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第101回2022-2023全国高校サッカー選手権
2023.1.4
準々決勝
前橋育英 0−0(PK4-5) 大津(熊本)


横棒



前橋育英、夏冬2連覇を目指して・・・準々決勝の相手は昨年と同じく熊本の公立高校・大津!!

2017シーズンに前橋育英が群馬県勢初の全国制覇を成し遂げてから、2度目の、そして今度こそ黄黒のタイガージャージでの全国制覇を狙う前橋育英は、2022シーズンは念願のプレミアリーグにも参戦となり、更に強さに磨きをかけ、夏のインターハイでは古豪・帝京高校を決勝で破り、2回目のインターハイ王者となった。
十分に実力を示した前橋育英は、夏冬連覇に向けての戦いとなる。

その前橋育英はJ1内定者2名をはじめとする大会きってのタレント集団・同じ関東代表の埼玉県の昌平(しょうへい)も3回戦で力でねじ伏せ、青森山田との決勝を目指すわけだが、その前に準々決勝で立ちはだかるのは、公立高校の雄・大津(おおづ)。

昨年も笠柳らタレントを揃えた育英が準々決勝であたり、0−1で惜敗している相手であり、プレミアリーグにも参戦する実力校であり、そして前橋育英を破った昨年は準優勝までしている、間違いなく強豪、強敵。

昨年の悔しさを晴らす相手として、これほどの相手はいない。
今年の前橋育英の強さを見せつけよう。



黄金の中盤らメンバーが出揃う前橋育英

チームの中心は当然伝統の14番を受け継ぐキャプテンMF14徳永涼と、2年生の時から全国で活躍している相棒のMF7根津の史上最高と言えるボランチコンビだが、根津は春の靭帯断裂の怪我の影響が懸念される中、3回戦はフル出場を果たし健在ぶりをアピールした。
根津不在の間に台頭してきたMF19青柳がこの大会でも大活躍であり、根津の代わりにボランチに入ってもいいし、サイドハーフに入ってもその攻撃力を存分に発揮し、3回戦でも決勝ゴールを挙げている。
そして2年生からエースとして活躍し高さもあって得点力もあるFW9小池直矢と、3回戦は控えに回りながらも、素晴らしいクロスと突破を仕掛けていくMF8大久保も含め、この5人を称して3回戦の昌平戦で私はこのメンバーこそ黄金の中盤と呼ぶに相応しいと確信した。
その黄金の中盤に加え、身長が無いながらも点取り屋でパワフルな突破が魅力の1回戦、2回戦連続得点中のFW10高足と、1回戦から輝きを放ち、3回戦でも貴重な同点弾を決めたラッキーボーイFW15山本颯太の2トップは常に相手守備陣に脅威の存在となっている。
更に守備ラインでは元々攻撃的プレーヤーであるDF3井上や正確なキックが武器のレフティであるDF6山内が攻撃時はインサイドハーフの位置まで中央に入り、攻撃に厚みを持たせ、なおかつ山内だけは前橋FC出身のレギュラーメンバーでは唯一と言っていい郷土出身プレーヤーなので、その点でも相当に応援する方としても熱い。
この試合では3回戦とメンバーを入れ替え、3回戦フル出場のMF7根津は膝の負傷の影響もあってかベンチ温存でMF8大久保が起用され、DFラインには3回戦は休んだDF13杉山が入る。


10高足善
15山本颯太
8大久保帆人     9小池直矢
19青柳龍次郎 14徳永涼

6山内恭輔         3井上駿也真
4齋藤駿 13杉山

1雨野


ベンチには、MF7根津、MF11堀川直人、MF17山田皓生、MF23茂木碧生、MF25眞玉橋(またはし)、DF18福永竜也、DF磯村、24ポンセ尾森、GK12大澤






公立高校の雄・大津

公立なのにプレミアリーグに参戦する大津の注目の戦力としては、昨年の準々決勝でも戦っているキャプテンFW9小林俊瑛、MF10田原(たばる)瑠衣の2人と、世代別の代表にも選ばれているDF8碇、GK1西。
特にFW9小林俊瑛は191cmと身長もあり、厄介な相手となる。
そして昨年の対戦ではとにかく粘り強い守備相手にどうしても点が獲れず惜敗となっただけに、今年の前橋育英は昨年の攻撃とは一味違うところを見せつけたい。

この試合、3回戦で点も獲ったMF6浅野は出場停止で代わりにMF16井伊が出る。


9小林俊瑛
11山下基成
17香山太良     10田原瑠衣
5坂本龍之介 16井伊虎太朗

12田辺幸久          3坂本翼
8碇明日麻 4野田翔升

1西星哉




ベンチにはFW18山川柊、MF25兼松、MF19古川、MF14稲田翼、MF13中馬、MF7岩崎、DF20益田、DF2大和田、GK16南太童



立ち上がりから大津にペースを握られる

開始2分、早速大津は左サイドのDF12田辺のロングスローからニアで長身のFW9小林俊瑛に合わせてきて、このヘディングはGK雨野が抑える。

9分には左から右に大津に展開され、右から入ってきたMF10田原がフリーで受けてしまいシュートも、どうにかGK雨野が抑える。

立ちあがりは大津にペースを握られる展開。
正直、これまで育英がペースを握られるという場面が少なかったので、さすが同じプレミアリーグの大津といったところ。

まだまだ大津の攻撃は続き、14分にはDF3坂本翼が中に入ってくることで守備陣を崩され、GK雨野が飛び出してかろうじてCKに逃げると、この右CKはニアのDF8碇に当ててきて危うくゴール前を通過する。

育英はまずは速攻からチャンスを見出そうと、15分に左サイドをMF8大久保が突破し、マイナスの折り返しにFW10高足善が詰めていくが惜しくも合わず。

17分、大きなサイドチェンジから左サイドからMF17香山が抜け出し、低いクロスにゴールニアでFW11山下が詰めに行ったシュートはやられた!!と思ったが、わずかにバーの左を逸れてくれて助かる。

育英がこうまで攻め込まれるとは・・・
昌平戦で見せていた育英の攻守の切り替えの速さ、すぐに相手のボールフォルダーを囲い、スペースを、攻撃の糸口を見出させない戦いをこの試合は大津にやられてしまっている

うーん、こういった相手こそ囲まれてもボールを安定して保持できるMF7根津が欲しいが・・・そこは根津を投入できる後半を待つしかない。

それにしても、そこまで思わせてしまうほど大津のサッカーが良い。
さすが昨年、準々決勝で前橋育英を破り準優勝したチームだ。



あっという間の前半、スコアレスで折り返し

育英も20分くらいまで大津の攻撃に耐えると、攻撃の時間とスペースを作れるようになり、27分にはMF19青柳の軽く浮かしたパスからMF9小池直矢のパスに抜け出したFW10高足善のシュートは惜しくもバーの左に外れる。

その後は互いに中盤のつぶし合い、ボールの奪い合いになり互角の展開に。
実力伯仲の良い試合内容となっている。

39分には右サイドからのMF9小池直矢の仕掛けからいったん左に振られ、DF6山内の左からのクロスにMF19青柳のファーサイドでのシュートは惜しくもバーの上にふかす。

前半のアディショナルタイムは無し。
ここ最近の試合でロスタイムが無いというのは異例だが、この試合はそれだけスピード感が早く、ほとんど途切れない。

あっという間の前半が終わり、伯仲の試合は後半に託されることとなる。




後半、小池直矢が2枚目のイエローで退場??

去年やられている相手だぞ、もっとやらなきゃダメだと山田監督からの檄が飛んだ後半。
確かに前半はシュート数が少なすぎた。

後半は特にMF14徳永がアンカーの位置でボールを保持してゲームをコントロールする意識が強く見え、正確なサイドチェンジなどを繰り出していき、前半とは変わって後半立ち上がりは育英のペースとなる。

その立ち上がりの時間を過ぎた12分、育英はMF8大久保に変わり、これまでも途中投入から流れを変えてきたMF11堀川を投入。
堀川は右サイドに入り、MF9小池直矢が左サイドに移る。

15分、中央から左にスライドしたMF9小池直矢がペナルティ左を突破し折り返したところからFW15山本のシュートは惜しくもカットされCKに。

16分、大津も交代、MF17香山に代えてMF7岩崎を投入。

17分、中盤でルーズボールを拾われそうになったところでMF9小池直矢が相手の後ろからスライディングにいってしまい、なんとこの日2枚目のイエローで退場????

な・・・そんな馬鹿な・・・!!!???

この大事な試合でエース小池直矢が退場???

これは緊急事態だ・・・
さすがに想定外だ。

残り20分以上を1人抜きで戦うこととなった育英、このピンチをどう切り抜けるか。



4−4−1から耐える育英

このまさかの退場の動揺が抜けない19分、育英はゴール前で混戦となり、GK雨野が前に出ていたところで無人のゴールに右からFW11山下のダイレクトでのシュートは枠のやや右で助かる。

育英はFW10高足善が右サイドに回り、MF11堀川が左に回る事で4−4−1のフォーメーションに代えて、どうにかこの難所を切り抜けようとする。

1人少なくなったことで、無理には攻めない育英。

しっかり守備ラインでボールを回してから一気に縦パスを入れ、FW15山本が中央からシュートを放っていき、これは惜しくもバーの上だが、育英のサッカーは1人少なくなっても変わらない。
ポストとシュート、突破どれも1人で出来る山本が1トップにいるのが大きい。ここからがチーム力を示す時。

24分、1人数的有利となった大津はMF10田原に代えて、MF13中馬(ちゅうば)を投入。

27分、1人多い大津、いよいよ攻撃を仕掛け、右サイドからMF13中馬のクロスにニアでFW11山下のヘディングシュートが右上の枠を捉えるもGK雨野がファインセーブではじき出す。
雨野も世代別代表に選ばれている逸材、ここからが本領発揮となる。

29分、育英は速攻のチャンスから左サイドのMF11堀川がターンしながら右でのシュートは相手GK1西が止める。
西も世代別の代表に選ばれており、この試合は互いにGKが安定している。



あくまで攻める育英、80分間で決着つかず、PK戦へ

1人少ない育英は30分を過ぎると、さすがに選手間の距離感が離れ、らしくない中盤でのパスミスが多くなってくる。

34分、大津はこれまで何度も惜しいシュートを放ってきたFW11山下に代えてMF14稲田翼を投入。

それにしても育英、1人少ないとは思えない、いざボールがハーフラインを越えると絶対にボールを下げずに前へ前へと繋げていく。
これが育英魂。

38分、大津に右サイドからロングスローを入れられ、クリアボールが危うくゴール方向に向かいかろうじてCKに

そこからのカウンターも、さすがに人数少ない育英、なかなかシュートまでいけない。

40分、ここでこれまで耐えてきた育英は一気に2枚代え、DF13杉山に代えてDF24ポンセ尾森、FW10高足善に代えてMF7根津が投入される。

この辺りはPK戦も考慮してのことだろう。
フレッシュな選手の方がPKを決める確率も高まる。

試合は3分のアディショナルタイムへ。

この時間になっても右サイドに攻め込む育英だが、折り返したクロスにファーには詰めているものの、ニアに詰める人数が1人少ない。

あくまでPK戦ではなく、80分間での勝ちにいく育英。

2分、左からのクロスを胸トラップでしっかり収めた山本、そのまま左足でのシュートは惜しくもバーのやや上。

ここでタイムアップとなり、試合はPK戦へともつれ込む。


運命のPK戦

運命のPK戦、先行は前橋育英。

大変重圧のかかる1人目はキャプテンMF14徳永、相手GKとの駆け引きもある中で右にしっかり決める。
大津もキャプテンFW9小林俊瑛がが1人目、これもGKとは逆の右に決め1−1。

2人目はキッカーも務めるDF6山内、右を狙うとGK1西に止められる。
この西、本当にギリギリまで飛ばないので、キッカーとしては非常に嫌なタイプ。
大津はMF7岩崎、左へのコースにGK雨野もしっかりと読んで手に当てたものの、はじいたボールは惜しくも左のバーに当たりながら入ってしまい1−2。

3人目はDF3井上、しっかりとGKとは逆の右に決める。
大津はDF8碇、左上のコースにしっかり決め2−3。

4人目はMF19青柳、これもGKとは逆の左隅に決める。
大津はMF13中馬、左へのコースをこれもGK雨野は読んでいたが、あまりにコースが良く止められず3−4。

5人目、途中交代で入ったばかりのMF7根津、意地で左隅に決める。
これで決めれば決まりとなる大津のラストはMF14稲田翼、左上に決め4−5でPK戦は決まりとなる。


大津のPKのコースがどれも良すぎた。
PKの練習を相当にしたのだろうと伺える。
正直、W杯であれだけ各国の代表があれだけ甘いコースに甘く蹴ってしまうのに、この高校生たちの完璧なPKはどういうことだろうかと、そのPKの決定率には舌を巻かされる。


大津は確かに強かった

残念すぎる。
この最強のメンバー、あの昌平戦で魅せた圧倒的な前橋育英のサッカーをあと2試合観たかった。
敗因としては、やはりMF7根津が今大会、万全な状態で迎えられなかったことがある。
あの昌平戦で魅せた3人に囲まれてもボールを完全なる支配下にコントロールし、パスを繰り出してしまうファンタジスタぶりは圧巻だった。
今大会でボールのキープ力ならば徳永も超えるのではないか。

その根津が昌平戦に続き、この試合も必要だった。
昌平戦で足を再度痛めてしまった影響があるのだろうが、育英は昌平戦に全力を出し過ぎ、代償として大津戦を万全の状態で迎えられなかった点はある。

当然、中1日での4連戦目、というところも個々の体力、身体のキレといったところで少なからず影響はあっただろう。


だが、それでも勝たなくてはいけなかった。
これまでの試合でここからが育英の得点時間だった後半20分からを前にエース小池直矢が退場となったビハインドは確かに痛かった。

ここからという時間帯で大きなビハインドとなったわけであり、小池直矢がいる前橋育英をあと20分観たかったのは確かだ。

だが、そこからの育英の戦いぶりも立派だった。
本当に1人少ないのかというくらい、大津と互角以上に渡り合った。
むしろ決定機は育英にあった。

それだけにPK戦は勝ちたかった。
だが、大津のPKはどれも見事だった。
GK雨野が反応しても、それを弾き飛ばすほどの威力、それかコースが完璧だった。

そのPK戦もそうだが、前半に前橋育英相手にペースを握った大津の戦いぶりも立派だった。
前半は完全に大津に軍配が上がっていた。

大津は本当に公立高校なのだろうか?
プレミアリーグにも参戦し、前橋育英相手に2年連続準々決勝で勝ってしまう。

立派だとしか言いようがない。
久々の公立高校優勝を果たすとしたら大津しかいない。

前橋育英と同様に、優勝候補で連覇がかかっていた青森山田も神村学園に惜敗となった。

この前橋育英に勝ったチームだ。
大津は優勝するべきだろう。
ここは相手を褒めたたえるしかない。


そして前橋育英は2年生GK雨野に全てを託し、また来年も新たな戦いに挑むしかない。
その先に2度目の、今度こそタイガージャージでの全国制覇が待っている。



(23.1.4UP)






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