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BUCK-TICKアルバム紹介・批評
『天使のリボルバー』(2007.9)


横棒



前作の「十三階は月光」でB−Tマニアにしか理解されなくても構わないといった堅固で閉ざされたゴシックの世界をコンセプトにしたのとは対照的に、今回の「天使のリボルバー」はかなりオープンな、初心者の方でもわかりやすい曲が多い。

ズバリ、コンセプトはストレートなロックミュージックということであり、最近のバクチクには珍しくエフェクターなどを使わない、シンプルな曲が多い。
今井自身が音楽雑誌で、たまには素直にギターをひいてみたくなった、とか、これがバクチクを聞く入口ということでいい、といったコメントがあったとおり、確かに分かりやすいストレートな曲ばかり。

しかし、私はやはり今井がガンガン曲にバックコーラスとして参加し、ノイズを入れてくるような、狂った太陽以降の”らしさ”が好きなので、今回はやや物足りない感じを受けた。


まあ、1枚1枚がまるで違ったアルバムを作るのがまたバクチクの良い所であり、これはこれでいいのだろう。

その中でも12曲目の「アリス」は名曲入りしてもいい曲で、何度聞いてもテンションを上げてくれる。

最近は櫻井色か今井色かのどちらかが強いアルバムばかりだったが、今回はちょっとどちらの色でも無い気がする。

まあ、今井の言葉のとおり、素直にギターを弾きたい、という意味では別の角度での今井色の強いアルバムとも言えるのだろうか・・・


毎回、聞き始めるのならばマニアックなものが多い櫻井色の強いアルバムよりも、今井色の強い方のアルバムをお薦めすると書いてきた私だが、このアルバムはあまり最近のバクチクの良さというものが薄れている気がするので、今井のコメントにあったような入門用としては少し疑問。



01.Mr.Darkness & Mrs.Moonlight

〜詞:今井 曲:今井〜

(Mr.Darkness and Mrs.Moonlight 死ぬほど愛してる Baby)

”天使のリボルバー”のオープニング曲らしく、”天使のように完全”、と”天使”から始まる曲。

サビのミスターダークネスのところはバックコーラスが響いてなかなかいい感じだけど、少し同じフレーズが続きすぎる割にはバクチクらしいノイズ、エフェクトも無いので、ちょっと素直過ぎる感じがする。

悪くは無い曲で、覚えやすい事は覚えやすい。

詞としては今井の作詞らしくあまりひねりは無く、とにかく情熱的な、死ぬほど愛しているというロックらしいテーマ。



02.RENDEZVOUS〜ランデヴー〜

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(Be my baby Be bop a baby She's my baby love)

最近のバクチクでは考えられないくらい爽やかな先行シングル曲。
歌詞全体も、純粋に今の恋を、出会いを大切にしていこうという優しいラブソングといった感じ。

前回の十三階は月光までであれだけおどろおどろしい、ダークな曲ばかり作りながら、これだけの曲をすぐさま作れてしまう辺りがさすがはバクチクの懐の広さだと、このシングルが出た時は驚かざるを得なかった。
特にサビの今井らのバックコーラスがよく重なるところが良い出来だ。
久々の新曲だったこともあり、このシングルはすぐさま買った。

特にPVが格好良く、途中で櫻井が腕を上げてキラキラと特殊効果が出るあたりはなかなかのモノ。

まああまりバクチクらしい曲ではないので、歴代の名曲(ベスト10に入るような)には入らないだろうけど、こういった曲だってできるんだぞ、という希少価値のある曲だといえる。


また、恋人を”天使”と読み替えているところはアルバムの主題曲を意識しているか。



03.モンタージュ

〜詩:今井 曲:今井〜

(Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah! 何もかも溶け出して)

今井がギターを弾きたくなった、という言葉を体現する曲かもしれない。
まさにストレートなロックミュージック。

前曲のランデヴーと同じくYeah Yeah Yeahのサビの部分のバックコーラスがかぶる部分はいいけど、これまた1曲目のミスターダークネスと同じく一本調子な感じがやや残念か。

悪くはないが・・・まあこれがこのアルバムの特色か。

歌詞としてはミスターダークネスと同じく濃い感じの破滅的な愛の歌。



04.リリィ

〜詞:今井 曲:今井〜

(振り向くな 飛んで行ける 君が鮮やか 午後の空)

1曲目ミスターダークネス、3曲目モンタージュと同じく今井が作詞も手がける今井の曲だが、やはり2曲と同じくやや一本調子なんだよな〜
この辺の特徴がなかなか掴みにくい。

この曲も”天使の羽”と天使が詞に出てくるなど、おそらくアルバムやライブの中の1曲、パーツとしてはなかなか良いパーツなのだろうが、一本立ちはしにくい曲だ。



05.La vie en Rose〜ラヴィアン・ローズ〜

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(人生はバラ色 何て素晴らしい)

やはり星野ヒデの曲になると曲調が変わる。

人生をバラに見立て、華やかさと儚さを歌っている、櫻井らしい詞。

全体的に大人らしい雰囲気の曲。



06.CREAM SODA

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(ねえねえ 君って何てチャーミング ねえねえ 君って何てキュート!)

クリームソーダという題名だが、実際は”狂いそうだ”と歌っている。
この曲に関しては誰もが度肝を抜かれたようで、櫻井にこの歌を歌わせて落として入れるための星野のドッキリなんじゃないかと思える変曲。

まさに歌詞のとおり狂ってます。



07.RAIN

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(Sing in the rain 雨が君に突き刺さる)

クリームソーダで明るい曲調は終わり、この曲で一転してしっとりと歌い上げるバラード調。

全体的な歌詞としてはまさに世界的に有名な映画”雨に唄えば”をイメージしている歌詞で、今はずぶ濡れでどん底だけど、きっとその先には希望があるでしょう、という櫻井らしい曲。

この曲はいいね。
静かに熱いものを感じる曲。



08.BEAST

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(ケツに火がついたぜHoney! Get it on Get it on Baby)

Rainのバラード調からまたまた一転し、初っぱなからスピード感のある激しい曲調の、これまたまさにストレートなロックミュージック。

ベッドにタナトスとあるが、タナトスとはギリシア神話での死の神。
まあ櫻井の詞らしい単語。

題名どおり、獣のように狂い、破滅に向けた愛と性を叫ぶ曲。



09.絶界

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(無常だ 無常だ 無常だ 絶界)

いいか忘れるなよ、いいさ忘れちまえ、とやけっぱちになりながらも、この世の矛盾、無常、無情などの極論を歌っているような曲。

アルバムの天使というテーマからいっても、こんな世の中のどこに神はいるんだ、と嘆きながら、結局は全て夢なんじゃないかと櫻井らしい哲学を感じる。



10.Snow white

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(真っ白な世界 眠れる君の夢か 幻)

まさに星野の曲らしい、バラードの王道のようなしっとりと、そして熱く歌い上げる曲。
Rainが今井のバラードなら、星野はこれだ、といった曲。

雪のように解けて消えてしまった恋人を思うかのような、儚く切ない恋を書いた櫻井の詞もまたぴったり。



11.スパイダー

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(あんたの痛みなど ごめんよ 解りはしない)

しっとりとしたバラードの次はおどけた歌い方が特徴のハードな感じの曲。
クリームソーダとこのスパイダーだけは最近の櫻井にないポップな歌い方。

歌詞自体は完全に男女の性を描いており、激しく身体を求めながらも、中身としては空虚を感じる虚しさが出ている。



12.Alice in Wonder Underground

〜詞:今井 曲:今井〜

(Oh! Yeah! Alice in Wonder Underground)

イントロのドラムが前作アルバムのDIABOLOと同じフレーズからはじまるが、曲調は全く違った兄弟曲。

間奏にも今井のバックコーラスでDIABOLOの最初の「さあさあ寄っておいで覗いてみな 今宵皆様にお贈りするはbaby、ありとあらゆる愛ヌラリ お楽しみあれ」がそのまま挿入されている。

この辺は不思議のアンダーグランドに迷い込んだアリスに、怪しい客引きがこれまた怪しい見せ物小屋に誘い込むような、清純な者を汚れた道に引きずり込むような場面がぴったりと当てはまり面白い。

アリスと不思議な国(ワンダーランド)ではなく、アンダーグランド、一昔前はよく使われた”アングラ”という点がこれまたBUCK-TICKらしい面白い点。

清純の象徴であるアリスがバクチクならではの怪しい世界に染まっていく感じだろうか。


最初のドラムからインパクト十分な曲であり、何度聞いてもこの曲はテンションを上げてくれる。

こういった曲は文句なしで名曲入りにランクインする。
まあいい加減バクチクも長年やってきて名曲が数多くありすぎ、なかなかベスト10入りは叶わないが。



13.REVOLVER

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(Shoot it! 突き刺す 弾切れ REVOLVER)

最後を飾るは、まさにアルバムの題名の後半のとおりのリボルバーであり、かなりスピード感と力強さがある激しい曲調。

ところどころノイズのように入る女性のバックコーラスがバクチクらしい曲であり、私としては好きな部類か。

特にこれだけ終始激しい曲調でありながら、最後はアルバムの締めをくくるように”大丈夫、怖くないさ”と優しく締めくくっているところが良い。






・・・とまあ一通り曲を振り返ってみて、やはりこのアルバムは自分としては物足りない感じが否めない。
最初はランデヴーやアリスなど、取っかかりしやすい曲を主体に入り込みやすいが、取っかかりしやすいというのはそもそもバクチクにそぐわない。

最初の頃は、おいおい、今回はとんでもないのを作ったな、といったん引かせてから、20回くらい聞いた後から麻薬のように酔いしれていくのが私の好きなバクチクであり、このアルバムはやはりストレート過ぎる。

まあ、このレビューも来週に新しいアルバム「メメント・モリ(死を忘れるな)」が出るということで、慌てて前作の分を振り返ったわけで、メメントに期待しましょう。






(2009.02.13UP)






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