|
|
ビジュアル系を通り越したダーク系として全く他のアーティストとは類を見る事はできない分野を築き上げてしまったバクチク。
デビュー20周年という節目でのアルバムとなったこの十三階では、20年経ってもなお新しい、全く、誰もやったことの無いことに挑戦したいというバクチクの姿勢がよく表れ、これまでとまた違った、”異色”の”ゴシック”(中世ヨーロッパ関連を舞台とした恐怖モノなどをゴシックというらしい)丸出しのアルバムとなった。
まあバクチクの場合、同じような曲やアルバムを作る事はまず無いので、毎回どこかが”異色”なのだが・・・
毎回バクチクの場合、今井色か櫻井色のどちらかが強いかはっきりするが、前回のモナリザが今井色が強かったので、今回は櫻井の番となった模様で、その櫻井が一度ゴシックでいってみたいと今井と相談したところ、今井もある程度考えていたらしく波長が合ったらしい。
ということで、櫻井色丸出し、ゴシック丸出しの、全体的に粘着性の強い、ひたすらダークな、人間の恐怖心を煽るような作品が多くなっている。
毎回ここで書く事だが、初心者は今井色の強いアルバムをまず聞く事をお薦めするので、このアルバムから入る事のないようお願いします。
前作のアルバム・モナリザと比較して聞いてみると、本当に同じバンドなのか?と疑うほど曲調が違う。
そこがバクチクのいいところ。
だから20年やっていても飽きないし、継続できる。
(また、このアルバムの前の年はメンバーそれぞれソロ活動に励んだ。
今後はソロ活動とバクチクでの活動を1年づつ交互にやっていこう、といった方針を感じる)
01.降臨
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(午前零時 針が止まる 獣たちは 息を潜める)
どうやら真夜中に出産があったらしく、これから始る恐怖の宴がいよいよ始るという、このアルバムのスタート曲としての位置付けがある。
だから全体的にはスローテンポで、プロローグ的な感じ。
この産まれてきた赤ん坊は果たして悪魔の化身なのか、これから恐怖の世の中を生きなければいけない犠牲者なのか・・・
ちなみに最後のバックコーラス入りの盛り上がりの部分はかなり好きだ。
ああいうバックの入れ方がバクチクはうまい。
そういえば、ここの点だけみると今井よりも星野の曲のように感じてしまう。
02.道化師A
〜詞:今井 曲:今井〜
(お願いだ支配人 あの子が泣いている)
一方的なあるピエロの1人の女の子への偏愛を歌っている。
これまたひたすらスローテンポ。
殺したいほど愛している
矛盾しているけど、これがピエロの心の奥底の叫びなのでしょう。
いや〜濃い曲だ。
03.Cabaret
〜詩:櫻井 曲:星野〜
(私は今夜もお唄を歌うの 夜の底のキャバレー)
星野の曲なのに、見事にゴシックになっている。
(まあ何をもってしてゴシックと定義するか知らないが)
最初は3曲連続でスローテンポか、と思わせ、途中から急にシャウトしだすそのギャップに、大変魅力のある曲。
このマニアックな曲に対して、平野至上主義者の親友Mは大絶賛。下手するとこのアルバムの中で一番いい曲だとか。
いや〜この曲をそんなに賛美するあなたは本当にマニアックだよ。
04.異人の夜
〜詞:櫻井 曲:星野〜
(片目の黒猫がゆく 何処から来たのだろう)
赤い靴はいていた女の子が異人さんに連れられていっちゃった、というあの有名な童謡をそのままダークに持ってきたような内容の詞。
いや〜どこに連れていかれてしまったんでしょうか。
とにかくここまでの4曲、みんなダークなので食傷気味となる。
この曲も星野らしいスローテンポな曲。
05.Goblin
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(裸のAdam Eve抱き合う 踊りなbaby! Strippppper! だんだん君もハイになってきたぜ)
これもゴシックを意識したのか珍しくサックス(?)を取り入れ、少しジャズが入ったような激しい感じの曲。
4曲スローテンポが続き、ようやくここら辺から波に乗ってくる。
ゴブリンとはいわゆるファンタジーの世界の小鬼の事のはずだけど、そのゴブリンが道化師さながらに狂ったように踊り回り、人間を欺き、陥れていく、といった内容なんでしょう。
dadada dadada dadada dadada とまさにタップダンスでも似合いそうな激しいサビが結構いい。
06.ALIVE
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(歩けるだろう 生きなよ 独りでも)
このアルバムの中でもっともロックな曲。
ノリも良く、これだけは初心者の人でもすんなり聞けるだろう。
私も大好きな曲だ。
しかしマニアにとってはちょっとストレート過ぎ、物足りないらしい。
確かに、本来はこの一般ウケしそうな曲がシングルカットで発売してもいいのではないだろうか?
でもこういう曲に限って案外シングルにはしない。
それがバクチクのポリシーなのか?
櫻井色が強いこのアルバムの中で最も今井色が強い曲といえるかもしれない。
後半に「歩けるだろう〜」と櫻井が歌った後に重なる「歩けるだろう」と叱るように吐き捨てるあのセリフが最高に格好いい。
(※ちなみにこの「歩けるだろう」のセリフはてっきり今井が言っているのか思ったが、そうじゃないとか。じゃあ櫻井本人の声を重ねているということか。(08.05.06追記))
その一言のためにある曲といってもいい。
おそらく自殺したいと考える人がいたなら、これさえ聞けば自ら死ぬのなんてあまりにも馬鹿らしいと思うのではないだろうか。
とりあえず誰が何と言おうと、私はこのアルバムの中ではこれが一番だ。
おそらくこのアルバム全体的にあまり好みでないので、この曲が一番このアルバムのコンセプトからかけ離れているからだろうか。
親友Mはこのアルバム相当気に入っているらしいが・・・
07.月蝕
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(あ〜あああああ〜 煮え 滾る)
また出たか、というようなバクチク教の宗教歌。
出だしはまさにバックコーラスの響きの中で櫻井が叫ぶように唄うというところから、まるでバクチク教のお経でも読み上げるようにダークに詞を連ねる。
それにしてもラストの重なり具合がいい。あのバックコーラスもやはり今井なのだろうか。(※これもどうやら今井じゃないらしい(08.05.06追記))
いや〜格好いいね。
あのラストの部分だけでも今度Mとカラオケで唄ってみたいものだ。
08.DOLL
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(仮面舞踏 死の舞踏会へ)
まさにタンゴのリズムで、ピアノベースの舞踏会でそのまま使えそうな曲。
いや〜凄い。これが本当にロックバンド・バクチクの曲だろうか。
こういう曲を平気で作ってしまうあたりが、付け焼き刃のビジュアル系のぼっちゃん達では到底できない。
まあバクチクの20年の経歴までは達せずとも、少なくとも10年は経歴持たないとこんな曲で勝負できるわけない。
狂ったように踊るだけのお人形さん。
まさにダークなゴシックそのものの曲だ。
まあ好みは分かれる曲ですね。(自分はちょっと・・・何回も繰り返しては聞けないな)
09.Passion
〜詞:櫻井 曲:星野〜
(あなたの隣に 居させて下さい)
これは次元が急に変わってしまったDOLLから正常に戻すための、ひとまず落ち着くための気曲でしょう。
星野らしい重厚なスローテンポな曲ながら強い。
10.ROMANCE -Incubo-
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(ああ こんなに麗しい 跪き祈りの歌を)
シングル曲であり、当然ながらこのアルバムの代表曲。
まあ最近のバクチクのシングル曲としてはまだマシ(といっては失礼だが)な、一般ウケも多少はしてくれそうな曲。
それでいてしっかりとゴシック。
まさにPVの通りバレリーナの優雅な手の動きがこの歌の振り付けに相応しい。
どうもPVとかいろいろ見ていると、愛する人を永遠のものにするために自分で殺しておいて、それを最高に麗しい偶像として自己満足しているような偏愛を表わしている。
ある程度繰り返しても聞ける曲だし、シングル曲の割には飽きが来ないということで、やはりアルバムの代表曲らしく良い曲だと言えます。
11.seraphim
〜詞:今井 曲:今井〜
(春 狂 夏 空)
いや〜ついに狂ったか、といったあまりに突飛な曲。
そういえば詞が今井か・・・
さすが今井。何を言っているのか、言いたいのか本人にしか絶対分からない。
櫻井もこの曲だけはどう今井から伝授され、そしてあんなはじけたような、狂人のような唄い方になったのだろうか。
おそらく深く追求してはいけない曲のような気がする。
驚愕な事にこの曲も親友Mのお気に入り。
大丈夫か?奴は。(このページ読んで笑っているんだろうな、Mは)
(※以下追記文)
この歌詞の意味だが、いわゆる虫に置き換えれば、
春 繰る
夏 喰う
秋 異形
・・・でサヨナラだ
なるほどね。
?・・・でも、だから何なのだろうか・・・
多分、虫を引用することで、虫と同じく人間の生についての問いかけの意味を込めているなどの意味があるのだろうけど、やっぱり本当のところは深すぎて本人にしか分からない。
(以上、08.05.06追記)
12.夢魔 -The Nightmare-
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(黄泉彷徨える 我 百鬼夜行を逝く魂よ)
シンセサイザーの高い音が響く中、櫻井の太いヴォ−カルが鳴り響く。
この歌はもう単純に格好良いの一言。自分としてはアライブの次にこれが好き。
まあ一つ言えば、アライブとこのナイトメアの2曲だけはゴシックでは無いということでしょう・・・
終盤に入る今井の囁くような「盲人となり 叫ぶ 叫ぶ・・・」のコーラスがまた良い。
基本的に今井のバックが入る歌は大抵いい。
とりあえずこの歌は自分の中での名曲入り確実。
13.DIABOLO -Lucifer-
〜詞:櫻井 曲:今井〜
(乾杯しましょう ほら天使が泣いている)
イメージは夕暮れ。
裏寂しい工場の町外れで、10円玉を握りしめた坊主の子がふと耳にしたそのサーカスの宣伝文句。
まさにそういったような、物語のエピローグのような曲。
楽しい宴、狂乱もこれで終わり、という締めくくりのためにあるような曲。
いや〜本当にこのアルバムはマニアックだ。
(2006.11.21UP)
|
|