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準々決勝を賭けて・・・東福岡を破った富山第一との闘い
悲願の全国制覇を賭けた今年の前橋育英の全国選手権での戦いも、初戦はエース飯島陸の4得点の活躍で圧勝で勝ち上がり、そしてこの第3回戦では、前々回覇者の東福岡を破った富山第一を相手に、準々決勝を争う事となる。
初戦に大量得点を決めたため、よくあるジンクスで次の試合ではなかなか得点できないのもよくあるパターンであり、とにかく先制点をどう獲れるかがポイントとなる。
全国制覇しかない育英としては、ここで立ち止まっている場合ではない・・・
とにかく勝って準々決勝に進むしかない。
初戦4得点の飯島陸擁する前橋育英
最強の4バックをはじめとした鉄壁の守備力がベースにある前橋育英として、鍵は初戦で4得点を挙げたエース飯島陸をはじめとした攻撃陣が先制点を獲れるか。
同じく初戦で得点を挙げたFW宮崎も含め、どうにか先制点を奪いたい。
22榎本
10飯島陸
8五十嵐 9田部井悠
14田部井涼 7塩澤
15渡邊泰基(たいき) 2後藤田
3角田 5松田陸
12湯沢
富山第一
富山の武器は徳島ヴォルティス内定の坪井と、長身で東福岡戦でも貴重なロスタイムでの決勝点を挙げた大竹の2トップであり、攻撃はほぼこの2人を軸に限定し、あとは5バックで守りを固めるという、分かりやすい堅守速攻チームとのこと。
やはりこういったチームに対しては、どう先制点を先に獲れるかだろう。
とにかく、前橋育英がどうしてもあと一歩で手に入れられないプレミアリーグへの参加権を富山第一は手にしており、実力伯仲の戦いとなるだろう。
9大竹
10坪井
6高縁 8前田
7多賀
4小森 11高浪
2中田 3滝本 5松本
1吉田
強風の中、ロングスローで攻める富山
風速6m/sを超える強い北風が吹く中での、富山が風上でのキックオフ。
富山で目立つ戦力は、やはり坪井、大竹の2トップと、中央1アンカーの位置でチームの攻守の軸となるキャプテンMF7多賀がしっかりとした足元の技術でしっかりとボールをキープし、前橋育英のイレブン相手にも一歩も引かない。
だが、こういう強い相手だと生きてくるのが、U−18の代表2人の角田、松田陸の球際の強さであり、富山のストロングポイント相手にも一歩も引けを取らない。
やはり今年の前橋育英の一番のストロングポイントは、明らかにこの最強の最終ラインだ。
さらに富山第一のもう一つの武器は、左右のストッパー2人、DF2中田とDF5松本の2人によるロングスローというダブルキャノン。
開始10分には早速DF2中田からのロングスローがゴール前までかなり遠くに飛ばす。
しかし、前橋育英もDF15渡邊泰基のロングスローがある。
昨日の東福岡戦でも31本ものロングスローを浴びせて翻弄したらしいが、だが、日ごろからロングスローの練習をしているロングスローの使い手がいるチーム相手には、ロングスローは絶対的な武器にはならない。
16分、左サイドからの育英のFK、ファーへのボールに頭で折り返したボールをゴール中央でFW22榎本の決定的なヘディングシュートは、惜しくもバーのわずか左・・・
これは大変惜しかった。
しかし、この立ち上がりを見るに、やはり富山第一はかなりの強敵。
やはり1点勝負になってくるだろう。
ロングスロー対決は泰基に軍配も、スコアレスで前半折り返し
対する富山も23分に縦パス一本で攻めあがったFW9大竹が決定的なシュートを放ちにいくも、わずかに松田が先にかろうじて触りCKに逃げる。
この後も今度は右からDF5松本、そして27分には今度は育英の左サイドからDF15渡邊泰基がロングスローを入れていく。
まあ、見た目の問題かもしれないが、やはり富山の2人よりも、渡邊泰基のロングスローの方が威力があるのか、予想以上に伸びる渡邊泰基のロングスローへの目測が誤り、ゴール前をボールが通過する場面も。
30分、またも富山の縦パス一本から、FW9大竹が単身ドリブルで攻め込んでいき、ペナルティ手前左の位置でファールで止める事となり、絶好の位置でのFKを与えてしまう。
しかも強風の追い風。
これはまずいかと思われたが、キャプテンMF7多賀が放っていった直接シュートは、思ったほど高く上がらず壁に当たる。
しばらく防戦となっていた育英は36分、左サイドでロングスローを入れていくと、ニアでFW22榎本が頭で後ろに反らし、その裏でFW10飯島陸が頭で決定的なシュートを入れていくという、完璧な狙い通りの攻撃を見せるが、この渾身のシュートに、相手GK吉田がファインセーブでこれを止める。
やはり、ロングスロー対決は、相手には左右2人いるかもしれないが、それをもってしても泰基1人の方に軍配が上がるか。
なんといってもボールの”伸び”が違う。
かつて、元ザスパでもある里見のロケットスローという、ゴール前まで軌道が落ちないという脅威の、史上最高のロングスローがあったが、それに次ぐといっていいボールの伸びだ。
40分の時間を過ぎたアディショナルタイム、今度は富山の2トップに縦パスで抜かれてしまうも、後ろからチーム一の快速を飛ばしてMF8五十嵐がなんとこれに追いつき、これをクリアして前半はタイムアップ。
お互い一進一退の攻防、といった試合展開だったが、前半最後の飯島のヘディングなど、決定機の多さは育英に一歩分があったものの、惜しくもスコアレスで折り返しとなる。
とにかく風が強いこの試合、風上に立つことが吉と出るか凶と出るか。
相手の富山も、前半は風に流れてしまった2トップへの縦パスが、後半は止まりやすいという利点もある。
さすがはプレミアリーグを決め、東福岡も倒し、優勝経験もある富山第一。
強豪とはこういうチームの事を言うのだろう。
後半も泰基のロングスローが冴えるが、点は入らず
後半6分、富山は前線の2トップにボールが入ったとみるや、ストッパーのDF5松本が一気にサイドを上がっていき、松本の攻撃参加により数的有利を作ってからの右サイドからの崩しから、ペナルティ内に決定的なクロスを入れていくという攻撃をみせる。
なるほど、富山の5バックは、決して守るだけではない、現代版3バックに必須の、ストッパーが時にはサイドバックのごとく攻めあがる術をきちんと用意しているか。
14分、ようやく育英は後半1回目のロングスローのチャンスとなり、左サイドからの泰基のロングスローに、ニアで反らした裏で、MF7塩澤のボレーシュートは、惜しくも左にミートを外れ逸れる。
さらに18分、左サイドで泰基がもらったファールからのFKは、ゴール前ファーに位置取った泰基が頭で決定的な折り返しを入れるも、ちょうどゴール前に控えていた松田陸らの足の届かないところを転がって、ラインを割る。
惜しい!!明らかに決定機は育英の方があるが、しかし入らないとそこまでだ・・・
時間もいよいよ後半の後半戦に入る中、とにかく点が先に欲しい。
それにしてもこの後半は、やはり風上に立つ育英が有利なのか、はたまた育英得意のパスを繋げるサッカーが落ち着ける時間帯に入ったのか、ほとんど育英の攻撃の時間が続き、特にこの試合は相手のダブルキャノンに触発されたか、泰基のロングスローが冴えに冴え、相手のロングスローは自慢のセンターバックコンビがたいていはすぐに跳ね返すが、泰基のロングスローはほとんどチャンスに繋がる。
育英、2人交代で仕掛ける
後半25分くらいまでの育英の圧倒的な攻撃の時間帯も過ぎると、互いに疲れが出始める時間帯となり、中盤のプレスが共に緩む展開に。
そういった疲れをみたか、30分、育英が先に交代に動き、MF8五十嵐に代えて2年生のFW24高橋尚紀が入る。
五十嵐はおそらくピッチの誰よりも快速を飛ばして攻守に走り、本当によく貢献した。
さらに37分にはFW22榎本に代えてFW13宮崎を投入。
榎本もこの試合では、泰基からのロングスローをかなり正確にニアでことごとく競り勝ち、チャンスに繋げた。
そして代わって投入の宮崎はオーストラリア人の母を持つハーフであり、185cmの体躯に恵まれたフィジカルモンスター。
この大会、宮崎がジョーカー的な存在になれれば非常に優勝に有利となるところ。
昨年までのジョーカー馬場のような存在となれるか。
ラストプレー、エース飯島の目の前にボールがこぼれ劇的ゴール!!!
しかし、時間はもう残り1、2分を切ってくる中で、確率が単純に半分になってしまうPK戦にはもつれこみたくないところ。
この終盤にきて、富山も持ち前の最後のフルパワーを使ってきて、2トップに走らせてチャンスに繋げる。
すると後半40分まであと15秒といったところ、相手のDFリーダーDF3滝本の頭でのクリアが弱くなったところのこぼれ球をFW10飯島陸がここぞとばかりに決定的なシュートを放つも、相手選手に当たって軌道が変わったこのシュートは左のバーを直撃!!!
なに〜???これでも入らない???
恐るべきは富山第一の守備の集中力。
これが強豪校の守備というものか。
表示されたロスタイムは3分。
うーん、どうにかならないか・・・
どうにかPK戦は避けられないか??
流れ的にPK戦にもつれ込むと、決定機が多かっただけに非常にまずい。
しかしロスタイム2分、ロングスローのチャンスは相手の富山、右サイドからのDF5松本のロングスローがゴール前に襲い掛かる。
そして、この攻撃をはじき返したロスタイム2分半経過、右サイドからを起点とした攻撃に、遠目から最後のシュートとばかりにMF7塩澤の右足からの力強いミドルシュートはペナルティ内の相手に当たり、なんとここにこぼれたボールが左でフリーで狙っていたFW10飯島陸の目の前に・・・
これだけは外さないと、エース飯島陸の放ったシュートは、今度こそゴール右に突き刺さる!!
GOOAAALLLLL!!!!
これがエースというものか・・・
まさにゴールへの嗅覚というか、この一瞬のために、全身全霊でボールが出てくるところに位置どる、これがエースというものだ。
本当に、このままPK戦はヤバい状況だっただけに、最後の最後に決めてくれた。
これで大会5得点。
大会記録の10得点も視野に入ってきた。
また、最後に富山第一の守備をこじ開けた塩澤のシュートも素晴らしかった。
一瞬だけ、中盤のポジションでスペースが空いた隙を逃さずに、この最後の最後というラストプレーで冷静に、己の撃てる最大のシュートを叩き込んだ事が、このゴールに繋がった。
群馬大会の決勝戦でも、劇的なラストプレーでのダイレクト縦パスを決めた塩澤だが、この選手には不思議な力が宿っている。
準々決勝へ
こうして大会もベスト8が出そろい、準々決勝の相手は鳥取の米子北との対戦となる。
これに勝てば、準決勝、いよいよ舞台は記憶に新しい埼玉スタジアムへとなる。
1試合目はエース飯島陸ら攻撃陣の肩慣らしといったところだったが、2試合目のこの試合では、富山第一の守備の硬さに対する攻撃の組み立て方や、プレスに対する中盤のいなし方、そして強力2トップに対する最終ラインの対応と、かなりいい経験を積めてきている。
昨年の決勝の悔しさの経験があるからこそ、どんなにタレント集団であろうとも、今年の3年生は決しておごる事は無い。
埼玉スタジアムからは自分もまた現地参戦の予定。
是非ともまた、埼玉スタジアムに連れていって欲しい。
頼んだぞ!!前橋育英イレブン!!
(18.1.3UP)
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