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BUCK-TICKアルバム紹介・批評
『夢見る宇宙』(2012.9)


BUCK-TICK 夢見る宇宙

横棒


前作のラズダズから約2年ぶりのアルバム。
この間に、日本は忘れもしない2011年3月11日に発生した東日本大震災に文字通り大揺れとなり、BUCK-TICKメンバーも連日救済の募金やら物資やらを集めに情報を発信するなど活動。

結果的には本業であるアルバム製作やらライブ活動などが半年間は止まったものと思われる。


そして震災後、初めて発表されたこのアルバムの名は「夢見る宇宙」。
自主レーベルLingua Sounda発足後、最初のオリジナルアルバムでもある。

全体的にどこか自らの存在を求めるような、まさに夢の中をさまよっているようなテーマを感じ、震災の犠牲者への鎮魂歌、レクイエムといった要素もあろうかと思う。



しかし・・・最近のアルバムでは大抵1曲は入っていた今井のコーラスが全面に出た曲も無く、自分としてはちょっと歴代アルバムの中では順位を落とすか・・・

ただ、前作のラズダズよりはアルバム全体としてのバランスは良い気もする。

インパクトが比較的弱いポップな曲ばかりだが、その反面どの曲も不思議と何回も聴けるので、リピートで聴き流すのには結構良い。

バクチク、特に今井としてはやはり前々作のメメントモリであまりに完成し過ぎたアルバムを作ってしまったので、それを越えるアルバム作りというものにやや苦しんでいる感もあるのでは・・・
そんな、メメントモリ以降の、もう少し気楽な感じを求めたラズダズの流れを受けたような雰囲気を感じる。


要はインパクトは小さいが、聴けば聴くほど味が出るというBUCK-TICKの醍醐味は充分入っている、まあつまりこれも初心者向けではなく、BUCK-TICKマニア向けの、こういった一枚もあっていいかな、といった感じのアルバムでしょうか。






01.エリーゼのために-ROCK for Elise-

〜詞:今井 曲:今井〜

(君や私が欲しいのはそれじゃないんだ)

先行シングル第一弾。

このアルバムの中で秀逸である事は、出だしの打ち込みからそのまま流れに入っていくリフが素晴らしいこの曲が、そのままアルバムへの導入になるべく一曲目に入っている事だろう。

いかにも今井らしい打ち込み音から、一気にツインギター、ユータのベースが重なり、一挙にヴォルテージを上げてくれる。

この出だしについてはアルバムを構成する上で非常に重要な事だと思う。
何よりもこのアルバムを聴こうというモチベーションがこの1曲目によって生まれる。


さて、歌詞の内容の方は・・・
相変わらずだが、何が”エリーゼ”なのか、詞の中にはそんなワード一言も出てきませんが・・・

優しい、誰にも共感するようなモノなんて、実は誰も奥底で欲しいものじゃない。

BUCK-TICKファンなら痛いほど分かっているであろう、この感覚、世の中の薄っぺらいモノ全てにNOを突き出し、自分たちの本当に求めたいモノを追求する。

そう、どんな世の中の音楽で、「これはどうだ」、と突きつけられようとも、所詮BUCK-TICKを知る我々の前では、、、





それじゃ ないんだ





02.CLIMAX TOGETHER

〜詞:今井 曲:今井〜

(一緒にどう?イケるかな?お月様が見てる)

宇宙の果てまでイッちゃうといった、アルバムのキーワードである宇宙を歌詞に盛り込んだ、いわゆるシングルには敢えて入れなかったこのアルバムオリジナルのメイン曲。

アルバムの初回限定盤の付属DVDにライブハウスでのPVがわざわざ入っているところからも、今回のこの曲に対するライブへの入れ込みが伝わるライブのための曲と思える。


曲調からテーマから、全てハジケており、まあさぞかし女性ファン、特に櫻井ファンの方々は官能に酔いしれる曲だろうと思う。


2012ライブツアー”夢見る宇宙”でのこの曲は凄まじかった・・・
必ずアンコールの手前、セットリストの最後にこの曲を持ってきて、この日の最高潮の盛り上がりを演出する。

曲がかかった瞬間、急に会場全体がスイッチが入ったように、両手を振り上げ一斉に飛び跳ねるように手拍子。

あそこまで一気にスイッチが入る曲は最近あまり無かったな〜


まさに”CLIMAX TOGETHER”
もうイッちゃおうよ、みんなで。
イケるよ、イケる。




03.LADY SKELETON

〜詩:櫻井 曲:今井〜

(愛してくれ LADY SKELETON エデンの園)

題名どおり、まさに骨まで愛しているという、多少穿った見方をした愛の歌?

正直よく分からないところはあるけど、骸骨の女性というのはBUCK-TICKのイメージとしてはかなり合っていると納得もいく。

ライブでは”お〜おお〜、おおおお〜”のところで盛り上がります。



04.人魚 -mermaid-

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(BABY! 君はびしょ濡れ 僕はトロケちゃって 浜辺でビキニを探すよ)

これはもう明るいの一言。

なんといっても歌詞が飛び抜けて明るい。
太陽、ビーチ、人魚、ビキニ。。。どうした?おい?っていうほど明るい。


だが、その底抜けに明るいだけの歌詞に対し、今井の手がけたであろうこの重厚な低音、絡みつくような粘着性をも感じるサウンドの数々。

それでいて、実は星野の作曲という変化球、いや〜素晴らしい。

この曲は好きだ。

ライブでも、この不思議なバランスの元に成り立った”見かけ上”明るい、それでいて強烈に世の中を皮肉っているような、この心地よいサウンドの元で両手を叩いて盛り上がれます。




05.夢路

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(真っ暗闇の中 炎は燃えている 真っ暗闇の宇宙 お前を抱きしめる)


まさにこのアルバムのテーマに忠実に従ったバラード曲だと思える。

どうもインタビューとかでも、やはりこの”夢見る宇宙”は震災の影響が出ているようで、まさにこの歌詞全体を通して、津波などにより失われた家族がどこか暗闇の中で待っているような、魂だけでもそこに飛んでいって、といったイメージだと辻褄が合う。


歌い方からしても、かなり櫻井も冒頭から思い入れを込めていて、何か必死にメッセージを載せたい、そんなイメージが伝わってくる。


曲調も星野の曲っぽい、なかなか心に響くバラードで重厚な感じが良い。

こういう曲はやはりアルバムには欠かせない。





06.ONLY YOU -WE ARE NOT ALONE-

〜詞:今井 曲:今井〜

(きれいな名前だ 顔を上げなよ)


シングル・ミステイクのカップリング曲。

分かりやすい、あまりに分かりやすい。
最近の今井の作詞らしい、ストレートなメッセージを込めた曲。

下記に挙げるミステイクでの、名を叫べ、というメッセージのとおり、このオンリーユーでは各個人、各々だけが持つ最初のアイデンティティー、”名前”という事からまず意識し、生きる希望を、生きる意味を見出せと、震災被害から立ち直るエールとも取れる今井のメッセージを感じる。


サビの部分では、ライブでも観客全体が一斉に手を振り上げ盛り上がれます。
特に「イェイ!イェイ!イェイ!イェイ!」からの「ジャスターオンリユー!」の掛け合いね。




07.禁じられた遊び -ADULT CHILDREN-

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(何て素敵な世界だ 天使が笑っている 踊りましょう あなたは自由)


この歌はどうも櫻井が亡き母のトラウマと決別するべく書いたとも言われる。

この部屋を出て行くよ、ありがとう、さよなら


ちょうど今回のライブでもセットリストのレギュラー曲として「Long Distance Call」を頑なに組み入れていたけど、この亡き母に捧げる曲と、この曲をセットにする事で一つのケジメとしたのか。


また、インタビューの中では櫻井は、この歌も前述の「夢路」と同じように、震災で母親を亡くした子供がきっとまたいつか元気に戻ってきてくれるよね、と夢を見て、さよならの向こう側に行けば、愛しい人とも逢えるという様を書いたともあり、その少年の姿が母を亡くした自分の姿と合わさったのかもしれない。





08.夜想

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(夜の片隅で おまえは独りぼっち わたしも独りぼっち ふたりは独りぼっち)


夢、宇宙というテーマに沿った中で、この曲だけはダークの要素が入ったかなと。

まさにBUCK-TICKっぽいなと。

毒を食む(はむ)という虫をイメージする辺りが、前回アルバムの「羽虫」や、セラフィムの「春 繰る 夏 喰う (どうやら虫の擬態?)」あたりと被る。

こんな歌詞、櫻井以外書けない。


ダ、ドゥビィ、ダ、ダ、ドゥ、ビダ〜

この辺のフレーズを最後に入れ込んでくるところが、まさに今井テイストのBUCK-TICKらしくお洒落。

この感じだよね、最近のBUCK-TICKは。





09.INTER RAPTOR

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(風切る シンプルだぜ 生きて死ぬのが運命なら 野垂れ死ぬその前に 殺しの歌に血は躍る 躍るんだ)


誰もがこのアルバムの中で一番パンチがあると感じる、シングルでもない、クローズアップもされない、だけどこのアルバムの影の代表曲。

もうね〜、アルバムが全体的にあまりにポップなんで、この曲が無ければBUCK-TICKを疑うところでしたよ、ホント。

一つ注文を付ければ、この曲に今井単独のパートが欲しかった。
前回は同じような位置づけの曲にタンゴがあり、あの今井の気の抜けた強烈に皮肉が込められたパートは本当に最高だった。
(ただ、櫻井の詞の時はそれは無いか・・・これが今井の作詞だったら、おそらく自分のパートを入れたのでは?)


RAPTORが猛禽であり、生きるために殺すという意味と、インタビューで櫻井は”RAPTOR”という名前の戦闘機があり、じゃあ戦闘機は何のために人を殺すんだろうと、という問いかけも込めた、本能とか野生の感じを表現したらしい。


とにかく格好いい。

まさにワシが風を突っ切りながら獲物を捕らえる。
非情に見えても、それが生きる道理であり、そしてそれが何よりシンプル。

本当に格好いい。

なぜこれがカラオケに無い????


間違いなくこのアルバムの中での最高傑作、影の代表曲であり、このアルバムの存在価値を忘れさせない大事な曲。



踊るんだ〜♪




10.MISS TAKE ?I'm not miss take-

〜詞:今井 曲:今井〜

(親愛なる現実(うつしよ)よ)

シングルでの副題は”僕はミステイク”だったが、アルバムでは”not”と否定形になった。

元々、TVのインタビューでも作詞作曲の今井がクローンをテーマとした舞台を観て、クローンとしての存在、自分は本当に存在していいのかという問いかけから作った唄という事で、僕はミステイクなのか、と問いかける曲だったが、このアルバムで新たに、いや、存在してもいい、それでも存在価値がある、という自らのアイデンティティーを見い出したという力強さを副題からは感じ取りたい。


とにかくこの唄は終始格好いい。
TVでの映像は最高だった。

櫻井が目を見開いて、現実(うつしよ)全体を見据え、この世界全体に問いかけ、そして自分自身を見つめ、立ち向かっていく。

名を叫べ。

自らに与えられた、最初のアイデンティティー、その名を叫べ。

そして自己を意識し、このウツシヨを生き抜け。


悲しい歌を上手く歌うお前、というフレーズはまさにBUCK-TICKテイスト。

永遠さえ追い越していく天使、そんな天使を横目に見ながら、だがそんな天使を決して真似するわけでも、憧れるわけでもなく、とにかく自己のアイデンティティーをしっかり持って、次の次元を見据え、飛び込んでいく。


このアルバムの一番のメイン曲でしょう。
(裏のメイン曲は先に挙げたRAPTOR)





11.夢見る宇宙 ?cosmix?

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(夢見て 夢見ている宇宙)


このアルバムの表題曲。

夢、そして宇宙、この幻想と自由というテーマがこのアルバムのテーマ。


全体的にはかなり優しい感じの歌ながらも、今井テイスト満載の音のこれでもかという重ね合わせにより、本当に永遠の宇宙のようなイメージを持たせている。

自分はそれほどではないけど、他のBUCK-TICKファンの間では評価がかなり高い曲。

ライブでも当然ラストを飾る曲なわけで、観客、ファンはこの歌によりこのアルバム、ツアー全体を夢として記憶に封じ込める事ができ、そして締めくくりとなる。






・・・とまあ、全体的にポップで、ダークさが随分とそげ落ちたアルバムだったものの、最後のラスト3曲あたりは一気にBUCK-TICKテイストが濃くなり、いつもより曲数は少ないものの全体のまとまりとしては良くおさまったかな、という印象。

これはさすがに何度も聴けない・・・という曲がほとんど無く、繰り返し聴いても違和感が無いあたりはさすが。

まあそれだけ、アクの強い、強烈な個性の歌が少ないという事もあるんだろうけど、夢見る宇宙というテーマはしっかりと刷り込まれており、こういったアルバムも有りかなと思う。


でも、次はそろそろ櫻井テイストの効いたダークさ満載のアルバムも欲しいところかな〜
ちょっと今回は今井のストレートな部分が効いていた感はある。







(2013.01.04UP)


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