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今年こそはと全国制覇の夢を賭けての群馬勢・前橋育英
もうこのHPでも散々追いかけている高校サッカー選手権もいよいよ全国の舞台での戦いとなる。
過去、群馬県勢はなぜか何度も準決勝の舞台にまで駒を進めながら、必ず準決勝で負けてしまい決勝に行けずベスト4止まりというジンクスを抱え、そしてそれが未だに打破できていない。
特に前橋育英は松下裕樹の頃から圧倒的なタレント集団の名を欲しいままに、優勝して当然の戦力を抱えながら、いつもあと一歩の所で事実上の決勝戦たる準決勝で敗れてきた。
特に松下の時の市船とのPK戦での敗退の悔しさは未だに忘れる事が出来ない。
もうあれから何年か・・・
そして今年はU−19の鈴木徳真がいる。
タイプ的には小島秀仁に似ているが、アンカーとしての能力では松本の岩上(前商出身)にも匹敵する強さも持つ。
そこに相棒である渡辺凌磨も絡み、他にも負けない相変わらずのタレントを抱える今年の前橋育英。
最近では桐生一に群馬代表の座を奪われる事も多くなっているが、やはり前橋育英が優勝出来ずして、群馬に優勝旗はやってこない。
今年も群馬勢の悲願を賭けた全国での戦いが始まる。
U−19の鈴木徳真、渡辺凌磨擁する前橋育英
今年の育英は昨年のU−17W杯で大活躍となったFW渡辺凌磨(りょうま)とMF鈴木徳真(とくま)の2年生コンビが、3年生と自分達の世代となり、昨年出場出来なかった先輩たちの思いの分までこの全国の舞台に賭ける。
既に世界を体験したこのコンビを軸に、相変わらずのタレントが揃う育英、今年は久々に桐生一が相手ではないが、果たして。
攻撃陣では凌磨の他に、DFを一時期経験したことでセンターFWとして円熟味が増したFW青柳、桐生一戦で2得点のFW坂元が前線で揃い、後方では守備とバランスに重点を置く鈴木徳真に対し、セントラルMFとして前線に供給するパサー役を担う、地元高崎出身のMF13吉永がコンビを組む。
この吉永、中学途中までは福島のJビレッジのサッカーアカデミーにて中高一環教育の場でサッカー修行していたが、震災により静岡へと移る事となり、高校で地元前橋育英に戻ってきたという経歴を持つ。
またDF陣では184cmの高身長で空中戦での強さを誇る地元高崎出身のDF宮本、相棒のDF上原、そして的確な読みでボールを奪取するという岩(いわ)と揃う。
スタメンは全員3年生
9青柳
15関戸
11坂元 10渡邊凌磨
13吉永 14鈴木徳真
3岩(いわ) 2下山
4宮本 16上原
1吉田
ベンチはFW7菊池、FW24野口、FW25佐藤誠司、MF8小泉、MF19金子、MF23横澤、DF6渡辺聖夢、DF5河西、GK12山岸。
ベンチは半分が2年生。DF6渡辺は群馬大会決勝ではスタメンだった。
初芝橋本
初芝橋本も間違いなく強豪。
インターハイで活躍したエースFW柳原擁する攻撃陣に、GK立川、CB永見らが形成する守備陣の城塞は堅固そのもの。
その他、ドリブルが得意な末吉塁(すえよしるい)なども要注意。
こちらは、FW山本、川中、MF高橋らが2年生。
また、3年生のうち6人は、昨年の全国選手権の経験者ということで、前回は初戦で敗退してしまった悔しさと反省点をこの試合に賭けてくる。
9柳原
7山本
10末吉塁 20川中
8渡辺淳揮 6高橋響
5岡本 3梶川
2永見 4西岡
1立川
序盤から初芝橋本に圧される育英
立ち上がりから積極的に攻めるのは初芝橋本。
4分にはFW9柳原がゴールライン際まで押し寄せ、この試合最初のCKを獲得する。
だが、育英もこの猛攻をしのぐと、6分、左サイドから坂元がフェイントから突破し、中央に渡したところでFW青柳のシュートはGK正面。
初芝橋本は12分、右サイドをMF6高橋響が細かいパス交換から一気にゴールライン際まで突破し、マイナスの折り返しに柳原がニアに詰めてのシュートは枠にいかず。
17分も左サイドからMF10末吉が一瞬のスピードの速さで突破し、折り返しにMF20川中のシュートはニアに飛ぶも、GK吉田抑える。
この末吉のドリブルの速さに手を焼く育英守備陣。
この試合は右サイドで凌磨が回っているため、序盤は凌磨が攻撃よりも守備に力を割かれている様子。
やはり、初芝橋本は、昨年の経験が活きており、そして育英は選手権では1年ブランクがあるためか、この序盤の攻防では完全に後手に回る。
もう前半も半分の20分になろうとしているところでも、育英はなかなか自分たちの攻撃のリズムまでいかせてもらえてない。
前半はどうにかゼロで抑えてスコアレス
28分、育英もようやくらしさが出る攻撃が出来るようになり、MF10渡辺凌磨が相手ゴール前の狭い地域で、何度もキックフェイントで決定的なシュートを狙いにいく。
やはり凌磨と徳真の2人は世界を経験しているだけに、その落ち着きは健在。
しかし、初芝橋本の方が相変わらず攻撃に厚みがあるというか、一度攻撃を跳ね返しても、セカンドボールを支配され、2次攻撃を何度も浴びるはめになる。
34分、MF川中からの縦のボールが中央に入ったところで育英守備陣に穴が開いたところをMF6高橋響がその隙間に入り込まれてしまい、GKと1対1となりかけかたところを、DF上原がギリギリのところでボールをカットし難を逃れる。
予想以上に苦戦となっている育英は、凌磨と坂元のポジションを左右入れ替え、群馬県大会決勝と同じポジションに戻し、攻撃にややリズムが出てチャンスが少しづつ増えてくる。
しかし、最後まで苦しい展開が続きながら、前半ロスタイム1分も終わり、41分間の前半は終了。
育英としては、想定外の押し込まれる展開となった中、幸いゼロに抑えられた事は収穫。
攻撃の面では個の強さはやはり活きており、相手よりも多くのCKも奪えている。
後半、いかに立て直して、育英のペースで試合を決められるかだろう。
後半立ち上がり、育英が盛り返す
後半立ち上がりはやはり育英が仕掛け、2分にはFW15関戸が2人との短いワンツーでのパス交換から一気に割って入っていき、シュートを放つもGK抑える。
3分にも、MF10凌磨が相手ゴール前左でまたしてもフェイントを多用してシュートチャンスを伺い、ここがカットされ攻撃に移られるところを、逆にMF14徳真が鋭い読みでこれを奪い、再度2次攻撃に繋げるという、2人の世代代表の個人技が光る。
だが、前がかりになると、やはり守備に穴も開く。
6分、相手のMF8渡辺淳揮のところで、前がポッカリと空いてしまい、ミドルシュートを狙われる。
7分にはまたしてもMF10末吉塁のドリブルが、今度は中央に絞って入られ、徳真がギリギリのところでカットし、CKに逃れる。
9分、今度は右サイドからFW7山本に速攻を浴びて、攻撃4人、守備4人の状態にさらされ、これまたどうにかCKに逃れる。
10分、育英の縦パスに、相手のGK立川が前に出ており、強引にブロックされてこの試合初めてのイエローが提示。
12分、速攻から一気にMF13吉永が攻め上がり、前が空いたところでのミドルシュートは左下枠をとらえるも、相手GKにゴールラインに逃げられる。
16分もセカンドボールをMF13吉永が奪ってから、すかさず中央にボールを送ったところをMF10渡邊凌磨が受け、凌磨の振り向きざまのシュートは決定的なモノだったが、惜しくもやや右アウトにかかっており、枠のわずか右に逸れる。
やはり初芝橋本は前半やや飛ばしていたか、守備の面では育英の攻撃につききれない場面も出てくる。
CKからDF宮本の先制ヘディング!!!
19分、左サイドからMF10末吉塁のクロスに、ゴール前でFW9柳原が詰めるもわずかに合わず。
ここで初芝橋本最初の交代、MF20川中に代えて、FW18市川を投入。
186cmの高さを持つこの市川が、和歌山大会決勝でも貴重な終了間際の同点ゴールを奪ったとのこと。
20分、22分とFW9青柳が連続でシュートを放つも、なかなかゴールは遠く。
そろそろ得点がなんとしても欲しい場面となってくる。
そんな26分を過ぎたところだった。
DF3岩のオーバーラップで後半2本目のCKを掴むと、この左CK、MF10渡辺凌磨の右足から放たれたボールはファーに流れ、ここにチーム一の長身を誇るDF4宮本が相手マークを頭一つ抜けたヘディングを放ち、これは距離もあったので叩きつけるよりも、ループ気味にボールは浮かび、GKも届かない、ゴール左上の枠に収まる!!
GOOAAALLLLL!!!!
よし!!やったぞ宮本!!!
時間帯的にかなり焦れる中だったので、これは非常に大きな先制点となった。
高崎出身の宮本の高さが活きた。
徳真がピンチを救い、初戦突破!!
先制を決めた育英は、30分を過ぎてようやく1人目の交代、これまで前線での積極的なチェイシングで相手DF陣を弱らせていたFW15関戸に代えて、MF19金子拓郎を入れ、金子が左サイドに回り、渡辺凌磨が代わってトップ下に入る。
33分、DFライン宮本のサイドチェンジを受けて、そのMF19金子が中央へ折り返したところで凌磨が左足でダイレクトにシュートを狙うも、これはミートせず。
34分、MF10末吉塁が右サイドからドリブルを仕掛け、DF16上原のマークに身体を入れ替えるようにかわすと、ニアへのシュートをGK吉田もはじくのがやっとで、ここにFW18市川が詰めるという絶体絶命の場面!!
しかし、ここに入っていったのがMF14鈴木徳真!!!
徳真の間一髪でのカバーで、この絶体絶命のピンチを救う。
素晴らしい、徳真・・・これが世代代表の実力か・・・
37分、足をつらせたMF11坂元に代えてFW24野口竜彦を投入。
そして試合は3分間のロスタイムへ。
育英も守りきるというよりは、なるべくマイボールの時間帯を長くし、相手初芝橋本の陣地でボールを保持する。
2分を過ぎたところで、先制のチャンスを作ったDF3岩が足をつらせる中、選手交代はMF13吉永に代えてDF5河西を投入し守備固め。
更にロスタイムももう4分になるところで、先ほど足をつらせたDF3岩に代えてDF6渡辺星夢を投入。
そして最後のプレーとなった初芝橋本のFKをGK吉田がはじいたところでゲームセット。
育英は思わぬ苦しい展開となったが、前半を耐えた事で後半に得点を呼び込み、難しい初戦を突破することに成功した。
本当に、思わぬ苦戦だった。
初芝橋本はやはり強敵だったし、特に末吉塁のドリブルには最後まで苦しめられた。
これまで育英は、初戦で足元をすくわれる試合の年も目立ったが、難しくなりがちな初戦をまずは突破できた事は大きい。
攻撃でもっと点を獲りたかったのは確かだが、しかしその得点はこの後の試合にとっておいたという事にしよう。
なにせ群馬県大会ではあれだけの得点をとってきたチームだ。
それよりも、県大会ではなかなか体験できなかった、圧される展開からの接戦というところを初戦から経験できた事は大きい。
そんな中、やはり世代代表の徳真と凌磨の2人のプレーは際立つ。
その攻守の軸に、青柳、坂元、吉永、そして貴重な決勝点を決めた宮本らが絡み、チーム全体で戦えている印象がある。
3回戦の相手は、滝川二高、岐阜工を破ってきた山梨学院と明日戦う。
厳しい試合となり、足をつらせる選手も出てきた中だが、この連戦をどう乗り切れるか。
育英の全国制覇を目指した戦いはつづく。
(15.1.2UP)
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