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2006-2007高校サッカー選手権

群馬県大会決勝 前橋商業VS前橋育英


宿命の対決 育英、前商の死闘

横棒



育英、前商 宿命の決勝戦

昨年こそ現在ザスパ草津チャレンジャーチームに所属するMF福島率いる伊勢崎商が優勝し、群馬代表として全国大会に行ったものの過去、ほとんどの高校サッカー選手権群馬大会の決勝はこの2校で戦われた。

そう、群馬サッカー界において絶対的な存在である前橋育英と前橋商業の2強対決だ。

伊勢崎商も福島らの黄金世代が過ぎ、今は力を貯える時期。
そうなるとこの2校の力はやはり県内では圧倒的だ。
育英は予想外の苦戦を強いられたものの、前商は常に優位に試合を進め2年前の全国ベスト8の力を見せつけ決勝まで勝ち進んだ。

しかも前商のキャプテンはそのベスト8メンバーとして当時1年生ながら正GKを務めた土田。
土田を中心とした前商持ち前の全員守備でここまでの3試合わずか1失点という堅守を見せる。

それに対し、黄色と黒のタイガー軍団育英は、Jリーグチームからの内定者2名を擁するタレント集団ぶりは変わらず。

常に拮抗した力でぶつかりあうこの宿命の対決がまた今年も繰り広げられた。


札幌の岩沼、神戸の三澤らを擁する育英

タレント集団育英は札幌に内定しているレフティーのボランチMF6岩沼、神戸に内定している左サイドバックのDF17三澤、そして昨年の決勝メンバーでもあるキャプテンFW10藤倉、ドリブラ−MF14廣瀬、そして前線を任されるワントップFW13佐藤(大)、トップ下MF8佐藤(穣)の佐藤兄弟、守備を担うMF24米田(賢)、DF4米田(淳)の米田兄弟、DFの中心、ヘディングでも得点源であるDF2黄(ファン)、1年生ながら右サイドバックのレギュラーDF25笛田と、いずれも蒼々たる面々。

13佐藤(大)
10藤倉     14廣瀬
8佐藤(穣)
6岩沼  24米田(賢)

17三澤        25笛田
4米田(淳) 2黄

1塚田


GK土田を中心にまとまりのある前商

前商も育英に負けない面々が揃う。
得点源であるFW10小林、MF9石井、切れ味鋭いMF8沖津、攻撃力のあるボランチMF13岩上、そして1年生から全国を知るキャプテンGK1土田を中心としたまとまりのある守備が持ち味の守備陣が揃う。

また、この前の大会であるインターハイの決勝でも前商と育英は決勝で戦ったが、その時の決勝でも得点し優勝の原動力になった育英キラーFW11矢内(ヤナイ)は敢えてベンチに温存し、長身FWの八木をトップに据える。

20八木 10小林

8沖津       9石井
13岩上 7井上

5坂本        3星野(悟)
2堤 4星野(慶)

1土田

守備ラインのDF3星野(悟)、DF4星野(慶)も兄弟。
なんか今年、やたらと兄弟多いな・・・


強風の風上で押し込む前商

強い風上の元、前商が優勢に押し込む。
立ち上がりこそ互いに小競り合いとなったが、12分、前商は左CKから口火を切ると、15分右サイドからの攻撃からゴール前でMF8沖津が飛び抜けGKがなんとか抑える場面も。

育英はDF17三澤が左サイドでサイドチェンジを受けて切れ込みJリーグ内定の実力の片鱗を見せる。

20分、前商はスローインからFW10小林が落とし、MF13岩上がペナルティ中央からシュートは惜しくもキーパー正面。

それに対し育英も前商のDFとMFの2ラインの守備網にスペースを見出せず苦戦するも、ラインディフェンスゆえのサイドの裏のスペースを狙い21分、こぼれ球をうまく1年生のボランチMF米田が奪うと、DFラインの右サイドをかわし切れ込んでシュートに持ち込む。
しかしこれは惜しくも右バ−を直撃。

押し込まれていながらもチャンスを作る。


互いに良いキッカーを揃える

25分、前商は左サイドの混戦から中央に出たボールからMF13岩上が思いきりのいいミドルを放ち、GK塚田ゴール隅へ横飛びのファインセーブ。
はじいた球を更にMF8沖津がヘディングで詰めるも、バーの左に逸れる。

ここまでの時間帯、1つ見所だったのは互いのセットプレー。
前商は右足のMF13岩上が左右ほとんどのCKを蹴り、CKのボールが直接バーを叩くほどの威力と精度を見せつける。
育英は札幌内定のMF6岩沼の左と、MF10藤倉の右がまたいい球を蹴る。
さすがは前商と育英、この辺の個人の技量の高さはさすが。
互いにいいキッカーを携え、セットプレーでは数々のチャンスを作り出す。


前半はスコアレス

32分、前商は4本連続のCKを浴びせ、最後はショートコーナーを使い、いったんFW10小林に渡したボールのリターンをMF13岩上自ら中に切れ込み右足を振り抜きシュート!
これにまたもGK塚田、横跳びのファインセーブではじく。

共にバーを叩くシュートがあったものの、互いに守備にはきちんと人数を割くため、拮抗した中でのスコアレスの前半となった。
中でも育英のGK塚田は優れた敏捷性を持ったいいキーパー。
解説陣も塚田を褒め称える。


風下ながら前商の攻勢

後半、一転して風下に立った前商だが、3分、最初のCKを得て、MF13岩上の右CKからニアのDF5坂本のヘディングはバーかDFに直撃。

このCKの時にも前半に見せたようなショートコーナーにいくような揺さぶりもかけていたため、ニアで坂本をフリーにできたのだろう。
今思えば2年前のDF糠谷のゴールラッシュにみられるとおり、前商の贄田監督はセットプレーにかなりの比重を置いているとみた。

確かに全員守備が基本の高校サッカーではマークをはがす事が容易でなく、なかなか流れの中での得点というものが難しい。
またGKもまだ経験が浅く、豊富なバリエーションのセットプレーで揺さぶれると結構利く事も多いだろう。
そうなるとセットプレーに比重を置くという事は効率的だと考えられる。


7分にもMF8沖津のサイドからのいい突破があり、DFを1人縦にかわしゴール前のチャンスに繋げる。
この試合、両チームの攻撃陣の中で光ったのはこの沖津ではないだろうか。
縦への意識、そして何よりもゴール前での得点への意識が素晴らしかった。


風上の育英の反撃

育英も途中からFW10藤倉をトップの位置まで上げ、FW13佐藤(大)との2トップに並べ風上の優位を活かし攻勢に出る。

11分の左CKから、ファーサイドのDF2黄のヘディング。
前に出てきていたGK土田はかわすものの、ゴール前に張ったDFが決死のクリア。

そして13分、左の遠目のFK,左のMF6岩沼、右のMF10藤倉と並び、岩沼を囮にMF10藤倉がファーに入れると、DF2黄にシュートチャンスが訪れるが、これはGK土田が身をていして防ぐ。
黄、ダイレクトでうまく撃てていれば、と悔やまれるシーンだった。


17分、これまで中盤を支えてきた大黒柱MF6岩沼が右足首を負傷。
この貴重なレフティーの代えはそうそういない、と心配されたが、テーピングをぐるぐるに巻きスパイクを履き直し21分に再びピッチに戻る。


互いに切り札を投入もスコアレス

23分、前商は敢えてベンチに温存しておいた育英キラーFW11矢内(やない)をFW20八木に代えて投入。
おそらくプランどおりだろうが勝負をかけてくる。

24分、育英はサイドチェンジからの右からの攻撃、前線に浮き球を送ると、風が影響したのか、名手GK土田、珍しく取り損ね、そこをシュートされピンチを招くが、ゴール前のDF必死のクリア。

26分、前商、ボールを中盤で奪うと、すかさず右サイドにいたFW11矢内に渡し、矢内そのままスピードに乗ったドリブルで突破。
そしてそのまま右サイドからシュートを放つも、これがファーの左のバーを叩く。
さすが育英キラーといった実力の片鱗を見せる。


30分、育英はMF8佐藤(穣)に代え、昨年のスタメンMF7小島を入れる。

育英にはこの他にもMF14廣瀬というドリブルの名手がいるが、前商もそこは十分に警戒し常に2、3人でマークに当たる。

死闘はスコアレスのまま延長へ

互いに高校生らしい豊富な運動量を武器に、全員守備、全員攻撃のぶつかり合いでマークもなかなか剥がれず一進一退の攻防。
まさに死闘。
細かい技術などでなく、もはや気合いの勝負となる。
さすが前商VS育英だ。
このどちらかに勝利を送るのは実にもったいない。

サッカーの神様もこの名勝負に決着をつけるのをためらったのか、もったいぶったか、結局得点は入らずスコアレスのまま延長に突入。
延長は10分ハーフの20分を、たとえ得点が入っても時間がくるまでやることになる。

延長といえば、インターハイの決勝でも前商と育英は延長に入り、そして岩上、矢内のゴールで前商が優勝した。
またその時と同じとなるか、育英が雪辱を晴らすか。


延長2分、1年の笛田がPKを奪取

延長に入り、延長前半は以前として風上の育英は、ここで勝負にいくべくFW13佐藤(大)からFW23石井を投入。

2分、前述したとおり警戒されていたMF14廣瀬、左サイドでの中盤のこぼれ球をうまく処理し、一瞬の隙をつき縦にかわしシュート。
GK土田なんとかはじくも、ペナルティエリア右外に上がったボールに対し、更に右サイドバックのDF25笛田が拾い、マークについたMF8沖津をフェイントを入れてかわそうとしたところ、沖津、裏をとられそうになったところで痛恨のファールを犯してしまい、これがPKの判定。

このPKにキャプテンMF10藤倉、左隅に豪快に蹴り込み、さすがのGK土田も反応こそすれど、これは捕れない。

ついにこの試合初めての得点が育英に生まれる。


またもやバーを直撃

更に6分、育英は右サイドをFW23石井がいいクロスを上げチャンスを作ると、7分にはMF7小島がワンツーで抜け出てDFの間をかわしシュート。
これもまた右のバーを直撃。
いったいこの試合、両チームの合計で何本のシュートがバーを叩いただろうか?
それでいて未だ1−0とは、やはり締まった良いゲームだということだろう。


前商も8分、MF8沖津に代えてMF6竹越を投入。

そのまま延長は後半に入り、いよいよ前商が風上に立つ。

4分、育英のMF10藤倉、左サイドを抜け出しチャンスとなるが、オフサイドの判定。

6分、いよいよ試合は残り5分を切ったところで、前商はハーフラインを少し越えたところでのFK。
普通なら単なるFKの場面だったが、強烈な風上に立ち、しかもパワープレイしかない前商、このFKを蹴るのはなんとGK土田。
ハーフラインを超えてFKをGKが蹴るという場面はそうそう見る事はできない。

土田のキックはまさに狙いどおりのファーの左サイドに飛び、これにDF4星野(慶)、どんぴしゃのヘディングも、わずかに外れサイドネットに突き刺さる。


死闘は育英に軍配

まさに死闘となった延長あわせた100分間。

なぜ群馬にはこれほどまでに力の拮抗した強豪校がこんなにも近いわずか数キロの距離で2校存在し得るのだろうか?

前商のチーム全体での徹底した守備、ここ一番の攻撃の精度の高さは素晴らしかった。

そして育英はやはり個の力が強かった。全国に行けなければ育英に来た意味がない、と決意を込めた岩沼、藤倉、廣瀬といったタレント達はようやく3年ぶりに全国の切符を掴んだ。


初の決勝進出、そして優勝へ

もう歴代の群馬代表の何チームが準決勝の国立の舞台で苦渋を舐め、そして決勝への切符を逃してきただろうか。

群馬勢初の決勝進出、そして優勝を是非とも持ち帰ってきて欲しい。

圧倒的な実力で勝ち進むチームもあれば、今年の育英のように、何度も苦しみながらも、それでも這い上がっていくチームもある。

そう、現ザスパ草津キャプテンFW佐藤正美や昨年のザスパの守護神GK岩丸、札幌FW相川、川崎のMF松下、甲府のMF茂原、そして当時まだ2年だった鹿島MFの青木らを擁したタレント集団は、2年連続で準決勝の舞台に進むという快挙を遂げながらも、あと一歩のところで鉄壁の市船相手にどうしても1点が入らず、PK戦で惜しくも敗退した。

どう考えても史上最強のチームであったあのタレント集団ですら成し遂げられなかった決勝進出の壁。(そしてその2年後、ザスパの佐田、圭志、里見らも準決勝で惜しくも敗退。鳥居塚も前商時代に準決勝で敗退。)
案外、その壁を乗り越えるのは今年の育英のような苦しみ抜いたチームなのかもしれない。

前商の分の魂も込めて、年末からの選手権での育英の活躍に期待したい。




(06.11.13UP)






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