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2017年にデビュー30周年を迎えたBUCK-TICKの21枚目のニューアルバムが「No.0」。
1年半前の前作が「アトム未来派No.9」なので、9から0に移行したこととなる。
歌詞にアトムの曲からの引用が度々引っ張り出されるなど、どことなくアトムからの繋がりを意識した姉妹アルバム的な位置づけを感じる。
そして題名や歌詞に散りばめられた数々の暗号とも思えるキーワードも、最近のBUCK-TICKのアルバムではお馴染みとなってきたもの。
全体として、インパクトでは問題作の多かったアトムよりはやや落ち着いた感がある、どちらかというと今井色の強かったアトムに対し、櫻井色の強いNo.0というところか。
しかし、9曲目のノスタルジアは、初めて聴く人にはショックを与える事でしょう・・・いろいろな意味で(^-^;
そんな30周年のアルバムNo.0に対し、収録曲の批評なんぞをいつもの通りやってみます。
01. 零式13型「愛」
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(HELLO 天使ノ声ガ 聴コエル)
これまで過去2枚のアルバムは1曲目にDADAやフラスコといったまさに今井節の利いた度肝を抜く曲をいきなり出して、多くのBUCK-TICKファンを驚かせてきたが、今回は過去2枚に比べると少しおとなしくなったかなというのが最初の印象。
ただ、約2分にも及ぶあまりに長いイントロなど、やはりこのアルバムの最初を語り出す上では、なかなか一筋縄ではいかないぞ、という暗号も秘めているように感じるし、そのイントロの後からのあまりにも重厚なメロディーの数々は、やはり聴いているものを全く飽きさせない。
まさにBUCK-TICKらしい、BUCK-TICKの良さが活きている逸品。
そもそも、やはり曲名がまたもよくわからない。
零式(れいしき)は、やはりゼロ戦の事だろう。
その13型というのは、このアルバムに収録される13曲の事を示しているのだろうか。
そして、その栄えある13型の名前は「愛」ト言ウ。
歌詞の内容からすると、やはりこの歌の主人公、零式13型「愛」はこの世に生を受ける胎児であり、そして戦争当時、日本国民から絶大な支持を集めた当時最強の戦闘機・零式のごとく、この世にインパクトのある生を受けた事を祝福するような、全体的に壮大なイメージ感のある曲。
だが、一方では相手から死神と恐れられていたとおりの破壊兵器であり、そして戦争が劣勢となってからは特攻機としても使われた悲しい歴史も持つ零式。
その存在は、敵からも味方からも、やはり”死”の象徴と言えるだろう。
歌詞に3回も「オマエハダレダ」と入るところが、前作アトムの名曲「未来」との繋がりを感じる。
02. 美醜LOVE
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(美醜LOVE 美醜LOVE 咲き乱れ)
美しさも醜さをさらけ出して、咲き乱れちまおうぜという、BUCK-TICKによくあるセックス系の1曲。
女性ファンを意識した曲がだいたいは入ってくるところは定番か(笑)
罪深きケダモノさと、これも前作アトムの名曲「なんとかBOY・・・通称ケダモノ」との繋がりを感じるところ。
03.GUSTAVE
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(CatCatCatCatCatCatCatCatCatCatCatCatCatCatCatCat)
GUSTAVEって何だろう?と思ったが、検索したところ、ギュスターヴくんという、特殊な猫を主人公とした絵本の事がヒットした。
歌詞の内容からしても、これか・・・
この曲にも「ケダモノ」のキーワードが。
そりゃ猫はケダモノですから・・・
とにかく、ヴォーカル櫻井の猫好きがついにここまで来たかという1曲。
もう完全に公私混同甚だしい。
素晴らしいほど傲慢に、ファンに猫をこれでもかと押し付けてくる魔王櫻井。
う〜ん、素敵だ。
ただ一つの問題点として、この曲をやるとき、catcatcatcatの下りのところで、観客にも猫ダンスを強要させられるという点。
あの〜、もうファンも40代、50代が軸になってきているんですが・・・( ̄▽ ̄;)
04.Moon さよならを教えて
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(アンダーTHEムーンライト グッモーニンダーリンHELLOグッパイ)
デビュー30周年記念シングルの第二弾となった、このムーン。
やたらとこの曲をひっさげて、久々に地上波に出るなどレーヴェルとしても推していた感があるが、しかし相変わらずなぜこの曲をわざわざ推すのか・・・
全体的な歌詞のイメージとしては、どちらかというと別れの曲と言えるだろうか。
しかし、最後の今井のヴォーカルで入る、アンダーザムーンライトの下りは、あまりにもカッコいい。
ここの節だけずっとリピートで聴いていたいくらい。
05.薔薇色十字団 - Rosen Kreuzer -
〜詞:櫻井 曲:星野〜
(薔薇色十字団 薔薇色レジスタンス)
ここから星野作曲の3部昨が並ぶ。
その最初のこの薔薇色十字団だが・・・この曲調は明らかに、かつての星野の問題作、クリームソーダ!!!
あの曲では、ヴォーカル櫻井を狂った狂気の世界に陥れるかのような特異さがあったが、この曲はまさにその続編といえるような曲調。
薔薇薔薇バラバラ、咲き乱れよ薔薇!!
もうどうにでもなれ感が、非常によくクリームソーダの狂いそうだと似てます。
たぶん、この曲とクリームソーダはリンクしている。
06.サロメ - femme fatale -
〜詞:櫻井 曲:星野〜
(ねえ ファムファタール)
サロメは、イエスに洗礼を授けた洗礼者ヨハネの首を求めた代表的な悪女であり、そしてファム・ファタールとは、男にとって運命の女、逆に言えば男を破滅させる魔性の女であり、まさにこの歌の主人公の悪女に翻弄される男といった内容。
まさにその悪女に翻弄される男を主人公とした、愛の果ての破滅へと向かう歌詞の世界で、この重厚な大人の男女の絡みの世界に、また櫻井好きな女性ファンは虜になって悦に入る事でしょう。
07.Ophelia
〜詞:櫻井 曲:星野〜
(ワルツの様に舞い散る 雪でお化粧しましょう)
オフィーリアとは何だろうかと検索すると、シェイクスピアの悲劇『ハムレット』のヒロインがOphelia、オフィーリアという。
主人公ハムレットの復讐劇の中で翻弄され、そして最後には川で溺死するヒロイン・オフィーリアのせつなく、はかない命と、最後に川の水面に浮かび死んでいく事で、その綺麗さを永遠のままに留められるね、と歌った、死というテーマがありながらも、そこをどこか神聖化するような、まさに死と美をテーマとした櫻井色強い一曲。
歌詞の中にもあるとおり、全体的に透き通ったような感覚を受ける、柔らかで優しい曲調。
まさに星野作らしい。
08.光の帝国
〜詞:今井 曲:今井〜
(闇の螺旋で遊んでいたのに いつもそうなんだ 青空が邪魔をする)
どこか優しい風が吹く星野曲3部作から一転、ここから毎回問題作の今井作詞作曲の今井曲3部作。
光の帝国で検索すると、ルネ・マグリットという作家の絵画がヒットする。
バックの空は完全な昼の青空なのに、その下に描かれている屋敷などの風景では、ランプの明かりすら灯っている夜の風景という、矛盾した世界を描いている。
闇の螺旋で遊んでいた子供たちが、せっかく良い所になって、昼間の青空、つまり一般社会の大人たちに邪魔をされてしまうという、光と闇の葛藤が描かれている感がある。
或いはアナーキーに収録の「太陽なんかいらない、ヴォードレールで眠れない」などにもまさにリンクしている。
大人たちの監視の目、サーチライトを潜り抜けて、シューティングスターのごときロケットで月世界へ行こうと。
09.ノスタルジア - ヰタ メカニカリス -
〜詞:今井 曲:今井〜
(誰かが話しかけてきた 廻りには誰もいないダイナモが可動する)
あまりの問題作。なんとヴォーカルが歌っていない。
さすがのBUCK-TICKファンでも、これはさすがについていける者と離脱せざるを得ない者に分かれるだろうが、しかし自分は付いていけてしまう部類に入るだろうか。
そもそもノスタルジアとは、直訳すれば過去を懐かしむ、故郷を思う心、という事だが、ここでは後者の方の故郷を思う心、という方が曲の主題に合っているだろうか。
そして問題は副題である、ヰタ、メカニカリスという謎の言葉。
ネットで検索すると、ヰ(ゐ)タは、そこに「いる」ということで生命を表すらしい。
そしてメカニカリスとは、メカ、機械、からくり、といったところ。
歌詞の中でメカニカリスに続くマキナも、ラテン語で機械を意味する。
つまり、ここ最近の今井先生のテーマであり続ける人造人間、もしくは機械人間、といったところの、次の世代の新たな人間の形といったものを表しており、これは前作アトムでの今井曲でいたるところにちりばめた人造人間、機械人間の事にリンクする。
人には解らぬ言葉を遣う、といったところで、あえて歌にせずに、抑えたラップのようにしゃべるような曲にしたのもかもしれないが、この今井先生の要求に応えてしまうヴォーカル櫻井も、これまた凄い・・・
いったい、この2人の間ではどんなやりとりがレコーディングの時になされているのか、そちらの想像をする方が怖い。
とにかく歌詞が難解だ・・・
これまでの曲の中でも最高クラスだ。
全ての言葉が謎だらけ。
キュビズムはピカソに代表される現代美術の大きな動向・・・正面の顔と横からみた顔を同時に描いてしまう、といったもの、ヰタ メカニカリスが機械人間であることは間違いなく、マキナも機械、そしてディケイドは10を意味し、よく10周年などにも使われる言葉ということから、30周年という事も意識したものか。
決して解散、休止することなく走り続けるBUCK-TICKは10年単位であっさり3周を回り、4周目に来たぜ、と。
そして赤色の鉄塊、人口田園風景、セルロイド(合成樹脂)の人影と、すごく近未来的なイメージ。
なんとなくだけど、最初聴いた時から、自分の脳のイメージでは、核戦争で荒廃してしまった後の殺風景な世界で唯一生き残り、活動することが出来る機械人間達の世界、という風景しかイメージ出来ない。
このアルバム全体が、戦争反対、核、原爆反対、といったメッセージを感じるところで、この曲はまさにその最たるものだろう。
そしてデルタ(ギリシア語アルファベットの第4字)、イオタ(第9字)、ラムダ(第11字)、クシー(第14字)が何を意味するのか・・・
このデルタやクシーの文字はジャケットにも反映されている。
ジャケットの主人公は、メトロポリスの眩しい夜にぶらさがる三日月も抱えている。
そして最後に、2、3、5、7と素数が繰り返される。
素数、それは他の数字と交わらない、孤高でいて孤独な数字を意味する。
この曲の読解は、掘り下げれば掘り下げるほどキリが無いので、とりあえずはここでいったん止めときます。
デルタや素数のあたりは、相当に深い意味がありそうだけど・・・
それにしても最後に・・・これは曲と言えるのだろうか??
しかし、これを何回でもリピートで聴いていたくなる、それこそがB-T信者。
(200323追記事項)
・・・ここで、自分のHPを見て頂いてるという、H氏からメールを頂く。
謎の一つだった副題、「ヰタ メカニカリス」について、かの有名な文豪の森鴎外の著作に「ヰタ セクスアリス」=性欲的生活(ラテン語「vita sexualis」から)という作品があるとのこと。
確かに、どう考えてもここから着想を得たものとしか考えられない。
性欲的生活から機械的生活に変化していく、というところか。
それにしても、今井先生はいろいろなところでアンテナ広げて着想のヒントを拾っているんだな、と実感。
Hさん、情報有難うございました!!
10.IGNITER
〜詞:今井 曲:今井〜
(天上太陽 中空我雷電 地上火天怒焔)
イグナイターとは、点火器。
もはや歌詞とは何だろう?と、全ての曲の常識を撃ち破る歌詞カードの洗練さ。
ただ、これはやはり、1曲目の零式、ゼロ戦が象徴する戦争の凄まじさであり、そして核、原爆の破壊力の壮絶さを端的に描いたものだろう。
すごくシンプルでいて、そして力強く、この曲が入っているか否かで、全然このアルバムの価値が違うと思う。
まさに今井曲の最たる曲。
11.BABEL
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(我はBABEL)
デビュー30周年の2017年、唯一リリースされた、まさに30周年記念シングル曲。
これは名曲だ・・・
おそらくこれまで数多くある名曲の中でも、ベスト10に入ってくる、今後の定番曲にもなる曲じゃないだろうか。
神に近づこうとして、そして崩れ落ちた人間の傲慢さの象徴であるバベルの塔の名を冠した曲であり、そして我はバベルと言っているくらいだから、やはり主人公はそのバベル。
確かに天罰として、一度は崩れ落ちたかもしれない。
しかし、我はバベル、こんなもので頽れたままではない。
またいつか、天を目指してやる。
人間の傲慢さ、欲望、そしてそこから産まれる強さといったものを表している重厚な名曲。
自分はある晩、仕事を片付けながら3時間ほど、この1曲のみヘビーリピートで聴きこんだが、それが出来てしまうのがBUCK-TICKの真骨頂。
12.ゲルニカの夜
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(首の取れたマリオネット)
ゲルニカは、ピカソの超有名な大作であり、まさにこのアルバムの最大のテーマである、戦争、核、原爆への反対をストレートに表した題名。
突然、空が狂いだし、突然、僕らは消えた。
全ての吹き飛ばし、全てのモノを燃やす。
内容的にはかなり怖い曲であり、最後に「そんな夢見て」とごまかしてはいるものの、物凄く重いテーマの曲。
13.胎内回帰
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(爆撃機の風が 切り裂いた)
爆撃機の切り裂く爆音と、胎内の爆音といった、正反対に位置する2つの爆音を揶揄した曲。
あなたがいる青い美ら海(ちゅらみ)に、私はゆく、と・・・
やはりイメージとしては、このアルバム全体に流れる戦争反対へのメッセージ。
ゼロ戦という爆撃機に乗った特攻隊員は、ほぼ100%死地である地に飛び立ち、そこに広がる南海の青い美しい海が、どこか己の母の元へと繋がっている錯覚を起こし、そしてこの海で散る事で、また元の、母の胎内に帰る事が出来るのだろうという、儚く(はかなく)、悲しい、それでいて、母の元へ精神だけでも帰れる喜びもどこかに感じる。
以上、とりあえず13曲、いろいろ分析してみました。
最近のBUCK-TICKさんは、随分と難解な歌詞を散りばめてくるので、本当に大変だ・・・
曲数も前作のアトムと同じ13曲。
これはさらに、もっと深い意味合いがあるな、この30周年を挟み込んだアトムとNo.0の2枚のアルバムは・・・
実は、このページを書いているのは、ツアーNo.0の高崎、群馬音楽センターでのライヴの前日、、、この内容を踏まえながら、明日のライブ楽しんできます!
(2018.4.14UP)
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