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昨年の悔しさを胸に・・・悲願の冬の全国優勝へ
インターハイ優勝の実績を引っさげ、ついに上州に優勝旗が凱旋する時が来たかと大いなる期待を背負った昨年のチームだったが、なんとジャイアントキラー・香川西に初戦で負けるというアクシデントでショッキングな敗退を喫した前大会。
その時2年生ながら既にチームの核であったボランチ・小島は、その後浦和レッズへの内定も決まり、キャプテンとして更に成長を遂げ、昨年の悔しさを忘れずに再び全国の舞台へ挑戦する。
とにかく、初戦で強豪潰しに定評のある香川西と当たった事は大いなる不運であったが、今回は強豪・神村学園との真っ向勝負。
これまでの育英は歴代タレント軍団と言われる豊富で強い個の力が集まりすぎ、境地に追い込まれると逆に個の力に頼りすぎて攻撃が一辺倒になって自滅していくという悪い癖があったが、今年は小島以外にあまりスターがいない事もあって、チーム全体でまず守備の意識を徹底させるという方針変換をしている。
これはここ数年、私も重く感じ取っていた欠点であり、それを克服しチームとして一丸となっている今年の育英には、これまでと違う期待感が持てる。
もうベスト4止まりは十分だ。
何回決勝に挑戦して、そして敗れればサッカーの神様は許してくれるというのか!!??
抽選の結果、入ったブロックは初戦の神村学園はじめ強豪ばかりと当たる事になりそうだが、とにかく一戦一戦が決勝の気持ちで目の前の敵に集中していくしかない。
1試合でも多くの戦いを勝ち抜き、そしてその先に見える栄光を手にして欲しい。
小島擁する前橋育英
前橋育英の中心プレーヤーはもはや語る必要もないほどの大黒柱・レッズ内定の天才MF14小島。
最近でも細貝、青木拓矢、六平など優れたボランチを配する育英の中にあっても、山田監督をして山口素弘に近い素材と評する天才プレーヤー。
そしてコンビを組むMF7湯川も山田監督からは、むしろ小島よりも楽しみがあると信頼を浴びるほどであり、小島、湯川の両ボランチがやはり育英の攻守の柱であることは間違いない。
また、前線には1年生から全国を相手に活躍している長身のFW10小牟田と、その裏で鋭いスピードと抜け出しを狙っていくシャドーストライカーのFW11飯沼、守備は守護神GK牛越を軸に、川岸と北爪の名コンビが鍵をかける。
やはり、まずは神村学園のドリブルをいかに止められるか。
まずは守れなければサッカーにならない。
勝ち上がるためにも、粘りのある守備力は必須だ。
10小牟田 11飯沼
24白石 17戸内
14小島 7湯川
3筑井 15榊原
4川岸 6北爪
1牛越
小谷をはじめとするドリブル集団・神村学園
神村学園は前評判だけみても、かなりの攻撃重視集団。
FW14小谷をはじめとしたドリブラー揃いの中で、とにかくゴールに向かっての突破力が凄いらしい。
昨年も準々決勝まで進み、その時2年だったGK吉満、攻撃的右サイドバックDF前鶴、鹿児島での予選決勝でも劇的な決勝弾を決めたスーパーサブ福島らが揃う。
ところで神村学園は今年は一時不振に喘いだものの、その後1年、2年も入れてのテコ入れを行い、1年ながら10番を背負う野嶽など、3年以外でも活躍する新星が多いとのこと。
10野嶽 14小谷
2平山 12永冨
7岩尾 13永江
11塩屋 8前鶴
22西星 5峯
17吉満
立ち上がり、どちらもビッグチャンス
立ち上がりは前橋育英がおおかたペースを握り、3分、右サイドから崩した育英はペナルティ手前からMF7湯川が上げたショートクロスにファーでFW10小牟田がヘディングにいくも、相手GKと交錯しファールとなる。
いきなりのビッグチャンスだった。
5分、右CKからファーで競り合い落としたボールにMF14小島が詰めて押し込むもゴールライン際でDFがブロック。
その直後の6分、今度は神村が左サイドからスピードを持って攻め込み、MF7岩尾からの横パスにペナルティ内でMF2平山が落とし、MF12永冨が抜け出しGKと1対1となってシュートも、これは右ポストを外れる。
こちらもいきなりのビッグチャンスだった。
9分にもペナルティ右隅から混戦となり、なかなかクリアしきれない中でシュートを浴びるもここは守備陣がブロック。
今度はそのカウンターの形で左サイドから攻め込んだMF24白石のシュートはGK吉満が抑える。
10分、更に育英はDFラインからの縦パス1本から相手DFのクリアミスからFW11飯沼が拾い、ゴール前でキープしてから流したボールにMF17戸内がシュートも、これは惜しくもミートせずにGK吉満抑える。
これは本当に惜しい!!まさに決定的な場面だった。
更に更に11分、右サイドからMF17戸内のクロスからボールを繋いでMF7湯川のペナルティ左隅からのシュートは惜しくもバーの右上。
お互いチャンスがあった立ち上がりだったが、惜しくもゴールならず。
攻める事ができている育英だが、おそらく要因としてはマークが集中する小島のところを敢えて使わず、小島がアンカー気味に後方に下がり、代わって相方の湯川が積極的にペナルティラインまで攻め込むという役割分担が出来ているお陰か。
FW小牟田の先制ゴール!!!
だが育英の攻撃の波にも慣れた神村は、ボールを奪ったらとにかく縦に、前に、速くボールを運ぶというアタッカーサッカーが出始め、16分にはFW14小谷が右サイドから抜け出し、ペナルティライン右を越えたところでGK牛越と1対1となり絶体絶命のピンチを迎えるも、小谷が切り返してできた隙を見逃さずにGK牛越が間一髪でボールを抑えこのピンチを防ぐ。
昨年までは1年から活躍していた守護神志村がいたため今年まで出番が無かった牛越だが、なかなか素晴らしいプレーだった。
そしてそのビッグセーブに追い風を受けるように18分、中央からの速攻でFW10小牟田のポストから左に白石が流れ、ペナルティ手前で湯川にスイッチし、湯川のスルーパスから小牟田が抜け出し見事にこれをゴールに流し込む!!!
GOOAAALLLLL!!!!
よし!!!!
本当に素晴らしいゴールだった。
先ほどからいい攻撃を見せていた白石や湯川といったところが、小牟田をうまく生かしながら流れるような理想的な展開でゴールを決める事でできた。
やはり小島頼みにならないところでのチーム全体での攻守の一体感が生み出した得点といえた。
湯川、見事に2点目を決める!!
この1点で波に乗った育英は、中盤の底ではボールを持った小島がどんなに相手に囲まれようともボールを失わずに軽くいなしながらボールをサイドに展開させ、神村につかみ所を作らせない。
22分にも、小島が中盤の底で3人を相手に囲まれながらも右サイドに展開し、小牟田から戸内にスイッチしたところで逆サイドのゴール前左に流し、飯沼のシュートは惜しくもミートしきれずGK抑える。
そして28分、左サイドを上がったDF3筑井からのセンタリングをゴール前でFW11飯沼がスルーし、その裏でボールを受けたMF7湯川がフェイントのターンで相手のタイミングをずらしてからのシュートをゴール右隅に流し込み、これが見事にゴール隅に決まる!!!!
GOOAAALLLLL!!!!
またも決めたか!!!!
本当に今日の湯川は攻撃のセンスが素晴らしい!!
これで2点先制となった前橋育英。
2点先制となれば、後はそう自滅しない限り負ける事はない。
しっかり守りながら決定的な3点目のダメ押しを狙うだけだ。
神村学園に1点返される
31分、MF7小谷が右寄りを抜け出し、DF3筑井、GK1牛越もかわしてゴールライン際から決定的なマイナスの折り返しを送るも、これはDF6北爪が決死のクリア。
さすが小谷、突破力は本物だ。
これで反撃の狼煙をあげた神村学園、35分にはゴールキックから育英のDFラインでのクリアが中途半端になったところからMF2平山に抜け出されてしまい、そのままGKとの1対1を冷静に決めて1点返される。
・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!???・・・・・・・・・・・
さすがは神村学園。
このまま前半を2−0で終えれば楽勝ムードかと思ったが、まさか前半のうちで1点返されるとは。
これでまた試合もわからなくなってしまった。
前半は1点リードで折り返し
36分、ペナルティ左隅手前からMF7湯川がドリブルで勝負にいくも、ペナルティに入ったところで2人に挟まれ倒される。
この湯川のプレーに対しシミュレーションのイエローカードが提示。
いや〜PKとかはどうでもいいが、湯川がこの先累積で出られなくなると痛い、痛すぎる。
これはこの先、湯川もカードに気を付けながらプレーしていかなければいけなくなった。
前半も40分が過ぎ1分のロスタイムに入ると、右サイドからの神村のFKはGK牛越が抑えて前半終了。
どうにか2点リードで折り返したかったところだが、1点リードということでまだまだ気を引き締めて後半を戦わなければいけない。
神村学園、後半から2人チェンジ
後半キックオフで神村学園はMF12永冨、DF8前鶴に代えてFW18福島、MF15上船を投入。
いきなり後半開始からスーパーサブの福島を投入とは、神村側の危機感が伺える。
だがキャプテン前鶴の交代はやはりアクシデントだったらしく、足首を痛めたようで、急遽ボランチのMF13永江を右サイドバックに下げての臨時対応とのこと。
後半3分、神村が育英陣内に攻め込み、福島や野嶽らがボールを繋いでなかなか育英も捕まえきれず、ゴール左で福島の中央に切り返してからのシュートはバーの上にふかす。
8分には右サイドからMF14小谷が送ったクロスボールにゴール前にうまく入り込んだFW10野嶽のヘディングシュートはわずかにバーの右。
あ、、危ない!!
本当に危ない場面だった。
ただ単にシュートがたまたま外れただけだった。
11分、育英は右サイドで起点を作り、小島がダイレクトでのスルーパスをペナルティ右に出し、FW10小牟田が抜け出してシュートもGK吉満がはじく。
12分、小谷の左寄りからの突破から、折り返しをFW18福島がシュートもどうにかDF陣がブロック。
育英もチャンスは作るも、やはり神村の方が後半チャンスは多く作る事ができている。
飯沼のダメ押し3点目が決まる!!!
18分、中央からMF24白石が中央突破で攻め込み、いったんはね返ったところから再度シュートはバーの上。
ここで育英も選手交代、MF17戸内に代えて2年で県予選決勝でもゴールを決めたスーパーサブMF25松井を投入。
20分、小島が上がっていきゴール前で混戦となって最後はシュートで終えるもDF陣にブロックされる。
22分、左サイドをMF24白石からFW11飯沼へ、そして飯沼の送ったクロスがゴール前に詰めた小牟田に届かなかったが、その裏のファー側で今度は湯川らがボールをキープし、湯川のキレたフェイントから2人抜きで起点となり、その後方からMF25松井が送ったパスをゴール前で飯沼がダイレクトにシュートを合わせ、これが見事にゴール右に突き刺さる!!
GOOAAALLLLL!!!!
よし!!決めたぞ飯沼!!!!
今日の育英の決定力は凄まじい。
ほとんどのシュートがきちんと枠を捉え、そして3点という得点を手にする事ができた。
どの得点も、決して個人の力だけで獲ったというわけではなく、3人以上が絡んでのチーム全体での得点という点も素晴らしい。
これまでの一本調子のイメージの強かった育英の攻撃が確実に変わっている。
これだけ小刻みにパスを繋いで得点を決められると本当に気持ちがいい。
これで3−1となり、時間からいってもダメ押しと言っていい得点。
後半、最初の得点を獲った方がこの試合を決めると思われたが、それは育英にきた。
決定的な4点目が決まり終了
30分、育英は2人目の交代でMF24白石に代えてMF18四分一を投入。
その四分一、投入直後からシュート、クロスと得点に絡むプレーを早速見せ、神村の反撃の手を緩める事に成功する。
35分、神村学園は右サイドから起点を作り、逆サイドのFW14小谷にボールを送ると、小谷のゴール前への絶妙のクロスに野嶽が合わせにいくもわずかに届かず。
36分にもドリブルから中央突破を許し、スイッチされてからシュートされるもGK牛越が抑える。
神村の最後の反撃のペースになってきたと見るや、MF14小島がわざとゆっくりとボールをキープし、一気にペナルティ左サイドにボールを出しスピードアップさせると左CKを得る。
この左CK、MF14小島の意表を突く低いボールからニアで当たってファーに流れたところでDF4川岸が押し込んだシュートがゴールに!!
GOOAAALLLLL!!!!
ダメ押しのダメ押しの4点が決まる。
まさか4点入るとは・・・
それにしてもあの場面で急にシフトを変える小島のあの間合い・・・
とても高校生の風格ではない。
まさに天才。
後半40分が終わったところで、なんと育英はMF18四分一に代えてDF22イ・ジョンスを投入。
最初は右サイドバックのDF15榊原を下げる予定だったが、決定的な4点目が入った事で完全な守りの采配。
その後の2分のロスタイムも全く危なげなくホイッスルを迎え、4−1という圧勝で初戦突破となった。
全員守備、全員攻撃、そしてその流動性
良い試合だった。
攻守共にチーム一体となり、全員で守り、そして全員で攻めるという姿勢がよく出ていた。
絶賛すべきは湯川と小島のボランチのところでのゲームメイクの巧みさ。
マークが常につく小島のところを敢えて使わずに、その代わりに湯川が攻撃的になることで前半の2点を決め、試合の主導権を握る事に成功した。
やはり今年の育英は強い。
これまでの個の力に頼ったところは微塵もなく、チームのどこからでも守れ、攻める事ができ、なんといってもその流動性が素晴らしい。
私が常々思う、流動性を制したチームこそが一番強いというチームを具現化させたチームと言える。
この先も小島、湯川、そして前線の小牟田や守備ラインの川岸らの中央のラインがアクシデントなく戦い抜ければ、今年の育英は勝ち続ける力がある。
まだまだ先は長いが、とにかく1戦でも多くの試合を見せて欲しい。
(10.12.31UP)
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