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準決勝の地まであと一勝
前橋育英の分まで期待を背負いながら群馬代表として戦っている桐生第一。
初戦の第二回戦をFW武蔵のハットトリックで快勝し、続く一昨日の第三回戦では武蔵以外の3得点もあり、強敵であった奈良育英に4−1での大勝を収めている。
そして今回対戦するのは福島代表の尚志。
3月の大震災により、福島は放射能との戦いとなってしまい、夏までは満足に屋外練習も出来なかった状態でのベスト8入りを遂げた事で全国の注目度も高い。
正直いってお涙頂戴のこの相手に、桐生一も少しは空気読んで、といった目線もあるかもしれないが、戦う本人達にとってはそんな事は全く関係ない。
選手権に出場する選手1人1人が一生に一度の晴れ舞台の背景を持ち、そして敗れれば即敗退という儚い美学の元に全力を持って戦う。
今のチームバランスの良い桐生一なら、いかに自分たちのサッカーが出来るかで勝敗が決まる。
悲願の決勝進出を賭けた準決勝の決戦の地まであと一勝。
なんとしてでも勝ち進んで欲しい。
チームバランスの良い桐生一
ここまでの2試合で既に4得点と、大会得点王すら見えてきた新潟内定のエースFW武蔵を1トップに、その後列から次々と波状攻撃を狙うトップ下の2年MF吉森、脅威の左を持つスペシャリストMF池田、卓越したセンスで中盤を支配するゲームキャプテンMF金田(かねた)、ボランチ、サイドバックとどこでも高い次元でこなす古沢兄弟と、現在の桐生一は非常に良いバランスを保っている。
ただし、この試合ではなんと兄のMF5古沢圭がセンターバックに入る。
そういえば前の試合でDF3渋澤が何か足を痛めていたような・・・いや、どうやら風邪らしい。
代わってこの大会初のスタメンのチームキャプテンMF11磯部がボランチに入る。
正直、チームバランス、好調さならば今までのどの前橋育英のチームよりも決勝進出の可能性を感じる。
相手はともかく、とにかく今の桐生一の力をいかに発揮できるかだ。
10鈴木武蔵
7吉森
6池田 9遠藤
14金田 11磯部
8古沢友 2宮崎
5古沢圭 4堂前
12鯨井
粘り強さが脅威の尚志
対する尚志は攻撃は2トップとトップ下が軸という評価で、まあ戦力的には目立ったものはないと見るが、これまでの戦いでPK戦などの接戦をモノにしてきた粘り強さは脅威。
これまで3得点差で圧倒してきた桐生一としては、接戦のまま終盤までもっていかれると足下をすくわれるだろう。
15皿良 11後藤
9山岸
8高 7金森
6金田
5三瓶 2佐藤
4大貫 3峰鳥
1秋山
ロングスローと高さに手を焼き先制されてしまう!!
開始1分、左サイドをDF8古沢友が切れ味鋭いドリブルで突破していき、ゴール前にセンタリングを送るもこれに合わせたシュートは惜しくもバーの上。
4分、右サイドをMF11磯部が上がっていき、センタリングを吉森が落としてFW9遠藤のシュートは惜しくもバーの右上。
8分、尚志は右サイドからのスローインにMF6金田がかなり長い助走をとる。
なんとロングスローを使うか。
そしてそこに上がってくるのは187cmの身長のあるDF4大貫が上がり、同じく身長のあるMF9山岸と共にターゲットに狙ってくる。
セットプレーだけは実力を度外視されてしまう。
渋澤が抜けたセンターバック陣としては、これは要注意だ。
11分にもロングスローを入れられ、ゴール直前でボールをこぼしてしまい、あやうく押し込まれそうになる。
更にその後の右CKからもゴールファーでDF4大貫がマークについた武蔵の上から豪快なヘディング。
これはファールとなるが、危なかった。
14分にも右サイドからのFKから落とされたところをMF7金森のシュートを浴びるもGK鯨井正面で抑える。
そして16分、中央のこぼれ球からショートカウンターにされ、FW11後藤が一気に前に出てGKと1対1にされてしまい、これが敢えなくゴール左に決まる。
・・・・・・・・・・・!!!!?・・・・・・・・・・・
マズい!これはマズイ!
やはりチームの要たる渋澤の抜けた穴は大きく、守備陣の連携不足が命取りとなってしまった。
さすがベスト8に来るだけのことはある。
尚志もかなり自分たちのプレースタイルを確立している。
今大会はじめて先制された桐生一。
粘り強さを警戒し、早めに先制して突き放したかったところだが、これはかなり厳しくなってしまった。
守備の甘さから鮮烈なボレーで手痛い2失点目
とにかく点を獲らなければいけなくなった桐生一。
19分にはFW10武蔵にボールが渡り、マークが付く前の強烈なシュートはGKが正面でこぼしながらもセーブ。
21分、右サイドでDF2宮崎が相手を掴むファールでイエローをもらってしまい、今大会2枚目のカードで勝ち進んでも次は出場停止となってしまう。
まあこの先制された状況から勝ち進めればだが・・・
28分、左サイドからのFKがMF9山岸がピタリと胸で止め、ターンしてのシュートはバーの上。
ダメだ、マークが甘すぎる。
先制された精神的ダメージもあるのだろうが、渋澤が抜けたためかあの絶妙だったチームバランスが一気に崩れてしまっている様だ。
30分、尚志に左サイドで粘られ、クロスを上げられたところでペナルティ右隅にいたMF6金田が得意の左足で少し下がりながらのボレーという難しいシュートを見事にゴール左に決める。
・・・・・・・・!!!!!!!!・・・・・・・・・
このマークに付いていたのは左サイドバックDF8古沢友だけだったが、ポジション取りとしてもちょっと離れ過ぎていてしまった。
クロスを上げられたシーンでも結局はね返し切れておらず粘られてやられてしまったわけだし、やはり今日の桐生一はこれまでの強かったチームとは違う。
磯部を下げる決断でチームバランスを立て直しに
この2失点目を受けて桐生一は35分、MF11磯部に代えてDF20川田を投入。
やはりこのままでは守れない、桐生一のサッカーにならないと判断したか。
磯部も立ち上がりは鋭い右サイドの突破を見せるなど元気の良いところを見せたが、いかんせんこの試合はセンターバックの欠けが痛かった。
これによりここ2試合、チームバランスを取る役としてかなり要となっていたMF5古沢圭がボランチに上がる。
それからは残った前半の時間は少ないものの、MF14金田がこの試合初とも言える密集地帯でのキープからのパスを送り、吉森がこれに鋭く切れ込むなどようやくらしい攻撃の形を見せられる。
しかし時間は少なく前半40分は終了。
う〜ん、準々決勝までの高校サッカーは負けている時は非常に時間が短い!!
2点ビハインドというかなり厳しい前半の折り返しとなってしまった。
古沢友がセンターバックに入る事は悪くはないと思ったが・・・やはりサッカーとは、チームの根幹たるセンターバックが非常に重要であることを今更ながら思い知らされた。
そういえばあれは何年だったか、前橋育英もDF鈴木の負傷離脱でチームが総崩れしたな・・・
あの時も惜しかった・・・
後半、選手交代の桐生一
後半、DF8古沢友に代えてDF16冨田を投入し、更に左のMF6池田を右サイドにポジションチェンジさせ反撃に出る桐生一。
古沢友も素晴らしい左サイドの突破を立ち上がりは見せていたが、その後はやや不得意な守備から追加点を許してしまった。
7分、またしても左サイドからロングスローを入れられ、しかも後半は眩しい逆光となってしまっており、GK鯨井もボールを取り損ねるもDF陣がゴール前で必死のクリア。
後半はますます苦しい・・・
9分、尚志の右CKがファーに流れ、MF9山岸の足元に入ってしまいゴールは直前も山岸これは足につかずラインを割る。
本当に厳しいな・・・
11分、逆に桐生は右CKからファーで遠藤がこぼれ球からシュートを狙うも惜しくも右に逸れる。
なかなか前半の終盤にみせたような桐生一本来の攻撃の形はなかなか作らせてもらえず、いよいよ尚志の粘り強い守備に苦しむ桐生一。
う〜ん、時間がない・・・
CKからようやく1点返す!!
16分、中央から運んだ桐生、左に送られたボールにDF16冨田のミドルシュートは惜しくもGK秋山が抑える。
こんなミドルしか無いのか今日は・・・
19分、中央を吉森、遠藤らのコンビネーションで崩しに行くも、吉森のワンツーのボールは遠藤にはやや短い。
今日はなかなか合わない・・・
続く20分にも左サイドから吉森のシュートはニアに強烈に放たれるもGK秋山抑える。
しかしまだまだ続く左CK、MF14金田からのボールはファーゴール前に飛び、これに飛び込んだDF20川田が頭で流し込むように押し込む!!
GOOAAALLLLL!!!!
やっと決まったか・・・
セットプレーからのヘディングとは本来の桐生一らしくは無いが、とにかく点が欲しかったところなのでこれは大きい。
ただ勝つためにはあと2点要る。
既にPK戦を制している尚志相手に同点ではそもそも厳しい。
24分、MF5古沢圭がカウンターにいこうとしたところをMF8高が故意に足をかけイエロー。
高校サッカーらしからぬ、明らかな故意のファールをするほど、尚志もやはりここは食い止めたいところだろう。
反撃の狼煙も3点目を決められ万事休す
26分、右サイドからまたもロングスローを入れられ、これはFW11後藤が直接ヘディングで決めにいくも、この時間帯にはゴール前が屋根で陰になりGK鯨井も逆光を気にすることなく難なくキャッチ。
30分を過ぎ尚志も選手交代、FW15皿良に代えFW14木村を投入。
もう残り10分か・・・短けえよ、高校サッカー!!
桐生一もいよいよ最後の交代、31分にMF8吉森に代わり、FW19横堀を投入。
第二回戦ではスタメンだった横堀がここにきて再度登場となった。
しかしその反撃の狼煙も断ち切れない中、32分にFW11後藤が中央でボールを持ってから意表を突く速いドリブルでDF20川田を置き去りにし、ゴール前左まできてなだれ込んでシュートを流し込む・・・・
・・・・・・・・・お、、終わったか・・・・・・・・
さすがにこの時間帯での2点差は無理だ・・・
とにかく同点、PK戦でもいいからあと1点・・・と願っていた矢先のこのダメ押し点はあまりにも痛い。
やはり前半のツケが大きすぎたか・・・
桐生一、力尽きる
最後の力を絞っての反撃に出る桐生、FW9遠藤が中央から左に流れ、左にいた池田に絶妙なパスから池田のシュートも身を呈したDF陣のブロックに阻まれる。
38分、ペナルティ手前で武蔵がつぶされた裏でMF19横堀のシュートはGK秋山に収まる。
ついに40分になり、MF7金森に代わりMF13花田を投入。
そして右CK、ファーサイドからDF4堂前のシュートはGKの手に当たりながら左ポスト!
続く左CKもゴール前にこぼれるも、GK秋山がわずかに先に抑える。
そしてタイムアップ。
本当に、とにかく桐生一のサッカーを観たかった・・・
不本意な内容でのこの敗退は非常に残念。
後半はボランチに入った古沢圭もセンターバックの時とはまるで別人のように的確な配球でチームバランスを戻していったが、2点ビハインドという壁が攻撃陣の連携を焦らせた。
池田の左もなかなかこの試合では生きず、何よりエース武蔵が徹底マークで仕事をさせてもらえなかった。
これが全国か・・・
こうしてまた今年も群馬県勢の戦いは幕を閉じた。
だが、今までは毎年前橋育英の面々に期待するしかなかった全国制覇も、桐生一という新たな勢力の出現により新たな可能性を見せてくれた。
なかなか今年以上のチームバランスを持ったチームはそうそう出ないかもしれないが、名門・前橋ジュニアの監督も務める桐生一の小林勉総監督の下には今後も優れた教え子達が集まる事だろう。
そう、前橋ジュニアならば当然郷土出身プレーヤーばかり。
未来の群馬サッカーの星としての逸材がまだまだこれからも見られそうだ。
最近つとに多国籍軍化してしまっている前橋育英とは、この辺で差がある。
出来れば前橋育英にこそ、こういった郷土との太いパイプを繋いで欲しいものだが・・・
野球でも全国を制覇した桐生一がサッカーでもやってくれるかと本当に期待した選手権だったがベスト8で幕を閉じた。
だがまだまだ群馬県勢の飽くなき挑戦はこの先も続く。
いつかきっと優勝旗を群馬に持ち帰るその日まで・・・
(12.1.5UP)
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