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前橋育英の分まで期待を背負う桐生第一
群馬大会決勝では常勝軍団・前橋育英があと一歩まで全国への切符を掴みかけながら、後半の1人退場から一気に崩れてしまい、その育英の隙を突くように初の全国への切符を掴んだ桐生第一。
群馬の代表がまさかの育英では無かったわけだが、しかし群馬代表勢悲願である決勝進出が第一目標であることは何ら変わりない。
桐生第一も実力的に育英に負けずとも劣らないものを持っており、特に群馬県内出身でもある金田、池田の中盤、1トップの武蔵と戦力は充実している。
頼む、育英も前商も未だ成し遂げられていない悲願の決勝進出、そしてその先の優勝旗まで、何とか辿り着いて欲しい。
もう何度挑戦した事だろうか、意外にも群馬勢はベスト4でいつも止まってしまうというジンクスを、このニューフェイスである桐生一が打破してくれる事を願って止まない。
こうして今年も群馬県勢の戦いが始まる。
金田、池田に期待の桐生一
桐生はどうしてもU−17代表にも選出され、Jリーグ新潟にも内定しているFW鈴木武蔵に全国の注目が集まるところだが、むしろ桐生の戦い方としてはその武蔵を囮とし、その2列目以降の選手が波状攻撃を仕掛け得点を決める事にある。
その鍵を握るのが冒頭でも述べたとおり県内出身プレーヤー達。
武蔵もジャマイカの父とのハーフではあるものの太田出身であり、ゲームキャプテンの金田は高崎、正確無比な左を持つ池田は前橋出身。
この3人がまさに中心ではあるが、その他にも上毛新聞にも紹介された栃木・小山出身のチームキャプテン磯部、双子のサイドバック古沢兄弟(茨城出身)もいる。
ただし、この試合では磯部はスタメンではなく、古沢圭の方がボランチに起用される。
特に自分が一番注目しているのは金田(かねた)。
群馬大会決勝でも、その卓越したボール捌きからのセントラルMFぶりは、昨年の育英の小島(現レッズ)を彷彿とさせる程のものがあった。
なかなか楽しみな戦力が揃う中、とにかく初出場である桐生一は1戦1戦全力でぶつかるのみだ。
10鈴木武蔵
7吉森
6池田 19横堀
14金田 5古沢圭
8古沢友 2宮崎
4堂前 3渋澤
12鯨井
堅守の大社
対する島根代表の大社(たいしゃ)。
さすが出雲大社のお膝元たる堂々たる名称の高校だが、ネット情報を見る限りはGK三成、DF今岡らを中心として堅守が武器で、島根大会でも6試合無失点だという。
攻撃ではFW高橋が中心。
とにかく先制さえ取れれば有利に試合を展開できるだろう。
20永島 7高橋
9藤原
22青木 8林
10有藤
2中村 5小林
3今岡 6宇家
21三成
強風の向かい風の中のキックオフ
この日は強風が吹いており、前半は向かい風となる。
立ち上がりから追い風を背に攻め込んでくる大社、開始2分で混戦となったところのペナルティエリア外からFW高橋のシュートはバーの右上。
あのタイミングで撃ってくるか、とこれは危険だ。
追い風の影響もあるのだろう。
大社はとにかくゴールまで最短の攻撃を狙ってくる。
やはり攻撃の中心は高橋。
最初は大社の攻撃に耐える一方の桐生だったが、11分には中央で吉森からペナルティライン上の武蔵にスルーパスが出て、ここはDFに潰されるもののあと一歩と惜しいところ。
12分、大社はMF10有藤、MF8林と抜け出して守るDFは1人とピンチを迎えるも、有藤は右でフリーの林へのパスは選択せずに、風を計算に入れたロングシュートを放ってくるも、これはミートせずに助かる。
14分、左サイドペナルティ手前20m少しというところでで横堀がFKを得ると、左の池田、右の金田と並び、普通なら右で狙うところだが、意表をついて池田が思いきって左で狙っていくと、これが驚くべき球威と精度でゴール左上を狙うも、惜しくもわずかに外に逸れる。
池田の左はさすがだ。
更に15分、左サイドから池田のパスを受けオーバーラップしてきたDF8古沢友からのクロスをニアに飛び込んだ横堀が右足アウトで狙うもGK三成に収まる。
向かい風の中だが、そろそろペースを掴んできた。
18分、右サイドでのボールの奪い合いで吉森がイエローを受ける。
気が早い話だが、勝ち進んでいく事を想定するとイエローはなるべく避けたい。
この左サイドからのFKをFW高橋が右足で直接狙ってくるも、これまたわずかにバーの左。
最大のピンチの後に武蔵の先制ゴール!!
24分、右サイドからFW高橋が攻め込む中で桐生DF陣2人がマークにいき、一緒に倒れ込むように潰れた先にボールは転がり、ここはアドバンテージをとられ流される中、FW20永島がドフリーでシュートを撃ち込むも、撃ちきれずGKに収まる。
これは大社、本当にもったいない場面、桐生は命拾い。
その最大のピンチの後には最大のチャンスあり、25分に右サイドを横堀が起点となり、更に外を回ってきたDF2宮崎のライン際からの鋭いマイナスのクロスにゴール前中央で武蔵がズドンと決め、GKの手をかすめながらもゴールイン!!
GOOAAALLLLL!!!!
これが決定力の差というものだろう。
大社はあのチャンスを決められなかったのが響いた。
横堀から宮崎、そして決めた武蔵と見事な連携での攻撃だった。
冒頭に述べたとおり、大社から先制点を獲れる事は大きい。
先制した桐生は少しプレーに余裕が生まれ、セントラルMFの金田がいよいよ中盤を制し出す。
積極的にボールを拾っては卓越したテクニックでこれをキープし、前線に縦パスを供給し続ける。
ただ大社も高橋がいる。
33分には桐生がなかなかクリアしきれない混戦の中でヘディングで出されたボールにゴール左前まで反応して出て行った高橋が飛び出したGKをかわすように右足アウトでシュートを流し込むも、これは右のバーに直撃!
本当に常に危険なプレーヤーだ。
高校サッカーは確か準々決勝までは40分ハーフのため、時間が早い。
前半も40分プラス1分程度のロスタイムも終わり、武蔵のゴールでの1点リードで折り返しとなる。
後半、立ち上がりに武蔵追加点!!
後半立ち上がりのいきなりだった。
1分、左サイドから展開した桐生はMF6池田からのニアへのグランダーでのパスにゴールニア左前に走り込んだ武蔵が右足アウトでキーパーだけをかわすようにスルッとボールをゴールに流し込む。
GOOAAALLLLL!!!!
これは驚きのゴールだった。
まさに先制点が剛とすれば、追加点は柔。
本当に技ありの得点だった。
更にPKから武蔵のハットトリック!!
更に3分、右サイドのスローイン争いから武蔵が前線で起点となり、いったんDF2宮崎にボールを預け、ワンツーの形でゴール前に抜けようとしたところを、後ろからMF10有藤が倒してしまい、PKを獲得。
このPK、武蔵が自ら蹴りにいき、落ち着いてゴール右に流し込む。
GOOAAALLLLL!!!!
これで武蔵ハットトリック!!
まさに勝負を決める3点目となった。
それにしても、堅守を誇る大社相手にハットトリックとは・・・
強烈な名刺代わりの全国デビューとなった。
なかなか反撃に移れない大社
もはやこれで攻めるしかない大社、10分にはMF9藤原からの向かい風を計算に入れた縦パスを入れ、ゴール前でFW20永島のシュートはわずかにバーの左。
13分、桐生は1人目の交代、MF7吉森に代わり、チームキャプテンのMF11磯部を投入。
やはり磯部はボランチに入り守備固めの面もあるのだろう。
その代わりMF14金田がトップ下に上がる。
その投入直後、ハットトリックでノリノリの武蔵がペナルティ内で身体を回転させてうまくマークをかわし、GKとの1対1でのシュートは上に上がってしまう。
20分になり大社も交代でMF8林に代わり、FW11梶谷を投入。
しかしそこからの時間帯、むしろボールをポゼッションして攻め込むは桐生。
金田が上がった事でポゼッション力は高まり、ゴール前で常にゴールを狙う武蔵にどんどんボールが集まる。
26分、大社はFW20永島に代えてFW23浅津、桐生も交代でMF19横堀に代えてFW21佐藤を投入。
完勝の内容で2回戦突破!
FW7高橋も1列下がってとにかくボールをキープしなければと奮闘するも、時間は経過していく。
31分、大社はようやく良い速攻を右サイドから入れられ、スルーパス気味の縦パスを受けたFW7高橋に対し、GKもペナルティを飛び出すもかわされるようにシュートを撃たれると、これまたわずかにバーの右。
37分、大社はペナルティ手前中央からの良い位置でFKを得て、絶妙な縦パスをゴール前に入れてGKと交錯もぎりぎりゴールを守る。
ここで桐生は更に交代、貴重な先制のアシストを決めるなどこの日右サイドでの攻撃参加で活躍したDF2宮崎に代えてMF17星野を投入。
この日ボランチに入っていた古沢圭が右サイドバックに入る。
そして試合は3分間のロスタイムへ。
最後の最後まで完全にボールをポゼッションした桐生一がそのまま逃げ切る形でタイムアップ。
こうして全国初出場の桐生一が初の全国での勝利を手に入れた。
それにしても、本当に3点も取るとは・・・
特に先制してからは完全に試合を掌握した内容は圧巻だった。
これがあの前橋育英を倒してここにやってきた実力だ。
その力をまざまざと知らしめる会心の勝利だった。
明日は早くも第3回戦となるが、とにかく1試合でも先に駒を進めていって欲しい。
(12.1.2UP)
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