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BUCK-TICKアルバム紹介・批評
『極東 I LOVE YOU』(2002.3)


BUCK-TICK 極東 I LOVE YOU

横棒


2020年現在、2月下旬から急に拡散しだした新型コロナウィルスの拡散防止のため、本来はJリーグの執筆で忙しいはずの5月中旬の今、Jリーグはおろかほとんどの催しものが中止、延期となり、この空白の期間を利用して普段は更新できていないページのテコ入れをしていたところ・・・おかしい・・・なぜかこのアルバム極東だけ、データが抜けている・・・

確かに当時アップしたはずなのに、なぜかリンク切れとなっており、元データも残っていないし、このページをアップしたのはたぶん15年くらい前なので、もうどんな内容をアップしたのか覚えもありません。
サーバを1回引っ越したりしたから、その時にでもデータの欠損があったか・・・

そこで2020年現在の今の\\自分の目線で、完全新規にリニューアルして再掲したいと思います。


そもそもこの極東の立ち位置とすると、その前作が2000年のワンライフワンデスであり、そして2002年のこの極東を挟み、翌年すぐにモナリザがリリースとなっている。

自分からすると、中期の銘盤と位置付けているワンライフワンデスとモナリザの間に入るこの極東は、どうしても影が薄い感が否めない。

まず、やはりインパクトという意味でいうと、ワンライフワンデスは作詞も今井先生がやってしまう今井節全開の曲がチェックアップ、ドリー、ラプソディと、3曲入っており、その全てがまさにBUCK-TICK。
特にドリーは昨年(2019)末の高崎芸術と代々木でもライブでも久々に聴けて、本当にこの歌はまさにBUCK-TICK、まさに今井先生、という改めの感動を受けた。


それに対してこの極東は明らかに櫻井の色が濃い。
特にロングディスタンスコールとブリリアントの共に櫻井の亡き母に捧げる曲が2曲も入る様は、あまりにも櫻井寄り過ぎて引くくらいだ。


うーん、だからかな〜あまりこのアルバムは愛着が無いというか、この時期は子供も産まれた関係でライブも行けていないので、聞き込みが弱い。
また2002年の3月か・・・まさに日韓ワールドカップの真近、正直自分の中での割合はサッカーの方にかなり振れていたはずだ。


しかし、そんな影の薄いと言えてしまうアルバムではあるが、1曲目の疾風のブレードランナーはBUCK-TICKの上位に来る曲だろう。

だが、、、次に続く曲があまりに少ない。
表題曲である極東に愛を込めても力強く勢いがある曲だが、、、BUCK-TICKの中では他の曲たちに埋もれてしまう。


なぜこれほど極端なアルバムに・・・と思ったら、どうやらネットを見るところ、このアルバム制作時に他の曲もあったが、構成などの関係で入り切れなくなってしまい、ミニアルバムとして追加でのリリースも考えられたが、結局は翌年1年も経たない2003年2月、すぐに次のアルバムを出すという異例の連続リリースとなったのがモナリザだったとのこと。

もしかするとBUCK-TICK史上唯一の2枚組アルバムになる可能性もあったというくらい、モナリザとは表裏一体のアルバムと言えるのがこの極東ということ。

・・・それにしても極東の紹介で言うことではないが、モナリザは凄い。ナカユビと残骸が同居してしまうという時点で凄い。
そして今井先生しか歌わないという、これがBUCK-TICKの曲として良いのか?という問題作・シドヴィシャス、そしてバスター、モナリザ、愛ノ歌・・・やはりモナリザは今思うと凄いアルバムだった。

まさにモナリザが動とするなら、この極東は静。

狂った太陽で覚醒してから10年経過し、今に繋がるBUCK-TICKらしさを盤石なモノにした中盤の代表銘盤ワンライフワンデス、モナリザの中にあって、BUCK-TICKは今井色だけじゃないぜと、ヴォーカル櫻井の母に捧ぐ想いをふんだんに詰め込ませた、櫻井のための、そして櫻井ファンのための1枚と言えるだろう。





01.疾風のブレードランナー

〜詞:今井 曲:今井〜

(共に青い春を駆け抜けよう)

この歌の素晴らしさはまず冒頭に半分は詰め込まれている。

静かなイントロから鳴り響く神のお告げのように、

10の死がみんなを待っている
9の神
8穴のブーツ
7つの天国
6丁の銃
5つ、、、4つのスター(星)
3人の天使が飛んでゆく
男と女の2人が恋に落ちていく
全ての人(エヴリーワン(1))に祝福の歌を
・・・ゼロ(0)・・・


全て数字のカウントになっているあたりが、今井先生のお洒落さ、センスをふんだんに感じさせる。
どれも素晴らしい詩だ。

7つの天国、第7天国のSEVENTH HEAVENは、BUCK-TICKにとっては初期のアルバム、曲名であり、非常に馴染みも深い。

あとはもうひたすらカッコいい。

今夜お前に届けよう、宝物だ、約束だ

この歌詞で何人の女性ファンがトランスしたことだろうか・・・

もはやBUCK-TICKとの繋がりは約束なんだと。


本当にこの曲は名曲だ。素晴らしい。
この歌の存在が無ければ、このアルバムの存在も危うくなっていたところだ。


忘れるな、世界は輝いている




02.21st Cherry Boy

〜詞:櫻井・今井 曲:今井〜

(あなたの愛の息吹を、さあ神となって)

1曲目の疾風のブレードランナーに連続する形でのアルバムバージョンとなった先行シングル曲。

PVでは黒人と白人の2人の女性ダンサーがなまめかしく腰を振るい、ところどころハイヒールでトマト、リンゴ、牛乳などをとにかく踏みつけていき、その牛乳が噴出して今井先生の顔に下からかかるという、よくわからない設定のシーンも入りこまれている。

最初、曲名は「21st Cherry Bomb」(21世紀の爆竹)となる予定だったところ、アメリカ同時多発テロ事件を受けてボーイに変えたらしい。


まあ、先行シングル曲らしく疾走感もあり、BUCK-TICKの中では大衆受け的な位置づけの曲。




03.WARP DAY

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(この部屋、この宇宙(ソラ)だけが僕の世界)

2曲疾走感のある曲が続いたところで、いよいよこのアルバムの本題、じっくり聴かせる曲が続く事となる。

ワープデイという題名は曲には直接は出てこないが、つまり過去に戻ってやり残したこと、悔いを残した事もあったが、踊り狂って眠ってしまいたい、といったところか。



04.謝肉祭-カーニバル-

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(仮面の夜のカーニバル 狂乱のパレード)

4曲目に入ってくる星野の曲。

じっくり聴かせる曲が続くこのアルバムの中で、そういった曲ならお手のものと、星野のこのカーニバルは存在感を示す。

星野の曲は女性の柔らかなバックコーラスが隠し味のようによく盛り込まれ、それが非常に効果的なため、好きな曲が多いが、ここでもその手法が使われている。

ほんの少し血を流したら、愛し合って、許し合って、さあ笑って・・・



05.TRIGGER

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(俺もお前も夢 失うものが何処にある)

2曲、聴かせる系が続いた中で曲調を変える入りとなる曲がこのトリガー。

トリガー=引き金と、まさに死と隣り合わせにいる男がもがき、足掻く様をつづった曲であり、なかなかスパイ映画の一幕のようなイメージも重なる。

ところどころのAH-WOOの合いの手も死相感のある歌詞に合っている。






06.Long Distance Call

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(聞こえる 聞こえるかい もう眠っていたんだね)

まさに櫻井が亡き母にあてたのであろう、非常に物悲しげな曲となっている。

歌詞の内容からすると、戦場に送り出される息子が、最後に母にお別れの電話をした、といったところだろう。

送り出す母と、もう会えないかもしれない息子の悲しい決意がにじみ出る一曲。

今でも群馬のライブだと、亡き母に捧ぐためにヴォーカル櫻井はこれを歌う。




07.極東より愛を込めて

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(ねえママ 抱きしめていて もっと強く!!)

21stチェリーボーイと共に先行シングルであり、アルバムの表題曲でもある代表曲。

汝の敵を愛することが俺にできるか。

やはり、前の曲のロングディスタンスコールが戦前の、嵐の前の静けさだとすると、まさにこの曲は戦争のクライマックスといった感じで、PVも燃え盛る炎をバックに櫻井が狂うように歌う様となっている。




08.GHOST

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(愛して・・・呪文みたいに、踊っていて・・・夜よこのまま)

出だしはひたすらギターのリフが鳴り響き、そして2本のギターのみでの静かな滑り出しとなり、え?これって星野の曲じゃなくて今井の?と思うところで、途中から樋口兄弟のドラム、ベースが重なっていくところが美しい。

歌の世界観としては・・・う〜ん、これはもうシンプルに男女の戯れを、首筋の真っ赤な傷というところでドラキュラに例えた一夜の刹那的な感じだろうか。

こういう男女間をお洒落に表現した曲は毎回必ず入る。

しかし曲名がゴースト・・・ドラキュラかバンパイアとでもした方が合っている感があるが・・・もしかしたら前の極東での戦いで死んだ兵士が、故郷の恋人のところに魂だけでも戻って、恋人の夢の中で再会したとか?
そうなるとかなり違った見え方になる曲。




09.Brilliant

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(お帰りボウヤ、疲れたでしょう)

これはもうロングディスタンスコールとセットなんじゃないかと思える曲で、ロングディスタンスコールが今井なら、このブリリアントは星野のBUCK-TICKの誇る2大ギターの競演といったところ。

もう帰れないかと覚悟を決めて戦場に赴いた兵士が、母親の元に帰ってきたんでしょう。

星野の曲らしい、非常に温かみのあるアコースティックギターののリフが永遠に鳴り響く中で、少しだけ音を重ねて仕上げている。

たくさん人も殺してきたであろう息子に、それでも暖かく出迎える母親。

・・・そうか・・・

改めてもう一度歌詞を見返してみたところ、この息子の魂は既に星となり、そして帰ってきたのは亡骸か・・・

黙っててもそれでいい
君は死んだように眠っている
汚れなき寝顔、君は天使

非常に深い、慈愛に満ちた曲だとあらためて感じる。
相変わらず強烈に胸に突き刺さる歌だ。
とても静かな、穏やかな曲調がなおのこと・・・




10.王国 Kingdom come-moon rise-

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(許されるなら、君の手に、抱かれていたい)

極東より愛を込めてのカップリング曲のアルバムバージョン。

王国の月の出・・・

戦争が終わった王国では、また新たな愛が生まれ、そして死んでいく。
それが歴史の繰り返しというところか・・・

この曲も決して激しい曲ではなく、本当にこの静がテーマのアルバムの最後として、このアルバムはこうだったな〜と思い返される締めの曲。




11.Continue

〜曲:今井(編曲:横山和俊)〜

この後、1年も経たずに出されることになる次回作モナリザに続くための、まさに”続き”の曲。

モナリザのセンセーショナルな1曲目、ナカユビの原曲となった曲とのことで、ナカユビの出だしと同じフレーズが曲の間に入る。



・・・以上、BUCK-TICKの中では特異な分野に入る、”静”たる極東アイラブユーのレビューでした。
1曲目のブレードランナーがピークで、徐々に静かになっていき、そのまま戦争の前後をテーマにするという、ホント、なんとも特異なアルバムだ・・・
特異さでいうと十三階の次くらいだろうか。

なかなかこうして久々にアルバムを再度掘り下げるのは面白い。
もうこのHPを立ち上げて15年以上、他のアルバムのレビューもテコ入れしたいものだ。





(2020.5.24UP)

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