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2016-2017全国高校サッカー選手権
H29.1.5 準々決勝
前橋育英(群馬) 2−0 滝川第二(兵庫)


〜2回のPK奪取で一昨年に続くベスト4進出!!〜

横棒



DF角田を欠く中、ベスト4進出を目指す育英

2回戦で宿敵市船を破り意気の上がる育英は、3回戦の遠野戦でも開始早々の1点を守り切る形で見事3年連続となるベスト8に駒を進めたが、しかしDF角田が2枚目のイエローをもらってしまい、この準々決勝は累積欠場となってしまう。

今年のチームの最大の特徴であった、全員2年という4バックの一角が欠けてしまう形となり、以前にも同じようにセンターバックの主力が出場停止で、そこから守備の安定性が崩れ敗退した事もあるほど、チームの根幹たるセンターバックが欠けるというのは非常に重要な事態だ。


しかし、こういった障壁を乗り越えてこそのベスト4進出、そして優勝であり、避けては通れない壁だ。

相手は育英と同じく強豪・滝川第二であり、これまで圧勝で準々決勝まで進出してきたわけだが、その攻撃をしっかり受け止めて、育英の力を発揮し、そしてベスト4・埼スタに駒を進めたい。




DF角田を欠く前橋育英

冒頭にも書いた通り、2年生4バックの一角、DF角田を欠く育英だが、代役にはDF2小山(こやま)がきっちり入るわけで、ここで普段通りのプレーが出来るかが今日の試合のポイントとなる。

その他は右サイドに田部井兄弟の兄・田部井悠が入るのも含め前の試合と同じ。



24人見(ひとみ)
10飯島陸
9高沢      25田部井悠
6長澤 7大塚

15渡邊泰基        19後藤田
2小山 5松田陸

1月田




ベンチはFW18馬場、FW23吾妻、MF11岩下、MF8田部井涼、MF14塩澤、DF16金田、DF4浅賀、GK12松本。



ここまで圧勝の滝川第二

滝川第二は1回戦秋田商業を2−0、2回戦大分を6−0、3回戦佐賀東を5−0と、いずれも複数得点差の圧勝で準々決勝まで駒を進めている。

その攻撃力の秘訣は、毎試合変わる攻撃陣のメンバー、布陣とのことで、1回戦、2回戦出場だったFW本田や、2回戦でゴールを決めたFW江口、途中出場ながらゴールを決めたFW稲田も3回戦ではベンチだったとのこと。

その3回戦で活躍したのが、1回戦、2回戦でベンチ外だった2年生のFW6辻本であり、開始2分でアシスト、19分には自ら追加点を決め、一躍ヒーローとなった。

そんな日替わりヒーローを産みやすい、モチベーションを上げることがうまい采配が滝川第二の特徴といえる。

DF角田が出場停止で守備に不安を抱く中、この攻撃陣にしっかり対応できるのかが試合のカギとなる。



17溝田
9山田裕也
10持井    14江口
8神宮 7パク

3上出         2日野
16森 5今井

12樫野



立ち上がりから圧してくる滝川第二

滝川第二は開始2分、センターサークル付近でのFKを得ると、周りの気がそれている内にキャプテンDF5今井がキーパーの位置をみたロングシュートを放っていき、これはバーを越えるも、なかなかに意外性と可能性のあるシュート。

対する育英も4分、左サイドでスローインを得ると、DF15渡邊が得意のロングスローを入れると、FW24人見が後ろに落とし、MF25田部井悠が詰めたところを倒されるもPKの判定まではもらえず。


6分にも渡邊のロングスローが跳ね返されたところに、再び渡邊が左足アウトで狙っていくと、これが鋭い伸びのあるシュートとなり、惜しくも左外のサイドネットに突き刺さる。


13分、滝川第二は流れるようなパスワークからの左サイドのスルーパスにFW17溝田が抜け出しGKと1対1になりかけたところを、GK月田が鋭い飛び出しでブロックし、このシュートを食い止める。
素晴らしい!月田!!
ちなみに月田は他県出身も多い育英の中で、富岡出身で前橋FCで鍛えた地元プレーヤー。


18分には左から流れてきたボールにMF8神宮がペナルティ手前中央で積極手にシュートを放っていき、これはバーの上。
この時間帯はやや滝川第二の流れになってきている。




長澤が得たPKを自ら決め先制!!!

そんな滝川二のペースとなりつつあった中の20分だった。

右サイドからDF19後藤田のクロスをファーでFW24人見が落としたところに、後方から勢いよく上がっていったMF6長澤がゴール前までドリブルで入り、シュートにいったところをDF5今井に倒され、これにPKの判定!!!!

スローでみると、確かに腕を使ってボールより先に倒してしまっており、これはPKだ。

このPK、PKを得たMF6長澤が自ら蹴りにいき、相手GKをよく見て、右で右サイドを狙う技ありのシュートで見事に決める!!

GOOAAALLLLL!!!!


よく決めた長澤!!!

人見の落としに詰めていったタイミングとドリブルの鋭さも逸品だったが、このPKも非常によく落ち着いて決めてみせた。

さすが育英の屋台骨を支える、大塚とのW司令塔の1人。

また、見事にボールを落としたFW24人見のポストもさすが。
途中出場から2得点を決めている馬場をベンチに押しやっても、まだノーゴールの人見を山田監督が起用する理由がここにある。
人見が最前線にいることで、育英はトップ下の飯島はじめ、左の高沢、右の田部井や、W司令塔の2人のボランチらが伸び伸びとゴールを狙える。


それにしても、大きな大きな先制となった。
滝川第二にとっては、この大会初めての失点となる。


26分にも育英は左サイドから出た縦へのボールに、GK樫野が蹴りに行ったクリアボールが味方に当たってしまい、このこぼれた球をFW10飯島が拾いにいき、GK樫野の位置からしても追加点を奪えた!!と思ったが、樫野がギリギリブロックに間に合い、惜しくもシュートならず。

滝川第二はそもそも県大会から通じて先制されるという経験が乏しいらしく、明らかに動揺が見られる。




前半は1点リードで折り返し

34分、右サイドからのFKを得た滝川第二が入れていったペナルティラインを少し超えたところへのボールに対し、ボールの勢いがやや柔かいとみるや、GK月田が思い切って飛び出し、これをセーブしてしまう。
なんたる守備範囲の広さ。
プロでもそうは見ないシーンだった。


育英も35分、ゴール前左に出たボールにFW10飯島が詰めてGK樫野もかわしながらワンタッチシュートを放っていくも、DF16森がギリギリのところでクリア。
惜しい!!枠の左を捉えていただけに、これは惜しかったし、DF森がナイスブロックのファインプレーだった。


39分も右サイドから起点を作り、FW24人見がペナルティ右サイドでドリブルで切れ込むと、FW10飯島にスイッチし、飯島の狙い澄ました左足でのシュートは惜しくもGK樫野の正面。


こうして前半40分も終了し、育英は長澤のPKからの得点により1点リードで折り返しとなる。


首尾よく先制も獲れたが、それ以上に大きな収穫は最も心配されたDF3角田が不在であることの影響が、この試合ほとんど見られない事で、DF2小山がしっかりとその穴を補って、遜色ない粘り強い守備陣を形成できていること。

滝川第二相手にしっかりと前半を抑えられた収穫は大きい。




後半立ち上がり、惜しいシュート連発も追加点ならず

後半、どうやら滝川第二はポジションを変えたようで、MF9山田を右サイドへ、MF14江口を左へ、そしてエースFW10持井をFWの位置に上げ、反撃体制をとる。

10分、FW10飯島が左サイドからDF15渡邊とのコンビネーションで見事に抜け出し、左で決定的なシュートを放つも、GK樫野が左手一本でファインセーブでこれを止める。
飯島も角度がやや無かったところとはいえ、これは追加点が欲しかったが、さすがは若き2年生エース、得意のテクニックを活かしたシュート力を既に見せつけている。


15分、左サイドからMF9高沢が前が空いた瞬間を見逃さず、右足を振りぬいていったミドルシュートがとんでもない威力でゴールに向かっていくも、惜しくも上のバーを直撃!!
さらにこのこぼれ球にFW10飯島が詰めてゴールに押し込むも、これは残念ながらオフサイドの位置だった。
高沢の右足の威力もこの大会で光っている。
高沢も桐生の黒保根出身で、月田と共に前橋FCで鍛えてきた地元プレーヤー。
セットプレー時のキックの威力も素晴らしく、今の育英に左サイドの高沢は無くてはならない存在となっている。


ここで両チームとも1人目の選手交代、育英はいよいよジョーカーFW18馬場をMF25田部井悠に代えて投入し、滝川第二はMF9山田を代えて、前の試合でヒーローとなったMF6辻本を投入。

さらに18分、滝川第二は連続の交代で、MF14江口に代えてFW20本田を投入。
江口は後半左サイドに入ってから鋭いテクニック溢れるドリブルが活きていたが、この本田も本来はレギュラーの選手であり、こういったいくらでも攻撃の駒がいるのが滝川第二の特徴。


一昨日の遠野戦では、なかなか追加点を奪えず、自ら苦しい試合へとしてしまった育英としては、滝川第二の得点力を考えても、ここは何とか追加点を奪いたいところ。




追加点が遠い育英

22分、育英は左CKからゴール前で落としたボールに、混戦となってあと一歩で滝川第二のゴールまで詰め寄るも、惜しくもゴールはならず。
滝川第二もよく追加点を防いでいる。
さすがは準々決勝。


24分、滝川第二は投入されたMF6辻本が右サイドから切れ込み、ゴール前に選手も詰めていたが、得意の左でシュートを選択し、これはバーのやや右。
滝川第二はこの後半でようやくシュートを撃てた格好。
やはり全体的に育英の方の力を感じる後半となっており、おそらく前半は滝川第二も運動量で力の差を補っていたところを、後半は互いに連戦となってプレスも弱まる中、個々の力の差が出てきているのだろう。
特に育英は滝川第二のプレスをかいくぐってパスを回すポゼッション能力が目立つ。


26分、育英も2人目の交代、ここまでそのテクニックとシュート力で滝川第二を苦しめてきた2年生エースFW10飯島に代えて、田部井兄弟の弟・MF8田部井涼が投入される。
相変わらず、双子なのにほとんど2人同時にピッチには立たない田部井兄弟。


29分、滝川第二は3人目の交代、FW17溝田に代えてFW11中森を投入。


32分、育英はダイレクトパスを繋いで中央を崩し、FW24人見から出たパスにMF7大塚が抜け出し、決定的なシュートを放つも、惜しくもバーのやや右。
もうこんな時間か・・・相変わらず追加点が遠い育英。




人見がPKを得て、これまた自ら決めて追加点!!!

よく守ってきた滝川第二だが、35分だった。

前に出されたボールをFW24人見が競り合い、マークを相手にボールの競り合いに勝つ形でペナルティ内に詰め寄ると、詰めていったDF5今井を見事なフェイントでかわし、ゴール前まで抜けたところで、抜かれた責任をとるように、DF5今井が後ろから足をかける形でファールし、先制の場面と同じようにイエローと共にPKの判定!!!

またしてもこのPKは、獲得した本人が蹴る事になっているのかFW24人見が蹴りにいき、右で左にキッチリ決める!!!


GOOAAALLLLL!!!!


なんと育英はPKで2点を得る事となり、そしてその相手がどちらも相手のキャプテンDF5今井というのが運命のいたずらを感じる。
この2枚目のイエローで今井は退場となり、もうこの追加点で試合は決まった。

育英にとって大きいのは、ようやくFW24人見に得点が入った事だろう。
これで次の準決勝も伸び伸びと得点を狙っていける。


滝川第二は38分、MF7パクに代えて長身のFW24稲田を投入。

40分、ペナルティ手前やや右中央からのFK、FW10持井の右足で右を狙っていったシュートはやや右。


育英はFW24人見に代えて、DF4浅賀を投入。



一昨年に続くベスト4進出!!!

こうして2分間のアディショナルタイムも無難に過ぎ、育英は全体的に攻守に力を見せつける形で一昨年に続くベスト4、埼スタでの準決勝を決めた。

この試合を観るに、本当に育英はここ近年強くなったと感じる。

この4戦、未だ無失点を続けているとおり、試合を追う毎に守備に安定感が増している。

そしてその安定感は、レギュラーのDF3角田を欠きながらも、この大会一番の守備を見せた。


ジョーカー馬場もそうだが、守備では小山がしっかりと存在感を発揮し、交互に出場を繰り返す田部井兄弟を含め、レギュラーとベンチの選手の力の差というものがほとんど無く、誰が出ても遜色ない育英のサッカーが出来るのが今年の育英の一番の強みだろう。


確かに一昨年のように、渡邊凌磨も、鈴木徳真もいない。
U−18、U−19代表も、Jリーグ内定者もおらず、かつてのタレント集団と呼ばれた育英ではないかもしれない。


だが、当時私も彰かな育英の最大の弱点と見ていた、どうしても個の力に頼る、力任せのサッカーはもはや今の育英にはなく、あくまで攻守共にチーム全体での連携を最重要視し、特にこの試合では流れるようなダイレクトパスの交換からの中央での崩しなどの威力は相当なモノだった。

そのパス交換の正確さで、滝川第二が仕掛けてきた猛プレスもかわし、そして裏に生じたスペースをどんどん突いていけた。


滝川第二も、その対応にかなりの労力を削がれてしまい、これまでの圧倒的な攻撃力の半分も出せなかったのではないだろうか。




絶対的な選手がいないからこその強さ

追加点が獲りきれないという課題は、2回戦の市船戦からずっと続いてはいるものの、明らかにそれを補ってあまりあるほどの守備の安定感が増してきている。


そして、追加点は奪えないにせよ、前線でボールを収められる攻撃陣が守備陣を助けている。
特に後半、ジョーカー馬場が入ると、人見と2人でボールを収められるため、その安定感たるや他のチームには無いものだろう。
これぞサッカー、攻守一体。
攻撃だけの、守備だけのサッカーで勝つなんてことは、もはや現代のサッカーではあり得ない。
必ずそこは連動する。


そして、この攻守一体のサッカーが出来るのは、絶対的な選手がいないからこそ。

だからこそ今年の育英は強い。

自分ははじめ、今年は2年生が4バックを敷き、エース飯島も2年ということで、今年でいい経験を積み、来年が本当の勝負かという考えもあった。


だが、どうやらそんな考えは間違いだったようだ。

2年生4バックだからこそ、大塚、長澤の3年生ボランチコンビがしっかりとバイタルエリアをケアして4バックを助け、前線では2年生エース飯島にスペースを作ってやるために3年生のFW人見が前線で身体を張る。

文中に書いたとおり、GK月田、MF高沢の3年生前橋FCコンビの活躍や、DF3角田の穴を埋めた3年DF2小山も含め、このチームが本当に2年、3年が絶妙に融合していることが分かる。


来年じゃない、今年のチームこそが優勝を狙える、育英史上、過去最高のチームだ。

これが来年になると、明らかに3年生4バックと、エース飯島、田部井兄弟の個の力に攻守を頼ったチームになってしまう可能性が高いだろう。


今年の、このチームだ。


このチームで一昨年に続く、決勝進出、そして全国制覇まで駆け抜けて欲しい。







(17.1.5UP)






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