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2013-2014全国高校サッカー選手権
H25.11.17
群馬県大会決勝 前橋育英 0−1 桐生第一


〜プラン通りの戦いで桐生一2回目の全国へ〜

横棒



圧倒的なタレント集団前橋育英と桐生第一との4年連続の群馬県大会決勝

毎回優勝候補に挙げられながらも、なぜかベスト4の壁をいまだ破れない前橋育英サッカー部だったが、ついにこの夏、野球部の方が先に超飛び級で全国制覇を成し遂げてしまった。

まさか野球部が・・・

育英サッカー部関係者ならずとも、ほとんどの県民(私を含め)がそう思ったはずだ。

前橋育英といえばサッカーの強豪校、こんな全国の認識、常識がこの夏で一気に塗り替えられてしまったわけだ。


このまさかの事態に今年の前橋育英サッカー部関係者は一際燃えている事は間違いない。

こうなったら野球部に続いて、サッカー部も全国制覇せねば。。。

せめて同年度に同時に優勝を飾れば、野球部に先を越されたという汚名は返上できる。


その前橋育英は昨年全国を経験したメンバーが多く、それに加えてU−17で活躍した2年生2人も加わり、近年稀に見る圧倒的なタレント集団となっている。


そんな今年度は特殊な事情を抱える育英に対し、4年連続の決勝の相手となったのが桐生一。

思えばこの桐生一も、1999年に野球部が全国制覇を先に成し遂げているわけで、つい5年前までは桐生一といえば野球部のイメージしかなかった。

両校のサッカー部はこういった共通点もあるわけだが、とにかくこの群馬県大会の決勝を勝たなければ全国制覇への切符は手に入らない。


今年の群馬県勢代表としての全国の切符を手にするのはどちらのチームか。





タレント集団の前橋育英

今年の前橋育英は紛れも無くタレント集団。

もともと全国選手権にも行った昨年のメンバーの中でも2年生が多かったため、全国を経験している選手が多いのが特徴。


特に攻撃を牽引するのはトップ下廣瀬、1トップのFW小口(おぐち)。
テクニックとスピードのある廣瀬と、フィジカルと決定力のあるストロングFWタイプの小口のコンビは昨年も絶妙だった。

右サイドの上田やダイナモ佐藤祐太も全国を経験しており、DFラインでも昨年も主軸として活躍したセンターバックのDF3樋口がキャプマークを巻き、GK蔦(つた)もいる。


そこにきて注目なのは、つい先日U−17W杯で大活躍となったFW渡辺凌磨とMF鈴木徳真の2年生コンビが、こちらは全国どころか”世界”を先に経験してきてしまっており、特に凌磨は大会で3得点したことから、全国的にも大いに注目を浴びた。

おそらくこの2人はJチームもかなり注目しているであろうし、とにかく今年の育英の戦力は半端ではない。




10小口

7上田慧   8廣瀬    9上田竜
13佐藤祐 14鈴木徳真

5田辺         15高田
3樋口 17柿崎

1蔦




チームワークと高さの桐生一

その絶対的なタレント集団との決勝の相手は4年連続桐生一となった。

さすがに全国ベスト8入りした2011年当時のストライカー鈴木武蔵やセントラル金田、左アタッカー池田、トップ下吉森といったタレントはなかなかいないものの、高さとチームワークではそれよりも上回ると自信をのぞかせる。

高さとしては188cmのDF乾や、181cmのキャプテンDF10松島、そしてボランチも2人共に180台半ばといったメンバーが空中戦を制する。
その松島だが、昨年まではFWで活躍していたが、どうやらセンターバックにコンバートされたらしい。

そこに加え、準決勝での後半投入から一気に流れを桐生一に向けさせた2年生FW斎藤雄大の勢いも加わるならば、タレント集団育英の足元を2年前と同様にすくうチャンスは十分にある。




18斎藤光汰
9斎藤雄大
14浦丸      7出村
6木村 8田中大

5乾        2坂井
3角田 10松島

22依田



共に一進一退の気迫の戦い

立ち上がりからポゼッションするのは育英、7分に中盤廣瀬らが繋ぎ、スルーパスを出たところにFW10小口が斜めに入り込んで、これをDFラインの裏で受けるとすかさずシュートを放つもわずかにバーの右。


その育英の攻撃を受け止めた桐生一も徐々に自分たちのリズムを作り、19分にはDFラインから積極的に上がったDF10松島が果敢にミドルシュートを放つ。


10分から20分くらいまでは桐生一の流れの時間帯があったが、それを今度は育英が受け止めると、U−17代表MF14鈴木徳真がチームのど真ん中でボールを積極的にさばき、どんどん縦のクサビのパスを入れていき、再び育英のペースに戻す。

ボールを下手に失わず、建設的なパスでゲームを組み立てる、まさに育英の伝統を受け継ぐボランチだ。



それにしても、やはり育英の攻撃は1トップのFW10小口一本に絞られるため、桐生一の両センターバックもガッチリ挟み込んでこれをガード。

何回も小口が縦パスに対し走ろうとするところを強引に挟み込んで走らせないため、小口もフラストレーションがたまる一方で、27分には強引に薙ぎ払ってでも走ろうとしたところでイエローを提示される。

見ようによってはオブストラクション(進行妨害)で逆にDF側にファールではとも思えるが、この辺の審判へのアピールの仕方もテクニックの内と言える。



前半はスコアレスで折り返し

互いに前線からのプレスの掛け合いも激しく、なかなか思ったような攻撃の形が組み立てられず、苦しみ紛れに相手DFラインの裏にボールを入れても、そこは十分に両方のセンターバックがケア済みといった、いわゆる中盤の潰し合いの展開が続く。


育英は35分に左サイドから深くをえぐり、マイナス方向の折り返しから小口がシュートを放つも、これはミートせずにバーの右。


前半のロスタイム1分も過ぎ、スコアレスでの折り返しとなる。


思ったほど渋い展開の試合となり、序盤にチャンスはあったものの、前半半ばからは中盤の潰し合いに終始した展開となった。


育英は左サイドは深くえぐるシーンもあったものの、右サイドからの攻撃があまり無く、中央の小口一本に入れていく展開が多かった点で変化が少なかった。


桐生一は粘り強く育英の攻撃に対応しながら、ワンチャンスを決めていこうという、したたかさが観てとれ、ここまでは桐生一の思惑どおりの展開とも言える。


さあ、後半どちらに先に点が入るか。




後半、早めに凌磨が投入されるも、状況打開できず

後半立ち上がり、いきなり桐生一のMF14浦丸が育英の中盤を大きなストライドのドリブルで抜け出てのミドルシュートを放っていき、これはバーの上。
こうしてみても、本当に桐生一は大きな選手が揃う。


後半6分、前橋育英はMF9上田竜哉に代えて、U−17代表のFW18渡邊凌磨を早くも投入。
随分と早めの投入となったが、やはり前線のターゲットが小口一本となってしまっているので、凌磨の質の高い動きからの前線での起点を増やしたいという狙いだろう。


その後もMF7上田、MF8廣瀬といったところが積極的にドリブルで崩しにかかり、桐生一前にボールを入れるもものの、桐生一DF陣の高い壁がそれを跳ね返す。


やはりさすが桐生一も4年連続決勝で育英と戦っているだけあって、非常によく育英対策が出来ている、知り尽くしているといたところ。

後半もいよいよ20分を経過し、早くも試合は3/4を過ぎ、こうなればあとは桐生一も1点さえ取れば守りきれる時間帯に入ってくる。

まさに桐生一の想定どおり。


育英は凌磨を投入した後もなかなか変化をつけられずに桐生一の術中にはまっている感がある。





桐生一、乾がCKからの決勝弾!!

22分、桐生一はFW18斎藤光汰に代わってMF20大塚が入る。

時間が経過してきて育英もいよいよ人数をかけて攻撃体勢へ、31分、育英は久々にビッグチャンスを掴み、左サイドからFW小口がライン際まで攻め込み、折り返しに廣瀬が詰めるも、桐生一DF陣も身体をはってこれに付いていきミートはさせず。


34分、今度は桐生一、右サイドからMF7出村のクロスからゴール前でのヘディングはバーの上。

そしてこの右CK、再度MF7出村のキックがゴールファーへきれいに入っていくと、そこに桐生一の高さがあるDF5乾が高さのあるヘディングからシュートを叩きつける!!


GOOAAALLLLL!!!!


なんと桐生一がこの時間帯に先制!!!!

まさに桐生一のシナリオ通り!!!

これしか無いというプランでの見事な守り、そして得点となった。





桐生一、まさかの大金星で2回目の全国選手権へ!!

まさかのビハインドとなった育英は37分、DF15高田に代えてDF4渡邊遼太郎を投入。

38分、DF4渡邊のポストプレーからこぼれたところをFW10小口が至近距離からのシュートを放つも、GK依田がファインセーブでこれをはじき出す。


そしていよいよ試合は2分間のロスタイムへ。

ここで育英はDF5田辺に代えてロングスローが武器のFW22香川を投入。


しかし時間はあっという間に過ぎ、タイムアップ。


まさに桐生一の狙いどおりの展開から、最後の最後で高さから得点を取り、見事な勝利となった。








攻撃に迫力を持たせられなかった育英

育英の敗因としては、とにかく攻撃に本来の迫力を持たせられなかった事に尽きる。

攻撃が中央に偏り、サイドを有効に活用できなかった。

特に右サイドをほとんど使えておらず、ここで長いボールで右サイドの空きスペースを使えれば、といった場面が多かったが、そのチャンスをことごとく活かせなかった事で、桐生一に守りやすくさせてしまった。


確かにFW小口の強さにどうしても頼りがちになるのは分かるが、その割合が多すぎた。

そんなチームの中では後半投入された渡邊凌磨の動き出しも活かされる事無く、一本調子の面は否めない。

毎年育英はたまにこういった膠着状態に陥ってしまう悪い癖があるが、それがこの決勝で表れてしまった。


小口、廣瀬、そこに凌磨らが加わる攻撃力にもっと期待していたし、全国でどこまでいけるかも楽しみにしていた。


だが、残念ながら今年の育英はそこまでの熟度を高められなかったらしい。

2年の凌磨や徳真がU−17で呼ばれて長期間チームを離れていた面もあるだろう。


2年前と同じく、まさかの敗戦で全国雪の切符を逃した育英サッカー部。

残念ながら野球部に続いての悲願の全国優勝は思わぬ県内での戦いで潰えてしまったが、しかし来年、凌磨、徳間を中心にしたチームがもう一度再構築されるだろう。


同じくU−17で活躍した小島を擁し、3回戦まで戦い抜いた3年前のチームのように、もう一度骨太なチームを作り上げて来年チャレンジして欲しい。



桐生一、2度目の全国へ

そして2011年に続き、2度目の全国選手権への切符を手にした桐生一。

ちょうど前橋育英と1年おきの交互に全国に出場する事となったわけだが、やはり2年前と同じく育英を破ってきたチームとして、そして群馬県代表として戦い抜いて欲しい。


個の力に頼った感が否めない育英よりも、むしろ柔軟に攻撃の選択肢を持ち、決定力とスピードのある斎藤雄大、フィジカルのある斎藤光汰といった前線に、高さとテクニックを兼ね備える浦丸、キック力からのクロスが冴える出村と、育英に負けず劣らず個の力もある。

機をみたキャプテン松島の”10番”らしい攻め上がりも、ここぞというところでの重要なアクセントとなるだろう。



そしてDF乾らの高さは、絶対全国でも武器になる。

高校サッカーはJリーグ以上にCKなどのセットプレーで勝負が決する場面が多い。

今日のように、チームワークから粘り強い守りを敷き、そしてここぞという時の攻撃力と、セットプレーで得点を狙えば、必ずや勝機はある。



群馬代表である限りは、優勝を目指さなくてはいけない。

野球でも前橋育英より先に日本一になったように、サッカーでも先に日本一を目指して欲しい。














(13.11.17UP)






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