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2017-2018全国高校サッカー選手権
H30.1.8
決勝 前橋育英 1−0 流経大柏(千葉)

〜ロスタイム、劇的な決勝弾で歴史を動かす群馬県勢初の優勝!!!〜

横棒



ついに、群馬県勢悲願の初優勝の時・・・

昨年の青森山田との0−5という決勝での悔しさをバネに、雪辱の決勝を目指し勝ち進んできた前橋育英も、ついに2年連続の決勝進出の場まで上り詰めた。


思えば、群馬県代表の全国選手権制覇への挑戦は昭和63年、平成元年の奈良監督時代の前橋商業の2年連続ベスト4から始まり、それから全国への挑戦権は山田耕介監督の前橋育英が主導となり、平成10年、11年の松下裕樹、佐藤正美の時代に2年連続ベスト4、そして2年後の佐田聡太郎の史上最大のタレント集団の時代にもベスト4と、常にベスト4止まりの歴史であり、平成20年(2008年度)の六平、佐藤穣、中美ら黄金の中盤を擁した時も、なぜかベスト4止まりと、どうしても群馬県勢は準決勝の壁を越えられなかった。

2010年度は小島秀仁や小牟田らを擁したが、守備の要・川岸を2回戦で痛めた足のケガで欠場となった3回戦で流経大柏に惜しくもPK戦で敗れ、不運の時代は続いた。


そして2014年度、鈴木徳真、渡邊凌磨を擁するチームで、準決勝の流経大柏相手に、今度はPK戦で逆に勝利し、ついに準決勝の壁を破って決勝進出したが、決勝の星稜戦では、逆転に成功したものの、同点に追いつかれてしまい、延長で決められてしまって惜しくも優勝を逃す。

前橋育英イレブン
H27.1.10 歴史を変えた全国選手権準決勝・前橋育英−流経大柏戦より

ここから前橋育英は新たなモードへと入り、2年後の昨年である2016年度にも見事に市船らを破って決勝進出を果たすが、冒頭で書いたとおり、青森山田に大敗を喫す。


そして、いよいよ3回目の決勝での挑戦となる。

特に今年は昨年に続く2連続であり、昨年の決勝を経験した2年生レギュラーが多く3年生となっており、スタメンの半分以上が2年連続で決勝の地を踏むという事は稀だろう。

2014年に惜しくも敗れた相手、星稜も、当時は2年連続での決勝進出チームであり、初優勝だった。

そうなれば今年こそは、前橋育英が優勝するタイミングに相応しい。


相手は、奇しくも過去に何度も育英の前に立ちはだかっていた、本田監督率いる流経大柏。

今シーズンは同じプリンスリーグの中で2回対戦し、そしてインターハイでも戦っている中であり、リーグ戦では2勝しているものの、インターハイでは敗れて優勝を持っていかれてしまっている。

さらにどうしても、なぜか前橋育英が昇格できないプレミアリーグへも、来年の復帰を決めており、すでに今季は2冠を手中に収めている流経は、最後の有終の美となる3冠目を狙っているとのこと。


現に、育英は準決勝で不覚にも失点してしまったが、流経はいまだこの大会では無失点を継続中と、ここまでの経歴だけ見ると流経に分があるように見えてしまう。


だが、、、、そんなの関係ない。

準決勝の試合内容を生で見たところでも、明らかにチームの総合力で上回っているのは前橋育英であり、育英こそ今期の優勝チームに相応しい事を、ここで証明しなければいけない。


確かに、個の強さという点では流経の方が勝っている点も多いが、サッカーとはそれだけではない。

いかにチームとして機能し、そして勝利に繋げるかだ。


山田耕介監督も、そろそろ集大成と位置付けているであろう、今年のチームで優勝せず、いつ優勝するというのだろうか。



群馬県勢悲願の、初優勝の時は来た。

勝つしか・・・ない。



埼玉スタジアム
決勝の試合前の前橋育英の大応援団



キャプテン田部井涼出場でベストメンバーの前橋育英

前橋育英は、攻守の大黒柱であるキャプテン田部井涼が3回戦で痛めた右足の打撲をケアして、準々決勝、準決勝と温存されていたが、ついにこの決勝では満を持してスタメン復帰。

そして、ここまで大会7得点と、得点王をほぼ手中に収めているエースFW10飯島陸にも、大迫の持つ10得点の大会記録に1点でも近づく事が期待される。


22榎本
10飯島陸
8五十嵐     9田部井悠
14田部井涼 7塩澤

15渡邊泰基(たいき) 2後藤田
3角田 5松田陸

12湯沢


大会無失点の流経大柏

流経大柏は、2年生ながら絶対的な空中戦の強さを武器に、セットプレー時の得点能力も高いDF5関川、そしてDF6瀬戸山のセンターバックと、アンカーでキャプテンMF4宮本優太を中心とした堅守がまず一番の武器であり、今大会無失点中。

そして準決勝の矢板中央戦を生で観戦して要チェックだったのは、2列目の位置で共に個の強さを発揮するMF10菊地と、MF19石川の両名。
この2人は球際が強く、ボールを奪うとグイグイ前に前進し、ゴール前まで押し寄せる強さが際立っていた。
さらに、準決勝の決勝点となったワールドクラス級のボレーシュートを決めたMF9加藤漣も控える。


だが、ここで最大の奇策として、なんと流経はDF登録の選手が5人!!!
何???何なの??と思ったが、なんとこの大会でほとんど試合に出ていないという、DF20三本木を、ここまで大会7得点と得点王を独走するエースFW10飯島陸専用のマンマーカーとして、DFラインの前に入れるという、今時珍しいすっぽんマーク作戦を立ててくる。
ここまで前橋育英を研究したからこその本田監督独自の作戦だろうが、これは本当に奇策。

しかしその分、準決勝であれだけ個の力をみせたMF19石川を外す事になるわけで、この極端な守備的な奇策はどう出るか?


11安城 14熊澤

10菊地
4宮本優太 24宮本泰晟
20三本木
2近藤立都        12佐藤漣
6瀬戸山 5関川

1薄井


なんとタイガーカラーではない前橋育英

冒頭で記述し、写真のとおり3年前の準決勝と同じカードであり、その時は普通に流経の赤色と、前橋育英の黄色黒のタイガーカラーは被らないので、お互いホームユニ同士で戦った事は記憶に新しい。

当然、この決勝の晴れ舞台は、3年前と同じ黄色黒のタイガーカラーで育英も来るのだろう・・・と思われたが、なんと準決勝と同じ白のアウェイユニ??

なぜ??

準決勝の上田西は、確かに黄色っぽいユニのため、これは仕方なしかと思われたが、しかし流経とは実際に3年前ホームユニ同士でやっているわけだし、なぜ今年に限って育英が白なのか??
・・・と、この晴れ舞台にタイガーカラーではない事に非常に落胆。

・・・なるほど、上等じゃないか。
ユニのハンデなんぞ、吹き飛ばすしかない。

そもそも、昨年の決勝でタイガーカラーで大敗しているので、この決勝だけは敢えて育英側が白を選んだのかもしれない。


タイガーカラーの前橋育英の強さを全国に見せつけて欲しかったところだが、この試合は致し方ない。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
準決勝に続き白アウェイユニの育英イレブンと、2試合温存されての満を持しての登場のキャプテンMF14田部井涼



立ち上がり、流経に決定的なクロスをゴール前に上げられてしまう

立ち上がり、やはり守備を固めてくる流経の前になかなか思ったように攻め込めず、封じ込まれる育英は、逆に11分に左サイドから流経のMF10菊地に攻め込まれ、ここにはDF3角田が対応するも、競り合いの際に足を滑らせてしまい、ここを抜かれてしまうと、決定的なゴール前のクロスを放り込まれ、MF4宮本優太がファーで詰めるも、あと一歩触れず立ち上がり最大の危機をかわす。


さらに刮目すべきは、流経も武器にするロングスローをDF2近藤が投げるわけだが、これまでの試合で育英は、大会一のロングスローの使い手であるDF15渡邊泰基がいるため、そのロングスローに対する練習は十分積んでいるためか、ほとんどのチームの数々のロングスローをDF5松田陸、DF3角田が問題なく跳ね返してきたが、流経にはロングスローを投げる近藤の技量以上に、それを驚くべき打点の高さのヘディングで落としてしまう、DF5関川というターゲットがいた。

育英の松田陸以上にタイミングの良いジャンプで、しかも高さとフィジカルを備えたヘディングをされてしまうため、これはなかなか育英陣の空中戦の強さを持ってしても止めきれない。

関川のヘディングだけは戦術云々、流れ云々ではない。
やはり流経から点を獲られるとしたら、この関川のヘディングだ。

実際、この関川にはインターハイの準決勝で決勝点を決められてしまっている。


20分にも流経のFKの流れから、右サイドでMF4宮本優太の、これまたゴール前への決定的なクロスに、2人の選手が詰めるも、わずかに触れず、難を逃れる。



やはり、群馬県勢初優勝のプレッシャー、そして決勝といえば否が応でも蘇る青森山田との0−5の悪夢からか、育英イレブンにいつにない硬さのようなものも感じられ、先ほどの名手・角田が足を滑らせるあたりが、まだ実力を出し切れてない印象を受ける。




育英の攻撃を封じる関川、そして三本木

ようやく流経の攻撃をしのいだ育英は反撃に出て、25分にFW10飯島陸がペナルティ内でやっとボールを持て、ゴール前左からシュートを放っていくも、これはDF20三本木が見事なブロック!!
飯島への徹底したすっぽんマークの三本木が、見事なマンマークを見せつけ、確かに飯島がなかなか自由に動けない。


だが、その後の27分の右CKでは、ボールが後ろにこぼれたところで、FW10飯島陸が左足で思いっきりミドルシュートにいくと、これがバーの左上をやや逸れていくが、非常に抑えの効いた、素晴らしいシュートで、明らかに育英側に流れを変える反撃ののろしとなり、その後は育英の攻撃にいつもの伸びの良さも観られるようになってくる。


だが、その攻撃モードに入った育英に立ちはだかるのは、エース飯島に張り付く三本木のマークの、ここぞというところでのカット、クリアをしてしまう、関川のヘディングの高さ。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
大会No.1の軌道を誇ったDF15渡邊泰基のロングスロー


先ほどまでは、味方のロングスローを落としてきた関川だが、育英の渡邊泰基のロングスローに対しても、だいたいは打点の高いヘディングでクリアしてしまうため、関川は敵味方共にロングスローに対して絶大な威力を見せる事となる。


前橋育英としては、これまで泰基のロングスローの際にはFW22榎本の高いヘディングで落とし、そのボールをエース飯島が拾って攻撃の起点となるのがパターンだったが、この榎本の高さに対しては関川、飯島に対しては三本木と、守備に関してはほぼパーフェクトな作戦といえる。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
競り合うFW22榎本と、DF20三本木のすっぽんマークに合うFW10飯島陸


飯島渾身のシュートもポストに阻まれ前半終了

前半は1分間のロスタイムに入ったところで、育英DF陣がクリアした縦パスに、一瞬の判断で身体を入れ替えてDF20三本木のマークを引きはがしたFW10飯島陸が、見事に裏に抜け出してゴール前右からシュートを放ちにいくも、MF24宮本泰晟の決死のスライディングブロックのプレッシャーもあり、このシュートは左のポストを直撃!!

あと数センチ、内側だったならば、跳ね返ったボールがゴールに入り、前半終了間際という最高の時間帯での先制点になっただろうが、惜しくも宮本泰晟のプレッシャーに阻まれた形。


うーん、やはり簡単には点が入らないか・・・


こうして前半は終了。

流経のまさかのマンマークという奇策により、試合は互いの良いところを打ち消しあった、渋い展開、締まった展開となった。

やはりサッカーとはこうでないといけない。

絞りに絞って、締めに締めて、それでも点を獲り合いにいくという、これこそがサッカーだ。


2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
激しいマークの中、ヘディングでシュートを放つFW22根本


後半、流経積極的交代

後半に入り、早々にMF9田部井悠が積極的にミドルシュートを放っていく。
悠はここまでの試合、誰も出来ないようなファンタジスタな気の利いたプレーが勝負所で多く、チームを救ってきたが、この決勝ではまだそのようなプレーを観られて無かったが、このシュートでほぐれたか、その後は悠らしいヒールパスなどが織り交ざるようになる。

流経は後半開始4分に早くも選手交代で、FW14熊澤に代えて、MF9加藤漣が投入される。

さらに流経は2人目の交代、MF24宮本泰晟に代えてMF19石川を投入。

準決勝でワールドクラスのボレーを決めた加藤漣、本来のレギュラー石川といった、スタメンと実力が変わらない戦力を惜しげもなく早目に投入できるのが流経の選手層の厚さを物語る。
石川は左ウィングに入り、安城、加藤漣と共に3トップのような形での攻撃となり、MF10菊地はMF4宮本優太と2ボランチ気味に下がり、そして三本木は相変わらずアンカーとしてすっぽんマーク継続中、といった布陣。


すると、前半半ばから防戦一方だった流経にも攻撃のチャンスが生まれ、左サイドからDF2近藤のクロスに、ニアでMF4宮本優太のヘディングは、ループ気味にゴールファーにシュートが飛ぶも、これをGK湯沢が渾身のセーブでこれをはじき出す。

湯沢はここまでの試合、大会中ほとんど決定的なシュートを撃たれていないが、いざ相手のシュートが来てもきちんと対応できる点が、さすがは育英の守護神。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
見事に失点を抑えた守護神GK12湯沢


五十嵐のシュート惜しくもバー!!切り札FW宮崎投入

18分、育英は怒涛の波状攻撃をみせ、最後にはMF8五十嵐が縦に出たボールに対し、左足でミートだけを心掛けるようなシュートを放つと、これが見事な弾道のシュートとなり、GK薄井も触れられないが、このシュートは上のバーを直撃!!!

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
決勝でも存分にスピードと運動量を発揮しチームに貢献したMF8五十嵐


なぜ飯島のポストに続き、入らない??

さすがにこのバー直撃には山田監督も頭を抱える。


この直後の19分、流経はなんと3人目の交代、FW11安城に代えてMF23池田を投入。

ここで同時に前橋育英も初めて交代のカードを切り、MF8五十嵐に代えて秘密兵器の高さとフィジカルを持つオーストラリアとのハーフFW13宮崎が入る。


これによって、育英は宮崎と榎本の珍しいツインタワーの形となるが、これこそ山田監督がこれまでの試合で敢えてとっておいた隠し技ということで、まさに秘密兵器の策に出る。

ここで育英は決してツインタワーに縦パスを入れていくパワープレイに出るわけではなく、あくまで足元のパスを主体に、とにかく前線に純粋に起点を2つ置き、相手DF5関川のマークを分散させる意図が見られる。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
得意のフィジカルを活かしたキープで前線の起点となるFW13宮崎


さらに、このツインタワー策にはもう一つの意図が見られ、五十嵐の代わりに左ハーフにFW10飯島陸がポジションを下げる事で、相手のマンマークを無効化する狙いもある。
流経は飯島が左ハーフに移った事で、すっぽんマークのDF20三本木を右サイドバックに移し、DF12佐藤連が代わってアンカーに入る形に移行して対応。



しかし、そんな攻撃に比重を置いてきた育英に対し、流経は度々反撃のチャンスを伺い、24分には流経の右サイドに出た高いボールに、DF3角田が高くはねたボールを見送ってしまい、ここで一瞬ルーズとなってMF19石川に決定的なシュートを撃たれてしまうも、ここもGK湯沢が見事にセーブし、こぼれ球もDF2後藤田がクリア。

さらに29分には流経が右サイドから中央、左にボールを繋ぎ、DF2近藤のクロスにファーでMF23池田がヘディングにいくも、DF15泰基が見事にここは競り勝ってクリア!!
かなりやられてしまった場面だけに、これは泰基、よくぞブロックした。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
左サイドからクロスを放つDF15渡邊泰基

前半後半とミスが続く角田もこの試合は決勝と流経からの重圧からか、やや今までよりもミスが目立つが、しかしそこの裏には松田陸もいるし、渡邊泰基、後藤田もいる。
この決勝は、これまでのどのチームよりも相手チームの個の力が強いため、一瞬の隙を突かれると、いつでも点を獲られてしまう危うさが常に漂う緊張感のあるゲームだったが、しかしDF5松田陸がいち早く相手のクサビのパスをカットしまくり、流経になかなかいい形を作らせなかったし、松田陸という絶対的な存在がいる事で、昨年の決勝も経験している4バックは、今大会一の集中した堅い守りの守備を披露した。

やはり、今年の前橋育英は守りこそが一番のストロングポイントのチームなのだと、この決勝をみて改めて認識した。




流経、執念の守備により育英の決定機をことごとく防ぐ

後半30分前後までの流経の反撃の流れを止めた後は、一気に前橋育英が仕留めにいく時間帯に。

34分には育英のMF7塩澤が思い切ってミドルシュートにいくと、これが流経の選手のブロックに当たり、ボールは強烈なドライブがかかったシュートとなって流経ゴールを襲い、GKとしては非常に処理しにくいボールとなったが、GK薄井はここをパンチングに切り替えて見事にゴール外に出す。
キャッチにいっていればミスる可能性が高く、前にこぼせば榎本が狙う、という形だったので、このパンチングはファインプレー。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
双子の兄MF9田部井悠の右足と共に、左足で素晴らしい軌道のボールを入れるキャプテンMF14田部井涼


するとこの右CK、MF14田部井涼の素晴らしいキックから、ゴール前でのDF5松田陸の決定的なヘディングシュートを相手DFにブロックされると、このこぼれ球をゴール左でMF7塩澤のシュートもゴールライン際でDFがブロックし、さらに榎本もシュートを押し込むも、これもDFがブロック。

なんと驚くべきことに、GKが一回も触らずに、ゴールライン際で流経DF陣は3回ものシュートの嵐を全て止めてみせてしまった。

本当に、なんで入らないんだ??と山田監督も手を広げる。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
CKからのDF5松田陸の渾身のヘッド!!


とにかく1点が遠い育英は、38分にはMF7塩澤が鋭く低いミドルシュートを放つも、今度はGK薄井がセーブ。


なぜ・・・なぜ入らない・・・

ダメか・・・ダメなのか?
どうしても前橋育英は、、、群馬県代表は優勝できない宿命なのか??

いい加減、延長を覚悟しなければいけない時間帯となってきた。

とにかく流経の守備が堅すぎる。
もはや戦術云々ではなく、これは執念だ。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英−流通経済大柏
この日もMF14田部井涼との縦の位置取りを徹底し、積極的な攻守に貢献したMF7塩澤


劇的・・・飯島陸のシュートから、榎本が奇跡の決勝弾!!!

40分、DF12佐藤連に代えてMF8金澤を投入し、MF10菊地をまた前線に戻していよいよ勝負に出てくる流経。

試合はいよいよ3分間のロスタイムに入る。

そのロスタイムも1分を経過した中、左サイドからDF15渡邊泰基のこの日何本目かのロングスローから、跳ね返されたこぼれ球を拾い、左サイドからMF14田部井涼が左足で入れていった前線ペナルティラインへの縦パスを、FW22榎本が頭で後ろに反らすと、これをFW10飯島がDF20三本木のマークを背に受けながらもしっかりとキープ。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英 決勝点のアシストとなったFW10飯島陸の反転シュート
後半ロスタイム2分での決勝点のアシストとなったFW10飯島陸の反転シュートの場面
ここでマンマークDF20三本木と、GKも吊りだす

すると、前に出てきたGK薄井もろとも、素早いターンでこのマークを一瞬剥がすと、鋭くはなったシュートをDF20三本木が腹で執念のブロックを見せる。

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英 決勝点のアシストとなったFW10飯島陸の反転シュート

そして、このこぼれ球を狙っていたFW22榎本がシュートに詰める!!!

GOOAAALLLLL!!!!


やった・・・???

やったか!!!!!????

ついに!!!!!

ついにゴールをこじ開けたか!!!!!!!

現地観戦していた私も、もはや絶叫を通り越して悲鳴に近いものとなる。

とにかく、目の前の劇的な展開があまりに信じられない。


ポストを叩き、バーを叩き、ゴールライン際で相手DFに阻まれ、とにかくゴールが遠く、この場面でも流経のDF陣は3人がしっかりとゴールライン際まで戻り、そしてGK薄井も足を延ばした中で、ほとんどコースなんて残ってなかったが、榎本が詰めたコースはそのGK薄井の伸ばした足の下であり、ここだけはコースが唯一空いていた。
3人のDFの方に撃っていたら確実に防がれているところだった。

この試合のキーパーソンとなった相手DF20三本木の、最後の最後まで身体を張って飯島のシュートを止めてみせた気迫、執念は本当に素晴らしいものだったが、しかしそれらをも撥ね退けて、2年生FW榎本がやってくれた。

ピッチ上で唯一の2年が点を獲るというのも、何かの因果を感じる。


後半ロスタイム2分、、、
まさに劇的なゴールとなった。




そして悲願の群馬県勢初の全国制覇

そして、思った以上に長く取られたロスタイムも終わり、ついに終了を告げる審判のホイッスルが鳴り響く。

その瞬間、まるで敗れた側のようにピッチに崩れ落ち、そして泣き叫ぶ育英イレブン。

そして、そこに駆け寄る育英側の控え選手やスタッフ達。

山田耕介監督は、ただただ、この瞬間を噛み締めるように、ピッチライン上に立ちすくむ。


こうして、長年の群馬県勢初の全国制覇という悲願が成し遂げられ、山田耕介監督としては、縁もゆかりも無かった群馬の前橋育英を36年率いてきた山田耕介の非願成就となった。


2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英 群馬県勢初の優勝!!

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英 群馬県勢初の優勝!!
山田耕介監督・インタビューで男泣き



エリート集団に必要だった執念という最後のピース

やはり、今年の前橋育英はこれまでのチームとは一皮むけた点があった。

それが前年の決勝で大敗で負けたという屈辱だろう。

育英は伝統的にサッカーエリート達が集まりすぎるのか、そしてそういった風土、校風ともいえるのか、どこか最後のところでの踏ん張り、メンタル面の弱さといった点が一番の弱点だった。

それが、あと一歩での準決勝突破、そして優勝を逃してきた一番の要因だったように思える。

しかし、この1年、ずっと0−5の決勝の悔しさを1日たりとも忘れてこなかったイレブン、忘れさせなかった山田監督の執念が、この一番の弱点、心の甘さを取り除いたのだろう。

決勝のハーフタイムでも、部員に送った檄は、とにかく「この日のために戦ってきた。泥臭くやっていこう。」の一言だけだった。

泥臭く、とにかく最後まで勝利を執念で掴む。

そのメンタル面が結局一番重要であることを、この36年間の経験上、山田監督が一番わかっているのだろう。


エリートの個に頼らない守備ありきのチーム

また、20年前から抱いてきた育英の悪癖とも言えた、個の力に最後は頼ってしまう甘さも、このチームには無用だった。

これまでは数々の名ボランチ、天才ボランチがチームの中核であり、そこが活かせないと、機能不全となるとチームも実力が発揮できなくなっていった。

だが、今年のチームは、まず守備ありき。
特に松田陸と角田のセンターバックが並んだという奇跡は偶然という他ない。
チームの一番のストロングポイントがこれまでのボランチではなく、センターバックであるというところが、今年のチームを象徴していた。

今年の主軸ボランチであった、キャプテン田部井涼を準々決勝、準決勝で温存できたように、決して特定の個人の力に頼るサッカーではなかった。

(唯一、そのセンターバックの松田陸だけは代えが効かない感は確かにあったが。。。だから私が昨年からほれ込んでいるわけだ。)


5つの原則でチーム一丸となって戦える集団に

メンタル面の克服、そして個の力に頼らないチーム全体の総合力で勝負できるチーム。

これらの今年の育英チームの強さを象徴すべき、全員がやるべき5つの原則があったという。

@球際
Aハードワーク
B攻守の切り替え
C声
D競り合い・拾い合い

いずれも、つまりはチーム一丸となって攻守に全力を尽くすという、まさに全員サッカーの精神を具現化したものだ。
こういった事を、チーム全員が共有することで、あれだけの個の強い選手が揃う中、その個が一丸となって戦う集団へと変貌を遂げられた。



結果的に、一瞬の油断と上田西の奇跡でもあった1失点以外の失点はせず、そして飯島陸の7得点をはじめ、足元でも勝負できる高さの榎本、スピードスターの五十嵐、ファンタジスタでもある田部井兄弟、決定的なパスの配給とシュートを放てる塩澤、得点に絡める4バックと、どこからでも攻撃でき、得点能力もある多彩な攻撃力でも他を圧倒した。

結局、どこのチームも今年の育英については納得の優勝と言えただろう。

何よりも、この決勝の流経がそれを証明してくれた。

あの流経が、マンマークという奇策を用いたというのに、それでも育英は総合力の高さから、FW宮崎の投入により関川と三本木のマークを外すなどの柔軟な対応で奇策をねじ伏せた。

何よりも、あれだけシュートがバーやポストを叩けば、逆に相手にチャンスと得点がいってしまうのがサッカーの常だが、そこは守備がベースの育英はしっかりと跳ね返し、そして最後に得点を決め切る勝負強さ、メンタル面の克服がここに証明された結果の優勝だった。

埼玉スタジアム
育英イレブンを讃える育英応援団



山田耕介監督36年の思いを成し遂げた育英イレブン

36年間の山田耕介監督の思いが、わずかその半分しか生きていない18歳足らずの高校生たちにどの程度理解できるかはわからない。

ただ、その18歳足らずの青年達に、確かに託されたものが、県民200万の思い、北関東の片隅でしかない群馬の名を世に知らしめる全国制覇への夢だった。

ただただ、高校生たちはガムシャラにボールを追い続けた。
本人達にその県民の思いがどこまで伝わっているかはわからない。

しかし、確かに高校生の若者たちはやってくれた。
山田耕介監督に、群馬県民200万の思いに、見事に応えてくれた。
今まで、遥か先に霞む程度しか見えなかった、その栄光の光を、確かに見せてくれた。

かつて国見や清水商業、帝京、浦和南などが強かった頃、まさか群馬代表がこんな栄光まで辿り着けるなんてことは、サッカー関係者なら誰もが予想できなかったという。

現に、山田監督率いる前橋育英ですら、それまでの35年間で、常に最強のチームを作りながら2 0回もの全国選手権に挑戦し続け、ことごとくベスト4止まりとなり、そしてようやく鬼門の準決勝を突破した3年前からの2回の決勝も、ここでもことごとく散っていった。
どんなに最強のチームを率いてもだ。

今回の決勝も、決定機のシュートはことごとくポストを叩き、バーを叩き、そして流経の気迫の守備ラインに、ゴールライン際で粘られた。
このまま延長に進むのか・・・
まさか、このチームですら優勝は無理なのか・・・

もはや、そこには理不尽なまでの何かの魔物がピッチ上に見えた。

だが、18歳足らずの若者たちはやってくれた。
その、あまりに巨大で分厚い魔物の壁を、自ら打破してみせた。
超えてみせた。

その、まだ未成熟な身体に、確かに群馬県民の思いを宿し、そして決勝ゴールへと繋げてくれた。


私自身も、松下世代の前橋育英のあまりに悔しいベスト4止まりから、早20年。
当時はまだ国立競技場での準決勝であり、自分もテレビでの観戦だったが、あのあまりに悔しい市船とのPK戦での敗退では、テレビの前で崩れ落ちた。
あの日から、自分の高校サッカー全国選手権に対する思いが強く芽生えた。



そして、あれから何年も待ちに待った。

そう・・・何年待ったか・・・

・・・そして、ついに、目の前でその願いは叶った・・・


育英イレブン・・・
おまえら・・・おまえら、、本当に良くやった・・・よくやってくれた・・・


3年前、流経を徳真の劇的な同点ゴールで追いついき、そしてPK戦で勝って、準決勝の壁を撃ち破った時もスタンドで泣き崩れたが、やはりこの優勝にも自然と涙がこみ上げた。


本当に有難う、前橋育英イレブン

県民栄誉賞、そして前橋市からも市民栄誉賞が贈られるというが、それ以上に、これ以上ない感動をありがとうと心からお礼を言いたい。


2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英 群馬県勢初の優勝!!
2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英 群馬県勢初の優勝!!

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英 群馬県勢初の優勝!!
山田耕介監督、悲願の胴上げ!!

2017年度 高校サッカー選手権 前橋育英 群馬県勢初の優勝!!
DF2後藤田のみを応援する後藤田親衛隊と応援に応えるDF2後藤田
後藤田がボールを持つと狂喜乱舞で全身で応援していた姿が印象的





(18.1.14完成版UP)






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