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前作、夢見る宇宙から約2年ぶりのリリースとなった或いはアナーキー。
この間、25周年記念の初劇場版が公開されたりなどもあった。
正直、なぜその劇場版の主題歌となったパレードの2曲がアルバム入りされなかったのかが、やや残念ではあるが、全体的には非常によくまとまっている印象がある。
裏を返せば、インパクトが全体的に薄い感じはするが、バクチクファンならば何回も聴けば聴くほど聴き飽きない、まさにバクチクの真骨頂を体感できるアルバムといえる。
最近曲数が少ないアルバムが多かったところ、今回は14曲であり、星野の曲が3曲、今井作詞作曲の曲も多いなど、バリエーションがありながらも、全体的に統一感がある。
個人的にはちょうど夏に資格の試験があり、6月、7月はこのアルバムをヘビーローテーションで1日何回でも聴いたが、何度聴いても飽きず、そして集中力が高まる。
やはりバクチクは素晴らしい。
そう感じ取れるアルバムだが、インパクトが薄い分だけ初心者の入門編にはとてもオススメ出来ない。
正直、5年前のメメントがあまりにも出来過ぎた名作であり、それを越えるアルバムというものはなかなか出ないだろう。
だが安定感。
そういう成熟したものが今のバクチクにはある。
不朽の名作・狂った太陽が一つの区切りであったように、メメントまでが一つの時代であり、そしてラズダル、宇宙、そしてアナーキーと、40代に入ったバクチクメンバーと同じく、また新たな時代を刻んでいる。
私自身も40代を目前にしつつ、なんとなく人生の運命、道筋というものをバクチクと共に感じ、そして今後も歩んでいきたい。
ところでこのアルバムはふんわかした雰囲気だった前作の夢見る宇宙や、とにかくバカ騒ぎしようや、といった前々作に比べ、3作前のメメントモリの”死と生”以来、随分とまた強烈なメッセージを含んでいる様子。
まず表題の”アナーキー”は、いわゆる革命などによる無政府状態を示し、更に表題曲といえる一曲目のダダは、芸術からの革命を示しているし、7曲目のヴォルテールはフランス革命と関連し、そして四半世紀、25年前の、このアルバム発売日の6月4日に起きた天安門事件・・・
色々なそこかしこのところで、既成概念やつまらない事に縛られた体制派に対する反骨精神、まさにB-Tならではのロックを感じる。
そんな主張を堂々と出来るのは、やはりB-Tとしてのこれまでの蓄積があってこそ。
音楽という枠を超え、真実を見つめろ、という革命の心を持てと、ファンをはじめとする全世界へのメッセージを感じるアルバムとなっている。
01.DADA DISCO - G J T H B K H T D -
〜詞:今井 曲:今井〜
(アイワナビーアナーキー 駄々っ子 ジョニー ファキンクール!!)
(gadji beri bimba gadji beri bimba)
とにかくこの1曲目は凄い。
まさに度肝を抜く。
アナーキーを歌詞に使っているだけあり、このアルバムの表題曲でもあり、そのまま代表曲といえる。
相当な名曲だ。
ラズダルのタンゴスワンクを久々に越えたと言える名曲だ。
全体的に訳の分からない単語ばかり並ぶが、、gadji beri bimbaというセリフからはドイツのフーゴ・バル(1886〜1927)という芸術家が第一次世界大戦に対する抵抗やそれによってもたらされた虚無を根底に、既成の秩序や常識に対する否定、攻撃、破壊といった思想を大きな特徴とする芸術運動”ダダ”の活動の拠点として開いたのが「キャバレー・ヴォルテール」。
そのキャバレー・ヴォルテールでの集会で披露された、フーゴ・バルによる音響詩が「gadji beri bimba」。
ところで副題の「GJTHBKHTD」の意味・・・
日本にもフーゴバルに並ぶ、芸術の革命家がおり、その方の名台詞をやや暗号化っぽく頭文字をとったもの。
今井ならではの遊び心ですかね。
02.宇宙サーカス
〜詞:櫻井 曲:星野〜
(宇宙サーカス 孤独な宇宙 宇宙サーカス 漂うロケット)
(ああ もっと深く深く さあランデヴー)
リフの利かせ方など、基本的にはかなりロックな曲だと思うが、これがBUCK-TICKの真骨頂かというとそうでもない気がする。
考えてみれば、そもそもB-Tはロックなのだろうか。
おそらく好みが分かれる曲で、ロック調が好きな人はかなり好きではないだろうか。
作曲がギターの星野というところもある。
ギターが効いているので、ライブだとそこそこ盛り上がる。
宇宙という題名からだと、前作のアルバム、夢見る宇宙の中に入れても良かったのではとも思うが、こういった前回アルバムから少し引きずられてきたような曲は最近よくある。
03.masQue
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(masQuerade おいで仮面劇 masQuerade どうぞ仮面劇)
マスカーレイドというと、どうしても自分の世代だとtrfのヒット曲を思い出すが、ここでのマスカレードはB-Tらしく、怪しい仮面劇という雰囲気。
最近のB-Tらしいやね。
最後のciao、ciao、マスカーレイド〜のところがなかなか良い。
04. Devil’N Angel
〜詞:今井 曲:今井〜
(天使の家はあっちの方、空を指差して そう言うんだ)
(Baby Don't you cry welcome to the wonderful world)
歌詞では、天使の少女が間違って地上に落ちてきてしまって、早くおうち(お空)に帰りたい、という内容で、なかなかヒネリのある曲だな〜と思ったが、どうも昨年に生まれた今井の第一子の赤ちゃんの事をそのまま詞にしたんじゃないか、というご意見もあり、その通りだと思う。
ラズダルのソラリスなどで櫻井も子供の事を書いたんじゃないかという詞が見受けられたが、かくいう私も2子の父親であり、1、2歳になるまでの子育ての大変さは身に染みてわかるし、人生観が変わるほどのインパクトがある。
天才、今井をもってしても、そのインパクトには多少ならずとも影響を受けている事だろう、と思う。
なかなかに今井らしい曲で、ライブでもかなり盛り上がる一曲。
05.ボードレールで眠れない
〜詞:今井 曲:今井〜
(太陽なんかいらない ボードレールで眠れない)
太陽なんかいらない。まさにこの世に反逆の精神を持ちつつ、しかしこの世も受け入れつつ、それでも自分は忘れはしない。
熱唱系の曲で、相当に好きな部類の曲。
特に最後のところ、今井の「太陽なんかいらない」のコーラスが入るところは本当にシビレます。
06.メランコリア
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(灰は灰に ふう 風に BLOODY・・・塵は塵に ふう 舞う BLOODY・・・)
メランコリアはとは「憂鬱」という意味とのことで、その名のとおりのっけから「気の触れたピエロ」と全体的にダーク目の曲。
サビではBLOODY(=血)を連呼するし。
まあライブではなかなか盛り上がりにくい曲調だが、最近の櫻井の唄う曲としては非常にマッチしている。
07.PHANTOM VOLTAIRE
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(ちょっと笑えるぜ 四半世紀 まるでOPERETTA キャバレー・ヴォルテール)
「VOLTAIRE ヴォルテール」はフランスの哲学者、人間の理性を信頼し、自由を信奉し、ヴォルテールの活動として最も有名なものは、腐敗していた教会、キリスト教の悪弊を弾劾し是正することだった、とのこと。
更に、フランス革命のきっかけとなった啓蒙思想を唱えたという。(なんか色々と諸説はあるとのこと)
そして、そのヴォルテールの名から取られたのが、1曲目のダダの活動拠点となったキャバレー・ヴォルテール。
この7曲目と1曲目は完全にリンクする。
ここで、B-Tファンの方のブログで非常に興味深いコメントがあったのが、この歌詞の中の”四半世紀”(25年)前のアルバム発売日である6月4日に発生したのが「天安門事件」。
その次に続くのが、上記のキャバレー・ヴォルテール。
まさに共通する単語は「革命」。
ここに今井をはじめとしたB-Tならではの、真実を求め、そして信念を信じるメッセージを感じざるを得ない。
25年・・・当然25年周年を迎えたB-Tとしての歴史を示しているし、B−Tの存在こそが革命の象徴であるという側面もある。
08.SURVIVAL DANCE
〜詞:櫻井 曲:星野〜
(踊れ踊れ 愛のサバイバー)
サバイバルダンス?・・・マスカーレイドに続き、これまたtrfの超ヒット曲に被りますが・・・もしかして狙ったところもあるか?と思われる思わせぶりな曲名。
前回アルバムの人魚や、その前にもクリームソーダとか、最近星野の曲にこういった、オチャラケを突き抜けた曲が多いような・・・
特に深い意味は無さそうな、完全にラテン系の、ライブを意識した曲かなといったところ。
ちなみに、地獄の季節ランボーとは、19世紀のフランスの天才詩人にアルチュール・ランボーという方の詩集の名前らしい。
09.サタン
〜詞:櫻井 曲:星野〜
(野良猫たちはSwankyなTANGO 明日が来ると 囁いて悪魔)
Swaky=気取った、洒落たタンゴを踊る路地裏の猫たち、ダンスの途中、ベッドの途中、、、ととにかくセクシーでオシャレな雰囲気の一曲。
星野の曲というところもあり、大人のセクシーさという所が全開のような、女性ファンにはウケが良いだろうな〜と思う。
ただ、サタンという曲名との繋がりはさっぱり分からない。。。
10.NOT FOUND
〜詞:今井 曲:今井〜
(綺麗だ 命の様 弾け飛ぶよ)
全体的に、命のはかなさ、そして美しさを説いているような感じの、そして今井の作詞らしい単語が羅列する。
シュレーディンガーの猫なんてのは、量子力学の矛盾点を突くといった、随分と難しい学者の間の常套句のようであり、なぜそんな単語をここに持ってきたのか、と今井先生の頭の中の謎が深まるばかり。
なかなかテンポも良く、詞のエッジも利いているところが心憎い一曲。
11.世界は闇で満ちている
〜詞:今井 曲:今井〜
(世界は闇で満ちている 君が輝くために)
なかなかの名曲に仕上がっている。
世界は闇で満ちているなんて題名に書きながら、別に闇のどこが悪いんだ、という逆説的な、非常に優しい内容のメロディと歌詞。
でも世界は何も変わらないだろう、でも進んでいくしかない、というところでは泣けてくる。
落ち込んだ少年、少女に対し、例え周りが真っ暗闇に見えたとしても、だからどうしたというのか、と勇気を与えてくれる。
優しい。優しい力強さがある。
12.ONCE UPON A TIME
〜詞:今井 曲:今井〜
(昔々 あるところに 天を衝く 反逆の塔 そびえた)
曲名を和訳すると、まさに冒頭のとおり、昔々のところに、というおとぎ話の出だしとのこと。
曲自体は今井の作詞作曲らしく、非常にアップテンポで、このアルバムの中では異彩を放つ。
曲途中のワンスアポンタイムの、ギターがむせび泣くようなコーラスのところなどが、相変わらず今井らしい憎さを感じる。
ライブでもこれは非常に盛り上がり、観客は手を振り上げる。
昔々のお話から始まり、俺たちは未来の神話に飛び立つ・・・なんか凄い壮大なイメージの浮かぶ曲。
13.無題
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(胎内の愛のメロディ リフレイン ワタシ 浮かぶ・・・)
出だしのギターのリフ・・・
こんな曲が許されるのは、やはりB-Tしかいない。
久々にB-Tのダーク系全開な曲を聴いた。
これぞ紛れも無くB-Tだ。
誰も追随を許さないダーク系という、B-Tにしか成し遂げられない分野だ。
だから自分はB-Tを素直にロックというくくりには位置付けられない。
それにしても歌詞が・・・
怖い。
怖すぎる。
生と死。
まさにそれに向き合わなければいけない、父親としての自分の心の中に激しく問うような、あまりに重い曲で、そしてB-T史上でも名曲かは分からないが、とにかく印象に残るトップクラスに残る曲だろう。
最後のギターのリフが、まさに主人公(=赤ちゃん?)の無言の問いかけに聞こえ、それがいつまでも頭にこびりつく。
14.形而上 流星
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(胸を裂く 破裂する きっと死ぬほど美しい ・・・ 夢を見た 夢を見た ・・・)
シングル曲で、このアルバムの表上の代表曲。
ただ、シングルよりはかなり重めな仕上がりになっている。
全体的に熱唱系で、なかなかの曲に仕上がってますね。
今回の全国ツアーのライブの最後は必ずこの曲で締めくくりとなるが、会場全体がこの櫻井の熱唱ヴォーカルを聴いて、まさに締めとなる。
死ぬほど美しい・・・
そう、死ぬほど真剣にならなければ、本当に美しいものなど見えやしない。
以上、14曲に及ぶ、いろいろな曲が詰まったアルバムとなった。
なるほど、このヴォリュームなら、パレード2曲はちょっと容量オーバーだったかと納得する部分もあるが、それにしてもあのパレードがアルバムに入らないのはやはり勿体ない。
出来ればパレードの方もしっかりと聴いてもらいたいところ。
まあ初心者向けではないが、なかなか満足感のあるアルバムと、そして全国ツアーでしたね。
(2014.09.15UP)
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