間がこのゴール前まできっちり詰めていたのも驚異だった。

左右両足で正確なキックを蹴れ、巧みなパスでゲームを作る様はまさに女子サッカー界の遠藤ヤットだったが、やはりゲームを読む天性の感覚はずば抜けていた。




延長前半、万事休すのワンバックの一撃

こうして、もう勝ったも同然と思っていたであろうアメリカはまさかの同点ゴールを喰らったわけだが、後半最後にはワンバックらにボールを集めパワープレイ気味に押し込んでくるも、なでしこジャパンも必死に耐え抜く。


そして試合は前後半15分づつの延長戦へと入る。


日本は後半攻め立てた疲れも出たか、後半終盤から再び盛り返してきたアメリカが勢いもそのままに延長前半の15分間を支配する。

特にここに来ていよいよパワーが発揮されてきたのがエースFW20ワンバック。

疲労してきた日本はいよいよ体力の切れも出てきてワンバックを抑えきれなくなり、アメリカもそこを狙ってワンバックにボールを集める。

そしてそこに絡んでくるのは、やはりモーガン。

延長前半14分、左サイドからゴール前のワンバックへクロスを放り込み、これはDF熊谷もどうにかクリアするが、このセカンドボールを再度拾われ、再び左サイドをモーガンが突破。
これには完全に日本も崩され、モーガンのゴール前へのクロスをFW20ワンバックが圧巻のヘディングで押し込む。



終わったか・・・


もう無理だ。

いよいよ年貢の納め時とはこのこと。

やはり最後はワンバックであり、そしてモーガンが最後まで日本に立ちはだかったか・・・



もはや勝負は完全に決した。

後半に宮間が押し込んだような泥臭いゴールが、これ以上アメリカ相手に決まるとも思えない。

アメリカも、もう一分の隙も与えないとゴールに鍵をかけるのは必至。


何よりもこの時間帯、そして決めた選手がワンバックという事で、もはやこの試合のシナリオは完全に決した。




延長後半、ラスト3分でのエース澤の同点ゴール!!!

だがしかし、なでしこジャパンにはやはり諦めるという言葉は無かった。

延長後半は前半とうって変わって日本の攻勢に終始し、守備にも貢献している川澄らがまだ体力を切らさずにサイドを崩し、7分には左サイドからの宮間のゴール前へのクロスに、川澄や澤らが飛び込み、更に近賀が拾って永里がヘディングで狙うも、なかなかゴールは遠い。


たまらずアメリカも9分、この日抜擢が的中していたMFラピノーに代えてMFヒースを投入し、残りわずかな時間を逃げ切りに走る。

だが日本の最後まで諦めない必死の攻勢は続き、澤のスルーパスにまたしてもDF近賀が抜け出しての決定的なシュートもアメリカDF陣が必死のクリアでCKにされる。
それにしても近賀は本当にサイドバックなのか??なぜあれだけの猛攻を耐え抜く守備をしながら、これだけゴール前に攻め上がれるのか・・・


もう残り3分となる中での、あと何回も無いチャンスとなった左CK。

このCKの前になにやら話していたが、その作戦どおりなのかMF宮間の放った鋭い低めのボールにMF澤がニアに飛び込み、追いすがるマークも届かない外で右足のアウトサイドでこのボールを後ろにそらすようにコースを変えさせ、なんとこのゴールがアメリカゴールの右隅に突き刺さる。


GOOAAALLLLL!!!!



まさかそんな事が・・・

もう本当に残り1、2回しか無いであろうチャンスに、宮間と澤のこれまで何度も日本を救ってきたセットプレー時のホットラインが繋がった。

なんといっても、ビデオで別角度から観るとゴールへの角度が凄まじく無い。
本当にコースを変えただけなのだろうが、よくあの角度、推定右後方に160度くらいの絶妙の角度に帰られたものだ。

もはや理屈ではなく、何か神懸かったものを感じずにはいられない奇跡のゴールだった。







明らかに勝ったも同然であったはずだったのに、まさかまさかの再度の同点ゴールを奪われたアメリカは怒りと共に最後の猛ラッシュをかける。

日本もPK戦も意識してか、後半投入したFW丸山を敢えて下げ、FW20岩淵を投入。


再びアメリカのワンバックやモーガンを中心とした攻撃が再開され、ロスタイムに入った本当に最後のところでペナルティ手前中央を突破しようとしたモーガンに対し、DF岩清水がタックルで止め、これに対し一発レッドカードをとられてしまう。


そして、本当に最後の最後となったプレー。

アメリカのゴール至近距離でのFK、本当にこれが最後の試練となる中、MF10ロイドが強烈なシュートで狙ってくるも、これは日本守備自陣が身をもって呈し、ついにゴールを守りきる。



これでタイムアップ。

試合はまさかの日本の再度の同点ゴールにより、PK戦へともつれこむ。



雌雄を決したGK海堀の右足セーブ

PK戦、先攻となったのはアメリカ。

日本は後攻か・・・


通常、PK戦は先攻が絶対有利。
先攻側がプレッシャーの少ないイーブンの中で蹴られる事に対し、後攻側は先攻側が決めてくる限り常にミスの出来ない、追われる側でのプレッシャーのかかったPK戦となるため、先の日本代表のアジアカップのように先攻側が有利であることはもはや常識。


だが、それはアジアカップでも本田圭佑が圧巻のゴールを決めたとおり、あくまで1人目が決めたら、という前提であり、逆に1人目が外れると先攻側は負の連鎖がはじまる。


そういった全てを決するアメリカの1人目。
MFボックスの蹴ったコースを読んで左に飛んだGK海堀だったが、予想よりもボールが中央に来てしまい、身体が先行してしまった。
しかし、残った右足で懸命にボールに当て、なんとこのボールがバーに当たりながら見事なセーブ!!!!


だが、こういった場合、あとは後攻の1人目が今度は重要であり、これが外れると今度は負の連鎖が後攻側にまで広まってしまい、なかなか互いにPKが決まらないという泥沼のような現象も起こり得る。


しかし、女子サッカー界の遠藤ヤットであるMF宮間は、まさに遠藤のお家芸ともいえる絶妙な間合いのPKで相手GKソロを翻弄し、逆の左に飛ばせてから右に楽々と決める。


実況の「私は大丈夫、そんな表情です!」という言葉どおり、全然余裕だよ、と言わんばかりの笑みを見せつける。



この互いの1人目が全てであり、その後はやはりアメリカに負の連鎖が蔓延し、ロイドのシュートは上に外れ、ヒースのシュートをまたしてもGK海堀がセーブ。

日本は2人目の永里が外した以外は阪口、熊谷と4人目で早々に決めてしまい、PK戦を制する。




・・・こうして日本の奇跡に次ぐ奇跡によるアメリカからの初の勝利と共に、初の世界一を手に入れ、世界の誰もが驚いた偉業を成し遂げた。







どんな逆境でも諦めず



冒頭に述べたとおり、最後の後攻側に回ったPK戦も含め、日本には試合前から勝てる要素なんて、有利な条件なんて1つたりとも無かった。


勝てるわけがない。


最大のライバル・ドイツを伏兵日本が倒してくれた事も含め、全ての要素が女王アメリカを讃えるためだけに存在した舞台にしか見えなかった。

勝負をする前から、もはやあらかた勝負が決しているような試合だった。



そして圧倒的な試合の流れ。
2点のリード共に、もはや日本に反撃する力など残っていないだろうと言わんばかりの破壊力だった。
それも2点目はエース・ワンバックの豪快なヘディング。

まさにアメリカは力尽くで日本をねじふせたはずだった。



しかし、そのチーム名に冠された大和撫子(やまとなでしこ)の名の通り、凛とし清らかに美しき・なでしこジャパンのイレブンは、ナデシコの花言葉のとおり勇敢に最後まで戦い抜いた。



何度絶望的な場面に打ちのめされようとも、決して諦めず、最後まで粘り強く走り抜いた。




・・・そんな逆境の条件を背景に戦っているなでしこジャパンの姿を観て、そして数々の奇跡の連続を観て、久々にサッカーで涙が出た。


これまでの自分のサッカー観戦歴の常識がガラガラと音を立てて瓦解すると同時に、嗚咽が出るほどの涙が出た。





文中に書いたとおり、サッカー選手として非常に高いレベルのMF宮間や、軍神・中田ヒデのように攻守でチームを引っ張るベテラン澤、サッカーを知る宮間、川澄、阪口、近賀らの切れない運動量と素晴らしい選手達がベテラン、若手とバランス良く揃っていた。


特に澤はセントラルMFのポジションであれだけ守備の要所もこなしながら、5得点で大会得点王にもなってしまうなど、世界トップの選手まで登り詰めた。
文句なしのMVPだ。


そしてレギュラー、ベンチの境目の無い層の厚いFW陣、特に永里のアメリカDFに囲まれた中での前線での強さ、ポストは素晴らしかった。
あれで流れが変わった。(永里、丸山を敢えて温存していたのは明らかに作戦だな)


また、不動の左サイドバック鮫島の元東電のOLだった頃の話なども先日番組で観たが、そんな普段は普通のOLやっているようなか細い大和撫子(なでしこ)たちが、まさに赤鬼、青鬼の金棒相手に細い槍一本で懸命に頑張り、そして快挙を成し遂げたんだな〜としみじみ思い返す度に、また自然と涙が出てくる。



それにしても日本女子サッカーのレベルの高さには驚かされた。
一時期、エース上野が投げ抜いたソフトボールがかなりフィーバーしたが、今回の優勝はそれ以上のインパクトを与え、今後の女子サッカーの発展に大きく寄与する事だろう。

それだけ多くの感動をなでしこジャパンは今の疲弊するばかりの日本に届けてくれた。














・・・頑張ろう、日本。

サッカーでしか届けられない感動が、このどうしようもない状況の日本の力になるよう願う。

みんな、とにかく自分の持ち場で頑張ろう。

土地も資源も何もない、世界に太刀打ちできる恵まれた条件なんて1つもない日本が世界に誇れるもの。
それは日本の国民性、単一民族だからこその団結力、諦めない精神、粘り強い精神、頑張れる精神だけだ。

戦後、日本はそれだけを武器に世界の赤鬼、青鬼たちと戦い、頑張ってきた。

頑張れない日本なんて何の意味もない。




しかし頑張れる限り、諦めない限り、何度震災に遭おうとも、日本は沈まない。










(2011.07.20UP)






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