TOPへ戻る>>横浜FLUGELSのページへ戻る




平成10年度(1998) 第78回
天皇杯
準決勝 1998年12月27日
横浜FLUGELS 1−0 鹿島アントラーズ


横棒



最後の聖戦、決勝の前に立ちはだかる覇者・鹿島

2011年春、東日本大震災でJリーグが中断している間に、もう12年以上前の横浜FLUGELS最後の聖戦となった天皇杯での激闘の観戦記を綴っていこうという企画第3弾。

準々決勝でリーグ2位の強豪・ジュビロを完璧な自分たちのシステムの完成度で攻守共に凌駕し、準決勝へと駒を進めたフリューゲルス。

この最後の聖戦、本当にラストとなる元日の決勝まであと1勝。

しかし、その前に立ちはだかるのは、この年リーグを制覇した覇者・鹿島アントラーズ。

いよいよ年貢の納め時か・・・誰の胸にも覚悟の念が生まれるところだが、しかしもはや今のフリューゲルスに立ち止まっている暇はない。

相手が誰だろうか知ったことか。

この聖なる白き翼をまといし軍団の、天に飛翔していくまでの道のりを、もはや誰が邪魔だてできようか。
その白き翼を汚す事など、誰であっても許しはしない。

最後の聖戦、天皇杯の最大の山場はこうした決意のもと迎えられた。



以上が2011年春に書いた冒頭の文章、そしてその10年後の2021年、解説にフリューゲルスからは波戸、鹿島からは名良橋を解説に迎えた再放送があって湘南サポの友人がDVDを送ってくれたため、再び昔を懐かしく見返すこととなった。
(21.8.13追記)



メンバー不動のFLUGELS

FLUGELSはまたしても前試合でもイエローカードなどももらわなかったので欠員が無くまさにベストメンバー。

連続得点を決め波に乗るラッキーボーイFW吉田に注目が集まる。



9吉田 22久保山

10永井
6三浦         12波戸
5山口 8サンパイオ

3薩川 13前田 4佐藤尽

1楢崎


ベンチにはFW28大島秀夫、MF29アンデルソン、DF2佐藤一樹、DF7原田武男、GK20仁田尾





攻守に隙の無い絶対王者アントラーズ

この頃のJリーグチャンピオンだった鹿島はやはり中心がMFビスマルク。
この頃のJリーグはピクシーやビスマルクといった外国人司令塔全盛期の頃で、なかなかラモス以来の司令塔が育たないと嘆いた頃の時代だった。
この頃ようやく頭角を表してきたのがまだ二十歳前くらいの中村俊輔などだったと思う。

まさにこの天皇杯最大の山場、実質の決勝戦が始まることになる。




11長谷川 8マジーニョ

16阿部     10ビスマルク
6本田 5内藤

7相馬         22名良橋
15室井 3秋田

28高桑


サブはまだ若いFW13柳沢、長らく鹿島のスーパーサブの代名詞だったFW30真中、まだまだ若いMF27小笠原、MF24本山らの黄金期達、そして今や不動の守護神GK29曽ヶ端と、今思えば蒼々たる面々の顔ぶれ。



いきなりの永井のボレーシュートで先制!!

出だしは互いに激しいプレスの応酬から攻守がめまぐるしく代わる展開。
最初のシュートは左サイドから鋭く攻め入ったDF相馬から落とされたボールに中央からMF5内藤がシュートにいき、これは力無く転がったのがオープニングシュート。


そんな中の4分だった。

自陣からのサイドチェンジのボールを右サイドで受けたMF12波戸が一度はボールを奪われるも、すぐさま取り返してFW22久保山にスイッチ。
その久保山が波戸に代わり右サイドに攻め入り、ファーに上げたクロスをペナルティライン上でFW9吉田が頭で落とすと、このボールがワンバンドしたところに合わせるようにステップを踏んだMF10永井が右足を一閃。
なんとこのボールが一直線にゴール左上に吸い込まれる!!


GOOAAALLLLL!!!!


まさかの永井のボレー一閃でのシュートがいきなりズドンと決まる!!

本当に素晴らしい、美しすぎるゴールだった。

波戸が一度奪われてもしっかりと奪い返すという気迫と、2トップがしっかりと絡んだ連携されたゴールという点が本当に素晴らしい。

思えばこの天皇杯、常にFLUGELSは先制点に恵まれた。
それゆえにどの試合でも有利に戦う事ができた。
これが幸運の一言で片づけるべきか、背水の陣で戦う男達の当然の帰結か。



キレている永井

反撃に出る鹿島だが、8分にはFLUGELSも再び永井が得意の高速ドリブルでカウンターを切り込み、ゴール前で右の吉田に送ったところで吉田の折り返しのショートクロスが永井の頭を狙うもこれはわずかに合わず。

いや〜本当に永井の高速ドリブルは速い!!!
あっという間にハーフラインから相手ゴール前まで攻め入ってしまう。
相手DFも身構える時間もあまり無く、一瞬のステップで置いて行かれるので、本当に止めづらい。


それとこの試合は本当に選手達が良く動く。
鹿島の速いパス回しについていかなければいけない事もあるのだろうが、永井や久保山らの献身的な前線から中盤まで広くカバーする守備、そして奪ったらすぐに速攻という驚くべき運動量は本当に目を見張る。

当時自分もあまりのモチベーションの高さからの連動したこのFLUGELSの切り替えの早さの動きに感動し、このサッカーならばおそらくセリエAのユーベにも、スペインのレアルにも勝てると確信したほどだった。

高いモチベーションに裏付けされた完璧に連動されたサッカーは個の力を凌駕するという持論とも言える私の根底にある考えはこの頃に既にFLUGELSによって確信となっていたと思う。

18分、鹿島はDF22名良橋がスピードを活かして縦に攻め込んだところを、ペナルティ右で急に横からカットにいったのはDF13前田!!
さすが男前田、気迫のディフェンスでこの突破を止める。

19分、その特に今日動きの良いMF10永井が中盤でボールを受け取ると、前にスペースがあるとみるや果敢にバイタルエリアに攻め入り、右前の吉田らをわずかにフェイントに使いながら自ら強烈なミドルシュートを叩き込みにいくも、これは惜しくもわずかにバーの右。
先制の美しいゴールにより、この日の永井のキレは相当なものだった。



山口とサンパイオの縦の関係

前半を半分過ぎても鹿島にはほとんどチャンスは無し。
唯一の見せ場は24分の右CKから、ファーでDF3秋田が得意のヘディングでゴールを狙ったのみだが、これはGK楢崎が長いリーチを活かして抑える。

どうやらこの試合のFLUGELSは、鹿島のキーマンであるMF10ビスマルクを抑えるためにも後方を常にMF8サンパイオがケアし、その分だけMF5山口がより前の位置でボールをさばき、時折するどいクサビのパスを前線に入れる。

その山口は22分には左サイドからの組み立てでやや手詰まり気味だったところに、三浦アツからのパスを受け取った山口がすかさず半分ターンしながら前線ゴール前の永井にボールを送るという建設的なパスを送り込み、25分には中盤で自ら奪ったボールから右サイド波戸が入れたボールにそのままゴール前まで飛び込みシュートを狙うという積極性もみせる。


24分、鹿島は右CKの流れからのゴール左ファーからのDF3秋田が圧巻のヘディングを放つが、これをGK楢崎正剛、これまたさすがの左下横へのファインセーブをみせ止める。
ここまででは、これが唯一の鹿島のチャンスだったか。


27分、フリューゲルスは自陣で鹿島からボールを奪ったところ、DF4佐藤尽からのパスを受けたMF12波戸が山口素弘ばりの華麗なターンでマークをかわすと、2人の挟まれながらもパスを繋ぎ、これは波戸さん巧いですね!と名良橋が讃えると、波戸自身は、いや、こんなうまいターン、自分は出来ないはずだ、と主張するも、確かに波戸だ。




互いに1人づつの退場で10人同士の戦いに!!!

30分、MF10ビスマルクがペナルティ内に送ったスルーパスだったが、それに反応したFW8マジーニョに対し薩川らが2人がかりでブロックし、難なくGK楢崎が抑えたプレーだったが、その裏でマジーニョが、しつこくブロックされた薩川に対し殴りにいく明らかな報復行為でなんと一発レッドカードで退場。
その前に後ろからブロックにいった薩川にもイエローが提示。

なんと前半30分という時間帯で鹿島は1人少ない状況で1点を追う事となってしまった。


まあ、これはかなりFLUGELSに有利だな・・・と思っていた矢先、今度は33分、中盤のボールの争いから抜け出したMF16阿部に対し、薩川がオブストラクションのファールでまたしてもイエローで、なんと2枚のイエローで退場!!!

これによって前半のうちに互いに1人づつ退場し、10人同士の戦いとなってしまった。

また、当然の事ながら薩川はこの試合勝ったとしても、次の決勝に出られないという残念な結果となってしまった。



際だつ世界最高峰アンカー・サンパイオ

10人づつとなったことで、鹿島は普通に長谷川の1トップとし、FLUGELSも4バックとして、久保山、吉田の若い2トップを両サイド中心に回して中央にMF10永井の兄貴をゼロトップで残す布陣とし、3バックから移行した分、サンパイオがアンカーの要素をより強くし、広い範囲をカバーするようにして対応。
それにしてもサンパイオのボール奪取能力の高さ、絶対抜かれない絶大な安定感、奪ったらそのまま前までボールを失わずに、確実にキープして攻撃に繋げる展開力、それなのにこれだけの広さをカバーしてしまう運動量・・・さすがは現役ブラジル代表。

今思っても、サンパイオ以上のボランチは世界でもなかなか類を見ない。
セントラルMFとしてはピルロのような、より天才肌の選手もいるだろうが、アンカーという意味でのボランチならばサンパイオは史上最高のアンカーだったと評してもおかしくはない。

そのサンパイオのカバー相手になかなか自由にボールを持たせてもらえないビスマルクという構図がそのまま試合展開を反映している。


38分、左サイドからDF6三浦淳宏が得意のゴール方向へのドリブルでの仕掛けで、シザーズフェイントを入れながらの積極的なシュートという、まさに三浦アツというシュートは惜しくもブロックに阻まれる。


前半もロスタイムに入り、膠着した攻撃をなんとかしようとMF6本田がミドルシュートにいき、これがバーの上を越えて前半終了。

FLUGELSは山口とサンパイオの縦の関係のボランチに、永井が序盤に天才的なキレをみせた事で前半の内容は鹿島を圧倒し、1点リードした事でチャンピオン鹿島相手に有利な状態で試合を運べた印象となった折り返しとなった。





後半、鹿島阿部の決定機は外れる

後半に入り、互いに10人のため、ややスペースが空くところも増え、速攻がしやすくなり、カウンターをカウンターで返すようなスピーディーな展開が増えるも、しかし最後のところは鹿島は秋田、フリューゲルスは前田・佐藤尽がゴール前に立ちはだかり、なかなか互いにシュートまでは行けず。

後半8分、鹿島は左サイドからショートカウンターの形となって、サイドチェンジとなったボールを受けたFW11長谷川がシュートしたところをGK楢崎がファインセーブでこれをはじくも、ここに再度MF16阿部が得意の左でのシュートを狙うも、これがかろうじてバーの右を逸れる。

まさに決定的な場面であったため、これは助かった。


13分、左サイドでDF22名良橋の縦への突破をDF6三浦アツがしっかり止め、これには解説の名良橋も、ほらこれで4戦全敗ですよ、と嘆き節。
確かにこの試合の三浦アツの左サイドでの存在感が半端ない。
この天皇杯、なぜここまでフリューゲルスが強かったかという大きな要素としては、左の三浦アツ抜きでは語れない。

そしてそのまま三浦アツ自らショートカウンターとなり、得意の揺さぶりからのフェイントで突破にいき、こぼれたところを再度拾っての左足でのシュートは、惜しくも枠を外す。


いよいよ後半も立ち上がりの時間を過ぎ、得点を奪っていかないといけない鹿島は左サイドからビスマルクとのコンビネーションからDF7相馬が抜け出し、相馬のシュートは危うくバーの右へ。


19分、鹿島は1枚目のカードを切り、MF5内藤に代えまさに切り札・ジョーカーといえるMF24本山を投入。
ビスマルクと本山のペアでサンパイオや山口らが控えるFLIUGELSの中盤を崩しにかかる。


23分、サンパイオが鹿島の密集地帯を抜けようとしたところで、またもオブストラクションのファールとなったDF7相馬に対しイエロー。

26分、投入されたMF24本山が右サイドから中央へスライドしながら、あのキレたドリブルで2人のマークをかわしながらゴール方向へ迫るも、フリューゲルスもブロックで対応。
本山、なんとこの年はまだルーキーか。


FLUGELSはFW9吉田に代えてMF29アンデルソンを投入。

アンデルソンは中盤左に入り、久保山は右サイドに回る。



更に攻撃的に来る鹿島

28分、ここで鹿島は更に交代、MF16阿部に代えてFW13柳沢を投入。
これで10人ながらもFW2人、トップ下2人と攻撃的な布陣を敷く鹿島。

この辺はさすがに追う鹿島と追われるFLUGELSという様相で、鹿島の攻撃が長く続く時間帯が増える。

34分、鹿島はDF15室井に代えてMF27小笠原を投入。
いよいよDFの枚数をも減らし、小笠原という展開力をプラスさせていく。
後半に入った鹿島の選手が、柳沢、本山、小笠原・・・そのまま近い将来の日本代表にそのままなれる黄金期メンバー。

35分、鹿島はゴール前左サイドからFW11長谷川が詰めに行くも、DF13前田がブロックにいき、その後長谷川が倒れるもノーファール。

攻め続ける鹿島は36分、左サイドからDF7相馬が切り返してから右足でシュートを狙いにいくも、これはバーの右を逸れる。



FLUGELSも反撃に

37分、MF29アンデルソンが左サイドを1人で突破し、ペナルティ左で切り返してからの右足でのシュートは惜しくもDFに当たる。

39分、右サイドでの守備で見事な出足でボールを奪ったDF6三浦アツがそのままボールを持って上がり、見事なまたぎフェイントで1人ぶち抜くと、そのままペナルティ手前からもう1人も抜きにかかるが、これは鋭いMF6本田のスライディングでカットされる。
さすが本田・・・なんて深いスライディングブロック!!

更に40分には速攻で左からMF29アンデルソンが入れたボールに右でMF10永井が決定的なシュートを放つも、これはGK高桑が抑える。

無理はせず防戦一方だった後半のFLUGELSだが、この辺は個の力も冴えてシュートまで持って行く底力を見せる。


そして流れを引き戻したフリューゲルスは、残り時間も考えながらサンパイオを中心にサイドで時間を稼ぎにも来て、相手鹿島もいよいよ焦りが見られる。



鹿島の決定機も守護神正剛が立ちはだかり決勝進出!!

44分、FW13柳沢がさすがの動きで右サイドを2人のマーク相手に巧みに抜け出し、そのまま切り返してペナルティ右へ侵入しようというところで、DF6三浦アツがうまくボールを奪う。
ちょっとでも足が引っかかったらPKになる危ない場面だったが、この試合、三浦アツのタイミングの良いボール奪取が光りまくる。
こんなにも守備で貢献する選手だったのか、三浦アツは!!

そして45分の直前。
左サイドから長いボールを出され、ゴール前右で柳沢が頭で落としたボールにDF22名良橋が決定的なボレーシュートを至近距離で放つも、GK楢崎がこぼすこともなくガッチリとセーブ!!
良く止めた正剛!!!!

その後も楢崎を中心にゴールを死守し、ついに2分のロスタイムも終わり試合終了!!




こうしてFLUGELSはついに念願だった決勝の舞台へと駒を進めた。

とにかく王者鹿島に対し、本当に素晴らしい内容であり、必然の勝利だった。

ここに来て、選手1人1人が最高のパフォーマンスを魅せている事が凄い。

次の運命の決勝、正真正銘の横浜FLUGELS最後の聖戦、残念ながら山口と共にチームを支えてきた功労者・DF薩川が出場停止となるのは痛いが、DF陣には原田もいる。

対戦相手はピクシー擁する強敵名古屋に勝った清水エスパルス。

そしてFLUGELS最後の日、1999年1月1日を迎える・・・







(11.04.27UP)
(21.08.13追記)






TOPへ戻る>>横浜FLUGELSのページへ戻る


inserted by FC2 system