TOPへ戻る>>その他群馬サッカー関連について




2007-2008全国高校サッカー選手権

第1回戦 前橋育英 5−4 奈良育英


壮絶な撃ち合いの末の辛勝

横棒



今年も育英の決勝戦を目指した戦いが始まる・・・

ザスパ草津の松下達の時代は2年連続ベスト4、佐田達の時代もベスト4と、毎年タレント集団と呼ばれながらベスト4止まりの前橋育英。
そして近年は2回連続で初戦敗退という低迷気味の結果となっている。
今思えば、現役代表のDF青山やレッズのMF細貝の時代はなぜ全国への切符を逃したのか不思議でならないが、とにかく前橋育英はそのタレント能力を活かせない残念な結果が続いている。

そんな育英もまた今年チャンスが巡ってきた。
宿命のライバル前橋商業との群馬大会決勝を勝ち抜き、再び全国の舞台に帰ってきたのだ。

過去何人ものJリーグで活躍する諸先輩達が達成しえなかった悲願の決勝進出に向け、前橋育英は常に宿命を背負う。



U-18代表候補の廣瀬、青木擁する育英

育英のスタメン2トップは群馬大会決勝で先制ゴールを挙げた1年のFW24西澤と、途中出場で決勝ゴールを決めた3年のFW15喜屋武(きやたけ)の2トップという、まさに結果を挙げたものから前を揃えていくというシンプルな選択。

代わりにFWだった2年のMF8佐藤穣が2列目に下がり、そして2列目だった2年のMF7六平が3列目、3列目だったDF14米田賢がDFラインにと、徐々にポジションを下げる。
守備の大黒柱・ゲームキャプテンのDF2鈴木が負傷で欠場なのが大変痛いところ。
米田兄弟がいかにその穴を埋められるか。

そしてなんといっても育英といえばJ1大宮に加入が決まったU−19のMF5青木。
攻守に渡る青木の出来がチームの勝敗を左右するし、私も個人的に大変注目するところ。
またもう1人のU−19、ドリブラーMF10廣瀬が攻撃の主軸となる。


24西澤 15喜屋武

8佐藤穣     10廣瀬
5青木 7六平

23田中         6笛田
14米田賢 4米田淳

12志村


2年主体の奈良育英

奈良育英はスタメンのうち7名が2年という珍しい構成。
キャプテンのMF6斉藤とMF9金城の2ボランチとGK松本だけが3年、DF25二見だけが1年で後はみんな2年。
これで全国に来るということは来年はもっと恐ろしいということだろう。


18吉田 14中野

7金塚      17遠見
6斉藤 9金城

25二見        15楠
4染田 5的場

1松本


立ち上がりからチャンスを掴む両チーム

前橋育英としてはやはりセンターバック鈴木不在のDFラインに不安を残すところ。

6分、中盤のボールの奪い合いから出てきた前線へのボールに奈良育英のFW18吉田がDFラインを抜き出てあわやGKと1対1というところをDF米田かろうじてブロックに間に合う。
早速ウィークポイントを突かれた形。

しかし前橋育英も10分、DFラインからの縦パスに中盤でスルーしたところに左サイドバックのDF23田中が抜き出て見事に1対1の場面に結びつくも、田中の狙いすましたシュートはわずかにゴール右へ。

いや〜これは入ると思ったので大変痛い決定機の逸失。


12分、両チーム初のCK、前橋育英は右CKをショートコーナーを使いクロスを送り、ゴール前でMF5青木のヘディングはバーの上へ。

14分にはペナルティ手前左サイドでMF10廣瀬が縦のフェイントを使った鋭いドリブルで攻め込むと、奈良もたまらずファール。
絶好の位置でのFK、左利きのFW15喜屋武のキックはゴール前で跳ね返される。


16分、奈良も最初のCK、左CKを蹴るはキャプテンMF6斉藤、右で入れたところからセカンドボールを狙われるもDF陣がブロック。
GKが出ていただけに危なかった。


育英、ショートコーナーから西澤の先制!!!

17分、前橋は右CKのチャンス、またしてもショートコーナーから右サイドを崩し、ペナルティ内でボールをもったMF10廣瀬、さすがの華麗なドリブルで奈良DF陣の間を翻弄し、中央に折り返したところでシュートはいったんは跳ね返されるも、それを再び拾い左サイドからつなげると、奈良DFラインから抜け出したFW24西澤がシュートを合わせる。


GOOAAALLLLL!!!!


群馬決勝大会に続きまたしても1年ストライカーの大きな先制点。
これはかなり大きな1点。


立て続けに笛田の追加点!!!

奈良も1点を返しに攻めに来るが、育英もしっかりボックスを固めチャンスには繋げさせない。

そんな中の22分、中央でMF5青木が潰されながら奈良のボールをカットすると、右サイドバックのDF6笛田から中央FW15喜屋武、ワンツー気味のスルーパスを前線に通し、そのままの勢いで上がった笛田がDFラインから完全に抜き出てGKと1対1になったところで冷静にゴール右隅にシュートを流し込む。


GOOAAALLLLL!!!!


前半のうちだが、もはや試合は決したといっても過言ではない、圧倒的な攻撃の鋭さを証明した追加点が立て続けに決まる。



奈良DF半壊もGK松本こらえる

これ以降もFW24西澤などを捕らえきれない奈良育英DF、何度もラインを抜け出そうになるところをGK松本大胆な飛び出しで何度かピンチを救う。


31分、育英は前線のタレント達が奈良ペナルティ付近でボールをしつこくキープし奈良DFを翻弄。
ペナルティ外右サイドからMF7六平がクロスを上げファーでFW24西澤のシュートはGK松本ファインセーブではじき出す。

32分も育英は中央からの速攻、FW15喜屋武のループシュートをまたしてもGK松本後ろに反りながらファインセーブ。

既に半ば半壊している奈良DF陣を3年GK松本がかろうじて食い止める。


34分、中央からMF5青木が自ら持ち込み、ペナルティ手前でDF2人をかわしていくドリブルで、2人目のところで足をかけられファール。
いいね青木、ああいった間合いだけで相手をかわすドリブルをやるところなんざ、相当にくいプレーだ。

この絶好のFK、青木が自ら直接狙うもバーの上。


前半は2点のリードで折り返し

前半もロスタイムに入ったところで右サイドバックDF6笛田のロング縦パスが送られ、これにオフサイドぎりぎり、というよりも明らかに奈良DF陣のライン形成のミスから抜け出したMF8佐藤穣、やむなく飛び出してきたGK松本の頭を越えるループシュートを放つ。

おお、これは入ったかと思われたが、なんと上のバーを直撃!!
これに詰めたFW15喜屋武のシュートもバーの上を越え、ここで前半終了のホイッスル。


育英は4点くらい決めてもいい前半だったが、2点リードで前半を折り返す。



奈良、後半開始から長身の10番田仲を投入

奈良育英は後半開始からMF17遠見に代え185cmの長身10番田仲を投入。
田中をトップに出し、FW14中野を右サイドに配置代え。


後半立ち上がりの時間帯を利用して攻め込んだ前橋、前線にこぼれたところでMF7六平のシュートはバーの左へ。


2分、奈良は投入されたFW10田仲が右サイドでその体格を利用してうまくキープしクロスを送ると、MF7金塚のシュートはDF6笛田かろうじてブロック。


4分、今度は前橋、中央MF10廣瀬のふわっとした技ありの前線へのループパスからMF7六平のシュートチャンスはGK松本が阻止。


その直後5分、今度は右サイドからFW14中野が鋭く突いてシュートを放つも、GK12志村ニアへの強烈なシュートだったが見事に反応し止める。



後半は立ち上がりから共に見応えのあるゴール前の激しい攻防。
しかしぎりぎりゴールはならず。


西澤の2点目でダメ押し弾!!

そんなどちらにゴールが訪れるかわからない展開だったが、この日はどうしても前橋の方に得点の女神は微笑む。

9分、中央MF10廣瀬、得意のドリブルで揺さぶりながら絶妙のスルーパスを右サイドに送り、またしてもMF8佐藤穣、オフサイドラインをかいくぐりこれを受けると、そのまま縦に突破。

ゴール前で奈良DF陣に追いつかれたところでマイナスに折り返し、FW24西澤が詰めてシュート!!


GOOAAALLLLL!!!!


ダメ押しともいえる3点目。
奈良が交代により息を吹き返してきただけに、その出鼻をくじく大きな1点が決まる。


奈良育英、1点を返す

3点という大きなビハインドを背負う奈良だが、まだ勝負を諦めるわけにもいかない。

11分、中央から速攻で押し込みFW18吉田のシュートをなんとかブロックするも、そのこぼれ球から右サイドに出され、右サイドに回っていたFW14中野が強烈な右足でのアウトにかけたシュート。

これが強烈にアウトに回転がかかりながらゴールに突き刺さり1点を返される。

後半、この中野が右サイドに回ってから急に奈良の攻撃に鋭さが増した。
長身田中の効果よりも、この中野がサイドで動くようになったことがキーポイントだった。


なんと立て続けに失点、1点差に詰め寄られる

1点返されたがまだ2点のリードがある前橋。
ここは落ち着きたいところだったが・・・

13分、左サイドに回ったFW10田中にボールが回りニアに転がすと、これに詰めたFW18吉田がシュートも、DF14米田賢、いったんはスライディングで止めるも、再度吉田がシュートしこれが決まってしまう。

なんと、もはやセーフティーに見えた3点差がわずか2分のうちに1点差に詰め寄られる。

この場面、それまで育英が支配することが多かったセカンドボールの拾い合いで、なぜかことごとく奈良につなげられてしまった事からはじまった失点だった。
やはり先ほどの得点の効果が大きいのだろう。


悪夢の同点劇・・・

16分、前橋は右CKのチャンス、FW15喜屋武のキックからゴール前中央でヘディングシュートもまたしてもバーの上に嫌われる。
やはりこんな状況になるくらいなら前半のうちに3点、4点決め手ておくべきだった。
試合は思わぬ攻撃の応酬、ノーガードの撃ち合いの様相を呈する。


20分、前橋は2点の失点の流れを止めるべくFW24西澤に代えFW9木原を投入。

しかしその20分、前橋はDFラインで痛恨のミスからボールを奪われ、そのまま左サイドFW18吉田が抜け出てGKと1対1の場面、GK12志村もこれを止めにいくも、吉田は更に可能性が高い右のFW10田仲へのパスを選択し、完全フリーになっていた田仲がこれを冷静に押し込みなんと同点にされてしまう。


なんと・・・まさか3点差が同点になるとは・・・

ここにきてゲームキャプテン鈴木の不在を思い知らされる連続のショッキングな失点が立て続けに決まってしまう。


前橋、なんと負傷の鈴木を入れる

なんと前橋は22分、MF7六平に代え負傷しているDF2鈴木を投入。
ここは温存しておきたかったのだろうが、もはや温存している場合ではないと判断したのだろう。

・・・しかしだったら山田監督・・・2失点の時点で入れておくべきだ。


入った鈴木だが、どうやら負傷とはいっても軽傷程度だったのか、元気に右サイドを駆け上がるなどあまり怪我の影響も見られない。
やはり大事をとってのベンチだったのだろうか。

その鈴木の入った効果は確かにあった。

慌てていた前橋のDFラインから3列目は落ち着きを取り戻しボールを失わないようになる。
何より鈴木の投入で1人1人の戦う意識がもう一度帰ってきた。


またしても廣瀬の芸術的なスルーパスから木原の追加点!!

39分、右サイドからMF5青木がまたしても独特の間合いのドリブルであれよあれよと相手ゴール前まで持ち込み、これには解説陣も感嘆の言葉。

しかし折り返しのパスがあと一歩のところでブロックされる。


続けての40分、中央からMF10廣瀬がまたしてもドリブルをベースとした揺さぶりからスルーパスを左サイドに送り、FW15喜屋武は飛び出してきたGK松本をかわすループパスをファーに送ると、ここに詰めたFW9木原がシュート!!


GOOAAALLLLL!!!!


凄い・・・本当に凄いぞ、廣瀬という男のスルーパスは・・・

ドリブラー、ドリブラーと呼ばれてはいるが、ドリブルという絶対的な武器をベースにした安定したパスがこの試合いくつもの得点を前橋にもたらした。
さすがはU−19、伊達ではない。
群馬大会決勝ではほとんどこういった煌めきを見る事はできなかったが、昨年の2年時は確かに片鱗はあった。
この全国にきてその能力が発揮された点が素晴らしい。

ちなみに喜びすぎたか木原がユニフォームを脱ぐパフォーマンスでイエローを受ける。


なんとCKから再度の同点に・・・!?

奈良はFW24吉田を投入し、まだまだ諦めない構え。

そして38分、奈良は左CKを得るとMF6斉藤のキックからGK志村の前でFW24吉田がヘディングしまたしてもゴールが決まってしまう。

これで4−4。なんなんだ・・・今日の奈良育英の強運は・・・



もはや残り時間も少ない中、ロスタイムに入り前橋はPK戦に備え1年のGK志村に代え3年のGK松本に交代。



終了間際、青木のパスから喜屋武決勝ゴール!!

ロスタイム2分も過ぎたところでそのGK松本、ファーストタッチを無難にこなし前線にフィード。

このボールの争いに格の違いを見せたMF5青木、ボールをカットしキープするとそのまま前線に上がり、絶妙のボールを前線にスルーパス。

これに反応し抜け出たFW15喜屋武、この日何度も好セーブをしてきたGK松本をかわすゴール右隅へのシュートを落ち着いて流し込む。


GOOAAALLLLL!!!!


壮絶な撃ち合いとなったこの試合だが、これが本当に最後の最後の両チーム合わせて9点目の決勝ゴール。

3点差がついてもう決まりだと思われたこの試合、山田監督もPK戦を覚悟したが結局最後は青木というタレントがケリをつけてくれた。


戦い終わり・・・そして次の戦いへ

これにて5−4というまれにみる撃ち合いの試合は終わった。
この観戦記は特にゴールシーンは詳しく書いていくため非常に長くなってしまった。
こんな試合は珍しい。

それにしても勝ったから良かったものの、3点とって3点追いつかれてはいけない。
いくら鈴木がいなかったからといってもだ。

これから勝ち進むにつれ、どうしても苦しい状況は訪れるし、絶対点を与えてはいけない時間帯、試合というものもある。
そこを耐えられなければ到底悲願の決勝進出など果たせない。

しかしこの初戦がいい薬になるのかもしれない。
特に相手の奈良育英の決して諦めないという姿勢を肌で感じ取り、それを学んで吸収できれば、次に実行するのは前橋育英の番だ。

とかく過去の試合をみて、どうも精神面で難のある育英だが、この試合は大きな糧となるのかもしれない。



それにしてもU−19の青木と廣瀬のプレーは本当に凄いものだった。
個人としても、チームとしてもまた次の試合に期待し、注目していきたい。






(08.1.1UP)






TOPへ戻る>>その他群馬サッカー関連について


inserted by FC2 system