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This is ”NOT” Greatest Hits・・・BUCK-TICK唯一のセルフカバーアルバム
もうメジャーデビューから34年目になっているBUCK-TICKは、当然これまでいくつものベストアルバムも出ているし、BUCK-TICKを崇拝する他のアーティスト達のカバーによるトリビュートアルバムも出ている。
しかし、BUCK-TICK自らがセルフカバーしたのは、後にも先にもこの”殺シノ調ベ”だけだ。
そして、まだそこまでBUCK-TICKファンではなかった、学生の頃の自分が初めて手に入れたBUCK-TICKのCDも、確かこの殺シノ調ベだったと記憶している。
そもそもその頃はこれがカバーアルバムという事も知らなかったので、こちらに入っている曲が原曲だと思っていたが、しかしMADなど全く原曲が違う曲の本来の原曲を聴いた時は「全然違うじゃん」と驚きだったものだ。
中でもオリエンタルラブストーリーは、この殺シノ調べバージョンになった事で急にBUCK-TICK史上の名曲ランキングのベスト10に入ってくるくらいの仕上がりとなっており、セルフカバーアルバムではあるものの、いつかこのHPでレビューを書きたいと10年以上思っていた。
このページを書いている2020年4月下旬現在、新型コロナによる緊急事態宣言の範囲が全国に拡大となり、この時期忙しかったはずのJリーグ観戦も出来なくなり、そしてツーリングも春スキーにも行けない。
ということで、これまで10年以上構想しながら出来なかったこういったページの執筆にはうってつけであり、ここで念願のレビュー執筆といきたい。
それにしても1992年・・・28年前ですか(苦笑)
そんな一昔、二昔前のアルバムでも、新鮮な目線で聴けてしまう、それがBUCK-TICKの奥深さ(笑)
そもそも、1987年にデビューして5年後にセルフカバーを出そうとしたのは、5年前はあまりに技術的に稚拙だったところ、デビュー5年後に未だに史上最高傑作と言える狂った太陽というアルバムを作ってしまった今ならば、もっと前の曲を良い曲に出来るはず!という強い思いからだったとのこと。
今のBUCK-TICKは自分たちの技術に自信があるので、そんな作り直すような稚拙な曲は送り出していないと、そんな事よりも新しい曲、アルバムでやってやるから、と言い放つのだろうが、当時デビューから数年は実力的にはまだまだ劣る中で、しかも自分たちの納得のいくところまで曲やアルバムを仕上げる時間を与えてもらえなかったジレンマが激しかったのだろう。
しかし、至高レベルまで各曲が仕上がっていたはずの狂った太陽からも、シングル3曲を強引にレコード会社から入れさせられた大人の事情が入れらた事から、グレートヒットの前に”NOT”と、自らノーを突き付けたBUCK-TICK本人達の皮肉も込められている。
特にMADなんて、原曲が良すぎてこれ以上カバーなんて出来ねえよと、まるで曲調を変えているし、これはもう会社や大人に対しての反抗としか思えないほどの崩し方をしている(苦笑)
ちなみに、BUCK-TICKを崇拝する第一人者のバンドとして有名なMUCCは、2017年に「殺シノ調べII This is NOT Greatest Hits」というセルフカバーアルバムを出している。
「T」も出していないのに「U」というところにBUCK-TICKに対する深いリスペクトを感じるし、まあ当然名前を少しは変えてくれないと紛らわしいので(苦笑)
では、そんなBUCK-TICK唯一のセルフカバーアルバムについて、十代の頃に戻ってレビューを書きたいと思います。
(自分の子供たちも、あと5年くらいすれば当時の自分と同じ世代か・・・(遠い目))
01.ICONOCLASM
〜詞:今井 曲:今井〜
(Hurry up iconic from beyond the desire)
なるほど、原曲はひたすら櫻井のヴォーカルが抑えめに低く歌っているのに対し、かなりエフェクトをかけてシャウトにした感じ。
この後も未だにライヴでこの曲はやるし、メンバーもかなり気に入っている曲という事だろう。
02.惡の華
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(遊びはここで終わりにしようぜ)
あまりに有名な、未だにBUCK-TICKの代表曲だが・・・なんか原曲とそんなに変わっているか?
この後も2015年にミックス版も出されたが、正直どれがどれか自分にはよくわかりません(苦笑)
まあ、曲間のうめき声の入れ方が違う感じか。
03.DO THE "I LOVE YOU"
〜詞:今井 曲:今井〜
(歯ぐきのように柔らかくしたら始めよう)
セクシャルの原曲よりも、まあ随分と軽いポップ調にしたな、という感じ。
う〜ん、原曲の方がやはりBUCK-TICKかな(苦笑)
インパクトがやはり原曲の方が強い。
それにしても、歯ぐきのように柔らかくしたら始めよう、という辺りは未だに新鮮だ。
これぞ今井節。
04.VICTIMS OF LOVE
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(凍りつく様に今も微笑む)
後にトリビュートにも参加した黒色すみれとのコラボ版も出た、BUCK-TICK本人達のお気に入り曲の一つ。
黒色すみれは水曜どうでしょうの祭りでも藩士代表として出演しており、VICTIMS OF LOVEと言えば黒色すみれ、黒色すみれと言えばどうでしょう、といった頭の中の回路が出来上がってしまった。
原曲よりもテンポを落として、じっくり櫻井が唄い上げるような仕上がりとなっているが・・・やはりこれも原曲の方がBUCK-TICKかな(苦笑)
正直、ここまでの4曲はなぜわざわざカバーしなおしたのか、よく意図が伝わりません(失礼ながら)
05.M・A・D
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(僕は狂っていた・・・アスファルトを抱いて熱にうなされている)
このセルフカバーアルバムの中でも最も問題作。
冒頭のこのアルバムの紹介の中で書いたとおり、レコード会社への、大人たちへの反骨精神から、わざと完璧な仕上がりだった原曲を崩して、意味不明な曲を作り上げたとしか言いようがない。
もはや曲の体を成していない。
まあ、その気になればこんな曲も作れてしまうぜと。
しかし仕上がりの仕方はかなり今井節が入っており、まあ、これはこれでBUCK-TICKらしいかなと。
しかし、この原曲は素晴らしい。
当時、このセルフカバーを聴いてから2年後くらいにやっと狂った太陽のアルバムにて原曲を聴いた時は度肝を抜かれたものだ。
原曲はベスト10位〜20位以内には入ってくる名曲だろう。
というか、狂った太陽の収録曲はそれ全てを一つの名曲としたい。
全てが名曲なので、ベスト20位では足りなくなる(笑)
06.ORIENTAL LOVE STORY
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(全て頬に伝う)
いや〜、久々に聴いたが・・・
・・・やはり名曲だ・・・
交わす言葉、すれ違い
わかち会える夢もなく
髪をほどくあなたを今も
古い水彩画の中で
濡れた瞳、滲んだ少女
少し寒い・・・
全て、頬に伝う・・・
この歌詞のどれもかれもが素晴らしい。
櫻井の作家としての最高潮とも言える。
そして、原曲よりも遥かにこちらのカバーの方が、この素晴らしい歌詞に、世界観に合っている。
これぞ、このセルフカバー殺シノ調べの真骨頂。
この曲が無ければ、このセルフカバーアルバムの意味は無い。
ああ、今井先生、よくぞこの名曲を、このセルフカバーで復活してくれました。
あまりに透き通った、あまりに切ない、あまりに綺麗なこの世界観溢れる、オリエンタルラブストーリー・殺シノ調べVer。
神曲が並ぶBUCK-TICKの歴代の名曲の中でも、これは10位以内に入る名曲だ。
07.スピード
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(男の子 女の子 君には自由が似合う)
未だにライヴでも度々登場する代表曲。
これは原曲と変わっていないか?
会社の都合から強引に挿入されたシングル曲。
しかし、代表曲の曲名が「スピード」・・・錠剤かみ砕いたあまりにドスレートな題名に苦笑しか出ない。
曲自体は全くスピード感無いですが・・・(苦笑)
08.LOVE ME
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(ラ〜ララ〜ラ、ラ〜ラ、ラララ〜)
これまた未だに度々ライブに使われる、メンバーお気に入りの曲。
なるほど、このセルフカバーに出てくる曲は、どれも思い入れが強いわけだ。
しかし、このセルフカバー版は、原曲から随分とテンポを落としており・・・う〜ん、まあやはり原曲の方がラブミーだな(苦笑)
09.JUPITER
〜詞:櫻井 曲:星野〜
(頬に流れ出す赤い雫は)
このセルフカバーの中で、唯一の星野の曲にして、BUCK-TICK史上間違いなく歴代5位以内に入る神曲の一つ。
そして神曲の中では、唯一CMでも採用されているシングル曲であり、これはBUCK-TICKの中では稀有な事だ。
冒頭に、随分と宗教的な長いコーラスが挿入された以外は、ほぼ原曲通りか・・・
・・・いや、BUCK-TICK自体は変わらないけど、後半になると女性や男性のコーラスも相当に強めになっており、これはかなりクセが強くなっている印象。
なかなか悪くない。
やはり、この曲は宗教色が強い。
しかし、今考えても、よく星野はこんな化物みたいな神曲を作れたものだ・・・
未だに聴くと鳥肌が立つほど。
BUCK-TICKって宗教だよな〜と感じられる名曲中の名曲。
この曲の前では、誰もが跪き、そして祈りたくなる。
このセルフカバー版は、その宗教色がより強まっている。
10....IN HEAVEN...
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(白い素肌に誘われた胸元 ときめき感じた)
あまり原曲とそんなに変わらない感があるが、ギターの演奏などが長く、強調された感じか。
まあ、確かに原曲のつたない頃より、なんか自信がこもった演奏に聴こえる。
11.MOON LIGHT
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(怜悧なふりで You asked me last-night)
ほ〜そうか、前曲のインヘヴンと繋がっていたのか!!
当時はそのまま聞き逃していたが、これはなかなか斬新な試みだ。
セルフカバーならではとも言える。
レコーディングもぶっ続けで行ったのだろうか?
全く途切れ目泣くムーンライトに繋がっている。
・・・いや、よく聴くと一応切り替わっているか。
前曲のインヘブンの終わりをわざと途中でちょっと途切れさせた形か。
しかし、ムーンライトはハリアップモード、インヘヴンはセブンスヘヴンと、違うアルバムであり、これを繋げるとはなかなかに凄い。
曲自体は・・・原曲とそんなに変わっているかな?
そもそも初期の頃の曲は自分はリアルタイムではなく、あまり聞きこんでいないので、すんなりムーンライトそのものに聴こえる。
12.JUST ONE MORE KISS
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(JUST ONE MORE KISS 横顔はまるで 刹那の美貌)
惡の華に並ぶ、一般国民でも聞き覚えのあるBUCK-TICKの代表曲。
う〜ん、惡の華と共に原曲とそんなに変わらないかな?
ジャストワンモアキスはジャストワンモアキスだ。
そして私が初めてまともにフルコーラスをカラオケで唄った思い出の曲。
・・・そう、それをこのセルフカバーアルバムで聴きこんだわけだな、多分当時は。
13.TABOO
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(サヨナラ 魔性の人 夢想の誓い 悪夢の神秘 愛の幻想)
なんだ?今聴くと、これがTABOOか??と思うほど最初のイントロが余りに雰囲気が違いすぎて戸惑いしかない(笑)
そして曲が始まっても・・・もう一度聴くが、これがTABOOか?
この軽快な曲調、あの怪しげな、恋人に囁きかけるような原曲のTABOOの雰囲気が随分と一新されている。
当時は、こちらが普通のTABOOと思い込んでいたわけだが・・・
そして違和感しかない中で、途切れる事無く次のハイパーラブへと続いている。
14.HYPER LOVE
〜詞:今井 曲:今井〜
(首筋に少し 美辞麗句の 爪を立てた)
ムーンライトと同じく、前曲から途切れる事が無く続く形でのハイパーラブ。
ひび割れたグラスに気付かず口をつける、なんて辺りは今井先生の作詞がなかなか光っている。
原曲より間奏がより強調され、なんだか大げさな仕上がりとなっている。
以上、BUCK-TICK唯一のセルフカバーアルバムでした。
とにかくオリエンタルラブストーリーが原曲を遥かに超え、この曲を名曲の仲間入りにしている点が評価できるが、あとは神曲ジュピターの宗教色が強まっているバージョンを作ってくれた点では貴重なアルバムと言えるだろうか。
しかし、TAB00など、当時はこれが普通と思って聴いていた自分自身が怖い・・・
まだ狂った太陽に巡り合う前の、バービーボーイズファンから脱却しただけの当時の若すぎる自分が懐かしく思える思い出のアルバムでした。
(2020.4.25UP)
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