TOPへ戻る>>横浜FLUGELSのページへ戻る




平成10年度(1998) 第78回
天皇杯
第4回戦 1998年12月20日
横浜FLUGELS 3−0 ヴァンフォーレ甲府


横棒



消滅が決定したFLUGELSの最後の聖戦が始まる・・・

最初に書いておきますが、この文書を書くのは2011年4月9日です。
現在、3月11日に発生した東日本大震災の影響によりJリーグも一時中断となっており、以前から書いておきたかった横浜フリューゲルスの最後の聖戦となった天皇杯での戦いの観戦記を、今一度ビデオを見て振り返りながら書いていきたいというものです。
では、もう12年以上前となる1998年、年末まで時計の針を戻したいと思います・・・




忘れもしない1998年10月29日での突然の横浜FLUGELSの横浜マリノスへの吸収合併の発表から月日も経ち、その間サポータ達の必死の署名運動、抗議運動などが展開されたものの事態は変わらず、時間は無情にも流れ、もはやフリューゲルスの消滅は回避できない事が決定的となった頃だった。

リーグ戦も終わり、横浜フリューゲルスとしての最後の戦いは、残った天皇杯のみに絞られ、フリューゲルスは第3回戦からの出場であり、既に大塚製薬(現在の徳島ヴォルティス)との戦いは4−2で勝利を収めている。


そして4回戦で当たるのは、当時JFL所属であり、翌年の1999年に創設される事が決定しているJ2リーグへの参入が決まっていたヴァンフォーレ甲府。


これまでの天皇杯3試合とも、エース・FWバロンを中心に毎試合6得点を挙げてきた攻撃力に定評のあるチームだ。

そうか、この頃から甲府はすでに攻撃的なスタイルだったわけか。
その後Jリーグでも大活躍することとなるバロンがいるのならば頷ける。


とにかく、負けたら天皇杯終了と同時に即解散、というとんでもないプレッシャーがかかったFLUGELSの、1999年元日決勝を目指すといった悲壮の決意を秘めた最後の聖戦の幕はこうして開けていった。











ベストメンバーのFLUGELS

FLUGELSはまさにベストメンバー。
スイーパーにMF7原田が入らないが、代わりに男・前田浩二が入り、左右を薩川、佐藤尽が固める鉄壁の3バックに、後方には未だにJリーグでMVP(2011年)に輝くほどの実力を示している、当時は若き守護神・楢崎正剛がゴールマウスに構える。

当時のFLUGELSはこの3バックにスイーパー原田を加えた4人がほぼ同程度のレギュラー扱いで、カードの累積、負傷欠場などでも4人のうち3人が出れば問題はないという理想的なローテーションを回せていた記憶が強い。
ちなみに私はトップ下までこなせるユーティリティー性を持つ原田のスイーパーが大好き。

それと薩川は必ず半袖であり、この日も冷たい雨が降る中でただ1人の半袖でかなり目立つ^^;)


そして2ボランチはJリーグ史上最高にして、この先ももう無いであろう最強のボランチコンビ、我が師・山口素弘とブラジル代表MFサンパイオが構え、チームの大黒柱となる。

司令塔にはこのチームの中で唯一無二の存在である永井の兄貴。

FLUGELS最大の武器である、左右の翼は今年(2011年)引退が決まった三浦淳宏と波戸。
2トップには若き点取り屋、久保山と吉田が入る。



9吉田 22久保山

10永井
6三浦         12波戸
5山口 8サンパイオ

3薩川 13前田 4佐藤尽

1楢崎


ベンチにはFW28大島秀夫、MF24氏家英行、MF29アンデルソン、DF7原田武男、GK20仁田尾。


その後はマリノスや新潟で活躍することとなる大島や、ザスパや現在図南で活躍する氏家らがいる。
そしてコーチ陣には、その後ザスパで人材育成に貢献してくれる事となる佐野コーチの顔も!!!





エースバロン擁する甲府

甲府はなんといってもエースのバロン。
足下だけではなく高さもある。

そのバロンと2トップを組むのは、当時から俊足でならした”走れ”堀井。

その他攻撃の軸となるのは、その後ジェフや仙台で活躍するMF14大柴。

この堀井や大柴らがスピードで前線を掻き回し、最後はバロンが決めるというのがパターン。



20堀井 11バロン

3渡邉        14大柴
13新明 19金子

2木村         12カギ原
4山尾 6仲田

21倉持


※DF12カギ原のカギは草かんむりに禾と亀という漢字・・・パソコンでなかなか出てこない・・・




立ち上がり、甲府の決定的なシュートは外れる

立ち上がり、MF14大柴からの前線へのパスにゴール前に突っ込んだFW堀井とGK楢崎が接触するも、楢崎怪我は無い様子。

オープニングシュートはそのMF14大柴が3分にペナルティ中央手前やや距離があるところから積極的にシュートを狙っていき、これはバーの左を逸れる。

そして4分、縦パスにペナルティ左に入り込んだFW堀井に対し、DF4佐藤尽が絡んで倒れたところで、後ろから上がってきたMF3渡邉のフリーでのシュートは決定的だったがかろうじてバーの左に逸れてくれる。

格下相手ではあるものの、勢いに乗る甲府がFLUGELSに襲いかかる。


この辺は、現在の日程と違い、Jリーグ勢はリーグが終わってから天皇杯を3回戦から参戦することとなるため期間が約1ヶ月間も空いてしまい、コンディション調整が難しいというJFL勢との差があるらしい。


そんな中だが、FLUGELSも左右のサイドを使った攻撃が徐々に機能しはじめ、特に左でスローインを得ると三浦アツがロングスローをゴール前に張るサンパイオに合わせるというお決まりのパターンを使ってくるため、何度かチャンスを作り始める。



山口、サンパイオの華麗なるゲームメイク

14分、中央でのヘディングでの争いで佐藤尽と競ったMF14大柴にイエローが出る。


18分、DF佐藤尽が右サイドからボールを運び、中央で山口を経由してサンパイオから送られたボールをペナルティ右手前で吉田が受けシュートをファーゴール左に放っていくもバーの左上へ。

佐藤尽はこういった攻撃参加が得意であり、相手のプレッシャーが無いとみるやどんどん前にボールを運び攻撃の起点となる事が当時から印象的だった。

そして中央でボールを受け、軽くターンして相手のプレスをいなしながらボールをさばく山口などのゲームの組み立てはやはり素晴らしい。


また、ここまで見て改めて感じたが、山口とサンパイオの攻撃参加の率がかなり高い事が分かる。
イメージ的にはどちらもボールに絡みながら、どちらかはペナルティ付近まで攻め込む。

おそらく互いのバランスも意識しながらだろうが、中盤の守備と攻撃の組み立てという2つの役割をこの2人は交互に、高い次元でこなしている。
さすが史上最高のボランチコンビ。

特に司令塔の位置に入る永井はドリブラーらしくあまりボールに積極的に絡みにいくよりも、フリースペースで受けようとする自由なポジション取りをするので、攻撃の組み立てはやはりこのボランチのところで行う必要がある。


24分、その永井が左寄りから長距離のドリブルでボールを運び、ペナルティ内で吉田と絡みながらシュートを伺うもこれはブロックされ、はじかれたところを後方から久保山がシュートにいくもこれもDF陣にブロックされる。




手強い甲府に対し前半はスコアレス

前半も半ばの時間帯になると、ほぼボールを保持するのはFLUGELS一辺倒となる。
やはり山口、サンパイオを始めとしたボールのキープ力、支配力の差は圧倒的。

甲府はこの攻撃をしのいでからの堀井らのスピードを活かしたカウンターを時折狙いにいく。

だが、いずれも大柴や堀井らの単発で終わり、なかなかエースバロンがボールに絡むケースはまだ少ない。


35分、左サイドからMF6三浦アツが切れ込み、右横のMF10永井に回すと、すかさず永井のミドルシュートが鋭くゴールニア右を突くも、これはGK抑える。

その返す刀となった36分、甲府は右後方からの浮き球のパスから、ゴール前でFW11バロンが高さを活かしてのバックヘッドでのループ気味のシュートはわずかにバーの上を逸れる。
やはりこういった選手にゴール前に構えられると怖い。


38分にも左サイドからFW20堀井がスピードを活かして切れ込み、DF佐藤尽もついていくものの鋭いセンタリングを出され、GK楢崎がかろじてパンチングから再度詰められる場面もゴールラインに逃れる。


40分、右サイド波戸からのクロスをいったんはブロックされるものの、はね返ったボールを再度左サイドから三浦アツが積極的なシュートを放つもバーの左上。

41分、ペナルティ内で永井が2人のマークを相手に切れ込んでいき、マイナスのパスを送ると、サンパイオ、これを1回トラップにいってしまい、これが長くなってカットされる。
サンパイオほどのプレーヤーならばそのままダイレクトにインサイドでファーへ流し込むという技を見せて欲しいところ。



そうして前半もタイムアップ。
やはり簡単な試合は無いというか、なかなかに格下といっても甲府は強敵。
むしろ決定的場面は甲府の方にあり、前半の半ばの時間帯以外は危ない展開だった。





後半立ち上がりにセットプレーで先制!!!

雨が降り始め、徐々に雨、風が強まってきた後半開始3分、左サイドで吉田がもらったFKから、MF6三浦アツが右足でゴールキーパーの前に鋭く落ちる質の高いFKを蹴っていき、これにDF4佐藤尽がドンぴしゃで頭で合わせる。


GOOAAALLLLL!!!!


素晴らしいドンぴしゃのヘディング一閃!!
やはりアツのキックの質は素晴らしい。
これには善戦していた甲府もどうにもならない。

この頃、FLUGELSはセットプレーなども含め多種多様な得点パターンを持っていた事も強みの一つだった。

このままスコアレスの展開が続くと、甲府のカウンター一発でまさかの敗退、といったシナリオもあり得る展開だったが、この先制はかなり大きい。



このゴールの直後、甲府も反撃に出て、FW11バロンのヘディングからゴール前に入ったMF3渡邉が頭で合わせ同点ゴール!!???と思われたが、これはわずかにオフサイドの判定で助かる。
バロンはこのヘディングで頭から流血。



FW吉田単独突破での2点目!!!

そいて8分、中盤でボールをカットしたFLUGELSは、そのまま前線のFW吉田に繋げ、DF6仲田のマークをかわすように左にスライドしながら強引に左で放っていったシュートはGKの右脇を抜け滑る形でなんとそのままゴールイン!!


GOOAAALLLLL!!!!


これはGK、雨の影響もあっての痛恨の失点となってしまった。
FLUGELSにとっては後半の立ち上がりの時間帯に2点を奪うという理想的な展開で、これでかなり楽な展開になる。


いよいよ苦境に立たされた甲府は15分、右サイドからFW堀井がスピードで切れ込み、ゴール前にクロスを上げてバロンが頭で狙うという、ようやく理想的な形が出来るも、このシュートは力無く楢崎が抑える。


その後は反撃したい甲府よりも、むしろFLUGELSの方が伸び伸びと攻撃をする展開。
特に両サイドの三浦アツ、波戸らの積極的な攻撃が目立ち、永井がドリブルで自由に前線を切り裂く場面も出てきて、サッカーの世界ではセーフティーリードとされるダメ押しの3点目を狙いにいく。
2点リードをもらい、いよいよエンジンがかかってきたというところか。


そんな劣勢の中の甲府は27分、DF12カギ原に代えてMF10吉田悟を投入。



吉田2点目でダメ押しの3点リードとなる

29分、エンジン全開となってきたMF6三浦アツが左サイドから中央に切れ込んでいき、ゴール前でボールをまたぐ鋭いフェイントから右足での決定的なシュートを放つも、これはバーのわずか左を逸れる。


33分、FLUGELSはFW22久保山に代えてMF29アンデルソンを投入。

その直後の34分、左サイドからの三浦アツのロングスローからサンパイオが落としたところで起点となり、ペナルティ左サイドを三浦アツがマイナスのセンタリングをサンパイオが落とし、完全なフリーでFW9吉田が難なく決める。


GOOAAALLLLL!!!!


これで決定的なダメ押しの3点目。
やはり2点目が決まった時点で格上のFLUGELSとしては勝負があった。


これで吉田はお役ご免でFW28大島秀夫と交代。

大島はこの年が前橋育英から入ったばかりの高卒ルーキー1年目。

そんな時にいきなりのチーム消滅の憂き目にあったんだな〜大島は。
当時は今の短髪のイメージから面影が無いやや長髪の大島。
若い!!

この試合はあまりプレー時間は無かったものの、ペナルティ内での安定したポストプレーからのクサビの役目はしっかり果たしていた。
やっぱりポストやらせると上手いな〜この頃から既に。


試合終了、ベスト8へ

甲府は42分、MF13新明からMF8阿井に交代。
更に43分、MF14大柴に代えてFW16清水武士を投入。

完全に意気消沈したチームに対し、1点でも取り返せとばかりに監督もはっぱをかける。

その入ったばかりの清水が左サイドからシュートを放ちにいき、バーの左をわずかに逸れる。

44分、FLUGELSも最後の交代、MF12波戸に代えてDF7原田を投入。
これはもう完全な守備固めで、これからのトーナメントも考えて無理はしない。
ユーティリティー性のある原田は、そのまま波戸の右サイドに入る。



そして試合は3分間のロスタイムへ。

3分のロスタイムが過ぎたところで右サイドからの攻撃からMF29アンデルソンがゴール前右サイドからインサイドでゴールに流し込みにいくもこれはGKの手に当たってバーの左に逸れ、CKが終わったところで試合終了。



こうして前半はどちらに転がるかわからない展開だったが、後半立ち上がりの時間帯にうまく点を奪えた事もあって地力の差が出て3−0の大量リードで試合を終え、ベスト8に進める事となった。

次からがJリーグの強豪との戦いとなる。

いよいよ最後の聖戦の死闘がはじまる・・・










(11.04.09UP)






TOPへ戻る>>横浜FLUGELSのページへ戻る


inserted by FC2 system