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BUCK-TICKアルバム紹介・批評
『darker than darkness-style 93-』(1993.6)


BUCK-TICK darker than darkness-style 93-

横棒


このHPを立ち上げた14年ほど前、当時は横浜フリューゲルスやザスパ草津などのサッカー関連以外に、このHPの2大コンテンツ(?)として、サッカーと同じくらい、いやどちらも比べられない自分の中のアイデンティティとして、BUCK-TICKという絶対的なロックバンドに対しての記事を急ピッチで書き連ね、確かにこの1993年発売の7枚目のアルバムについても、批評・紹介ページを書いたはずだった。

しかし、、、どうやらパソコンの操作ミスや、いろいろなデータの移行作業、そして極めつけは昨年からの、不本意ながらのアドレス引越作業が入り、その過程の中でこのアルバムのページだけすっぽり抜け落ち、そしてバックアップデータもどうしても見つからないという八方ふさがり。

さすがにバックアップデータまで見つからないというのは、この14年間蓄積された膨大なページの中でも、このページ以外は現在のところ見当たりません。


・・・ということで、14年前の、まだ30代にもならなかった自分が何を青い事を書いたのか、もはや思い出す事もできませんが、今一度、40代になった自分が、BUCK-TICKも30周年記念を迎えた中で、もう一度この7枚目アルバムについて書いてみたいと思います。


このdarker than darkness-style 93-、ファンの間では名前が長いので、たいては「DTD」と略されるアルバムは、非常に賛否が分かれるアルバムだと思う。

全体的におどろおどろしい、とにかくアルバム名のとおり暗い、まさにBUCK-TICKのダーク系という独自の系統を最大限に体現したような仕上がりであり、あまりライブ向けの、縦ノリ系の曲がほとんど皆無なので、その後のライブでもあまりセトリにもこのアルバムの曲は入らない。

自分も正直、このアルバムを聴き返すかというと、うーん、敢えて・・・という感じ。

とにかく、自分にとってこのアルバムは、星野3部作である、JUPITER、ミウに並ぶ、BUCK-TICK史上に燦然と輝く名曲中の名曲、ドレスが収録されているアルバムである、という確固たるポジションだとは認識しているし、他のB-Tファンにも、「ドレスが収録されているヤツ」でだいたい通じる。

そう話すと、ああ、あのドレスが入っているんだ、と今更ながら気づかされる。

逆に言うと、それだけこのアルバムが特殊というか、あのまともな名曲中の名曲ドレスが入っているんだ、と今更ながら驚かされるほど、他の収録曲のなんと特殊な事か・・・


とにかく、B-Tファン以外にこのアルバムから聴けなんて自殺行為だ。
B-Tファンにまず進めるならば、自分ならこの1つ前の銘盤「狂った太陽」だし、さすがに古いので、もう少し新しいアレンジから入りたければ「ワンライフ・ワンデス」だと思う。

B-Tファンでも、趣味によってはこのアルバムはキツ過ぎると感じるし、自分もその一人だが、好きなファンはこのアルバムを史上最高と推す。
本当に狂った太陽以上のアルバムなのか??と自分としては目を見張るが、しかしそこはさすがB-Tファン。
もはや通常の評価などはクソくらえ。
好きなモノは好きらしい。

自分としては、狂った太陽は20回リピートで聴いても、今でも十分いけるけど、本当にこのアルバムを20回リピートでもう一度聴けますか?とも聴きたいが、そもそもその判断基準が違うのかもしれない。


ドレス以外に特筆すべき曲といえば、キラメキの中でや神風だろうか。
どちらも今井寿という天才のセンスの爆発の片鱗が見られる。

そして93曲目に隠された表題曲D.T.D。
この曲をB-T史上のベスト10に入れる人がいるほどの曲だが、今となっては本当にこの曲が10位に入るか?とも思う。

まあ、本当に賛否分かれる問題作、怪作、それがDTDです。




01. キラメキの中で

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(ケロイドの男が歌う ドレスをひる返し)
(もう少しだ・・・もう少しでキラメキになる)

初っ端から物凄い問題作をぶっこんで来たものだ。
まさにこの怪作アルバムのオープニング曲に相応しい。

明らかにテーマは”死”
タブーの頃から描いてきた櫻井敦司の死生観が初っ端のオープニング曲から全開に盛り込まれている。

ケロイドの男ということで、やはりイメージするのは原爆。
その原爆をキラメキと表し、キラメキによって逃られないキラメキと誰もがなり、きっと楽になれる。

キラメキという死が待つ中で、今は歌い踊り、刹那の快楽を楽しもうという、まさに死生観。

初っ端の歌詞に、このアルバムの代表曲「ドレス」が入っている辺りが、このアルバムの最初に持ってきた意図を感じる。


曲調としては、とにかく特徴的なのは櫻井のヴォーカル。
あまりにエフェクトがかかり、もはや歌であるレベルを超えてしまいそうなところを、スレスレの設定でかろうじて歌の体を成し、それでいてしっかりと歌詞が伝わってくる。


自分としては、「もう少しでキラメキになる」は一生自分について回る名セリフとして、ケロイドのごとく身に焼き付いている。

麻雀していて清一色が綺麗に仕上がりそうな時とか・・・(^-^;
実際、当時は麻雀中に思わずつぶやきました( ̄▽ ̄)




02. Deep Slow

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(oh oh 降り注ぐ星 この僕は飛び込む)

題名は直訳すれば、深く、ゆっくり・・・

曲調としてはキラメキの中でで深くおどろおどろしく入ったところで、一転して快調なリズムで飛ばす感じで、少しはライブの事も考えたか、といった調子。

しかし、相変わらず櫻井のヴォーカルにはエフェクトがかかり、どこかマイクの一歩向こう側で歌っているような印象を受け、特に歌詞が全く頭に入って来ない。
歌詞カードを暗記しないと、ライブ中に何を歌っているのか、ほとんどわからないだろう。

そんな感じなので、この曲の印象がひどく薄いのは自分だけだろうか?



03.誘惑

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(君の声が聞こえる 帰ろうか 冷たいあの部屋へ)
(僕を殺さなくては いけない 君のもとへ)

星野がピアノを担当する、場末感バリバリのジャズ曲。
今井はギターシンセサイザーにより、サックス音を出すというジャズへの徹底ぶり。

帰ろうとしている冷たいあの部屋、なんとなく前作狂った太陽の地下室を連想させ、そこで待っている君の誘惑、しかしその君は僕を殺さなくてはいけない、あ〜、早く逃げなくてはいけないのに、どうしてもその冷たい部屋に向かってしまう。

そんな矛盾を秘めた死生観の曲だろうか。

ここまでジャズを全面に押し出した曲はBUCK-TICKに中でも珍しいが、何ならこれも作れるよ、という余裕のメッセージを感じる。




04.青の世界

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(全てよ歌え 叫び声 はっはっはっ))

イントロからの櫻井の「青の世界へようこそ」がとにかく印象的なこの曲。
この時に鳴り響くバイク音に似せたリフ音は、大友克洋の有名漫画「AKIRA」をイメージしたとの事。

つまり、全体的にAKIRAの世界のような近未来を青の世界と名付けてイメージした曲の様子。

青い部屋というと、前作狂った太陽の、B-T史上常に1位か2位に挙がる程の名曲・さくらにも「青い部屋で逃れる術も知らず」と歌われており、この青というカラー、世界観には櫻井としても特別な感情を抱いているのでしょう。

近未来は、やはりキラメキという名の原爆的な破壊で消えてしまうのか、それをとにかく狂って笑って迎えようという、やはり刹那的な印象を受ける歌詞。




05.神風

〜詞:今井 曲:今井〜

(センスが狂いそうだ センスが暴れそうだ)

B-T史上でも、このセンスが狂いそうだ、センスが暴れそうだ、の名セリフは、どのB-Tファンの脳裏にも深く焼き付けられており、今井寿という天才を評する時は、常に「狂いそうで暴れそうなほどのセンスを持つ天才」、というフレーズが出てくる。

この曲が作られた1993年の時点では、まだ1999年のノストルダムスの大予言の話題が強烈だった頃で、そこで吹き荒れる神風とは結局何なのか、実は宇宙から隕石なんて振ってくるわけでもなく、超一流の天才1人でどうとでもなってしまうんじゃないか?といった歌詞の世界観。


最後は狂ったようにフレーズを繰り返す櫻井のヴォーカルに乗せるように、4人それぞれの楽器から奏でられる音が不協和音となった重なり合う。

ちなみに、このセンスが狂いそうだ、とか暴れそうだ、というフレーズ、岡本太郎の「芸術は爆発だ」、に寄せている感があり、実際、この約20年後に出したアルバム・或いはアナーキーの1曲目のDADAに、芸術は爆発だのキーワードを隠した。

同じ天才として、今井寿は岡本太郎を相当にりすペクトしているのだろう。




06.ZERO

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(もう一度ずっと飛ぶのさ ああ 真実冴え ゼロになるさ 全てが)

曲調は、ギターがカッティング中心で、ドラムもところどころに割って入る程度で、ほとんどメロディラインを感じない、複雑なリズムがかみ合った曲。

全体的に掴みどころがの無い中で、途中はラップ調に掛け合いの部分が入り、それで最後までおしていく。

ちょっとあまりに特殊な構造過ぎて、印象には残りにくかったけど、今改めて聴き直しても、随分とまた複雑な事をやっていたんだな、といったある意味での意欲作。

さて櫻井の歌詞はというと、やはり1曲目のキラメキ(=原爆)でやられた後を象徴するようなキーワードが並ぶ。
最初の雨はいわゆる黒い雨、赤く灼けた大地に狂える太陽、そしてこの身体がキラメク、燃えて尽きる。

どうせそんな風に死ぬなら、せめて今夜は女の胸で眠りたい、ハイになりたい。

だいたいはこういった死生観、死を前提とした快楽論といったところ。
死を感じるからこそ、死を忘れず恐れないからこそ、今が楽しめる、今を全力で生きようというメッセージが30年間BUCK-TICKのブレないメッセージ。




07.ドレス

〜詞:櫻井 曲:星野〜

(僕はドレスをまとい 踊って見せよう)

このアルバムの先行シングル。まさに代表曲。
そして、30周年となった今でも、トップ5に入るほどの名曲中の名曲。

この曲の14年前当時の自分の批評だけは何となく覚えている。

とにかく名曲というものは、だいたいにおいて完璧だからこそ名曲だ。
完璧ということはどういうことか。
足すものも、引くものも無い事だ。

少しでもそこを変えようとすると、せっかくの名曲が崩れてしまう。
そんな、奇跡的な絶妙のバランスも含め、完璧に存在するもの、それが名曲だ。

だから、このドレスは名曲だ。
間違いない。
完璧だ。

曲全体に流れるユータの重厚なベース音で刻む重厚なリズム、それが全ての軸となり、全ての音が安心して、圧倒的に安定して鳴り響く。

それらの音が全て、完璧に折り重なり、足すものも引くものも無い。
おそらく、今になってもこの曲にアレンジを加えようなんて、本人達も必要性を感じないだろう。


そして歌詞がこれまた完璧だ。
歌詞の仕上がりの完璧さでいえば、この曲は1位、2位を争うだろう。


出だしから、鏡の前で君とまどろむ、薄紅の指先・・・ここで薄紅というキーワードをぶっこんでくるところの詩のセンスはどこから来るのか・・・

そして、自分にとって一生の名セリフ
「退屈な歌に耳を傾け」

自らの歌を退屈な歌と評してしまう余裕ぶり。
なに、こんな完璧な曲だろうが、退屈は退屈だよ、と天才がゆえの余裕をぶっこんでくる。

この退屈な、の部分ほど魂を揺さぶられる、常にヴォルテージがMAXとなるフレーズは他にあるだろうか・・・

サビ以外のAメロ、Bメロでこれほどの盛り上がりをぶち込んでくる、本当に全体的に静かな、深みのある曲ながら、非常にメンタル的に暴力的な曲だ。


そして最後の、
この愛も傷も懐かしい、今は愛しくて、傷みだす・・・

これほど傷を愛しめる感情などあろうか。

なぜこんな詩が書けてしまうのか・・・

そんな奇跡的な歌詞と、奇跡的な曲、その2つが奇跡的に融合したからこそ、この曲は名曲中の名曲と言われる。



圧倒的だ。
この曲を聴いて魂が揺さぶられない人は、私は信じられない。



申し訳ないが、この曲だけはあまりに別格過ぎる。
このアルバムの不幸なところは、このドレスがあまりに圧倒的であるがゆえ、もっと評価されるべきかもしれない神風などの曲が、結局ドレス以外の曲と頭が勝手に薄めてしまう事だ。





08.LION

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(だ〜れを、あ〜いし、だ〜れをに〜くみ・・・)

櫻井自身を歌うべく書かれた歌詞とのことで、その自分自身を檻の中で暴れるLIONと評している。
実際、ジャケットの表紙はこのLIONをイメージして描かれたものだろう。

なんとなく、ZEROの続きのような歌詞の世界感で、やはり死の直前で暴れる獣のような様子を歌っている。




09.Madman Blues-ミナシ児ノ憂鬱-

〜詞:今井 曲:今井〜

(俺の名は反動 白でも無ければ黒でも無い)
(別のレヴェルの超生物 新しいタイプの超生物)

今井色全開の問題作。
全編的に、おそらくメインボーカルは今井。
櫻井は補足的に、バックコーラス的に歌っている程度だろう。

最後のミナシ児タチガワラッテイルと、Welcome to my territoryの重ね合う連呼が響き渡る。

後に、アトム未来派のアルバムの中でのフューチャーソングなどの今井色全開の曲は、どれもベスト10に入るほどの仕上がりを見せるが、この頃の今井色全開の曲はあまりに枠を通り越し過ぎて、そもそも曲としての体裁をギリギリ留めているか、崩壊しているかといったところ。

そうか、、、当時はまだ、14年前のこのアルバムの最初のレビューを書いたときは気付かなったけど、ここの今井曲の原点があったか・・・

あまりに強烈だ。

強烈過ぎて、頭にメモリーされにくい・・・

正直、今の今井寿がこの曲を元に今のB-T風にアレンジすれば、結構な名曲になるんじゃないかと思う。
もう少し聞きやすく、リズム感を加えられればな〜と今井曲の大ファンの自分としては惜しく思う。





10.die

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(僕は両手を広げ 全てを許したいと願えば)

シングルカットされた曲。

題名からして「死」とストレートに言い放ちながら、このアルバムにしては随分と、あまりにやさしい曲調で全体的に包み込むような雰囲気。

歌詞は完全に死に向かっていく様が書かれているのに、

あの雲さえ越えてゆく キラメクまでこの夜に

と、ここでもキラメキ=死というテーマで歌い上げている。

どうせ死ぬなら、せめて最後は穏やかに、優しく死んでいきたい、、、

やはり圧倒的な死生観がここに表れている。

う〜ん、しかしこんな死生観に付いている人間はどれくらいいるだろうか?



93.D・T・D(daker than darkness)

〜詞:櫻井 曲:今井〜

(ああ 僕は陽光の中 たどり着いた砂漠)

なんとも宗教色豊かな曲調の、93曲目に隠された曲。
歌詞カードにも、どこにも出てないし、11トラックから92トラックまで、かなりの間流しっぱなしにしていないと聞くことが出来ない幻の曲。

当時、まだまだCD全盛期でMDがようやく出てきたかという中、なぜか曲が終わってからトラック数だけ増えていく様は、完全に故障だとしか、誰もが認識できなかったらしい。

実際、自分もノイズの中で静かに始まるこの曲は、本当に曲なのかと不思議な気分で聴いた覚えがある。


歌もやはりエフェクトがかかり、とにかく全体的に今井のノイズが常に入り、なにか仏教のお経のような、コーランのような雰囲気が伝わる。



さて、ようやくこれでD.T.D、紹介終わりです。

当時は1時間くらいでさっと書いたような覚えがあるけど、かなりみっちりと書きました。

他のサラッと書いてきたアルバムも、もう少しリバイスすべきなんだろうな〜と思いつつ、そこまで時間が取れない自分がいます(汗)

まー、そんな緩い感じでやってきたから14年間続けられています。

今後も緩くお付き合い下さい。
そうでないと30年間以上、BUCK-TICKのファンはやってられません( ̄▽ ̄)





(2018.8.5UP)

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