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BUCK-TICKアルバム紹介・批評
『RAZZLE DAZZLE』(2010.10)


横棒



前作、「memento mori」があまりの完成度を誇り、このアルバム初回限定版に付いてきているDVDでも今井の口から、前作のメメントがこれまでの集大成というべき作品であったことが、今回のアルバムの作成の際にわかった、と発言している事からも、今回はその最高傑作と言えたメメントといかに分けて考え、そして作るからにはメメントをどう越えていけるかを今井らも模索したものと思える。


”愛”と”死”がテーマだったメメントに対し、今回のラズル・ダズルは言葉の意味の通り”馬鹿騒ぎ”がテーマとなっており、メメントまでで愛と死の究極の形を追求し尽くした後の、うたかたの饗宴をこのアルバムでは楽しもうというものであり、そして当然バクチク、というか櫻井の求める永遠のテーマである”死”(これもDVDの中で言及)というものが、この馬鹿騒ぎの背面にはいるわけだ。

死を意識しているからこそ感じとれる、今生きる喜び、今感じる事のできる生命のエネルギーを受け取れる、という姿勢はもはや不変。



思えば、かつては”クスリ”そのものがテーマだった曲が多かったバクチクだが、結局はそのクスリでうたかたの狂乱を感じとれるのも、死を背後に意識した生きる喜びだったわけであり、その結果が現在のバクチクの姿に帰結していると私は思う。



さて、なんといっても前作に続きこのアルバムも15曲という圧巻の収録数を誇り、なかなか1曲1曲の印象がぼやける感もあるが、しかしアルバム全体として通して聴けば聴くほどバクチクの世界に浸透できるその完成度はさすが。

メイン曲である”独壇場”や、シングル曲”くちづけ”、聴かせる名曲”羽虫”、”ソラリス”、私がダントツで気に入っている”TANGO”など、やはり名曲は多い。
特に上に挙げたくちづけ、ソラリス、TANGOを含むラスト6曲はどれも素晴らしく、大満足の内にアルバムを聴き終える事ができる。


インパクトのある曲が少ないので、やはり初心者の方には前作の「memento mori」が一番のお奨めとして、このアルバムはその次に聴いてもらうのがいいでしょう。




01.RAZZLE DAZZLE FRAGILE

〜曲:今井〜

アルバムとして、ライブとして始まりの曲。
コンセプトがある程度統一したアルバムを作る際に今井がやりたがる、いつもの手法ですね。

表題のFRAGILEとは「もろい」、「華奢な」という意味で、歌で使われる場合、「ガラスの十代」的な意味合いが強い。

バカ騒ぎはあやふやで、もろくもある、一夜の宴、というこのアルバム全体のテーマを示しているのだろう。



02.RAZZLE DAZZLE

〜詞:今井 曲:今井〜

(飛び込め うたかたのBOYS&GIRLS 生きていて うれしいか?)

まさにアルバムの表題曲であり、アルバム全体に漂うダンスミュージックの代表格といった曲。

今井の歌詞もこのアルバムのテーマのとおり、とにかく今を楽しめ、という歌詞。
(快楽 甘美が 人生さ)




03.狂気のデッドヒート

〜詩:櫻井 曲:星野〜

(女神が微笑む 狂気のデッドヒート You Win!)

このアルバムのコンセプトに沿って星野なりに作った曲。
1曲目のラズルダズルに続き、やはりダンスミュージックを意識した曲と言えるが、やはり今井の曲調とは違った一面を見せる事が出来る点が星野の貴重なところであり、バクチクのアルバムには重要なスパイスとして欠かせない。

特に好きな部分で、”オーディエンス静まり返る”のところの強弱の付け方が良い。

ちなみにライブの時の櫻井のパフォーマンスは相当女性ファン受けするのでは、という吹っ切れっぷり。

位置付け的には天使のリヴォルバーのクリームソーダと同じですね。




04.独壇場Beauty -R.I.P.-

〜詞:今井 曲:今井〜

(神様も使えないな それなら勝手にやっちゃえ)

このアルバムが出るより半年以上前に出たシングル曲であり、このアルバムの代表曲。
曲の内容に関しては、どうもX(えっくす)のhideに由来する点が多いという説については既に下記のページに記述済みなので、併せて参照頂ければ幸いです↓

 BUCK-TICKシングル紹介・批評『独壇場beauty』(2010.3)のページへ (10.04.09UP)


私にとってhideはバクチクと同等に大好きなミュージシャンであり、そのうちこちらの曲紹介などもしたい。


出だしの伴奏からしてテクノっぽくなっている点がシングルと違っているが、なんといってもサビの部分でゲストの女性ヴォーカルが櫻井のヴォーカルと被せるように歌い合っているところがなかなか格好いい。

シングルヴァージョンがいいか、アルバムヴァージョンがいいかは、まあ好みがあるところで、基本軸はやはりシングルの方が王道と言えるが、自分は女性ヴォーカル込みのアルバムヴァージョンもなかなか好み。



05.羽虫のように

〜詞:今井 曲:今井〜

(愛なんて そうじゃなくて 生きてるだけじゃ足りなくて)

生きてるだけじゃ足りない。もっと人生を謳歌しなくては。
そう、人間の一生なんて羽虫のように一瞬の出来事であり、一瞬一瞬を大切に精一杯生きなきゃ、という今井のメッセージを感じる。

歌詞も含め、この曲はこのアルバムの中でも隠れた名曲と言えるだろう。
深みがあってかなり好きな曲。



06.妖月 -ようげつの宴-

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(月明かり 妖しく二人舞う 真っ赤な唇を舐めて)

いかにも星野の曲らしい、ネットリ感のある重厚な曲。
最後の方にいくと歌詞も破滅めいた感じになり、櫻井の死をイメージした究極の愛の形を表現している。

わかんない〜と魂の叫びで終わる重い唄。



07.BOLERO

〜詞:今井 曲:今井〜

(風が吹いている アンドロメダでねえ 笑ってよ)

恋人が例え死んだとしても、結局生まれる前の星に戻るだけ。
空を見上げればいつでも君は笑っているじゃないか、と随分と今井にしては詩的な歌詞。

いや、最近櫻井はこういったさわやかな唄をストレートには書かないので、今井だからこそ書けた透明感といったところか。

終盤のダン、ダダダダン、と効果音が入る辺りはかなり格好いい。




08.Django!!! -眩惑のジャンゴ-

〜詞:今井 曲:今井〜

(Just a 3つ数えろ ビビディ バビディ ブゥー!!)

かの有名なディズニー映画のシンデレラで魔女が使う呪文を大胆にも歌詞に取り込んだ意欲作(?)

この辺がいかにもバクチクらしいというか、今井の遊び心があるからこそ今のバクチクが存在しえる。
結局、バクチクとは今井の感性が決して固執せず、柔軟性に富んだ、どんなジャンルの歌でも、世界でも取り込めるという圧倒的な受け皿の広さによって成り立っているのだろう。


この歌はメンバーにもインパクトが強かったようであり、特典DVDでもベースのユータが驚いたと語っている。




09.錯乱Baby

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(ねえBABY お前は誰なの?)

まさに死を前提とした今を精一杯楽しもう、愛し合おうという歌詞。

メリーゴーランドのところはなかなかに格好いい。




10.PIXY

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(僕は天使じゃない まるで悪魔さ)

この曲は今回の星野の中でも一押し。

星野の曲らしく”うら、麗らら らら”のところでコーラスらしきところも効果的に入り、まさにピクシー、幻想の世界へと引き込まれる。

題名のPIXYというセンスと共に、なかなかの逸品。

この曲を皮切りに、ラストの6曲は一気にこのアルバムの仕上げにかかるかのような逸品が出揃う。




11.くちづけ -SERIAL THRILL KISSER-

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(お〜いで〜 この腕の中〜 あっちの闇は苦いぞ)

独壇場に続くシングル曲であり、アニメ屍鬼のオープニングのために作られた曲らしい。
それだけにやはり完成度が高い曲であり、屍鬼というアニメの空気にバクチクのダーク系が見事にマッチした一曲といえる。
(ただ私自身はあまりこのアニメはよく知りません^^;)

友人Mもこの曲はいたく気に入ったらしい。

お〜いで〜の部分がまさに手招きしている櫻井らの姿を自然と連想させ、ああ、これがバクチク密教の布教活動なんだな〜と思う。




12.月下麗人

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(気のせいさ お前など誰も知るはずない)

くちづけがオープニング曲となったアニメ屍鬼のエンディング曲。

相当良いね、この曲は。
櫻井の詞と、今井の曲調がこれほどマッチしていいのか、というほどの相性の良さ。

くちづけと月下麗人に関しては、アルバムのテーマというよりもアニメに併せてダーク系を全開にさせたという感じで、まさにバクチクらしい2曲といえる。


闇に紛れるようにして隠密に先を急ぐ男が、ハッと息を殺して周りを見渡す。
しかし、すぐにふっと微笑を浮かべ、月以外に誰が俺を見ているというのか、と自嘲する。

その孤独というモノに対する寂しさと孤高と呼べる誇らしさが同居するその男の心理。

まさにその物語の主人公に自然と感情移入できる、一つの物語を見事に一曲に仕上げた作品。




13.夢幻

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(全てがある これも悪夢か 全てがある これが愛か)

友人Mがズバリ、これはバクチクではなくラルク(L'Arc-en-Ciel )だろ?という一言。

ああ!本当にラルクだ!!

自分としてはラルクも好きなので嫌いな曲ではないが、確かに出だしはまさにラルク。

まあ今井ならこういう曲調にはならないのだろうが、星野の曲調ならラルクっぽい感じになる事も頷ける

詞の内容としては先に批評した同じく星野作のPIXYと同じ世界観であり、やはり幻想の世界。

アルバムとしても最初はとにかく踊り狂おう、というスタートから始まったこの宴も、ラストの方では幻想の世界へと拡散、昇華していっている雰囲気・・・だろうか。




14.TANGO Swanka

〜詞:櫻井・今井 曲:今井〜

(駆け抜ける 雷光 閃光 ワントゥー ハイキック OH OH ロックンロール!!)

素晴らしい!!!!
だから言ってるじゃん、もっとこういう今井との掛け合いの歌をガンガン出してよ!!

最初このアルバムを聴き始め、序盤の独壇場やその前のくちづけなどのシングル曲も終わり、まあ今回はこれくらいだな、とまとまった感があった中で、いきなりこの曲が始まり、そして今井の2コーラス目が終わった頃にはあまりの素晴らしさに感動し、自然と目頭が熱くなってきた。


出だしのユータの重厚感溢れるベースのリズムからして本当に素晴らしい。
まさにバクチクの真骨頂といえる名曲。

バクチクファンならば皆好きな事は間違いない曲じゃないだろうか。

それにしても今井の”ワントゥーハイキック”のあたりのスカシっぷりが本当に素晴らしい。

他の追随を一切許さない圧倒的な実力、センス、それに裏付けされた、なんたる余裕。

天才・・・まさに天才・・・最初から、勝負になっていない・・・(森博嗣「すべてがFになる」から引用)


今井という天才に奇跡的に融合されたBUCK-TICKという集合体を越える存在など、この世に存在し得るわけが無いと確信できる、そんな永遠の忠誠を誓える事を再確認出来た名曲。





15.Solaris

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(小さな小さな君は やがて空になり 大きな大きな愛で 僕を包むよ)

名曲との呼び声高く、ファンの間でかなりの高評価を得ているコスモスに匹敵するのでは、と評されるバラード。

幼い子供を持つという櫻井が子守歌として作った曲では、との説もあり、まさに小さな君がいつかは自分を大きな愛で包んでくれるのだろうか、と我が子の将来を夢見る父親としての深い愛情を感じる。
ちょうど自分も幼い子供を持っているわけで、なんだか凄い共感できる曲。






こうして整理してみると、最初は馬鹿騒ぎをコンセプトとしていたはずが、いつの間にかいつもの櫻井ワールドであるダークの効いた幻想の世界へ、そしてソラリスという壮大なるテーマで締めくくられるというアルバムに仕上がっている。

それにしても上記したようにタンゴのような今井との掛け合いの曲をもっと欲しいものだと切に願う。

まあ、たまにやってくれるから有り難いんですかね。


東北大地震の影響がどうなるか分からないけど、また次のアルバムを心待ちにしましょう。













(2011.03.30UP)






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