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2015-2016全国高校サッカー選手権
H28.1.5 準々決勝
前橋育英(群馬) 0−1 國學院久我山(東京A)


〜どうしてもゴールが遠く、ベスト8に散る〜

横棒



連続3得点で勝ち進む前橋育英

初戦、大変苦しい戦いとなった熊本の大津からロスタイムでの劇的な決勝点で勝ち進み、続く3回戦では山梨の帝京第三に3点先取しての勝利で準々決勝を決めた前橋育英。

特に1戦目では右サイドの佐藤誠司、2戦目では左サイドの金子拓郎が活躍しているという、日替わりヒーローの形になっているところが素晴らしい。

逆のシードからは昨年優勝の石川・星稜が勝ち上がってきている。

相手がまたしても星稜になるかはもちろんわからないが、1戦1戦強豪との戦いとなる中、決勝の舞台に再び立つまで負けるわけにはいかない。

準々決勝の相手は、7年前にも同じ準々決勝で当たった東京A代表國學院久我山。
当時は六平らの黄金の中盤を擁するものの、決定力不足で1−0でどうにか勝ったわけだが、久我山としてもリベンジの思いは強いだろう。




前橋育英

育英は一昨日と全くメンバー変えず。
攻撃陣では、まだ見せ場が少ないFW野口が、昨年の決勝での初スタメンでの得点を獲っているだけに、そろそろ1点あっても、と期待がかかる。


11野口
10横澤
13金子拓郎   9佐藤誠司
8大塚 5尾ノ上

7吉田         15綿引(わたひき)
4大平陸 3小畑

12平田



ベンチはFW23田端、FW17馬場、MF18外林、MF14関川、MF19高橋、MF6井上、DF29渡邊泰、DF16大畑、GK1山岸。



國學院久我山

3年連続出場、初のベスト4を狙う久我山は高校サッカーでは珍しい4−3−3。
特に2年生ながらエースナンバー10を背負う澁谷が、体格的にも育英の横澤にそっくりであり、その動きには注意を要する。
センターバックのDF4上加世田(かみかせだ)、GK1平田と1年生が2人もスタメンに入っているのも特徴。
特に上加世田は、体格にどうしても差が出るはずの高校世代で、センターバックに1年が入るとは、よっぽどの選手なのだろう。


10澁谷
9小林和樹      8内桶
14名倉
7鈴木遼太郎 3知久
6山本研        5宮原
4上加世田 2野村

1平田



澁谷、名倉を中心に足元で勝負してくる久我山

久我山はトップ下のMF14名倉がゲームを作り、前線中央のFW渋谷にどんどんボールを集めて勝負させるというスタイル。

6分にはキャプテンDF5宮原が右サイドからドリブルで仕掛け、育英DFラインを崩した後に、ペナルティ内のゴール右に入っていったFW10澁谷にボールが渡り、鋭いターンからのシュートはギリギリバーの左を逸れていく。
あと少しボールに回転が内側にかかっていたら入っていた。
初っ端から本当に危ないシーンだった。

これまでの2戦、先制を獲る事で、ある程度自分たちのペースで試合を出来ていた育英としては、やはり先制を先に獲りたいし、先に獲らせたくない。


12分にも今度はペナルティ左に攻め入ったFW10澁谷がDF3人を相手に強引に縦に仕掛けていき、決定的な折り返しを入れる場面でDF3小畑がどうにかブロックでCKに逃れるのがやっと。

これまでの2戦、小畑は身長175cmながら、大津のガンバ内定長身FW一美すら抑え込んできたわけだが、この試合では1トップに小柄でスピードのある澁谷が張るため、高さでは無く足元の勝負とされてしまうため、かなり勝手は変わってくる。


また、久我山もこれまでの5得点のうち3得点をセットプレーから獲っているだけに、この試合でも澁谷や名倉らがどんどんサイドのドリブルから折り返しのボールを入れることで、育英DF陣もブロックしてCKに逃れる他なく、このCKをなるべく多く獲って行こうという姿勢もみられる。
これまでの2戦の相手と随分とタイプの違う、いやらしい相手だ。




久我山の徹底したバルサスタイルに苦しむ育英

25分、ペナルティ手前中央のバイタルエリアでボールを持たれてしまい、育英が対処しきれない中でペナルティ左にパスを出され、ここにMF9小林和樹が見事に抜き出ていき、シュートをゴール左に決められてしまう。

!!!久我山強い!!!!育英が先制されるだと???

この試合、相当に厳しくなったと天を仰いだが、なんとこのシーン、ほんのわずかに身体半身オフサイドだったようで、どうにかノーゴール。

いやいや、ほとんど先制されたも同然だって・・・


前半も半ばをかなり過ぎたが、あの育英が全く決定機を作れずに、久我山にいいようにやられてしまっている。
これほどまでに強いとは・・・

サイドからのクロスなど、高さで一切勝負してこず、徹底的に足元でのドリブルにこだわるそのスタイルは、まさにバルセロナそのもの。
そのバルサのメッシと同様の4−3−3を敷き、そして1トップにはメッシと同じく163cmの澁谷を置く・・・

なるほど、これだけ特徴的なチームを作られてしまっては、育英が苦戦するのも当然か。

それにしても本当に高校サッカーとは思えないほどに驚くべきシステムだ。
時代が変わったと感じる。





サイド攻撃からリズムを作り、決定機の連続もゴールならず

育英も圧されているだけではなく、前半30分までの久我山の猛攻を耐えた後は、ようやくボールを持てるようになり、MF9佐藤誠司の突破など、ようやく得意のサイド攻撃に移れるようになる。

36分にはDF15綿引のクロスに、ゴールファーでFW11野口のヘディングシュートは惜しくもバーの上。
ようやくこの試合はじめて可能性のあるシュートまでいけた。

そして、そのサイド攻撃への正確なサイドチェンジを入れていくのは、やはりキャプテンMF5尾ノ上。

38分、その尾ノ上が右FKからのキックをゴール前中央に入れ、ここにDF7吉田のドンピシャのヘディングシュートは惜しくもほんのわずかバーの上。
高さでは育英に分がある様子。


それにしても、これまでジョーカー的存在で前線に君臨してきたFW10横澤に対するマークがきつく、やはり同じタイプの澁谷を相手に普段から練習しているのだろう、その対処に慣れている様子もある。

40分、ようやくGK平田からの縦パス1本から、横澤がスペースのあるところでボールを持て、右寄りのサイドから仕掛けていき、右から中央へスライドしつつ、なんと一瞬の隙をついて意表を突くスルーパスを縦に入れていき、これにダイレクトでMF8大塚がシュートを放つ。
このシュートが見事に相手GKの脇を抜けるも、なんとその裏でカバーに入ったDF5宮原が見事にカバーに入り、これをクリア、しかし、更にFW11野口が詰めるも、これは惜しくもバーのわずか上。


この一連の決定機は是非とも決めたかった。


こうして前半はタイムアップ。

30分までは圧倒的に久我山のポゼッションサッカーにやられまくったが、これを耐えた育英はサイド攻撃からリズムを作り出し、前半半ば過ぎからは決定機を多く作れたが、しかし決めきれなかったところは非常に残念。


ハッキリ言って久我山は予想以上の強敵。
初戦の大津も強かったが、育英と同じくチーム全体で点を獲りにいけるスタイルは、別の意味で強い。
後半もかなりガチンコの展開が予想される。

とにかく、かなりの見応えのある試合となっているのは確か。
互いの特徴がよく活きており、リスクを嫌う下手なJリーグの試合よりも数倍面白いし、どちらのサッカーも美しい。
前橋育英の掲げる「強く、激しく、美しく」の横断幕と、久我山の「美しく勝て」のスローガンのとおり。
ブラジル人の補強ばかりにご熱心などこかの地方J2チームは、この郷土の高校サッカーをよく見習った方が良い。
ブラジル人ばかりに頼っても、これだけの美しいサッカーは到底できない。
美しくないサッカーなど、何の意味があろうか。
美しさを目指さないサッカーなんて、今流行りのラグビーの足元にも及ばなくなるだろう。





後半頭、久我山に先制される

後半に入っても久我山の足元で勝負するスタイルは当然変わらず。
6分にはFKを掴むも、敢えて足元に入れていき、澁谷の足元を狙って入れてくる。
高さでいって、下手に跳ね返されてカウンターというリスクを負うよりは、この選択は正しい。

そして12分だった。
右サイドのMF8内桶にボールが渡ると、すぐさま前にドリブルで仕掛け、そしてDF7吉田がマークに付ききる間も無く、鋭く右足を振りぬいて、これがゴール右上の枠ギリギリに決まる!!!


・・・・・・・・・・・・!!!!????・・・・・・・・・・


つ、、、ついにやられたか・・・
まさか角度の無いところからのミドルとは・・・

後半、まだ自分たちのペースに落ち着ききらないうちの時間帯を突かれてしまった。

この大会での初の先制点献上。

この先制された意味あいは大きい。

本当に厳しい戦いとなってしまった。


山田監督はすかさず選手交代、MF9佐藤誠司に代えて、これまで途中出場で2試合連続得点中のスーパーサブ2年生FW17馬場を入れる。
馬場は野口と2トップを組み、横澤が右サイドに回る。




猛反撃の育英もやはり決定機入らず・・・

反撃の育英は16分、DF4大平からの縦パスをFW17馬場が頭で後ろに逸らし、ここに走り込んだMF8大塚がダイレクトにボレーシュートも、わずかにミートできずにバーの上にふかす。
ああ、、、ミートさえしていれば・・・

かつて大津に2度も追いつかれたように、やはり同点にするには点を獲られたあとの5分、10分が最適だが・・・
ここで点を獲れないと更に厳しくなる。


19分、右から中央にボールを振った育英は、バイタルエリアにボールを入れ、混戦となったところからペナルティ内にMF13金子拓郎が抜け出し、マーク2人を相手に圧巻のフェイントを入れ、左足でのシュートは惜しくもバーの上。
ダメだ、そこを決めないと・・・
あと少しだが・・・


22分にも右サイドから仕掛け、思い切った逆サイドへのボールにMF13金子拓郎が追いつき、ゴールライン際からのマイナスのクロスはやや長くなり横澤の頭を越す。


24分にもDF7吉田のクロスからセカンドをMF8大塚が拾い、落としたところにFW10横澤が右足でのシュートは惜しくもバーの左。

育英も早くもパワープレー体制で、どんどん馬場の高さにボールを入れていき、そのセカンドボールを横澤らが狙うといった作戦に。


そして案の定、先制を与えてから15分を経つと、久我山が得意のポゼッションを活かしてボールを保持するようになり、うまく時間を使われていき、残り時間も少なくなっていく。




タイムアップ、、、育英ベスト8で散る

32分、久我山はゲームメーカーMF14名倉に代えてDF13戸田を入れて、いよいよ守備固め。

33分、馬場に当ててから野口が拾い、ボールをキープしたところでフリーとなっていた左の金子拓郎に渡し、拓郎の左足からのシュートはどうしても左上にふかしてしまう。
どうした拓郎!!!
枠にいってくれれば押し込みもできるが、とにかく今日の育英のシュートは枠内率が低すぎる。

34分、ここでMF13金子拓郎に代えてMF27高沢を投入。
更に36分、DF7吉田に代えてDF29渡邊泰基も投入される。
残り5分、もう時間が無い。

39分も横澤を中心に身体ごとゴール方向に押し込んでいく育英だが、あと一歩詰めきれず。


あまり試合も止まっていないため、アディショナルタイムはわずか2分。

ロスタイム1分、右からのクロスが入り、横澤の前にボールが転がるもシュートまではいかせてもらえず

久我山もFW10澁谷を下げMF15比留間と交代。

そして無常のタイムアップ。

あれだけ決定機を作った育英だが、ついに得点は奪えず、0−1での惜敗でベスト8で散る事となった。



歴史は塗り替えられる

仕方ないとしか言いようがない惜敗だった。

特に先制されるまでの決定機は、どれもがあと少しだった。

しかし、先制されてからは明らかに最後の精度のところで焦りが出てしまい、シュートがことごとく枠を外した。

先制されてからは完敗といえる。

久我山もまさに7年前のリベンジとして、1−0での辛勝となり、これで初のベスト4進出となった。

こうやって歴史は塗り替えられていく。

昨年、育英がついにベスト4の壁を突破し、決勝に進出したように。


やはり2年連続決勝進出というシナリオはそうは簡単にいかせてもらえなかった。

これが一発勝負のトーナメント戦の怖さ。

しかし、チームとして今年の育英は強かった。
インターハイで桐生一に負けてから、最強のチャレンジャーとして己を見つめなおし、基本から徹底的にたたき上げたそのチーム力は相当なものだった。
もう一つ、最後のピースである1トップ野口などが、もっと本来の力を発揮できれば、近年稀に見る総合力に優れた攻撃陣を形成できたはずだった。
特に前橋FC出身の大平と小畑のセンターバックコンビの安定感は素晴らしく、それを土台にキャプテン尾ノ上が正確なロングキックでゲームを組み立て、得意のサイド攻撃に移る展開は爽快だった。


歴史は塗り替えられる。

今年はベスト8止まりとなったが、育英は年々、確実に強くなっている。
優勝という歴史を塗り替えるため、まだまだ群馬県勢のチャレンジは続く。


前橋育英・・・君たちは強かった・・・
悲願の優勝はまた来年に!!!!





(16.1.5UP)






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